―10年前―
[吸血鬼の襲撃により悲鳴と怒号が飛び交う教会内で、能力を使いこなせない少年は唯、逃げ惑うしかなかった。しかし追っ手を振り切る力さえなく、追いつめられたのは皮肉にも神の像の御前。視界の端では業火が燃え盛っている。大人も子供も知った顔が次々に倒れ伏し、それはまさに地獄絵図。
彼は神に祈った。
解放を。この"苦しみ"からの、解放を]
((ならばその脆弱な命を捧げよ))
[聞こえたのは恐怖による幻聴だったのかもしれない。ただ、次の瞬間、右目に鋭い痛みが走ったのは紛れもない現実。少年ははっきりと感じた。目の奥で"何か"が蠢いている。
食虫花はずっと彼自身の内に眠っていたのだ。それは危機が訪れなければ終生眠っている筈だった、組織の秘密兵器の一つ。それが吸血姫の覚醒に呼応して目を覚ました。
そんな事実を知ることはない少年の右眼は赤く染まる、それは永遠に消えることのない聖痕*]
(7) 2015/01/16(Fri) 09時半頃