そう。たぶん、ここはあなたが元いた場所とは違う世界。
[心許ない様子の幼子の呟きに、務めて優しげな声音で返す。
低い姿勢のままゆっくりと近付いて手を伸ばすと、小鈴は未だ少女の髪に残る淡い色の花弁をそっとつまみ上げた。]
ここはね、【豊葦原國(とよあしはらのくに)】。
いろんな世界と、いろんな時間の狭間にある、果ての海に浮かぶ島国なの。
人間も、神様も、けものも、あやかしも。結構、仲良くやってるのよ。
[あなたは、だあれ?お名前はなんていうのかな。
言って微笑みかけると、強い眼差しが柔らかく緩む。
少しは安心してくれただろうか。この国の住民は、外の世界から訪れた者達の扱いには、大抵が慣れたものではあるのだが。]
【外神様】っていうのはね。
外の世界から来た人たちの事を、わたし達はそう呼ぶの。この国には神様がたくさんいて、人との距離も近いから。
外から来た人たちも、かみさま、って呼んで、大切にするの。大切なお客様なんだよ。
(7) 2015/04/17(Fri) 00時頃