―雪道―
はぁ、……は
[白いマフラーに顔の半分を埋めても毀れる息は、氷点下の風に固形物じみて紗を作り出す。重く垂れこめる雪雲は一向に薄れる気配はなく、ふもとではちらつくばかりだった雪は今や嵐を予感させるほどに降りしきり体にまとわりついてきていた。
――参ったな。
緑色の眼を僅かに眇めた男は、そう思えども口にも顔にも出すわけにはいかないと思う。己は共に旅する2人を守る――“保護者”なのだから、と唇を引き結んだ。
同行者たちの様子はどうか。顔を向けて様子を窺った。必要なら、手を貸さなければならない。男自身も力が強いわけではないのが難点だが。]
大丈夫かい?――もう少し行けば 山小屋があるから……暫くは其処で、雪を凌ごう。
[風にかき消されないように少し張った声は、独特の透明感がある。やがて白の向こうに霞んで見えた影は、山小屋に相違なかった]
(7) 2014/11/11(Tue) 12時半頃