── 現世・隠神社/拝殿前 ──
[ 声がする。さっき聞こえた声とは違う、もっとたくさんの人の声。うっすら目を開けても、周りはまだ夜のまま。確かにさっき、ぼやけていても光を見たはずなのに…
私は、ちゃんと私の顔をしている?
顔へ持って行った手は、硬い感触じゃなくて体温のある人の肌に触れる。呵呵とかすかに笑い声が聞こえたきがするけれどそれを確かめるよりも早く、私の耳は別の声を聞く ]
『 智ちゃん!!! 』
[ はじかれたように、顔が上がる。人の間から私へ手を伸ばしておばあちゃんが走ってきた。「こけたら危ないよ」とか「こんな夜に外出てきたの?」とかいつもなら簡単に出てくる言葉は喉につっかえる ]
おば…ッちゃ……!!
[ 溢れた雫は散らす間もなく、後から後から頬を伝って
もつれそうになる足で必死におばあちゃんに駆け寄って、伸ばされた腕の中に飛び込んだ
あぁ……私は 帰ってこれたんだ ]*
(6) とまとな 2016/07/25(Mon) 13時頃