[ふ、と。フィリップの腕に抱き寄せられた、セシルの前髪をディーンの癖が移ったかのように梳いて、意識を失った者の貌を覗き込む。目蓋の落ちた今は、セシルの瞳を見る事は出来ないけれど。]
──……
薔薇は、どうして
あんな風に奪う、の。
……フィルは、分かる?
嗚呼、とても、せつなげな 貌 だね。
[そのままセシルに触れた指先を、フィリップの翡翠色の目元に這わせる。
フィリップにそっと首を傾けるラルフの銀灰も、蒼薔薇が見詰めていた風景をみてしまった所為か、燻った炎と蜜の色を宿したまま。半ば醒めていて、半分は夢の中。
そのまま、掠れた吐息を飲み込んだフィリップにくちづけそうになるのは、何故か。
失血しているセシルを医務室に運ぶにはどうしたら良いだろうと、頭の片隅では想いながら、まだラルフの身体も微熱と、不可思議な甘い喪失の痛みに足を縫い止められたまま**。]
(5) 2010/09/09(Thu) 01時半頃