― 翌日朝・『202号室』前 ―
[夜が明けて、昨日よりも遅い朝。いつもなら就寝の迫る時間だが、今日はそうもいかない。
相変わらず空の冷蔵庫を確認し、空の腹を抱えて外に出る。手には原稿用紙をちぎった小さなメモが握られていた。そこには「202号室」と細身の文字が書かれている。引き戸を閉め、テープで固定すれば、何ともお粗末な部屋番号プレートの出来上がりだ。
以前、管理人である如月に部屋番号を記載してほしいと頼まれたことがある。どうやら配達員が引き戸の我が家を部屋だと認識できず、荷物を隣の203号室に届けてしまいそうになることがあったらしい。
その時はそんなのは1回きりだと軽くあしらったのだが、2回目はそう遠くない内に訪れた。
203号室の住人である三上はどうしたのだったか。当人からか、あるいは如月から迷子の段ボールを受け取って以降、荷物が届く日にはこうして簡易的に部屋番号を主張するようにしている。]
(3) 2021/02/14(Sun) 00時頃