――暗うなって来ましたし、そろそろお暇しましょうか。お邪魔しました、先生。くれぐれも、鼠小僧に盗まれんとって下さいね。……盗まれてしもうたら…それは少し、寂しいですから。[手紙を懐へとしまいながら腰を上げ。悪戯めかして口にした言葉は、鬱陶しがられたかもしれないけれど――色々と世話を焼いてくれた薬師の事は、女なりに感謝はしていたものだから。そうして瓦版はそこへと置いたまま。何か引き止められでもしない限り、女は下駄をカラコロ出口の方へと向かっただろう。]
(2) 2015/01/21(Wed) 23時頃