-テッドは走った。力の限り走った。走れども走れども前を行く影の背中は見えては来なかった。あの瞬間食堂の前の廊下にいたのは間違いなくサイモンだった。彼は見ていた。僕らを、いや、そこにいた生物たちと言った方が正確だろうか。そして彼は……彼は、確かにその瞬間、笑った。そう、そこにいた何者かに笑みを投げかけた。嘲笑のようでもあり、憐憫の笑みのようでもあり、絶望の笑みのようでもあった-
[そして、今、サイモンは死んだ。テッドは、そこにある“サイモンだったもの”をそれと認識するまでに時間を要した。角を曲がった廊下の壁中に広がる薔薇色、そこには、美しささえ見えた気がした。その美しいコントラストに込められたものこそ『生』であり、その向こう側に“落ちている”モノはもはやモノでしかない。同時にその模様は、集い出す人間(Homo sapiens)達にとっては絶望の表象であった。……目を背けるもの、泣き出すもの、崩れ落ち力を失うもの、拳を壁に打ち付け叫ぶもの……彼らは現実と向き合わなければならなかった。それは若干十数歳の彼らには酷く辛いものであった。]
始まったんだ……
(2) 2013/06/13(Thu) 23時半頃