―回想―
『お兄ちゃんの手って、魔法の手だね!』
[幼いソフィアから、よく貰った称賛。
とある事情により、両親が不在にしがちの佐倉家。
俺は幼い頃から、妹の為に必死だった。
父親の代わりに護り、母親が不在の時は料理とお菓子を作り、破れた衣服を直し、染みが出来たならまっさらに落とし、寝ぐせを綺麗に治し、妹が体調を崩したならずっと隣で頭を撫でて――
その度に、ソフィアは「魔法の手」だと称賛した。
そうして何度も、繰り返しその言葉を受けている内に――ある日、俺の手は本当に”魔法の手”となった。
急に発現した”チカラ”。今はこの能力に目覚めて良かったと思うが、戸惑わないはずが無かった。中学3年生にもなって情けなかったが、狼狽しながら両親に”チカラ”の事を打ち明けた。
両親は――ソフィアの影響では無いかと告げた。俺が繰り返し貰った称賛…つまり、そういう事なのだろうと 思う。]
(1) 2018/03/30(Fri) 07時半頃