ー 或る一等車両の部屋 ー[何処かから、落ち着きの無い足音が聞こえてくる。 ざざ、と寝台の下から飛び出した者が居た。 彼がずっと息を殺し、潜伏していたその部屋は ひょっとしたら、誰かが使っていただろうか。 誰かが眠っていても、誰も居なくても。 隼の様な早さで壁を蹴上がり、窓を開ける。 脚をかけ、手でしっかりと渕を持ち、跳ねて。 少年はそこから車両の上に昇り上がる。 外は既に、満月の光しかない。 彼の顔は脚でも断たれたかの様に、 酷く歪み、汗が滲んでいた]*
(1) 2015/12/01(Tue) 00時頃