[――そう、彼女は郵便屋。
宛名が無い荷物は、きっと届ける事は出来ないだろう。
そして宛名を書かなかったのは、自分の失態に他ならない。]
…君には。
礼を欠いてばかりだな…クラリス。
[彼女がくれた花の贈り物>>117が、あの時の止まった時計へと贈られた事など、遠く離れた地に居る男には知る由もなく。
幾日経っても届く事の無いその花を見て、彼女が何を想うのか――それすらも知り得ないのは、それは酷く残酷な事かもしれないけれど。
初めて言葉を交わしたのは、あの最初の休みの日。向けられた反応が愉快で、ついからかってしまったあの日。
二度目は同じく玄関で。まさか菓子折りを持って詫びに来るとも思わずに、借りを作ったままにしてしまった。
――そうして最後に、宛名の無い贈り物。
結局、あの"優しい郵便屋"への礼は、最後まで…出来なかったのかもしれない。
…だけれど、きっと彼女は自分を見つける事は出来ないだろうから。
その間、あの時計はずっと彼女の手の中で時を刻むのだと思えば――それもそれで、悪くは無かった。]*
(+11) 2014/10/08(Wed) 00時半頃