[そうしてまた、夜は替わる。
男は日が落ちると共に目を覚ますと、また机へと向かった。原稿の進捗はいよいよラストスパートであり、間もなくの終着に向けて、男は文字を書き刻んでいく、
書き刻んで、]
……、
[一たび止まる。最後の最後で、うまく出てこない。うまく繋がらない。よくある事だった。仕上げこそ、もう少しこそ、悩ましいのだ。
男は暫く文章の行く先たる空白を眺めて、にわかに、立ち上がった。シャツをインク染みのないよく張った物に着替え、ベストにネクタイ、フロックコート、全て黒であるそれを身に付ける。
そして、部屋を後にした]
[その装いは、何がためといえば外ならない、食事のためだった。思い返せば幾分飲んでいない、不足たれば頭も鈍ろうし、それは気分転換にもなるだろうなどと考えて。
食事の際男は主にこうして装い、懐にカードを携える。
――May I.C.U. Home?
かつて流行した物に準ずる、しかれども別の標を持った、飾り文字の並べられたそれを]
(140) 2016/12/06(Tue) 04時頃