208 【突発誰歓】ーClan de Sangー【R18薔薇】
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[永遠に適した場所。 きっとそれは、正しいのだろう。 病も無く、飢えも無く、そして死すらも無い。 約束で縛られることも、時間に忙殺されることもない。 ただ、緩急のない日々が、時間が、過ぎていく場所。
ふと思い出すのは、談話室の絵。 白衣の渡し守が、船を寄せる先。 それがあんな寒々とした島ではなく、こんな甘やかな時間の流れる地だとすれば、―――]
……、
[優しくは扱わない。 その言葉に、ただひとつ、頷きを返す。 優しさを求められる立場ではない。 脅える必要はないというだけで、自分には十分すぎるくらいだ。]
(8) 2014/12/27(Sat) 12時頃
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[その手の中、弄ばれるように指が動けば、先走りが絡む音。 音が、耳の縁から脳の芯へと沁みていく錯覚。]
っは、……はッ、……ぁ、
[その視線が体を這う。 鎖骨の一点で止まるのに、薄ら、昨晩の断片を思い出すか。 指先の動きの仔細を、言葉のやり取りの全てを、思い出すことまではできず。
持ち上げた腰の下、窄まりに触れる熱の切っ先。 未だ硬く閉じた其処は、息乱れた状態では自らの指すら拒んでいる。 もどかしさに瞼を閉じるも、問いかけに視線ごと上げられる。]
……素、……なんだ、と、……思う、……
[そも、敬語が身につかなかった最たる理由は、かつて主人の前で口を開かなかった事にあるのだろう。 敬語も、読書も、上達しないままに。]
(*4) 2014/12/27(Sat) 12時頃
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ライジ、……
[記憶の覚束ないとはいえ、ここに居る者の名前は覚えている。 眼前の者が覚えておらずとも、自分は、確かに。
名を、という問いにそう答えたけれど、少しばかりの間を置いて。 思い出すのは、先程のやり取り。]
……ライジ、さま、?
[主人となると言うならば、そう呼んだほうが正しいのだろうか。 そっと、確かめるようにそう口にすれば、微か目を細めて首を傾ぐ。
傷へと触れた指が、滲む血液を拭い取る。 薄い肌に触れた事にすら、大袈裟に体を跳ねさせた。
赤に濡れた其処は、促されるままに指を受け入れていく。 爪を立てない、ゆっくりと。 硬く唇を引き結んだまま、小さく幾度も頷けば解す指の数は増える。]
(*5) 2014/12/27(Sat) 12時頃
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[やがて、十分と判断されたのならば、腰を落としながらその熱を受け入れる。 指よりもずっと奥へと侵入するのに、慎重に事を進めようと試みるが、]
……は、 はッ、 あ、 ぁア、 ぁッ ―――-ッ、く、 あッ ……!
[滑らかなシーツの上、慎重に落とす腰が重力に負ければ、残りの分を一息に収めることになるか。 一際高く、高く上がる嬌声。 衝撃を緩和するように呼吸を試みるも、しゃくり上げるような呼吸では尚更に自分を追い詰めるばかり。
落ちた涙の粒に、その指は伸びる。 それでも、体の下、突き上げる動きに応じるように、腰を揺らす。 自ら悦い箇所にその切っ先をと、ただ快楽を求めるままに委ねる。
シーツへと突いていた掌は、無意識的にその腹へと移動する。 汗と混ざった血液が、腕を伝ってそのガウンを点々と汚した。]
(*6) 2014/12/27(Sat) 12時頃
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……っ、ぁあ あ、 …… っは、 …… は、……ぁ……
[達したのだろうと察したのは、内に流れ込む感覚から。
見下ろした自らの茎は、区切りのように達した様子はない。 ただ、突き上げられる度に零れた先走りは、だんだんと色を濃くしていったのだろう。 二人分の体の隙間へと、溢れさせた白濁は添う。]
……ッ、ん、 ……ぅ、う、
[それごとを引き剥がすように腰を持ち上げ、内で達した茎を抜き取る。 傾ぎかける体。 それでもその体へと倒れずに支えたのは、支えておけと告げられたから。]
(*7) 2014/12/27(Sat) 12時頃
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[ベッドから起ち上がる姿と入れ替わるように、自らは体をそのままシーツに預ける。 ガウンを汚してしまったことを、詫びないと。 そうは思えども、うまく言葉が喉から出てこない。]
……はい、
[それでも最後、告げられた言葉には確かな音としてそう答えた。
これもまた、忘れてしまうのだろうか。 そんな不安は、口にできなかった。
白いガウンが扉の向こうへと消える。 扉が閉まる。
一人、切り裂かれた包帯の残骸の中。 包帯ではない布の断片を見つければ、指先で拾い上げ、そっと広げた。]
(9) 2014/12/27(Sat) 12時頃
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/* 起ち上がらない。 立ち上がれ。
立ち上がれ!!!
(-2) 2014/12/27(Sat) 12時頃
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[このまま寝ていても、ただシーツを汚すだけだ。 血の色を落とすのは、難しい。 それに、シャツに血の染みを滲ませていては、食事にも出られない。 夜闇の迫る気配。夕餉のベルは、既に鳴ったのだったか。
怠い体を引き上げて、適当なシャツを素肌に羽織れば立ち上がる。 箱から新たな包帯とガーゼを手に、扉を開いて外へと出た。
一歩、二歩と歩む度、幾度か不快げに眉を寄せるも、それでも次第に足取りは確かなものとなるだろう。 浴場へとたどり着いた時、既にその姿はあっただろうか。
終わったら。包帯を。
靴を脱ぎ、日頃湯を汲みに来る時のように、服のまま一歩、二歩と浴室へと足を踏み入れる。]
……クアトロ……?
[シャワーの音のする方へと、声をかける。*]
(10) 2014/12/27(Sat) 12時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/27(Sat) 12時半頃
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[名を呼ぶ声に、裸足でぺたぺたと歩んでいく。 シャワーの音に反して、服は着たままであることに疑問を覚える。
新たな包帯を手渡そうと腕を伸ばせば、交差するように衣服へとその手は伸びる。 咄嗟に一歩、後ろへと下がって。]
……、待、って、
[短な、制止の声。
彼の前で、服を脱ぐことに抵抗があるわけではない。 けれど、着替えを持ってきていない以上、脱ぐのならばきっと下衣も含めて全てとなる。
情事の後始末も、禄にしていない。 流石にそれを見られるのには、抵抗があった。]
……軽く、拭くだけでいい、から。
[それでいいかと、問うように、赤の瞳を向ける。]
(14) 2014/12/27(Sat) 13時頃
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……っ、 してないから、嫌なんだ、……
[頭に伸びる掌を受け止めながら、視線を逸らせば苦く告げる。
捻られるカランに、流れる湯。 立ち上る湯気に、先程までシャワーから出ていたのは水だと気付く。 たくし上げられた腕を、暫し見つめていたが。]
……脱いでくる
[短く告げ、一度踵を返した。 脱衣所で、羽織っていたシャツを広げれば、点々と刻まれた鈍い赤色に眉を寄せた。 少々の逡巡の後、下着ごと下衣を脱ぐ。 身動ぐ度、体内に残された白濁が、足を伝い落ちる。
積まれたタオルの一枚を取り、足を乱暴に拭っては腰に巻き付けた。 シャワーの元へと戻った時、表情は憮然としたもの。 どうすればいい、と、視線で問う。 汗に流れた血液は、赤黒い筋として肌に残っていた。]
(19) 2014/12/27(Sat) 13時半頃
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[腰に巻いたタオルにその手は伸びる。 待てと声をかける前に、緩く留めてあるだけの布は簡単に取り払われた。
濡れた床に、白いタオルが落ちる。]
……っ、おい、
[動揺を露わにするより先に、シャワーの方へと促されるのだろう。 湯気が、水滴が床を叩く音が、晒した肌に触れる。
湯気の向こうの横顔を、視線は捉える。 何にも触れていないということが急に頼りなくなり、泳いだ指先が自らの腕を抱いた。]
(22) 2014/12/27(Sat) 14時頃
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[真白のタオルが、床の水滴を吸っていく。 腰へと伸びた掌に、傾ぐ体を眼前の壁に腕を突いた。 注ぐ湯が、肌の上を滑っていく。 日頃、拭うだけに留めていた体を、暖めていく。
けれど、肌を赤く染めるのは、その湯が原因ではなく。]
止め、 ……そこは、いい、 自分でできる、 ……できるから、……ッ
[引き攣れた、懇願の声。 その一瞬で振り払えばよかったのかもしれない。 指が触れた瞬間、身体はびくりと硬直した。]
……ぅ、 く、
[咄嗟に飲み込んだ声は、悲鳴の音に似ていた。
歯を食い縛り、瞼を伏せる。]
(*9) 2014/12/27(Sat) 14時頃
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[流れる湯の音と、微かな息遣いと。 二人きりとするには狭すぎる空間、音は響いて、満ちる。]
……、
[首を微かに俯けて、その言葉に下唇を噛み締める。 触れた指は、肌の温度に反して嫌に冷たかった。
終わるまで我慢すればいい。 そうすれば何れ、この羞恥すらも忘れてしまう。
忘れるということを、自らの救いとして、甘えとする。 それは、自らの心を守るためか。]
(25) 2014/12/27(Sat) 14時半頃
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……はー……ッ、 は、ッ、
[湯気の中、荒く、息を吐き出す。 突いた手の先、爪を立てようにも硬く滑らかな壁ではどうしようもない。
内に潜り込む冷たい指先。 先程まで貪欲に熱を咥えこんでいたというのに、今となってはその指先は拒みたい対象でしかない。 指に掻き出され、太腿を伝い落ちる白濁。]
もう、 いい、 大丈夫、だから、 ……大丈夫だから、……はやく、
[羞恥に声を震わせながら、それでも口にするのは命令ではない。 “お願い”と称されるような柔らかなものでもなく、ただ切実な、懇願。
蠢く感覚に、膝が震える。 薄く開いた視線の先。 未だ足りぬとでも言うように、自身が緩く勃ちあがりかけるのに、またきつく下唇を噛んだ。 その視界すらも、じわり、滲む。]
(*11) 2014/12/27(Sat) 14時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/27(Sat) 15時頃
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[厭なのか。 きっとその答えは、是なのだろう。 自らの欲のまま内で受け止めた、他の者の精の後処理をその指に委ねるのが。 止めろという声を、聞き入れられない事が。
そこには決して、「クアトロだから」という個の情報は、入り込まない。 肩越しにかかる声、首はただ、逸らすように俯くのみ。]
……っ、 ひ、 ……ぅ、
[終わったと、肩に触れた声と唇にその声に膝の力は抜ける。 湯に暖められた床に、そのままぺたりと座り込む。 赤い髪を、降り注ぐ雨のような湯が濡らす。]
(*14) 2014/12/27(Sat) 15時半頃
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自分で、……できるって、言っただろ、…… ……お前が、こんな事する必要、何処にもないんだ、
[洗えと、自分が命じたわけでもない。 ただ、初めに架したのは「包帯を変えろ」とただその一言のみの筈。]
……俺が上の人間だから、そんな気を利かせてるってんなら、 そんなの、……要らない、
[片手で掌で顔を覆いながら、水音に紛れぬ程度の声で、呟く。 もう片方の手を足の間に突いたのは、ほぼ無意識に。 少しでも、自身をその視線から隠そうと。]
(*15) 2014/12/27(Sat) 15時半頃
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[終わりを告げる声、力の抜ける身体。 湯に触れる肌、身体の冷えは遠くに思う。
こんな傷のある身では、やはり湯船には入れないだろうけれど。]
いや、いい、……洗う。 ……包帯巻いたら……髪も洗えねぇだろ、
[床に腕をつき、体を支える。
どの道、背で乾きかける赤は落ちきっていないのだ。 これらも全て洗い落とさねば、きっと包帯は巻けないだろう。
振り向く事無く椅子を引き寄せ、腰を下ろす。 石鹸に手を伸ばせば、そっと掌で泡立てていく。]
(32) 2014/12/27(Sat) 15時半頃
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[指先で、そっと泡を立てる。 きめ細やかとは言い難い、荒い泡が掌を滑り落ちる。
背に触れていた湯の流れから庇うかのように、床で冷えたタオルが触れる。 寒いと思う間もなく、触れる体温。]
……ぅ、わ、
[弾みで指から離れた石鹸が床を滑っていくのに、何処か間抜けな声を上げる。]
(40) 2014/12/27(Sat) 16時頃
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……クアトロ?
[声色が、違う。 声色だけではなく、口調すらもか。
腕の力が強くなる。 折れてしまうような華奢さは無いものの、それでも息苦しさはある。 この苦しさは、単に物理的な要員から齎されるものなのか。
命令でもないのに、自らの身を洗い流す理由。 告げられる言葉、眉をきつく寄せて。]
んなこと言われて、……俺に、どうしろっていうんだよ……
[今はまだ、寝台の上、交わした言葉は覚えている。 けれど、一晩、二晩とすぎる内に、あっというまにその記憶は遠のいていくのだ。
自分が誰に抱かれたのか。 正確な人数も数も、全くといっていい程に覚えていないというのに。]
(*19) 2014/12/27(Sat) 16時頃
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[泡の洗い流された掌は、抱きしめる腕にそっと触れる。 この腕の暖かさも、苦しさも。 きっとどこかに忘れてしまう。
ほんの僅かに、傷跡のような違和だけを残して。]
クアトロ、……
[細い声で、名前を呼んだ。]
(*20) 2014/12/27(Sat) 16時頃
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[水音には決して掻き消えぬ距離の中、本当の名と囁く理由。 抱きしめる力は緩まない。 腕に触れた手にその掌が重なるのに、息を呑む。]
……ボリス、
[その音が、口に馴染まないのも当然か。 何時の日からか、彼は自分の中ではクアトロという存在だったのだから。
忘れてもいい。 本当に、忘れてもいいのだろうか。
本当に忘れてもいい言葉を、こんな声音で囁くものなのか。]
………、俺は、
[応える想いを、自分は持っているのだろうか。 忘れ、遠ざかることで自らを守っている、自分に。]
(*23) 2014/12/27(Sat) 17時頃
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……何度も口にしなくても、いい。 俺を愛する必要は、無い。
きっと俺は、また忘れちまうから。 ……そしたら、……お前が、傷つくだけだろ、?
[言葉を、一つ一つ、選びながら。 知らず、腕に触れた掌に力を込める。
忘れられても、何度も、何度でも。 この空間で時間が続く限り、何度も、何度も、永遠に。]
……お前が傷つくことで成り立つ永遠なら、 そっちのほうが、俺は、嫌だ……。
[自分の知らぬところで、深く誰かを傷つける。 そんなことを、喜ばしいと思う者が、何処にいようか。 互いを守ると口にしながらも、それは酷く、独り善がりの思いだ。
―――ならば、他にどうしろと?]
(*24) 2014/12/27(Sat) 17時頃
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……お前が、風邪を引く。 もう、上がろう、……俺、薬飲んでないし。
包帯は、……後で、図書館行くから。 その時、巻いて。
[無理矢理に形作った笑みを浮かべ、微動だにせずとも腕を剥がしにかかったか。 タオルに擦れた赤の跡。 傷の刻まれた背は、未だ赤を滲ませるばかりだ。
腕が離れれば立ち上がり、濡れて重くなったタオルを軽く、絞る。 腰に巻きつけた冷えたタオルというのは、足に張り付きあまり良い心地ではない。]
悪い、……でも、俺も少し、真面目に考えてみるから。 ……お前も、……考えてみて。
[そう告げるのは、真っ直ぐにその瞳を見つめて。]
(45) 2014/12/27(Sat) 17時頃
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[クアトロと、その名の経緯を語る声に、眉を下げる。 何故、その名を名乗るのか。 殺されたのは『俺』だという、ならば今の彼は何者なのか。
馴染みの筈の者だというのに、明かされるの面々は知らぬものばかりだ。 踏み込む勇気は、膨らむ戸惑いに圧倒され、それ以上の言葉は紡げない。
踏み込んだところで、理解者になれるというのか。 またそれも、忘れてしまうかもしれないのに。]
……話なら、 いつでも、聞けるから。
[口にしながら、その言葉が今この場には全くそぐわないものだと思う。 それでも、何かを口にしないと、押し潰されそうだった。]
(*28) 2014/12/27(Sat) 18時半頃
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[了承の返事を得た時、わずか安堵したのは事実だった。 その言葉の裏、真意がどうであれ、言葉という形で示されるのは、有難かった。
傷は、癒えるべきものなのだ。 忘れていい、ものではない。 忘れたところで、傷が無かった事になるわけではない。
そう思うと同時、背の傷がじくりと疼く。
優しいと、自分を称す言葉に首を横に振る。 何度も、何度も、首を横に振って。]
……臆病なだけだ、
[零れた笑い声に、涙が零れそうになる。 けれど、彼が無理矢理にでも笑うのであれば、自分もきっと笑うべきなのだろう。
そうして、作り笑顔を貼り付けて。]
(*29) 2014/12/27(Sat) 18時半頃
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[容易に解けた腕の拘束から離れれば、脱衣所へと真っ直ぐに向かうだろう。
額を軽く叩く掌の調子は、きっと“いつも”と変わらないもの。 触れた名残に、手を添えて。]
……お前が馬鹿なら、俺も馬鹿だよ。
また後で。……早く着替えとけよ。
[笑む瞳に、微か目を細めて返す。 また今度と、その言葉を失う前に、重ねたのは『また後で』。
最も、その“今度”に待ち受けるものが、一体何にかかっているのかは、知らないが。 彼の背を見送れば、乾いたタオルに手を伸ばした。]
(55) 2014/12/27(Sat) 18時半頃
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[『命令』と、『お願い』と。 どちらかを問う声に、返したのは。]
……好きな方を、取ればいいよ。
[そんな、『選択肢』。 傷つきたくないからど、命令することで身を守ることもできたのだろう。 けれど、そちらを提示しなかったのは。]
……っ、
[唇を噛み締めながら、体を拭い、部屋を出た時と同じ服に袖を通す。 酷く時間をかけながら、釦を留めて。
浴場を出たのは、きっと随分後になる。*]
(*30) 2014/12/27(Sat) 18時半頃
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[浴場を出れば、真っ直ぐに図書館へと向かう。 常と同じように包帯を手渡し、上着を脱いで背を晒す。
普段通りに努めようと、その努力は報われたか。
包帯を巻き終え、図書館の扉を抜けて。 部屋へと向かう足取りは、次第に早くなるだろう。 空腹に鳴く腹も、全て抑えこんで、一目散に部屋へと入る。
気付かれなかったドアノブの薬が、戸の閉まる衝撃に静かに揺れた。
部屋の戸が締まり、一人の空間へと隔離される。 もう、誰の目も、気にせずともよい。
そう思うと、堰を切ったように溢れだす涙を止める術はもうなかった。 何のために流された涙なのか、自分にすらよくわからなかった。*]
(56) 2014/12/27(Sat) 18時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2014/12/27(Sat) 18時半頃
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− 翌朝 自室 −
…… っ、 ぅ、 ―――……がは、 ッ
[ベルの音で目が覚めると同時、猛烈な吐き気を堪え切れず、床へと胃の中身を吐き出す。 胃が空だったのが幸いしたか、床へとぶちまけられたのは胃液くらいのものだった。 数度、荒く咳き込んだ後、部屋の隅、埃を被っていた水の瓶の王冠を弾き飛ばした。
結局、いつの間に眠ったのだったか。 床の上で目が醒めた事から考えるに、子供のように泣き疲れてそのまま眠ってしまったと判断するのが正しいのだろう。 普段ならば、ベルの鳴る前に起きているというのに。
シャツが昨晩のままだと気付けば、丸めて其れで床を拭う。 換気のためと窓を開けば、シャツを着替えて部屋を出た。
――― ドアノブの薬には未だ、気付かない。
食堂へと向かう途中、水場で軽く、口を濯いだ。]
(59) 2014/12/27(Sat) 18時半頃
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[渇いていた。 喉が渇いていた。
だから躊躇いなく、口をつけた。 その傷口を歯で、爪で広げて、溢れる血を獣のように啜った。
“友人”はもう抵抗する気力もないのだろう。 否、既にその時死んでいたのか。 死にたくないとその一心で、喉を潤していた自分にはもう、判別がつかず。
月明かりの元でも赤く、ぬめる血液が口を、喉を、胃を満たしていく感触。 血に汚れた顔をふと上げれば、佇む黒髪の男。]
………夢、……?
[ただの、夢なのだろうか。
夢にしては、あまりにも生々しい、その感触。]
(*31) 2014/12/27(Sat) 18時半頃
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