人狼議事


194 花籠遊里

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視点:


【人】 墓荒らし ヘクター

[微笑みの裏から突き刺す一言につい笑ってしまった。>>3:128
微笑を花として取繕うのに、言葉は裏切り、その差異を愛でた。]

 慈善事業を気取る気は更々ねぇよ、
 お前さんが覚えがねぇなら、俺の戯言よ。
 またお綺麗に微笑んで流しゃ良い。

[ただ、手繰り寄せる指先は離さなかった。
咽返りそうな情交の中、真実を晒す金華の前。偽りだらけの花と蝶が視線を交わし、指を強く握りこんだ。]

 ―――だが、聞き流せねぇなら、もう諦めろ。
 
[色に濡れても眼差しの強さ変わらず、引いた指の節へと口付けを落とす。罅が入って、砕けた先を知らない。揺れる心が求めるを知らない。

けれども、やはり、彼の焔に似た髪色は嫌いでなかった。]

 誰に言われず、誰に愛でられず、誰の目にも留まらずとも。
 ――― 造花なんて、寂しい振りするんじゃねぇよ。丁助。

[言葉の最後、そっと彼の節に歯形を残した。*]

(0) 2014/09/21(Sun) 02時半頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[悲鳴が響く、心地の良い悲鳴が。>>3:129

発露を知らぬ蝶の深層を暴き、彼が抱える膿を吐き出させるよう手荒に抱いた。加減を知らぬのは彼の熱に惹かれる所為だ。己はつくづく正直に出来ている。

抱擁を強め、体温を交換し、生まれたままの彼を砕く。
強いられる事に喜びを覚えさせ、喉が嗄れるまで好きよう貪り尽くした。実に満悦なる饗宴であった。

振り乱す金の髪が視界で揺れると、糖度が喉に溜まった。男の支配欲を彼の痴態は癒してくれる。
強請られるままに与えてしまうのは、聊か興に反したが、今更身体が欲以外の言い分を聞く訳もなし。囀りに誘われたと、胸内で誰にともなく言い訳を並べたてた。

溺れてしまえば良い、沼に足を取られ、沈んでしまえば良い。
そんな夢想を抱くほど、壊れて行く蝶の美しさは筆舌し難く、どろりと溶け合い境界線を見失う。>>3:130

彼は漸く、彼自身を捕まえたように見えた。
喉を滑り落ちる甘い呼気。

もう一つ飴をやる変わりに、彼の痩躯を抱きしめた。]

(1) 2014/09/21(Sun) 02時半頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[結局、その夜は驕傲の限りを尽くした。

捕まえた金華の中に幾度も精を注ぎ込み、彼の腹内を重く温め。
涙も声も最後一滴まで味わい、関節を軋ませ、愉悦に浸る。
翌日は如何様な顔をして逢うかなどという無粋は考えなかった。
金華の側面暴いたとしても、彼の備える無邪気な傲慢さは変わらないだろう。
一歩自己の理解を深める背を押したに過ぎない。


けれど、人の体温はやはり、一時の充足を呼んでくれた。

一夜の戯れだと知っていても、夜は折り重なって出来ている。
子種を塗りこめるように放った果ては、深い夜に紛れて濡れた。


――――積み重なる深い夜は、*いつも己に夢を見せる。*]

(2) 2014/09/21(Sun) 02時半頃

墓荒らし ヘクターは、メモを貼った。

2014/09/21(Sun) 02時半頃


墓荒らし ヘクターは、メモを貼った。

2014/09/21(Sun) 11時頃


【人】 墓荒らし ヘクター

― ??? ―

[その日は青い空に虹が掛かっていた。

男はその架け橋を区切られた窓から見ていた。秋風は生い茂る木々を分け、空を広げて久しい。

昨夜、金華を暴き、紅華を揶揄った。
夜に舞う夜蛾の一面、朝に戻る人の一面。
どちらも己のもので、金華に告げた本質云々は単なる経験談。
ギシ、と革張りの椅子に背を任せて軋ませる。

得体知れぬと花街で噂の男は、夜の世界に現界する常のだらしない姿ではなく、仕立ての良い黒のスーツに身を包んでいた。
己の前には重厚な執務机が飴色の輝きを放っている。]

 ―――籠の中と、外の違い。
 花と蝶の違い、ね。

[独り言をぷかりと漏らす。
日差しの中で橙灯色の髪を揺らし、耳にノックの音が届く。
入室の許可を出せば、眼鏡を掛けた背の高い男が書類を抱えて入ってきた。]

(11) 2014/09/21(Sun) 15時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[すらすらと本日の予定を告げる音階聞き流しながら、男は足と指を組み合わせ、緩慢な瞬きで瞳を洗った。
秘書めく男は揺れぬ口調で言葉を吐き出すも、最後で言い淀むように数秒の沈黙を挟んだ。

されど、意を決したように「それから…」と、漸く口火を切った。]

 「やはり一度本国へお戻りください、」

[張り詰めた声にも男の顔は動かない。
ただ、区切られた窓の向こうに視線を伸ばしたまま。]



 「エクトゥール・エトワル・ダルジャン参事官。」



[陽下で生きる名を呼ばれ、隣国示す徽章が鈍く輝いた。*]

(12) 2014/09/21(Sun) 15時頃

墓荒らし ヘクターは、メモを貼った。

2014/09/21(Sun) 15時頃


【人】 墓荒らし ヘクター

― 来館遊里 ―

[その日の男は珍しい風体であった。

いつも夜更けにしか訪れぬ癖、今日は黄昏に近い宵に訪れた。
いつも横着げにシャツを引っ掛けている癖、今日は漆黒に染まるスーツを着こなす。腕に下げたロングコートは秋の深まりを示し、緩めすぎたネクタイと第三釦まで開けた喉元を除けば、常と180度は違う印象。
相変わらず派手な悪人面と耳に穿った飾りは変わらぬが、花主の揶揄を誘うには十分だったらしい。>>4>>5]

 俺の一存で刈れるほど可愛い気のある櫻じゃあるめぇ。
 それとも根こそぎ倒すかね、そいつぁ庭が寂しくならぁな。

[はは、と気のない笑い声で花主の傍を通り抜け。
程なく歩けば、己は中庭で土を弄る後頭部を見つけた。>>9
回廊の窓から覗く彼の姿は、同じ視座に合って内と外とで別たれている。>>10]

 そいつをお前さんが謳うには、10年ほど早くねぇかね。

[窓枠に五指を掛け、身を僅かに乗り出しつつ。
今宵も迫る夜と共に、彼に茶化して語りかけた。]

(13) 2014/09/21(Sun) 15時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[庭に埋められたのは、花の欠片か。>>14
彼はこの廓に永い花。過ぎ去っていく蝶も、枯れていく花も飽くほど見ているだろうに、丁寧な埋葬は、彼の大切なものを埋めたように思えた。櫻の下には確かに花の亡骸が埋まっているのかもしれない。]

 そいうや、見てねぇな。
 色恋に溺れて世でも儚んだかね。

[彼の歌を思えば、口から出るのは碌でもない予想。
自然と窓枠に自重を掛けて、上体を折り曲げつつ、腕を組んだ。]

 ちと明日は朝が早ぇんだよ。
 アパルトマンも払っちまったから、屋根を借りれりゃ良い。

[上背に合わせてオーダーされた生地は上等で、彼らを買い求める貴族のそれとも、高級娼館の案内役とも違う意匠の黒衣。
二次性徴の終わりを抜け出せぬような童顔に鼻を鳴らし、既に首に下がるだけのネクタイを更に引いて寛げる。

夜に馴染んだ香でなく、今宵の男が纏うのは外の匂い。
己の言葉が示すのは昼の顔。彼の知らない世界の話。]

(19) 2014/09/21(Sun) 16時半頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[世間話のように繰り広げる中、不意の気配に視線を起こす。
人目が増えてくる頃合に、花を独占していれば衆目も集めよう。
だが、男が察したのは覚えのある気配。

昨夜、とろりと馴染んで溶けた、金華の気配。]

(20) 2014/09/21(Sun) 16時半頃

【人】 墓荒らし ヘクター

 縁起悪ぃな。

[七色の光が終わる先を己は見たことがない。>>21
天の門を潜るのだと一般的には言われるが、御伽噺のような絵空事は信じていない。
ただ、甘い蜜の夢より価値ある大切なものを見つけたのだろう。と、月輝と月下蝶が脳裏にゆらりと立ち込め消えた。]

 未練がましく土いじりなんてするんじゃねぇよ。
 お前さんは何時から墓守の真似事を始めたってぇのか。

[何のために此処から抜け出したかは、考えるまでもない。
だが、目の前の彼はいつも見送る立場らしい。
中庭の繁栄も、長きに渡る彼の管理の賜物だろう。

何処にもいけない櫻樹は、ずっとこの花籠に咲く。]

(24) 2014/09/21(Sun) 17時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

 ――…まぁ、粗方毟っちまったからな。
 名無しの黒子の渋顔は悪くねぇが。

[己の悪行三昧は口にせずとも、想像付く範疇。
昨夜も蝶を一頭、花を一輪、地下の深みに引きずり込んでいる。
己の顎鬚をざらりとなぞってから、閃いたように口を開いた。

夜色の双眸に、悪趣味なる笑気の顔を映して。>>22]

 金を落とさねぇ蝶に貸す枕はねぇってんなら、
 櫻の小枝でもへし折って枕元に挿しておくさ。

[やはり今日も、夜蛾は性質が悪い。]

(25) 2014/09/21(Sun) 17時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[ガサと揺れた茂みに音なく笑い、彼の影も手招こうか。>>23
ついでに、腰は無事かい。と揶揄を飛ばし、嗄れた喉から搾り出される声を清澄するよう、耳を傾けた。**]

(26) 2014/09/21(Sun) 17時頃

墓荒らし ヘクターは、メモを貼った。

2014/09/21(Sun) 17時頃


墓荒らし ヘクターは、メモを貼った。

2014/09/21(Sun) 20時頃


【人】 墓荒らし ヘクター

[昼の世界に馴染み、彼を暴いた指先で日常を送る。
黙っていれば、軽薄な悪人面も多少緩和されるが、昨夜を知る身には難しいだろうか。しかし、男は常と変わらず指先を閃かせ、ニコラスを迎えた。>>23]

 花に貢物とはお前さんも隅に置けねぇな。
 
[へぇ、と呼気を漏らして彼の目的を知れば、数泊の間を空け視線を流し>>27]

(37) 2014/09/21(Sun) 20時半頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[そうして、櫻より後半濁された言葉は、蝶たる己は知らぬ世界。
或いは途切れさせた彼にも、知らぬ先か。

花を植えて、朽ちた葉を払い、残った種で次の四季を越える。
輪廻を手繰る彼は、この庭園を作り上げたのだろう。
まるで大樹が木陰を作り、花々を慰めるように。
―――――或いは、弔うように。>>28]

 なら、いつも墓守代わりか。
 景気の悪りぃ話だな。

[片手で己の短い髪を掻いて、僅かに顎を引く。
彼の口ほどの物を言う眼差しを頬に感じると、軽い瞬きを挟み。沈黙を一拍。>>29]

(39) 2014/09/21(Sun) 20時半頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[何事か口を開こうとした矢先、櫻が揺れるのは金華に誘われ。>>30
失墜した言葉は口腔の内に仕舞いこみ、察した花の聡さに弁明せず無言の肯定として肩を竦めて見せた。]

 俺はともあれ、座敷代を払って、
 態々、茶飲みに来るというのも、酔狂なことよな。

[夜の茶会が、無聊の慰めとして成り立つ事は知っていたが、花と蝶の立場弁える身には縁遠い話。されど、水が此方に向けられれば、また指先で蟀谷辺りを引っ掻いた。>>31>>33]

 幼子で在るまいし、いらねぇよ。
 茶なら一杯貰おうかね。毒入りでねぇなら。

[気の良い蝶の傍ら、夜蛾は平時と違わず櫻花に揶揄を降らせた。]

(40) 2014/09/21(Sun) 21時頃

【人】 墓荒らし ヘクター


 ―――…だらしねぇ顔をしやがんなよ。
 誑かされているようだぜ。

[悪い夜蛾は彼の善意を打って算え、皮肉な笑みを乗せる。>>43
甘味は櫻樹が重ねる小さなしあわせの素の一つ。
それを与えるニコラスは良き蝶だろう。

ふむ、と吐息を一つ漏らすと、続いた言葉には首肯を浅く。>>44]

 お前さんとはこの先、そんな巡り合せもあろうかね。
 ―――…最後の晩餐には程遠いが……、

[そんな夜も悪くない、と、珍しく殊勝な心地で、相席を申し出ようとしたその時。差し挟まれる声が己の思考を止めた。]

(48) 2014/09/21(Sun) 22時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

 ――――…、

[不意に飛び出た彼の告げる架空の毒害計画。>>45
企てる花は毒を持ち得ぬ種だが、男は重い半分ほど降ろし。

口から出てこなかった言葉と、彼の告げなかった言葉が水面下でぶつかった気がした。]

 ……いや、やはり止めておこうや。
 何処に隠し持っているか知れねぇ。

[興が削げたとばかりに、片腕に下げたコートを揺らめかせ、中庭を覗いていた窓辺より別離。嬉々として仲睦まじい彼ら二人を残し、夜蛾の鱗粉撒き散らしつつ。

ただ、スーツに包まれた片腕を持ち上げれば、櫻子へと「枕を借りるぜ。」と端的な言葉を届けた。
謎かけめいたその言葉を彼が理解するのは、花主に召喚される時か。



今宵、夜蛾に櫻梢が買われたと、伝わるその時か。**]

(49) 2014/09/21(Sun) 22時頃

墓荒らし ヘクターは、メモを貼った。

2014/09/21(Sun) 22時頃


【人】 墓荒らし ヘクター

[早々に談笑を切り上げてしまうと、
男はその足で、迷わず花主の下へ向かった。
中庭に残した二人を振り返ることもなく、秋風渡る回廊を闊歩。

冷たい夜気は、人肌を求めさせるには良い塩梅。
されど、余り誰かを抱く気に慣れなかったのは、
外装で花籠に訪れてしまった為か。
謎掛け言葉を櫻子に飛ばしたものの、
買うてやろうか、やろまいか。と、茶化して、
別の花を選んだ事など幾らもある。

揶揄の対象にはなるが、同衾の対象にはならない。
まるで花としての彼を評価しないとでも言いたげな態度は、
廓を寄る辺とする彼を深く苛んだだろう。

男が花籠に訪れ、数ヶ月。
ずっと櫻の咲き方を、言葉で態度で、否定し続けてきた。]

(82) 2014/09/22(Mon) 22時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[されど、今宵、花主に申し付けたのは一輪ではなく梢であった。
切花でなく花籠に深く根を下ろし、毎年同じ場所で咲く櫻。

彼の苦労など知らず、彼のしあわせなど知らず。
ただ、巡りあわせを引き寄せる。

それは蝶の遊泳でなく、それは夜蛾の誘引でなく、人の業。
覚めない夢でも、一時の幻でもなく、確かなる現実であった。]

 ……へぇ、とうとう枝切りねぇ。
 まぁ、聞けば永く居たものじゃねぇか。
 

(84) 2014/09/22(Mon) 22時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

 もうちと稼げる気もするが、お前さんの商いは
 肝心なところで法を抜けやがるからな。
 今後とも精進潔斎してくれっと在り難てぇ。

 ―――…此処は仕事で来るところじゃねぇよ。

[花主と馴染み然として交わす言葉は、
肝心な言葉を避けて深入りせず、小さく笑んで金子を放る。
選別代わりと少し多めに包んだが、オマケとばかりに
櫻には未だ告げていないとを教えてくれた。>>67>>68

男は指先に落とした視線はそのままに、
ふぅん。と気のない相槌で取り繕った。*]

(85) 2014/09/22(Mon) 22時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

― 最後の地下牢 ―

[連日連夜の遊戯も今日でお終い。

コートを皺にならぬよう、安楽椅子の背に下げ、
ネクタイは捨てなかったが、背広の釦を全て外してしまった。
着慣れない訳でも、格式ばった装いを厭っているわけでもない。ただ、この花籠と乖離するようで、居心地が悪かった。]

 ―――……、……遅せぇな。
 これで、香でも焚いて居たと言えりゃ立派なもんだが。

 ま、駄々でも捏ねていような。

[どっかりと牀榻に腰を落ち着け、背筋を伸ばす。

最中に、想像に易い押し問答を口にしてみるも、
茶々を入れに赴く事も、面倒くさいと寝てしまうことも、
煩わしいと余所の花に浮つく事もなかった。>>70>>71]

(86) 2014/09/22(Mon) 22時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[彼が来ないというなら、それはそれでも構わなかった。
だが、思考に反し、必ず来るだろうと予想を立てていた。

彼にとって此処は花籠、己は蝶。
そして何より、彼は花。

必ず、訪れるだろうと踏んでいた。
あの寒々しいほど白い衣を身に着けて。]

(87) 2014/09/22(Mon) 22時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[そして、彼は己の予想通り、花として牢へと降り立った。
黒衣を纏う男は、膝に前腕を乗せて、足の合間で指を組む。
ふらりふらりと舞い遊ぶ蝶でなく、悪辣な夜蛾でなく。

人として、得体の知れぬ男が、彼を待っていた。>>72]

 ―――…年がら年中咲いている櫻が、青天の霹靂語るなよ。
 
[口を開いて最初に飛ばすのは、相変わらずの減らず口。
彼が己に抱く苦手意識は、こうして直ぐに
真実をはぐらかしてしまう所にあるのかもしれない。

お前さんの慰めなど要らない。

―――と、突っぱねる強さがいつも言葉の裏に隠れていた。]

(89) 2014/09/22(Mon) 22時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

 言っただろうや、今宵は屋根を借りにきたと。
 そうも不満げな顔をするんじゃねぇよ。

[安宿なら花街以前に幾らもあって、彼を買うだけの金があれば、
コンシェルジュ付きのホテルとて宿泊できる。
しかし、そんな事実を世間知らずの彼は知らぬだろう。

この廓が櫻にとっては全てなのだ。]

 ……それとも―――、

[ひょいと、持ち上げた瞳が彼の夜色の瞳を覗きこむ。

明けない夜など無いと知っている。
けれど、彼の瞳は永劫続く常夜に似ていた。
明けない夜はないけれど、咲かぬ花はあるとでも言うように。]

(90) 2014/09/22(Mon) 22時頃

【人】 墓荒らし ヘクター


 俺に抱かれたかいね、櫻子よ。


[せせら笑う悪辣な顔。
ひらりと櫻の香を掻き混ぜる右手。

歪んだ唇から吐き出す言葉は、また、彼を傷つける。*]

(91) 2014/09/22(Mon) 22時頃

墓荒らし ヘクターは、メモを貼った。

2014/09/22(Mon) 22時頃


【人】 墓荒らし ヘクター

 それも今宵で最後よ。
 ―――…俺は外に、もっと遠くに帰らにゃならん。

[駄々の余韻を残す彼へ、事も無げに明日からの不在を伝えた。
また一人の男が彼の傍を通り過ぎて、花籠に櫻を残す。>>103

降り積もる櫻の花弁は柔らかで、花籠の底を隠す。
誰かの為に咲き、誰かの手で散らされ、誰のものにもならず。

堪えるような顔を双眸に映して、細い吐息を唇より漏らした。]

 酷い酷いと口ほどに物言う癖に、ちっとも泣かねぇな。
 本当に一滴たりとも―――…、
 

(109) 2014/09/23(Tue) 01時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

 お前さん、櫻の為に泣いてやらねぇな。
 
[寂しいとき、苦しいとき、哀しいとき、辛いとき。
自らの為に流す一滴を彼は知らない。>>105
憂いのない生など、どれ程美しく咲く花にもありはしない。

では、彼が流さなかった涙は何処へ行ったのか。
櫻の下に埋まっているのは死体じゃない、
きっと彼が沢山捨てたものが海を作って沈んでいる。]

(110) 2014/09/23(Tue) 01時頃

【人】 墓荒らし ヘクター

 庭に咲いた櫻の香りが欲しいわけじゃねぇ。
 お前さんの慰めが欲しいわけじゃねぇ。

[きっぱりと彼の問いに一声を返す。
誘ったくせに、寸でのところで心を突き放し。>>108

代わりに持ち上げた腕は、彼の腕を引いた。
五指で余る細い手首は長年を掛けて作られてきた花の造形。
引力は彼の痩躯を支配し、傾斜させる腕力が強く。]

 ―――…眼くらい閉じろよ、色気のねぇ。

[囁く声は少し冷たく、触れた唇は少し熱い。
人には注文つける癖、己は瞼を下ろさなかった。

花としてでなく、蝶としてでなく。
櫻を愛でる心地でなく、蜜に誘われる欲でなく。


ただ、そっと櫻より生まれた子の唇を吸った。*]

(113) 2014/09/23(Tue) 01時半頃

【人】 墓荒らし ヘクター

[約束など花籠では、一時の夜より脆いもの。
また来るよと告げて、彼の前から姿を消した蝶はどれ程いたか。
少しお暇を頂きますと去った花は何処で枯れてしまったのか。

彼はそんな多くのものを中庭に埋め、
墓標の代わりに花を育て、慈雨の代わりに涙を捧げた。
彼の苦労も悲しみも、全く以って想像の外。]

 ―――…お前さんが花でなくなったなら。
 遠く、遠くへ、来な。

 物知らずには丁度いい道中よ。

[重ね合わせた唇から注ぐ声は静かで、喉に流し込んでいく。
引き寄せた彼の手に握らせたのは、輝く徽章。

隣国示すエンブレム、遠いシンボル。
裏に刻まれた己の本当の名前。]

(118) 2014/09/23(Tue) 02時頃

【人】 墓荒らし ヘクター


 ――…花でなくなったら、

[その時は。と飲み込んだ言葉。
続きは啄ばむ口付けに紛れさせ、夜に溶かした。

彼が自分の為に泣けるようになったのなら。
寂しい事を寂しいと、哀しい事を哀しいと。
死体を埋葬するように、中庭に蹲ることがなくなるのなら。*]

(119) 2014/09/23(Tue) 02時頃

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