223 豊葦原の花祭
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[顔が寄せられ、狐面の一枚隔てて、柔く頬を包まれる。蝶が明滅する。 離した鞠はてん、てん、てんと、数度跳ねて転がって、桜樹の根に受け止められる]
てまり… 手鞠、あなたの名前
[てんてん、てんまり、てまりうた。 元の名前は何だったのだろう。聞けば教えてくれるものだろうか、名前を、それを与えてくれたひととの記憶を。断られればそれも良し、新たな記憶を積み上げる──] [嗚呼] [こんっ、こん]
ねがいごと、口にして も [こん] [げほっ ごほ] 叶わないのが苦しくなって、辛かった
[かかさまも、ととさまも、そして何より己が、一番苦しんだ。春の暁光を夢見て涙し、冬の静寂を疎んで眠った。 湧き上がる諦念に蓋をして、夢の世界に救いを求めた]
(5) innage_enzyu 2015/04/22(Wed) 10時頃
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こんな、こんなもの、きらい 狐も、病気も、いや [ひゅう] [げほ、げほ] 学校へ行きたいの お外で遊びたいの [ごほ、けほ] [お狐様なんかじゃないから] [怖いもの、苦しいもの、両の手で収まらぬ程ある。 側から見れば支離滅裂であろう、拙い言葉で切な願いを吐き出す。 頬に伝うは零れた涙、繰り返される咳と共に、口から溢れ喉伝うは何か] [嗚呼、贅沢は言わない、せめてもうひととせ、四季が一巡りする間の命を。結びの言葉は、どうしても口に出来なかった]
(6) innage_enzyu 2015/04/22(Wed) 10時頃
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[目前で猛った風に首を引く。 半ば閉じつつ薄目の先、おさなごが娘に姿を変える様がうつって、眼前でいとも容易く行われた奇跡に呼吸も忘れて見入る]
わたし、あなたに何を返せるかわからない …から、大事に 大事にするよ 与えてもらったもの もちろん、あなたのことも
[濡れた喉から、はらはらと散る花弁に混ざるように、赤色が剥がれ消えてゆく。 胸の中で炎が揺らぐたび、腕に、足に、頬に、血色が戻る]
[折角お揃いだけれど、もうこれも必要無い。 耳裏で結わえた紐を、解いて]
ありがとう、手毬
[わたしの、初めてのお友達] [外れた面の下、桜樹のもとにて つひに曝したるは、大輪の咲み]
(43) innage_enzyu 2015/04/23(Thu) 18時頃
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