194 花籠遊里
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/15(Mon) 00時半頃
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── 先刻のこと、廊下 ──
[それは地下へと誘われたみなさまよりも、幾らかの時を遡った時の事でございます。 こちらに一歩と歩を進めた亀吉さんが>>279 随分と可笑しなことを>>280おっしゃるものだから。]
もうお逢いしているでしょう? 面白いことを仰るのだから。
[ころころと微笑を返したでしょうか。 お傍に居られたベルさまに、秘め事が何たるやと問われたならば>>283]
秘め事は、秘め事にございます。 みすてりあす、でしょう?
[なんて冗句も、ベルさまが本気で踏み込むでないと 笑われたお顔から受け取っていたからにございます。]
(77) 2014/09/15(Mon) 01時半頃
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── 先刻のこと、広間 ──
[そして広間に着き、お茶の準備をいたしまして。 捲る頁彩る、異国の綴りし呪いの言葉に 微かに悲哀滲ませる射干玉を落としていた頃にございます。]
亀吉さん、お早かったようですね。 ベルさまとはお喋り出来ましたか?
[僕の名を呼ぶ声に振り返れば>>25 淡藤の花が隣へと、そっと腰掛けておりました。 心配を掛けてしまったのでしょう。 声にも表情にも、そんな気配を窺えて 僕は亀吉さんへと、微笑み返したのでございます。]
さあ、お勉強に致しましょうか。
[開きましたのは、先程とは別の頁。 さて、綴られていた異国の言葉はどういった意味であったでしょう。]
(80) 2014/09/15(Mon) 01時半頃
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[そこから先の事は、赤き蝋燭の焔くゆる窓辺に 慕情のように、綴らせて頂く事にいたしましょう。
穏やかな一時は、それはそれは 僕にとってもかけがえのない、優しげな刻であるのです。 故に、移ろい行くのも早く。 気付けば時計は重い音を、響かせていたようでございます。
重厚な扉閉まる音と、日付を変える鐘の音。
やがてこの身に告げられるのは ひとひらの月光蝶が、櫻の夢を所望したと>>42 名残惜しげに本を閉じる音が、広間へ小さく落ちたように思います>>45]
ええ、お気遣いありがとう。 亀吉さんも、お風邪など召されないでくださいね?
[その去り際に浮かべた表情知るは 亀吉さんと、姿映す赤き窓辺のみにございます。]
(83) 2014/09/15(Mon) 02時頃
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[今宵は月夜を溶かし、小鳥囀る空の眸持つ蝶が 僕をお買い付けになられたのだと聞きました。 また逢おう、と告げてくださった>>42 それを叶えて下さる優しさに、顔は綻ぶばかりでありました。
これを『しあわせ』と謂わずして、何を『しあわせ』と謳うのでしょう?
僕はこの籠に咲く『花』であるのです。 そういった『仕合わせ』であるのです。]
甘き夢を。
[呟き落ちること、ただ一つ。 何にも染まらぬ白を身に纏い、髪結いのリボンも白に変え。 深き欲の園へと、僕は囚われに行くのでした。]
(86) 2014/09/15(Mon) 02時頃
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それが僕の『しあわせ』なのです。
(*7) 2014/09/15(Mon) 02時頃
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── 今の時、地下牢 ──
ベルさま、お待たせしてしまいました。
[櫻の精は白を纏いて訪れました。 他の花と違うのは、それが女性の着るそれであると謂うことでしょうか。 何時もの櫻色のリボンはなく、純白に身を包む姿。 想像されていることなど終ぞ知らず>>55 僕は一度だけ、奥の丸窓に視線を向けたのでございます。]
またお逢いできて、とても嬉しく思います。
[視線をベルさまへと戻せば、花弁舞うように表情を綻ばせ。 ゆっくりと彼へ、近づいたのでありました*]
(88) 2014/09/15(Mon) 02時頃
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[窓に映るは、薄明かり。 蝋燭のくゆる姿に、今暫く時を遡ることを どうか、お許し頂ければと思います。]
(*8) 2014/09/15(Mon) 02時頃
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── 広間での刻 ──
[亀吉さんが隣に腰掛けて下さった時のことにございます。 振り返り、微笑み返した表情は>>80 何時ものように、微笑ましいそれではなかったのです。
書物綴る呪いの言葉に、僕は大切な人を思い出しておりました。
勉強にと開きましたのは別の頁でありました。 けれど僕はふと、問わずに居られなかったのです。]
亀吉さん。 あなたには、『特別な御方』は居られますか?
[違う異国の言葉を射干玉に移しながら。 僕は先程の言葉を心に返していたのでございます。]
(*9) 2014/09/15(Mon) 02時半頃
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‘Tis better to have loved and lost
than never to have loved at all.
[流暢に唇が、呪いの言葉を紡ぎます。 その意味は亀吉さんには判らないでしょう。 それを教えて差し上げるための、この時間に 僕は、訊かずしていられなかったのです。]
(*10) 2014/09/15(Mon) 02時半頃
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───亀吉さんは『しあわせ』ですか?
[下がる眉が寂しげに。 揺れそうな射干玉が、亀吉さんを見詰めていたのでありました。]
(*11) 2014/09/15(Mon) 02時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/15(Mon) 02時半頃
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[僕の突然の問いはきっと亀吉さんを困らせていたことでしょう。 『特別』を鸚鵡返しする声をききました>>*13 籠らせてしまった挙げ句、それでも亀吉さんは言の葉に思いを乗せてくれたように思います。
「誰かを特別に思い、思われることは…。果たして本当に幸せ、なのでしょうか。」>>*14
僕はこのとき、とても寂しい顔をしてしまったように思います。]
(*15) 2014/09/15(Mon) 03時半頃
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僕にも、判りません。 愛がどんなものであるのか、などと。
[『花』には必要のないものなのです。 僕たちは愛し、愛されるのではありません。 『蝶』を惑わせ、誘惑し、休ませ、慈しみ、夢を魅せる。 ですから僕には到底、判らぬのです。
「真実の愛は朽ちることがない」>>94などと。 判るはずがないのです。]
(*16) 2014/09/15(Mon) 03時半頃
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[僕の手に、ゆっくりと重なる手がありました>>*14 嫌がる素振りも、戸惑うこともありませんでした。 僕はその手に手を重ね、ゆるりと此方側へ引いたのでございます。
身長の差のせいでしょう。 いえ、元からそうしようと思ってだったのかもしれません。 僕は亀吉さんの手を引く反動にて、彼の胸元へとその身を預けたのでございます。
射干玉は酷く哀しげな色をして、見上げておりました。 揺れ揺らぎはすれども、雫が落つることはやはりなかったのでございます。]
(*17) 2014/09/15(Mon) 04時頃
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僕の『先生』は、愛など要らぬと僕に教え。 懇意の蝶の毒牙にかかり。 『特別』を知り、『愛』の中に、なく、なられたのです。
[この廓でその毒にかかるとどうなるか。 『花』は聞かされずとも、みなが感じ取っているでしょう。 僕は、僕を厳しく優しく育ててくれたその『花』の末路をしっております。 だからこそ、僕は凛とした『櫻の花』であろうとしているというのに。]
それを、少し思い出して…。 辛かったのです。
[『しあわせ』ですか、という問いに『いいえ』と答えたその人に。 僕は遠慮もなく、きゅうと抱きついていたのでございました。]
(*18) 2014/09/15(Mon) 04時頃
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特別など、あってはならぬのです。
『花』は蝶を選んではなりません。 『花』は翅がほしいと願ってはなりません。
何方かを好いても 何方をも嫌っても
けっして、ならぬのですよ。
[まるで言い聞かせるように零れた言の葉。 嗚呼、また気遣って喋らせてしまうでしょうか>>93 あのときの複雑に曇った笑顔の奥底を知らず。 僕は暫く、亀吉さんの胸に身体を預けていたのでございます**]
(*19) 2014/09/15(Mon) 04時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/15(Mon) 04時頃
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[僕の言葉に、亀吉さんの表情は細やかながらも変化を見せるようでありました。 寂しげな表情には、目を泳がせておられましたし>>*20 紡いだ言葉には、瞼が閉じられてしまったのです。
「…そういうことにしておきましょう。」
亀吉さんの選んだ言の葉に、半分は救われた気がしました。 ですが残り半分は? 詰まる思いを胸に押し込み、僕は身を寄せたのでございます。]
(*24) 2014/09/15(Mon) 09時半頃
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[とん、と。 一度胸元に添えることを許された頭は、そっと微かな音を立てました。 亀吉さんという御方は、とてもお優しい方です。 何も謂わずに突然と身を預けた僕のことを責めることもなく 享受し、果てはその指で頬を撫でてまで下さるのです。 涙など枯れ果てた、可愛いげのない櫻の枝葉を 淡藤の蔓が、柔らかく撫ぜてゆきました。 落ちることも、流れることもない朝露。 その色も、その味も、僕自身とて知ることなどないのです。
亀吉さんの手が、僕の肩へと回るのならば 僕はまるでそれが自然であるかのように、身体を彼へと擦り寄せました。 眸同じく射干玉の髪を梳く手に、吐息を溢したのでございます。]
(*25) 2014/09/15(Mon) 10時頃
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[暫くは、流れるだけの時をまるで止めるようにして 『花』が『花』へと、寄り添いあっていたのでございます。 髪を梳く指先、伸ばした艶やかなその毛先が着物に擦れ 長い睫毛が、上と下とで合わさる音だけが ただ、止められぬ時の移ろいの中で 微かに響いていたのでございます。]
……、…ありがとうございます。
[やがてはそんな穏やかで、どこか寂しげな時も終わりを迎えねばなりません。 このままでいられたらと、我儘を口にしてしまうよりも前に 僕は寄せていた身を、緩やかに離しました。]
(*26) 2014/09/15(Mon) 10時頃
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あなたは、とても聡明な『花』。 朧さんからは振舞いや、花たるそのお心を。 僕からは読み書きや、言の葉に乗せられる想いを。 きっと藤之助さんからは、柔らかなお心遣いを。 きっと丁助さんからは、その面に浮かべる笑みを。 こんなにも『先生』が居てくれるのですから、とても美しく咲き誇れるでしょう。
『花』として、あなたと巡り会えたこの『仕合せ』を 僕は本当に『しあわせ』に思います。
[離れを惜しみ、僕は彼を象徴する淡藤に細い指先を伸ばしました。 慈しむように撫で、僕は背を伸ばし。 薄い櫻色の唇で触れることは、許されたでしょうか。 許されたならばその髪に、そっとやわらかな感触が音もなく触れたことでしょう。]
(*27) 2014/09/15(Mon) 10時半頃
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今日は、あまりしっかりとお勉強が出来ませんでしたね。
[身体を離してからは、そんなことを紡ぎました。 ふふっと笑みを溢す表情と、異国の呪いへと落とした表情とは明らかに違う いつもの朗らかな微笑みを、彼に向けていたのでございます。]
時間のある時だなんて、寂しいことを仰るのですか? 僕はいつでも、此処におります。 居なければ書斎、居なければ中庭。
「お会いしたかったので、会いに来ました。」
また、そう謂って下さい。
[繰り返すは、意趣返しに溢された言葉でありました。 ありがとうございますともう一度告げたのならば 僕は小さく頭を下げて、彼を上目に見つめた後に その場を離れたのでございます**]
(*28) 2014/09/15(Mon) 10時半頃
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── 地下牢 ──
[赤き灯揺らめく窓辺にて、遡る時の移ろいが今の時へ帰る頃。 僕はベルさまに抱擁され、頬に擽ったい感触を感じておりました。 それはこの牢獄の中には珍しく、まるで幼児に施す挨拶のようでもあり ですから僕は一度目を丸くして、くすくすと笑ってしまったのでございます。]
ええ…、ありがとうございます。
[「可愛いね!」>>97 そんな風に誉めていただけたことにも、そしてこうして逢瀬の時をいただけたことへも。 ふわりと笑めば、ベルさまの細くなった眸と同じようになったことでしょう。]
決まり事なのです。 何色にも染まっていない『花』に、あなたさまという色をつけていただくための。
[薄い櫻色のそれではなく、真白なリボンを揺らめかせ。 僕はベルさまを見つめていたのでございます。]
(100) 2014/09/15(Mon) 11時頃
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[この御方のように、優しげな笑みなど浮かべない 高慢で傲慢なひとひらが、僕の脳裏をよぎっても。
ひとつ、落とす言の葉は音になどなるはずもないのです。]
(*29) 2014/09/15(Mon) 11時頃
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[そしてベルさまの呟く言葉には、一度ならず二度までも目を丸くすることになったでしょうか。 亀吉さんに訪ねたというお話と、同じ言葉が僕にも降り注いだのでありました。]
亀吉さんならきっと、優しくベルさまとの閨を努めると思いますが まだまだ咲き始めの淡藤です、不慣れなこともあるでしょう。 もしその時がこられた時には、怒らず叱らずいてあげてください。
[先輩風を吹かせるようにして、ひとつめにはそう答えます。 望む通りの一夜になるかはわからずとも。 艶やかな夢を魅せるため、きっと『花』の努めは果たすことでしょう。]
(101) 2014/09/15(Mon) 11時半頃
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[そして僕は二つ目の答えを示すべく、ベルさまを見上げるのでございます。 冗句だと仰って微笑むお顔はとても端正で、『花』よりも『花』らしい見映えをしておられました。
僕は白い袖から指を伸ばし、そうとベルさまの背へと回しました。
身を寄せ、添えた指先が彼の衣服へと緩やかな波をうたせます。 柔らかな弱い力で、きゅうとその身を包んで差し上げるのでした。]
僕を買われる方は、抱きたいと仰る方しかおりませんでした。 ですので、僕に出来ることはベルさまを このように『抱いて』差し上げることくらいです。
[包みこむように、小さな体がベルさまを抱き締めます。 そして上目に見上げた後に、何かを強請るような表情で いかがですかと小首を傾げて見せたのでした**]
(102) 2014/09/15(Mon) 11時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/15(Mon) 12時頃
看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/15(Mon) 20時頃
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花は水を吸い上げて、その色を映すのだとききました。 『ベル』さまに注いでいただけたなら、きっと。
[始めにお逢いした時に告げたように、あなたさまは美しいのだと言外に含みましょう。 僕は何色にも染まる白い櫻。 甘い蜂蜜を垂らせば、そのように>>103
丸くした射干玉を眺めて、ベルさまは不思議な咳払いをなさいました。 僕はなにか、変なお願い事でもしてしまったのでしょうか? 予期せぬ反応に、彼の背中へと回した指先は きゅう、…と打つ波を更に漣へと変えたのです。
それでも僕の顔を覗き込む、淡いお色をした眸に 僕が映りこんでいたなら、短い安堵の吐息を溢し微笑み返すのでありました。]
(123) 2014/09/15(Mon) 21時頃
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いいえ。 僕は、お望みに応えられたでしょうか…?
[謝る言葉に>>104僕は微かに首を振ります。 そして伸びてきた指先はまるで蝶の触角。 片腕が僕の腰を抱き寄せるなら、引かれるままになりましょう。 まるで時が止まります。 止まるからこそ、他の牢から漏れ出る享楽に満ちた声など 聴こえ、聞こえるはずがないのです。]
あなたさまのお色に、染めてください。
[間近でみる彼の睫毛は、小鳥囀ずる淡い空にひらりひらりと舞いました。 嗚呼、本当に名前のようにお美しい御方です。]
ベルさ───
[櫻色の薄い唇が名を紡ぎ終わるか終わらぬか。 優しく重ねられたそれに、僕は長い睫毛を伏せました。]
(124) 2014/09/15(Mon) 21時頃
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[聴こえません。 花の声も、蝶の声も。
蜂蜜色へと変わる櫻は、彼の『蝶』だけを見つめているのです。]
(*34) 2014/09/15(Mon) 21時頃
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ん…っ…
[求められるままに、滑り込む感触は暖かなものでした。 粘膜の滑りが訪れれば、甘い呻きが漏れます。 合わせるように、逢わせるように差し出す舌先は ベルさまのものよりも仄かに熱いものでしょう。
いつも、買われる宵には 『蝶』へとお願い事を致します。
どうか、接吻けてくださいませ──…と。 どうか、仮初の愛を囁いてください──…と。
その甘さ在ればこそ、櫻の花は艶やかに色付くのでございます。 今宵もまた蜂蜜のごとき甘さに、僕はその身を咲かせるのです。 絡み合う舌先が、ふるりと震えておりました。]
(130) 2014/09/15(Mon) 21時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/15(Mon) 21時半頃
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[ベルさまと呼べば、顔を緩やかに綻ばせて下さいます>>135 その表情にまたつられるよう、僕も綻んで見せるのです。 これが男女や恋仲なれば、それは素敵な情景でしょう。 地下牢という遊郭の中、甘い時が現実の刻を止めるのでした。]
そうですか? それは、とても嬉しいです。
[「楽しいひと時を過ごすこと」が望みであると告げる彼に 僕は同じ言葉で返しました。
『花』として望まれることが『しあわせ』なのです。
金色蝶が何を思い誘われたのかは、僕は知る事など出来ませんが こうして櫻の枝葉に翅を休めてくださるのならば 僕は応えて、色付いていくのでございます。]
(142) 2014/09/15(Mon) 22時頃
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[美しいという名前は、その御方に吸い込まれます>>136 触れ合う舌はそっと、蜜を得るように吸われ それだけで、くらと眩暈さえ起こしそうなほどに 甘やかな接吻を重ねていたのでございます。]
──、…っ
[吐息までもが震えたのは、彼の手が胸を這ったからでしょう。 白い着物のその下で、それこそ櫻の色をした小さな果実。 辺りの膨らみは丘と謂えるほどにもなく、けれど胸板と呼べるでもありません。 性別を感じさせず、しかし性欲を感じさせるもの。 密着すれば、項からは櫻の練り香水の甘さが香ります。
縋るように指先は、ベルさまのお洋服を掴みました。 果実ははしたなくも、ぷくりと硬さを帯びていることでしょう。
胸元を這う彼の手の甲に、片方の僕の手を添えて。 売れつつある櫻の実へとその手を導きました。]
(143) 2014/09/15(Mon) 22時頃
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[熟れた櫻の実に、布越し触れる彼の指先はとても優しいものでした。 摘まれれば、呼応するように指先に力が籠もります。 重なる唇の隙間から零れる吐息も ベルさまの裡を焦がす火種になってくれたでしょうか。
離れる唇には、名残惜しげに睫毛が振るえ 微笑まれる彼に、朱の差す目許を細めました。]
ベル、さま。
[「可愛いね」「好きだよ」「櫻子」>>150 連ねられる言の葉に、胸の奥がとくり音を立て 射干玉の眸に彼だけを映しておりました。
隣より聞こえるは、『蝶』の声であったでしょう>>147 弄ばれる二輪の『花』の嬌声であったでしょう>>144>>154
それに優しく蓋をするような声音が 僕を名指しで呼びました。]
(160) 2014/09/15(Mon) 23時半頃
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はい。
[甘い囁きは金糸雀の鳴き声でしょうか。 耳からするりと潜り込み、僕の裡で響いています。
崩された着物の下から露になるのは、白き肌。 ベルさま程の白さはなかったかもしれませんが そこに飾られた小さな実の櫻色を、映えさせるような色合いです。]
…───ぁ、っ
[指が触れれば小さな声が聞こえましょう。 吐息に交じり、跳ねるような声でした。]
ベルさま、好きです。 お慕い申して…っ、 ん
[甘い囁きは、さて地下牢の何処まで届いたやら知りません。 おりますと告げる前に切れた言葉は、重なる唇の愛撫で 小さな身体に熱を灯していったのでございます。]
(161) 2014/09/15(Mon) 23時半頃
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[今宵は二輪が共に買われているのかと 心のどこかで、そう思っておりました。 聞こえぬフリをしていても、耳には否にも届くのでございます。
お優しい藤の花が、辱められているのでしょう。 麗しい朧の花が、甚振られているのでしょう。
揺れる焔の花は、遠くに身を委ねているのでしょうか。 綻ぶ淡藤の花は、求められるまま咲いているのでしょうか。
───裡に渦巻くものから眸を逸らし。
僕は金糸雀の唄に、耳を傾けるのです。]
(*39) 2014/09/15(Mon) 23時半頃
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[僕の言葉に零される笑みは、鈴を転がすような音でした>>167 白い彼の肌に、左の目許に在りし黒子に指先を伸ばします。 ひたりと触れれば、与えられる愛撫に指までも 熱を帯びていることを伝えるでしょう。
違う色の、同じ白。 不可思議な相違に、眸を細めようとして。]
わ、ぁ
[牢屋という場所に不釣合いな、柔らかな布団の上に身体を横たえられて>>168 出した声はすこし間の抜けたものだったかもしれません。 布が滑る、淫らな音が響きます。]
ひとつ…に……。
[まるで鸚鵡返しのように紡げば、耳先に朱がさしました。 生娘でもあるまいし、と思われるかもしれませんが 恥ずかしいと思うことに、変わりなどないのでございます。]
(176) 2014/09/16(Tue) 01時頃
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ベルさまもお姿をお見せになっては下さいませんか…? 僕だけでは、恥ずかしいです。
[包み隠すものはやがてなくなり、丸窓からの月下にて 全てを晒す事になりましょう。
申し訳程度に付いたものは、僕の性別をものがたります。 手で隠す、なんて事は許されやしないでしょうから 僕はほんのりとした羞恥に耐えるべく ベルさまの頬へとまた、指先を滑らせたのでございます。]
あなたさまの、情熱を。 僕の、裡へ。
[そっと腕を首へと絡ませ、耳元にて囁きました。 その声は、蜂蜜の甘さを移していたでしょう。]
(177) 2014/09/16(Tue) 01時頃
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[僕が触れたベルさまのお顔は、少し朱を差したでしょうか>>181 仄かに熱が移ったようにも感じます。 僕の見る幻でなければいい、そう思いながら 僕はシャツのボタンに手を掛ける彼を、見上げていたのでございます。
射干玉と同じ黒髪は、布団に広がっていたでしょう。 その髪は櫻の枝葉の如くして その肌は櫻の名の如くして>>182 二つの、いいえ三つの光の下に晒されていたのでございます。
月下、くゆる焔、そして『花』にとまる金色の『蝶』。]
ご、ごめんなさい…っ。
[「恥ずかしいな」と向かう笑みは些か妖艶でありました。 ベルさまを見詰めていた僕は、思わず視線を逸らしました。 はらりと黒髪が、また広がったのでございます。]
(189) 2014/09/16(Tue) 02時頃
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は、い。 染めてください、あなたさまで。
[甘すぎる程の囁きは、櫻を色濃く咲かせます。 ささやかな愛撫にさえ反応を見せる櫻の下肢は そうっと静かな音と共に、恥ずかしがりながらも脚を開いて見せました。 これから行われ、与えられる全てを受け入れる悦び。 指先は彼の項をなぞり、そして。]
接吻けを、ベルさま───…
[おねだりをひとつ、零すのでした*]
(190) 2014/09/16(Tue) 02時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/16(Tue) 02時頃
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[隣より聞こえるは、激しさを表す声でありました。 肌の打ち合う音も、粘膜擦れる水音も。 やがては明瞭でない嬌声が、弾ける瞬間を伝えたでしょう>>188
見えぬはずの涙の音が、此方へ届いた気さえします。
他の牢でもきっと、花々は咲き乱れているはずです。 此処はそういう場所なのですから。 そしてそれが僕たち『花』の、『しあわせ』であるはずなのです。]
(*42) 2014/09/16(Tue) 03時頃
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[僕の戯れのような接吻けに、頬を染めた銀花も 誰ぞ彼の腕の中、咲き誇っているのでしょうか。
丸窓からちらりとだけ、月の端が見えました。
「月が欠ける前に」などという言葉を>>*33 不意に僕は思い出し 傾く月を眺めては、彼の『花』の行く末を想うのです。]
(*43) 2014/09/16(Tue) 03時頃
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あなたは、いま。
『しあわせ』ですか?
(*44) 2014/09/16(Tue) 03時頃
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[尋ねる事が出来たのは、亀吉さんだけでありました。 丁助さんには、寸でのところで訊くのを躊躇ってしまいました。 朧さんに訊けば、叱られてしまうでしょうか。 藤之助さんに訊けば、困らせてしまうでしょうか。
他の花たちにも、訊きたくとも訊けないでしょう。
どうして、訊けないのでしょう? 何故、訊けないのでしょう?
わからないまま、僕はいつであろうとこう答えるのです。]
(*45) 2014/09/16(Tue) 03時頃
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僕は『しあわせ』です、───と。
(*46) 2014/09/16(Tue) 03時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/16(Tue) 03時頃
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[目の端に、衣服脱ぎ捨てる音がいたしました>>201 「君も僕のことを見て?」と謂われたなら、視線はおずおずとながらベルさまへと戻ることでしょう。 見上げればそこには、美しく艶やかさを持った笑みがありました。 細いとはいえ、きちんとした男性を思わせる体つきに 中央にはそれを証明する雄の塊が見受けられました>>202]
……っ…
[視線は僕の身体を隅々と見ておられるようでした。 その眸に撫で上げられて、僕の小さなそれがふるりと揺れたのでございます。 はしたない身体を恥じてまた、僕は頬を赤く染めておりました。]
ベル、さま…っ
[羞恥に、乞い願うような声が鼻を通って唇から溢れます。 お強請りは優しい御方に叶えられ、唇は再び逢瀬を迎えました。 早急な動きで求められる時には、長い睫毛をきゅうと伏せ 緩慢な動きで交わる時には、薄っすらと射干玉を眸へと向けておりました。]
(206) 2014/09/16(Tue) 13時頃
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[長くすらりとした指先が、僕の身体を撫でて行きます。 淫らにも立てた膝から腿へ、動く度に吐息は上がるばかりです。]
ん っ、!
[一番敏感な場所を指で包み込まれた時のことです。 先までのものよりも、僅かながら高い声が溢れました。 包み込まれたその手に、甘い蜂蜜のようなものが触れたでしょう。 透明な蜜がぷくりと、先端を彩っておりました。
離れた唇を繋ぐ糸は、ゆるりと弧を描き途切れます。 ベルさまの浮かべる微笑みが、何を謂わんとするのかがわかるようでした。 僕は顔を朱に染めたまま、こくりと肯きを返しました。 僕もそろりと指先を、項から背中へと滑らせます。 背筋につるりと触れ、ベルさまの変化を窺うべく顔を見詰めるのです。]
(207) 2014/09/16(Tue) 13時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/16(Tue) 13時頃
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[ころころと鳴る喉の音は、まるで木製の鈴のようでした>>208 僕との交わりの中に、何かをきっと満たしてくれているのでしょう。 好きだと囁かれる言の葉は、甘い幻だと存じております。 その嘘を誠にしてはならぬのだと、朽ちた花から教わりました。 ですから僕は幻を吸い上げ、甘い蜜を『蝶』へと届けるのです。]
べ、る…さまっ
[崩れぬ微笑みに、囁き堕ちる甘い毒に身を捧げ 鼻を掠めた声で、小鳥に擬態し囀ずりましょう。
彼の手がゆっくりとした動きで、枝葉を撫で上げて行かれます。 音はとても静かで、耳に届くのは隣の牢の折檻ばかり。 それでも体が触れ合うそこからは、酷く淫らな粘膜が 音もなく音を奏でていたのでございます。
少しずつ、溢れ、溢れて 彼の手を、花の蕾をそっと濡らしていくことでしょう。]
(211) 2014/09/16(Tue) 15時半頃
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べ、るさ… あっ
[やがて美しいお顔からはあまり想像ならない無骨な指先が 蜜に濡れる蕾をそっと、圧し広げて行きました。 詰まるような嬌声が溢れ、ふるりと体は震えます。
痛くはないと、首を振り 受け入れるように、蕾は弱い収縮を見せ 背筋に触れた指先は、傷付かぬように 柔らかな腹で、きゅっと掻いたでしょう。]
ほんと、の しあわせ…?
[甘い毒に触れ、吸い上げる櫻は黄金の色に染まります。 射干玉はゆらりと一度揺れ、寂しげな色を浮かべる前に。]
魅せて、くださいませ。 誠の『しあわせ』な、夜を…。
[そう謂って、自らそっと彼の瞼に唇を触れさせたのでございます。]
(213) 2014/09/16(Tue) 15時半頃
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僕は『しあわせ』です。
[何時の時もそう答えましょう。 何方さまにもそう応えましょう。
胸が苦しいなど、僕にはわからぬ想いなのです。
朽ちた花の行く末を知ればこそ。 その毒に囚われてはならないと。]
(*48) 2014/09/16(Tue) 15時半頃
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[櫻は誠の『しあわせ』に、まだ散るを知りません。
咲いてさえ、いないのですから。]
(*49) 2014/09/16(Tue) 15時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/16(Tue) 15時半頃
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[名を呼べば呼ばれ、呼ばれれば呼ぶだなんて>>214 本当に此処は檻の中でしょうか? 倒錯的な言の葉の間には、「おひめさま」とまで囁かれ あゝ、甘い毒に蕩けてしまう気さえ致します。
ベルさまがベルさまでなくなることを知らぬ『おひめさま』と 櫻子の誠の名を知らぬ『おうじさま』。 小鳥と金糸雀の囀り、櫻と蜂蜜の甘い毒。]
さま…っ べるさま、あ
[啜り泣くような声音が牢へと響きます。 それでも涙は一粒も落ちぬ、可愛いげのない花なのです。
くちづけに終わる幸福な物語。 それこそ、甘く甘い、毒のようなお話でありましょう。]
(216) 2014/09/16(Tue) 18時頃
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[薄い空に囀ずる小鳥が、瞼にそっと接吻けました。 「本当の櫻のようだ」と聞けば>>215 僕はとても嬉しそうに、笑むのです。]
ひぁ あっ、!
[迷いを知らぬ指先が、止まることなく圧し進み ある箇所に櫻の芽を見つけたようにございます。 節くれた指が掠めれば、高く声が上がりました。]
は …ぃ あっ、─── んっ!
[ぴく、ぴくと跳ねる小さな身体と その度に小枝が、蜜を溢しながら揺れました。 耐えるなど出来ません。 射干玉を彼へと向けて、先を、先をと強請るのです。]
(217) 2014/09/16(Tue) 18時頃
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[何故でしょう、僕を呼ぶベルさまの声はどこか少しだけ寂しげな色を帯びました>>218 僕がそう感じただけかも知れません、ですがそんな風に思ったのです。
止まったように思う時間も、緩やかながら進んでいます。 その流れに取り残されてしまったような、そんなお顔をなされるから 僕は背に回していた細い指先で、彼をそうっと抱き寄せるのです。]
僕は、此処に、咲いております。 何時も、いつまでも。 何度でも。
[嬌声溢れる狭間にて、そんなことを告げました。 僕はいつでも此処にいて、いつでもあなたさまを待っていると。
忘れることなど、ありはしないと。]
(220) 2014/09/16(Tue) 19時頃
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ベルさまの、ために──…っく、ぁ!
[指は増やされ、始めはきゅううときつく締め上げていたでしょう>>219 次第に堪えきれぬ喘ぎが、囀りとなって響きます。 裡を掻這う指先が、時折見せる急いた動きも 僕の胸を震えさせ、甘い毒で犯していくのです。
「そろそろいいかい?」という、優しげな問いが届きます。 こんな風に優しくしてくださる御方はそうそうとはおりません。 僕はこくりと小さな肯きを返して見つめ、ふわと微笑んだのでございます。
ベルさまの、張り詰められたその熱に触れて 受け入れる場所へと、導きながら。]
(221) 2014/09/16(Tue) 19時頃
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[抱き寄せた体温は、小さな問いを溢します>>222 その言葉は、きっと、きっと とても大切な問いなのだと思いました。 僕が応えていいようなことかどうかは判りませんでしたが 僕が答えなければならない、そんな気がしておりました。]
忘れません。 たった一夜でも、僕を買って、下さったの…ですから。
[一度だけ、彼の身体をぎゅうと強く抱き締めました。 お許しくださいますでしょうか。 寂しげなベルさまを慰めたい、そんな気持ちと同時に どうしても、僕の今の表情だけは見ないでいてほしかったのでございます。
微笑んでさしあげたかったのに。 きっとうまく、微笑むことができなかったからです。
胸の裡、呪詛がそっと過りました。]
(225) 2014/09/16(Tue) 21時頃
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‘Tis better to have loved and lost
than never to have loved at all.
(*50) 2014/09/16(Tue) 21時頃
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[やがてすぐに、身体を離します。 金の毒持つ姿へと、微笑みの仮面被るベルさま。 同じよう、僕も満開の櫻のふりを致します。
いつでも『しあわせ』です、と 微笑み答える、泣かない櫻になるのです。]
ベルさまが逢いに来てくださるなら、とても嬉しいです。 たくさん、たくさんお喋りしましょう。
[そして、夜を求められるのなら。 毎宵甘い蜜を、花を、溢れさせましょう。 ベルさまが『しあわせ』だと、謂ってくださるように。]
(226) 2014/09/16(Tue) 21時半頃
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[そんな寂しくも穏やかなやり取りも、やがて余裕などないものに変わるでしょう。 甘い毒の針が抜け>>224 隙間を埋めるようにと綻んだ蕾が熱を求める。]
一つ、に──…ん、ぁあっ!
[肯こうとしたのです。 刺される針の圧迫感で、身体は逆に撓りました。 痛みがあるわけではありません。 甘く甘い毒に酔いしれ、唇からは堪えることのない声が溢れます。 高い声は甘さを滲ませたまま、地下牢の中を囀ずるでしょう。]
(227) 2014/09/16(Tue) 21時半頃
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はい、約束です。
[後で、指きりげんまんでもいたしましょうか>>236 僕がベルさまを忘れてしまったなら、針千本残らず飲み干しましょう。
こうして、身体を重ね、情を繋ぎ。 いずれ訪れる結末までは、咲き誇る花であり続けるのです。
ベルさまが何かを謂いかけてらっしゃる気がしました。 ですが、唇は動きませんでした。 だから、僕も言の葉には致しません。
暖かな櫻の『花』が『しあわせ』そうに、笑むのです。]
(243) 2014/09/16(Tue) 23時頃
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ン、くっ… はぁ、っ あ
[愛おしいまぐわいの中、滲む寂しさを胸の裡に感じながら 彼が零す吐息に息を上げては、浅い呼吸を共に二人で繰り返しました。 圧し進められていく熱はやがて ベルさまが僕の名前を呼ぶと同じ頃に、締め付ける襞の奥へと辿り着いたのでございます。]
ル、さま… ベルさ …まっ
[きゅう、きゅうとそこは蠢いていたでしょう。 繋がりあう喜びに、涙の代わりに汗が伝い 噎せ返るような櫻の香を、纏いて蝶を誘うのです。
宣言通りに>>239繋がる部分が引き抜かれかけ 行かないで、いかないでと強請るように 欲を示すベルさまを、締め付け引きとめようとするのでした。
腕は自然と、彼の背中へと回ります。 肩口に額を押し付けてしまうこと、数度。 僕の中にある熱を感じながら、名前を何度も呼ぶのでございます。]
(244) 2014/09/16(Tue) 23時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 00時頃
看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 00時頃
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[「大仰な、」>>256と謂われてしまいました。 ですが、僕は本当にお約束するのです。 それはきっと、しっかりベルさまにも伝わっておりました。 表情が、空気が、それを物語っておりましたから 僕は安心して、微笑むことが出来たのです。
お優しい、お美しい、ベルさま。
そんな御方と夜を共に出来ることが『しあわせ』でなくて 一体何を『しあわせ』と謳いましょう。 誠の『しあわせ』を、彼が、感じてくれていたらと僕は思うばかりなのでありました。
叫ぶほどの声が、耳に 熱く猛った心が、身体に 突き刺さる矢の如く、切なさを増していくのでございます。]
ベル、… ──ベルさま、あ、あっ!
[僕だけだなんて、あゝなんと甘い蜜なのでしょう。 叫ばれる愛の苦しみに、僕は嬌声を上げました。]
(261) 2014/09/17(Wed) 00時半頃
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ん、ぅ …っ!
[隙間も無いほどに埋め尽くされた距離。 伸ばした手は、ベルさまの美しい髪を掻き抱きました。 小さな身体は律動に激しく揺さぶられますが 不釣合いにも壊れるほど柔でないのは、長年『花』として咲いてきた証でしょう。
奥まで穿たれ、櫻の芽を抉る熱に 一際高く、掠れた囀りが零れ落ちます。]
───あぁッ!!
[ベルさまの身体に縋りつくようにして。 二人の間に揺れていた櫻の枝は 情熱的で、どこか寂しげな今宵に
蜂蜜のように甘い精を飛沫させたのでございます。]
(262) 2014/09/17(Wed) 00時半頃
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───べる …さま。
[果ててしまったのは、先だったでしょうか。 きゅうと彼自身を締め付けながらも、蕩けた射干玉が見詰め上げ
愛しげに、櫻の香纏いて。 彼の名を呼んだのでございます。]
(263) 2014/09/17(Wed) 01時頃
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[ベルさまの熱が、色が、香が、僕を染め上げていく感覚は 裡側に、零すことなく注がれた白濁としたものだったでしょう>>270 感じれば僕の身体はふるりと震えます。 甘すぎるほどの余韻を残し、名を呼べば呼び返され>>271 本当におとぎばなしの「おひめさま」と「おうじさま」のようでありました。
荒い息。滴る汗。快楽の残滓。
そういう物に僕も、 ただ素直に柔らかく微笑みました。
頬を撫でられれば どこかくすぐったささえ、覚えてしまう気がいたします。 僕は甘えるように身を寄せ、汗伝うベルさまの頬へと頬摺りをしました。 僕の指に金糸が絡まっていたのなら きっとベルさまの指にも、射干玉色の糸がひとひら絡んでいたことでしょう。]
(278) 2014/09/17(Wed) 01時半頃
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───『しあわせ』、ですね?
[例えそれが、仮初のものであったとしても。 例えそれが、幻のものであったとしても。
今宵の間は、誠であるのです。
ほんとうに『しあわせ』そうに 僕は彼の黒子へと、そっと接吻けを落としました**]
(279) 2014/09/17(Wed) 01時半頃
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[こんな、ゆめものがたりが誠であれば 所謂『しあわせ』というものなのでしょう。
ですが、なりません。
『特別』になることも 『特別』をもつことも
『花』には許されざるべきことなのです。]
(*53) 2014/09/17(Wed) 01時半頃
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[僕たちに許されているのは、ただひとつ。
『花』として咲く。
ただ、それだけなのでございます。]
(*54) 2014/09/17(Wed) 01時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 02時頃
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