239 名探偵の館
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……さてと、ここまでは予定通りね。
館主のいないお屋敷で、ただ一人迎えに出た使用人。 いかにも怪しいこの私を、そのまんま事件の黒幕と考えるか、それとも古典的な撒き餌――ニシンの燻製と見るか。 はたまた、なーんにも気にしないのか。
まずはお手並み拝見といきましょう。
ね、館主さま?
(*0) 2015/10/26(Mon) 07時半頃
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皆様、この度は館主の招きに応じ、遠路はるばるお越しくださいましてまことにありがとうございました。
まことに勝手かつ失礼と存じてはおりますが、館主は皆様とお会いになるつもりはございません。……今のところは。 代わりと言ってはなんですが、ディナーのほうは腕にヨリをかけて作らせていただきました。
――こちら、シェフのパルックさんです。
(1) 2015/10/26(Mon) 07時半頃
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セレストは、パルックを紹介した。
2015/10/26(Mon) 07時半頃
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え。 お前が作ってたんじゃねーのかよ、って?
あはは。い、イヤですねー。 もちろん作ってましたよ、私だって。……いや、雑用っていうべきですかね。
わ、私って料理が専門ではないもので。
いわば、使用人のジェネラリストとでも申しますか。 餅は餅屋、料理はシェフ、事件の解決は名探偵にと、昔から言うではございませんか。
(2) 2015/10/26(Mon) 08時頃
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そんなわけですから、皆様どうぞご料理をお楽しみください。
また、今回は世界の各地から選りすぐりの名探偵の皆様をお呼びした次第でございます。 せっかくの機会、名探偵同士の親交を深めていただくことも、皆様にとって、ひいては我々人類にとって有益なことでございましょう。
しばしご歓談いただいた後、館主から挨拶がございます。 それまでどうぞ、ごゆるりとお過ごしくださいませ。
(3) 2015/10/26(Mon) 08時頃
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招待客の一人にすぎない私が、こうしてホストとしての役割をおおせつかっているのは何故か。
それは、私の名探偵としての在り方に由来します。
私は使用人探偵。お仕えする屋敷で起こる数々の難事件を、たちどころに解決してまいりました。 ……覗き見によって。
(*1) 2015/10/26(Mon) 08時頃
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私は、事件の発生とともに、その真相を知ってしまうのです。 覗き見によって。
どういうわけか、私のいるところで事件が起きれば、私は必ず“犯人には決して気づかれない状況で、その一部始終を目撃してしまう”のです。 ですから、今まで私に解決できなかった事件はございません。当然ですね。
こんなものは、何の才能でも能力でもありません。 ただの宿命です。ですが同時に、名探偵としては究極のカタチだと申し上げてよろしいでしょう。
(*2) 2015/10/26(Mon) 08時頃
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そんなワケですから、館主様が世界から名探偵を呼ぼうとした際に、私はどうあっても候補となりました。
ですが同時に、私がいるところでどんな事件を起こしたとしても、私の覗き見から逃れることはできません。
そこで館主様は発想を変えることにしたのです。 ゲストとして呼ぶことが不適切なのであれば、ホストにしてしまえばいい、と。
(*3) 2015/10/26(Mon) 08時頃
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とまあ、これが私がここへやってきた経緯です。
あたし、誰に向かって喋ってたんだろう? 細かいことは、どーでもいっか。
あはは。
(*4) 2015/10/26(Mon) 08時頃
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あら、パルックさん。 どちらへ行かれるので?
あ、お手洗いですか。 あはは、失礼しました。
いってらっしゃいませ。
(43) 2015/10/27(Tue) 23時頃
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セレストは、パルックの後姿を見送った。
2015/10/27(Tue) 23時頃
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――私も、無性にお手洗いに行きたくなってしまいました。
(*5) 2015/10/27(Tue) 23時頃
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不思議なものですね。 この手の予感は、あまり外れる気がしません。
そうなんでしょう、館主さま?
(*6) 2015/10/27(Tue) 23時頃
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セレストは、なぜかそのとき、ジョージの視線の先にはいなかっただろう。
2015/10/28(Wed) 07時半頃
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