231 獣ノ國 - under the ground -
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狼
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全
チェビイは救星隊 アマルテアに投票した。
明之進は救星隊 アマルテアに投票した。
ジリヤは救星隊 アマルテアに投票した。
アマルテアは手伝い クラリッサに投票した。(ランダム投票)
フィリップは救星隊 アマルテアに投票した。
ヴェスパタインは救星隊 アマルテアに投票した。
マユミは救星隊 アマルテアに投票した。
クラリッサは救星隊 アマルテアに投票した。
アマルテアは村人の手により処刑された。
時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
クラリッサが無残な姿で発見された。
現在の生存者は、チェビイ、明之進、ジリヤ、フィリップ、ヴェスパタイン、マユミの6名。
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―――ねえ、 ……ぼくを 怨んでる? 数百年経っても、まだ。
(0) 2015/07/16(Thu) 02時頃
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《むかしむかしの物語》
『嗚呼、僕が僕だけで、永久に、安息に居ることができたら良いのに』
がつん がつんと体躯を蹴る音。
なぜどうしてこうなったのか、衝撃に身を揺らされ、また痛みに潰れた声を出した――
―――” おさない ”頃の、僕。
嘲笑も
投石の音も
――見て見ぬ振りの、影も。
それがぼくの、世界だった 。
(#0) 2015/07/16(Thu) 02時頃
そんなある日に鶴が来た 。
「 きみとわたしはおなじ 」 だと言われた。
ぼくは「 違う 」と言った。
―――『 だって、君には素敵な伴侶が居るじゃないか。 』
羨ましかった 。いじめられても 支え合える” 人 ”がいた。
( どうして僕は、みじめなの )
口惜しかった 。僕にはそんな人も、いなかった 。
( どうして僕は、ひとりなの )
―――だから、少しだけなら、良いと思ったんだ。
(#1) 2015/07/16(Thu) 02時頃
ある日僕は「 取引 」をした。
『 鶴の居場所を教えたら、もう虐めないであげるから
』
―――嬉しくて嬉しくて、救われたくて、僕は、
「 君の幸せを ひとつ、分けてよ 」
( 僕は、 彼から幸せの” すべて ”を 奪った 。 )
(#2) 2015/07/16(Thu) 02時頃
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………でも、 僕もしあわせに、―――外に。 …生きたい、
(1) 2015/07/16(Thu) 02時頃
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[ 影はこくりと頷いた。 衣を着せた彼の手が、僕に伸びた。 僕は彼を見上げた 。 ―――薄暗く、 病んだ瞳だった 。 ]
[ 鶴がぼくを捕まえる。 針が僕に向けられる。 ( 似たようなものを、医務室で ) ちくりと鋭利なそこが僕に刺さった。
鶴は 不気味に 笑んでいる。 ]
(2) 2015/07/16(Thu) 02時頃
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[ 歪む視界。 沸騰したように熱い、からだ。 鶴の姿が遠くなって、 僕は、 ]
… ぐ、ぇ
(3) 2015/07/16(Thu) 02時頃
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[ 僕は、 『 亀 』になった 。 ]*
( 遠い影が、 僕に言った。 ) ( ―――” 鶴と亀が 滑った ” と。 ) ( そうしてまた言うんだ ) ( ―――蛙の王様、と )
(4) 2015/07/16(Thu) 02時頃
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―― 医務室 ――
[ ほたりほたりと、床を濡らすのは――血だろうか? 否、違う。男はふるりと首を振った。 いろは白亜に呑まれている。 身を固まらせた彼女>>3:143にひとつ、踏み寄った。]
……、ジリヤさん。
[ 先とは違う呼び名と、 ……また、ぼろぼろになった自分の上着を見つめながら。 ―――やがて手を伸ばした先、指先は。彼女の肩に触れることも出来ただろうか? 距離を置かれたりすることもあったならばそれまで、男はその場に足を止めただろうけれど。 ]
……おいで
[ ―――生まれついた声は低いまま。呼び掛けたら彼女は、はたして ]**
(5) 2015/07/16(Thu) 02時半頃
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う… [肩を触られると、ビクリ、となる。一つだけ、わかった事がある。好きは、怖い。接するのが、初めてだから、どうにかなってしまいそうで]
怪我、するだろうが…
[先ほど、女医を殺そうとしたとは思えない口ぶりで、おいで、という言葉を拒否する。しかも、今日は大量の血で濡れた髪なのだ]
(6) 2015/07/16(Thu) 02時半頃
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― 診療所 ―
……あれ。
[目を覚まして1番最初に見たのは、白い天井。
どこかで見た場所だと思った。自分の診療所だった。
先生が目を覚ましたわ、と看護婦が喜色を浮かべた]
私、怪我をして。それで。
[記憶の糸を辿ろうとしたが、ひどく判然としない。
そもそも、私は“誰”に怪我をさせられたんだっけ。
全身が痛んだ。首と腕には包帯が巻かれていた]
いったい、なにが。
[怪我によるショックで記憶が混濁しているのですね。
そう言って、看護婦は苦笑を浮かべた]
[看護婦が説明をはじめる。
自分が研究のため、しばらくこの診療所を離れていたこと。
仕事中に大怪我をして、大きな病院に運ばれたこと。
容態が安定して、この診療所に移されたこと]
……研究。
[なんの研究をしていたのだっけ。思い出せない。
アマルテアは“獣人”に関する記憶を失っていた。
一緒に仕事をしていた同僚たちの顔は思い出せる。
アキラ。ヴェスパタイン。……そして、ノア。
しかしあの施設には、他にも沢山の“ヒト”がいた気がして。
まるで靄がかかったように。
その“ヒト”達の顔を思い浮べることはできない]
なんで、だろ。
[何か大切なことを、忘れている気がした。
そもそも、自分は何の仕事をあの施設でしていたのだろう]
[それからしばらくして、診療所で仕事に復帰した。
白衣を身に纏い、患者と向き合う日々]
痛くないわよ。
男の子でしょう。泣かないの。
[泣きわめく子供に対して、予防接種を行う。
容赦なく、注射器でぶすっと]
ほら、もう終わっちゃった。
よく我慢したわね。
[子供の頭を撫でてやる。
なんだか“前の職場”でもこんなことをしていた気がする。
従順で、優しく、強い少女。彼女のことが、思い出せない。
違和感は、日に日に大きくなっていった**]
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[ぼんやりと去る人達の事を思った。
アマルテアが何を思って何を開発していたか、 結局は聞けていないけれど 彼女は果たして望みを叶えられたのだろうか。 (そうなら、いいのだけれど)
それがエゴの押し付け、賞賛され難きものだとしても 彼女を責めたいと思えないのは きっと、彼自身が管理者の側だからだろうと思った。
……クラリッサは、あの状態が「自由」といえるのか よくわからなかったけれど
( それは 誰かが勝手に決めるものでは ないか )
そう思ったから、鉄扉をくぐる彼女>>3:150の背を、 黙して見送っていた。*]
(7) 2015/07/16(Thu) 07時半頃
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― → ―
[肉を抉り、血を零れさせる白い針は、 抜くときにぞわりと背筋が震えるような気がした。 一度、外に出た。 古書の独特の匂いが鼻をつく。 少しぶりの家、彼は棚や本、 さらには私物まで綺麗に整えてまとめ
それから、短い短い休息についた。 薬のにおいが抜けない片腕が熱を持っていたが 疲れていたからか、――すとん、と眠りに落ちる。
吹く風、戸が軽く軋る音、 それが御伽噺の機織の音にも聞こえた。]
(8) 2015/07/16(Thu) 07時半頃
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[有明の まだ鐘が鳴らぬ時刻。 ひたりと張った水鏡が僅かにゆらゆらと揺れる。
彼は銀色に光る刃を首元に当てた。
―― はらり、 はらり。
黒羽を散らすように、 長い髪がはたり、次々とタイルに落ちる。
彼は何もいわずに地を見下ろしていた。 あの雲雀の巣の男のように見下ろしていた。
酷く静かな朝だった。 薄闇の中 水鏡には何も映っていなかった。]
(9) 2015/07/16(Thu) 07時半頃
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[夜が完全に去った頃、 彼は施設内へと戻ってくる。
……ノアの辞表はまだ、 監視室で見ることができただろうか。
シャイなひとだったね、と呟く唇は 僅かに笑っていただろう。**]
(10) 2015/07/16(Thu) 07時半頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/16(Thu) 07時半頃
落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/16(Thu) 07時半頃
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―第一棟・食堂―
[やっと届いた返事は、最悪の事態ではなかったけれど、限りなく最悪に近い。 がたん、と音を立てて、私は立ち上がる。後ろで、椅子がひっくり返った]
助けなきゃ。 でも、どうしたらいいの。
[冷静でいられない。落ち着いて考えなければいけないのに、焦りばかりが募って。 そんな時でも、表面的には無表情なのだろうけれど]
とりあえず……医療室、へ……。
[届いた声を思い出し、強く首を横に振る。そんなこと、できるわけがない。 私はひっくり返った椅子も、テーブルの上のカップもそのままに、食堂を飛び出していた**]
(11) 2015/07/16(Thu) 09時半頃
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― 中央広間 ―
[ 知らない人間の群れが、足早に医務室に向かうのを見て 僕は、猫がひとつの結末に辿り着いたのだろうと 足を止める。
( ―――死んでしまったか、それとも。)
進んで女医の「治療」を受け、そのたびふらふらになって。 けれど猫はいつもそれを望んでいたから 僕は止める術を持たなかったし、 そうまでして「獣でないもの」になりたいと願うなら
( それはそれで、尊重されるべきだ )
この隔離施設で許された、唯一の願うという自由は
( 例えそれが自分にとっての間違いであっても。)
侵されてはならない、と 思うんだ。]
(12) 2015/07/16(Thu) 11時頃
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[ 結果、猫が例え死んだとて。 彼女を「不幸だ」と思う事は 獣であることを「不幸だ」と決めつける人間と どう違うというのだろう。
皆、自分のもとめる幸せの定規にあてはめているだけ。 僕は僕の定規でしか、測れないから―――。
だから、僕は僕のものさしを通してせかいをみて 大勢の救護班に運ばれてゆく猫の姿を見つけた時は
ひどく 悲しかった。]
(13) 2015/07/16(Thu) 11時半頃
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[ 人間に「直った」彼女の”声”はもう聞こえてこない。
露出した手は、「人間らしい」ほっそりした指が なめらかな肌色に覆われていて。
伸びていた爪も、ふわふわの毛も、柔らかい肉球も 「獣らしさ」は、僕の目には見当たらなかった。
( どうか、その先に光あれと )
彼女が光を失ったことなど知らない僕の勝手な祈りは 多分神に嘲られただろう。
兄が飛ぶ。僕は立ち尽くす。 飛んだ先は、……ああ、なるほど。 もうひとりの要救護者に得心する。
女医の意識は無いように見えたが、その担架の上 フラワーガーデンから舞い戻った兄が ぽてりと スノーフレークの花を落とした。*]
(14) 2015/07/16(Thu) 11時半頃
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[ 長らく途絶えていた針鼠の声が届いて 猫が「うしなったもの」に 無感動に
( そう )と呟く。 ( ねえ、クラリッサ。 きみは きみが望んだとおりに いられた? )
救護の手に紛れて逃げろと叫ぶ針鼠と 殺処分になりそうな友人を置いては行けぬと叫ぶ たいせつなひと。
己自身が”自由”であるために 置いていけと叫ぶ針鼠。
皆、皆、自分のものさしで 「しあわせ」を探す。
――僕は、どうしたい? ぼくは。]
(15) 2015/07/16(Thu) 11時半頃
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[ 僕は彼女を 夜空に浮かべたい。
気高い友人を見捨てても 途中で僕が斃れようとも
僕のものさしなんだからエゴなのは当然だ。 でももう、エゴでしか動けないんだ。 ]
(16) 2015/07/16(Thu) 11時半頃
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[ 針鼠に ごめん、とも言わない。 ありがとう、なんてのも もってのほかだ。
僕は医務室に向かっているであろう梟を探して その姿が見えたのなら 僕の全てでもって
医務室に向かう彼女の足を止めようとするだろう。**]
(17) 2015/07/16(Thu) 11時半頃
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―商店街―
『ノアさーん、珈琲豆そっちじゃないです』
[買い物に付いてきたもう一人に対して、はいはい。なんて生返事をしながらついていく。何故だか、手にある生傷を見ても、再出血しても、治療器具を手に取るつもりになれなくて
路地裏で変な奴を見ただとか、商店街付近が物騒だとか。そんな話もどこかで聞いたかもしれない]
大体俺の研究はとっくの昔に終わったってハナシ
…完成するわけがないぞ、と
[世の中に居る獣人を完璧に治す薬。そんなものを作ろうとしていた時期があって。それから逃げ出して
前の職場に行ったはずなのに。どうしてまた戻ってきてしまったのか。“誰”と関わって、自分が変わったのか
それすらも思い出せないまま]
ボカァ、力になれるとは思ってないよ
あんな研究。続けても意味無いのさ
[見付けた珈琲豆の袋を一つ手にとって、それからおまけとばかりに自分の好きなミルクティーの缶を買って]
でも、少しずつ治療はしてみたい
[ボソリ、とそんな事を呟く。付いてきた者は嬉しそうに、『じゃあ研究を進めないと!』なんて言うけれど
「ここに居ても変われない」なんて言ってくれたあの人は誰だったっけ――**]
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―第一棟・廊下―
[何が正しいのだろう。状況は一刻を争って、こんな時こそ落ち着かなければいけないのに、私は酷く混乱したまま、足だけは医療室へと向かっていた。 どうしよう。どうしたらいいの。 届く声。私以外の二人の意見は一致していて。だけどそんなの、私には到底納得できない。承服できない。 唇を噛み締めて、私は急ごうとしたけれど]
フィリ、ップ。
[私の、好きな人。大切な、人。 それなのに、その姿が視界に入った時“見つかってしまった”と思ったのは、なぜだろう。 びくりと肩が震えたことに、気づかれてしまっただろうか。 まるで悪戯が見つかってしまった子どものようだ。 でも、都合が悪いところに出くわしたという意味で、大差ないのかもしれない**]
(18) 2015/07/16(Thu) 13時頃
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[ 針鼠のことばがあったからじゃない 梟の叫びが聞こえていないわけでもない
僕は、僕のために 他の何を捨ててさえ、彼女を空に浮かべたい。
たとえそれで、彼女に嫌われようと 恨まれようと 嗚呼いっそ 殺されたって構わない。
彼女の「したいこと」 僕の切望するねがい 相容れないのだ、どうしようもなく。
僕を見つけて跳ねた肩>>18に ( ごめん )と 心のなかでだけ謝罪して 此処より先には行かせはせぬと、両腕を広げ からだ全てで 細い躰を抱きしめる。]
………………僕と逃げて。 おねがい。
[ 擦り切れてしまいそうな、小さな声で。]
(19) 2015/07/16(Thu) 13時半頃
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[ 外へ行く大扉に 指紋認証があるってことは 管理者側に協力者を作るか 脅迫でもするか それこそ、中で火事でも起こさない限り 僕らの自由になることはないのだろう。
行ったとしたって、ひとめで獣と判る僕等のことだ 大扉がひらいていたとしたって 誰かに止められてしまうかもしれないけれど
扉があいていなければ そんな希望すら持てないんだ。
針鼠の悲痛な声が響く。 僕は彼女をだきとめたまま、きつく瞳を閉じて]
(20) 2015/07/16(Thu) 13時半頃
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……まゆみ、
[ お願い。 と、再びの願いは瑠璃の中に溶かして
彼女の瞳をみつめた。**]
(21) 2015/07/16(Thu) 13時半頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/16(Thu) 14時頃
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[抱きしめる腕>>19は、どんな頑丈な鎖よりも私を縛る。 だって、好きな人なのだもの。大切なのだもの。 そんな人に抱きしめられて、振りほどける、わけがない]
……ずるい、わ。
[掠れた声で、力なく抗議した。僕と逃げて、だなんて。なんて酷い誘惑の言葉。 私はもちろん、フィリップと一緒に逃げるつもりで。けれどそれは、今じゃないはずなのに]
逃げるわ。……でも、ジリヤも、
[一緒に。そう言いたくて、けれどその言葉は、途切れてしまう。 ジリヤは、足を挫いている。そして、飛べと言われたけれど……きっと私には、一人が限界だ。 いくら私の翼が大きくても、二人を連れて飛ぶなんて……そんなことは、できない。きっと、私の手に余る。 今の私は、あれもこれもしたいと、できもしないことに駄々をこねる子どものようで]
(22) 2015/07/16(Thu) 15時頃
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マユミは、フィリップ>>21、に「ずるいわ」と繰り返す。
2015/07/16(Thu) 15時半頃
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[もう一度、ずるいと私は詰った。わかっている。八つ当たりだ。 無表情な瞳から涙を零して、こちらを見つめる瞳>>21を見つめ返して、私はしばらくの逡巡の後、結局小さく頷いた**]
(23) 2015/07/16(Thu) 15時半頃
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[ 男はこてりと小首を傾げた。 おいで、の文字に反応しなかったことには。また赤く濡れた髪であれば、その姿を留めながら。
「 随分と” や ”ってしまいましたねえ 」…と、茶化すことは叶うだろうか。 男は矢張り――否自身が女医のところへと、先に促したことが原因かは分から無いが――彼女を女医の方へと向かうよう促したこと、またその背を追わなかったことは失敗だったと思った。 ]
貴女が意図せずに私を傷付けないなら、…――それで良い。 ジリヤさん、
[ ――救援は彼女たちを運び出して、今頃何処にいる頃だろうか? また先程、廊下の隅。 誰かの部屋へ行った亀>>3:130は今頃。 男は薄く笑みを浮かべたまま、ゆるりと彼女に手を差し伸べた 。 ]
(24) 2015/07/16(Thu) 16時半頃
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[意図的に傷つけなければ、それでいい>>24との言葉を聞けば、髪で傷つけないように気をつけながら、その胸に身体を預けて。顔を相手の身体に埋めたまま、つぶやき出す]
…なぁ、頼みが…あるンだ…
[ニンゲンにする最初の、願い]
(25) 2015/07/16(Thu) 17時頃
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絞め殺してくれないか
[最期の、願い]
[どうせ、終わるなら、最期は、ての、ぬくもりの下で]
(26) 2015/07/16(Thu) 17時頃
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─彼女らを見送った後─
[階下は少しざわついていた。 地上からの救援が来たからか 少しばかり静かな第三棟。
彼は医務室で片付けをする気にもなれず ただ、自室にて適当に傷の手当てをしていた。 鳥たちの姿を見ることも無く。
静かに瞼を閉じる。 ここも"ひと"が少なくなった。
背中を伝う未練の黒糸も ──……もう、断って>>9しまおうかと
思うた手のひらは、 小刀を左の袂へと導いた**]
(27) 2015/07/16(Thu) 18時頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/16(Thu) 18時半頃
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――― ……?
[ 男はゆらりと、その影を揺らめかした。 自身の髪が彼女の頬にかかるのを、払って取り除く。
赤くなった髪は今や近く、胸元に顔を埋められることもあれば、 ――では、彼女は何と? 男は口端を上げたまま、目を細めた 。 ]
……死にたいのですか。
[ 男の声は平生と共に、変わらないものであった 。なぜ、とこぼれ落ちた低音を。 彼女はまた拾えることも出来ただろうか。 影と同じに少しも揺らが無い声色は…そう、冷酷とさえ言われても無理は無い 。 ――神父に成り切れなかった過去を 思い出しては。 ちくりと針がひとつ、彼の体躯に刺さった 。 ]
(28) 2015/07/16(Thu) 18時半頃
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…死にたいも、なにも。もう死ぬだろ。管理人を半殺しにしたんだ。止められなけりゃ殺してた。殺処分に決まってる。
…だけどよ、それは、嫌なんだ。だから…
死に方くらい、自由にさせて、くれよ
[もう一度懇願する。注射や、毒ガス、ロープによる絞首、電気椅子。殺処分の方法はいくらかあるが…全部、人のぬくもりを感じながら死ぬ事は、できない。揺らがない声色>>28の中に、優しさを感じていた。普通は、こんなこと、相手にすらしない。]
(29) 2015/07/16(Thu) 18時半頃
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コロン、 ころころ ……かつん
[ ” せなか ”が痛い。 僕は転がり落ちた先、 螺旋階段の一番上で体躯を隠した 。
―――以前はなかった 甲羅に 隠れては 。 ちらちらと首穴から射し込む陽の光が、 眩しかった。 「 ようやく、外に出られる 」
僕の声は、声にはならずに、ただ” 獣 ”の声に成る。 ……ひどく惨めな、感じがした。 ……救護員は、 ” ひと ”になったという獣は、今やどうしているのだろうか? 僕はひょこりと首を覗かせて、階段の下を見た 。……暗い。 あんなところに、居たんだなあ 。 ―――そう思う反面、僕は、あの暗闇に追われている気がして ―――急いで足を 外へと踏み出した。 ]
( ふるさと、 ―――……もすきーと、 )
[ 建物の出口、周りに過去地下施設へ身を置いたものが居たなら、僕の姿は見られて居たかもしれない 。 それでも僕は、 恋い焦がれた” おもいで ” と ” ―― ” とを。 一分でも早く、 見たかった 。 ]*
(30) 2015/07/16(Thu) 18時半頃
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[ 可笑しいよね。 はじめて「狡くない」つもりでいたのだけれど。 僕は彼女を抱きしめたまま、皮肉げに口角を持ち上げて 薄笑いを浮かべる。
僕だって針鼠を助けられるものなら助けたい。 けれど迎えにいったら、そこには管理者も居るのだから みすみす扉を閉ざすようなものだ。]
僕は 何より君がだいじなんだ。 ぜんぶ、僕の勝手。
………ごめん。
[ ジリヤを、という言葉>>22に「何より」を被せて 優しい彼女の意思を捻じ曲げる。
恨んでくれて構わないから、どうか僕に絡め取られて。 どうか どうか 僕の手を取って と。]
(31) 2015/07/16(Thu) 19時頃
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[ 狡い、と言われるたびに 静かに頷いて ごめんと零す。
噫、泣かせたくないのに ぼくがすすんで彼女を泣かせている。
蒼碧の指でそれを拭って 小さな頷き>>23を合図に、僕は彼女の小さな手を取る。
食堂で絡め合わせたときよりも ずっとずっと強く握って 第一図書室へ 暖炉へ その先へ、一目散に走った。
僕の脚は静かにもできなければ疾くもない。 ヒトの足を持つ梟の手を引けたのは一体どこまでだろう。
彼女がジリヤを背にする覚悟ができたのなら きっとすぐに追いぬかれてしまう。 けれど、それまでは。 彼女のきもちを、ジリヤから引き剥がすまでは 僕は彼女の手を 引き続けるだろう。**]
(32) 2015/07/16(Thu) 19時頃
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[八つ当たりなのに、フィリップは私が詰っても、何の反論もしない>>31。 わかっている。本当に悪いのは私だ]
そんなの……私だって。 ……謝らないで。
[私だって、何よりフィリップが大事で。 違うのはきっと、私に覚悟が足りないこと。 二兎追う者は一兎も得ないのに、ぐずぐず選べずにいた私が悪いのだ。 ずるいと言ったその口で、謝るなと言って、私は首を横に振る]
ごめんなさい。
[私が選べずにいたから。今だって、本当に選べているかはわからないくらいだから、フィリップは悪者になってくれたのだ。 悪者にしてしまったことを謝って、私は取られた手>>32を握り返した]
(33) 2015/07/16(Thu) 20時頃
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[強く握られた手を引かれて、走る。走る。 頷いたのに、その手を取ったのに、どこまでも優柔不断な私は、後ろ髪を引かれて。 決してついていくのが苦になるような速度ではないのに、フィリップに引っ張られるように、走る。
わかっている。一番最悪のシナリオは、ジリヤが殺される上に、私たちの脱出も失敗に終わることで。 一番いけないのは、ぐずぐずと優柔不断に何も選べずにいることだ。 そして、このまま私がぐずぐずしていては、フィリップのことも、巻き込んでしまう。
あふれる涙はそのままに、私は歯を食いしばって、今度こそ覚悟を決めた。 一度強く目を瞑って、ためらいを振り捨てるように速度を上げる。 フィリップに追いついて、追い越して、 でも、繋いだ手は、絶対に離さない**]
(34) 2015/07/16(Thu) 20時半頃
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― 診療所 ―
……スノーフレークの、花。
[涼やかな白い花が、花瓶の中で揺れていた。
美しいその造花は、枯れることがない。
確かこれは“前の職場”に植えられていたもので。
きっと誰かの見舞いの品だろうと思う]
誰が。
[兄さん、と誰かの声が聞こえた気がした。
ズキンと頭が痛む。兄さん。兄さん―――]
やめて。
[ひどく靄のかかった頭の中で。
思い出してはいけない、と本能が告げていた。
ひどく気分が悪かった。この違和感は、何なのだろう]
― 研究所 ―
……すみません。
ノア=マーティンという研究者の方が。
ここに在籍されていると聞いてやってきたのですけど。
[ついに、我慢ができずに彼の研究所を訪ねた。
純粋に彼に会いたかったし、
“前の職場”のことも聞きたかった。
違和感の原因を知りたかったのだ。
看護婦たちは研究の話題になると決まって話を逸らした]
申し遅れました。
アマルテア=メティスという者です。
マーティン様ご本人に聞いていただければ分かるかと。
[さて、本人に取り次いでもらえるだろうか。
もしも門前払いされるようなら。そのまま帰るつもり**]
|
[ 優しい梟は、ずっとずっと泣いていて 走りながら振り返るたびに、じくりと胸が痛んで詰まる。 けれど 立ち止まる訳にはいかないから 僕はいっそう強く 彼女の手を握って。
振り絞るように覚悟を決めた彼女の目は、 いつもと変わらない眼のはずなのに 決意と涙を乗せて、黒水晶のように光って見えた。 いつの間にか、僕のほうが彼女に助けられている。
知っている、暖炉までの風景。 知らない、ここから先の監獄。
暖炉の闇の中へ我先にと、兄が梯子を無視して飛んでゆく。 先に致命的な脅威があれば きっと教えてくれるだろう。]
……先に行くから、 追いかけてきて。
[ ずっと繋いでいた手を離して 僕は暗闇の中に姿を消した。]
(35) 2015/07/16(Thu) 21時頃
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[ ひとつ ひとつ 梯子を登るたびに変わってゆく 空気のにおい。
どこか甘い、脳を溶かすようなあの香りは 長く身を置きすぎて麻痺していたけど 「外のにおい」は明らかに 僕の記憶を蘇らせる。
どれだけ登っただろう、目指す先が白んで その先に兄さんが、 赤い、鸚哥が みえて。]
『 フィル!フィル! コッチ! 』
[ 大扉の前、羽ばたいているのは――――
( にいさん )
知っている、今迄だってずっとそう呼んできた ”兄さん” にいさん。 なんだろう、視界が歪んで わけもわからないまま 僕は 明に縋って泣いた時みたいに、ぼろっぼろに泣いていた。]
(36) 2015/07/16(Thu) 21時頃
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[ 彼女が現実に引き戻してくれるまで、
多分僕は
赤い鸚哥を見上げたまま呆然と立ち尽くしている。
そんな僕等を迎える者はあっただろうか。 行く道を塞ぐものは。
外の世界の足音は、此処まで届いていただろうか。 **]
(37) 2015/07/16(Thu) 21時頃
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―研究室―
『マーティンさんは今ちょっと席を外していて……あっ、マーティンさん!!』
[両手で紙袋を抱えて、その中にはリンゴや珈琲豆、ミルクティーなども入っている
あとで何か食べようなんて夕飯の食材も買ったけれど、それはもう一人に持たせて]
僕に何か用?丁度帰ってきたケド
[近くの机に紙袋を置いては対応していた研究員にそう訪ねてみる
チラリとアマルテアの事を見れば「こんにちわ、美人なお姉さん」なんて挨拶するだろうか]
『いえ、マーティンさんに用があるみたいで
アマルテア=メティスさんと言えばわかるって……』
[その話を聞いてから顔をしかめて、眉間にシワが寄る。“聞いたことの無い名”のはずなのに、どこか知っているような
既視感ならぬ、既聞感あるような名前。それから、よく見ればどこかで会った気もするような]
“初めまして”メティスさん
ボカァ、こんな美人さんに会いに来てもらえて嬉しいなぁ
何の変哲もない研究所だけれど、何か用かい?
[そうして、あたかも初めて会ったかのような。否、ノアにとって、初めて会う人として。そう挨拶を交わした**]
……こんにちは、ノア。
あなたは変わりがないようね。
[「美人なお姉さん」だなんて。
相変わらずの歯の浮いたような台詞を言われて。
照れ隠しに、嫌味たらしく、ため息を吐いてみせた。
やっぱり、彼の前では可愛らしい女になどなれなくて。
再会したら言おうと思っていた台詞も、全部ふっ飛んでしまった]
初めまして、って。
[続くノアの言葉に、眉を顰めて。
アマルテアの表情が険しくなった]
私、あまりそういう冗談は好きではないわ。
[笑えない冗談だと思った。
その口調は固い。じっとノアを見上げて]
……ノア。今日は“前の職場”のことで。
あなたに聞きたいことがあって来たのだけれど。
[あなたに会いたかった、なんて言える雰囲気でもなく。
淡々と、そう告げた]
その冗談、まだ続けるつもり?
[呆れたような視線を向けた**]
変わりない…?
[首を傾けて、周りの研究員を見る。彼等も何を言ってるのだろう、と言うような目でこちらを見てきて、ノアは思わず首を振る]
前の職場?監視施設?あぁ、地下の事か
[そういえば、前の職場の人の事が全く思い出せない。一体どんな人と話したのだっけ。どんな職場だったのかは記憶にあるのに、何を見ていたもわかるのに
誰を見ていて、誰と話して、それ等全てが自分にはわからなかった]
冗談って、失礼だな
ボカァ、初対面に対して冗談を言う人では無いよ
[大真面目に、どうしてそんな事を言われなければならないのだ。と憤りも覚える
会話の内容から、彼女が前の職場に居た人だって事はわかっているのに、それが本当かも自分にはわからない]
…とりあえずここじゃ話しにくいでしょう
移動しよう。僕の個室があるから
[随分と前から帰っていないのに研究室の個室だけはしっかり残されていて。そちらの方へ案内すれば研究員を手で追い払う
それから後手に扉を閉めて]
――改めて、キミは誰だい
[冗談なんかでは無く、真っ直ぐと彼女を見てそう問いてみる**]
|
[走って、走って、たどり着いた未知の領域>>35。 一足先に、と飛んでいくフィリップの兄を見上げようとしても、その行き先は、闇に包まれていて]
わかったわ。
[先に行く、というフィリップに頷いて、繋いでいた手を離す。 どっちみち、手を繋いで梯子を上ることはできないけれど、先に行ってと言われていたら多分躊躇っていたと思う。 それは、スカートの中がとかそういう問題ではなくて、私を逃がすことを最優先するあまり、囮になろうとか冗談じゃないことを考えるのではないかという不安が拭いきれないからだ。 闇を睨むようにして、私は未知の領域へと、外の世界へと、梯子を登っていく。 先の見えない闇の中。けれどこの前にフィリップがいると知っているから、怖くはなかった。 いつしか、私の涙は止まっていて]
(38) 2015/07/16(Thu) 22時頃
|
|
[やがて、目指す先に光が差す>>36。 道しるべのように羽ばたく鸚哥のシルエットが見えて。先を行くフィリップの背中も見えて。 道案内はありがたいけれど、少し声の大きさに不安になったりしたのだけれど]
……フィリップ?
[ようやく追いついたフィリップの背中が、なんだか呆然としているように見えたから>>37。 名前を呼んで、顔を覗き込んで、そして私は息を飲む。 フィリップが、泣いていたから]
フィリップ……。
[その涙の理由は、私にはわからない。 けれど、無性に胸が痛くなって。 泣かないで、と囁いて、私はフィリップの背中をそっと撫でた]
(39) 2015/07/16(Thu) 22時頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/16(Thu) 22時頃
誰だい、って。……本気なの?
[個室に通されると、アマルテアは揺れる瞳でノアを見つめた。
やがて大きなため息を吐くと、観念したように]
いいわよ、分かったわ。
[投げやりな口調で言うのだった。
変な気分だった。見知った男に自己紹介をするのは]
さっきも名乗ったわよね。
私の名前は、アマルテア=メティス。
今は近くの診療所で医者をしてる。
あなたとは、元同僚。地下施設で一緒に管理人をしていたわ。
[簡単に自己紹介を終えると、顔を上げて]
まさか記憶喪失にでもなったとでも言うの?
それとも―――
[少しだけ迷う素振りを見せてから]
今の職場まで来られて迷惑だ、という意味で。
そういう態度を取っているのなら、すぐに帰るわ。
あなたの今の生活を、邪魔する気はないもの。
[じっと、ノアの瞳を見つめて。
“あの日”のことも。すべてなかったことにしよう、と]
ただ、もしもそうだったとしたら。
―――あなたってやっぱり、すごく嫌な男ね。
[嫌味たっぷりに、そう言ってやった**]
本気も本気
ボカァ、不思議な事に前の職場は覚えていても誰が居たか覚えてないんだ
[適当な仮眠用ベッドに腰掛けてから買ってきたミルクティーを一口飲んで
彼女の名前を再度聞けば、ブツブツと呟いて。どこかで聞いたし、どこかで会った。きっと間違いなく彼女は自分の元同僚なのだろう
それなのに、どうしてか彼女との思い出が何一つない]
今の職場は楽しくないからね。他人行儀になる事もあるかもしれない
なんたって、僕は必要とされてるようでされてない
獣人を人に戻す気も失ったんだから……
[結局、前の職場を出ても何も変わらなかった。全てを諦めて、投げ出して。過去にしがみついて、成長していない
すぐに帰るなんて言われてもきっと止めるだけの話があるわけでもない。けれど、続けられた、嫌な男と言われれば]
キミ、失礼な事を言うようだけど
――ボカァ、キミの事嫌いだな
[言ってから、ズキリと頭が痛くなる。前にも言った言葉で
けれど、嫌いなのに。何か言葉を続けなきゃいけない気持ちになる。その言葉が見付からなくて、まるで手探りに暗闇の中を探っている気持ちになる]
嫌いだ…。キミの事は……
なのに、なんで。なんでだろうな
[胸が苦しくなって、心臓の辺りで握り拳を作って俯く
呼吸がしにくい。普段どうやって息を吸って吐いていたかも忘れて、思い出す事に集中してしまうような
それなのに、思い出せなくて。ふと顔を上げてアマルテアを見た時には今にも泣き出しそうな顔でもしていただろう]
キミの事が――
[言葉が出なくて、息が詰まる。それから諦めたかのように肩を落として]
…なんでもない
悪かったね、嫌な男で。こういう性格なんだ
[彼女が出て行くのならば止める理由も無い。胸にポッカリと空いた大きな穴に気付いてから、虚無感に襲われ、蝕まれていくのを感じた**]
|
― 第三棟 ―
[廊下に出れば、 鸚哥の声が聞こえてくる。 あゝ、彼らがきたな、と思った。]
[黒い睫を伏せて一度、息を吐き
行く二羽の鳥。夫婦星のようにも見える彼ら。 少し遠いそれらの姿を目に焼き付けて
胸に も一つ、呼吸を通すと、 少し重い袂に意識をやった。]
( ………… )
(40) 2015/07/16(Thu) 23時頃
|
[ノアの態度は嘘を吐いているようには見えなくて。
半信半疑のまま、彼の話に聞き入った]
“獣人”を、人に戻す……?
[唐突に飛び出した“獣人”という単語に首を傾げる。
あれ、獣人ってなんだっけ。なにか大切なことだった気がする。
胸の中で、モヤモヤが広がっていく]
今の職場は楽しくない?
……そう。前の職場よりは、楽しくやってるように見えるけど。
[正直な感想だった。あの何もかもが真っ白な施設で。
彼と私はいつも反発していて。
ええと、何で揉めていたんだっけ]
[もしも記憶喪失が本当のことだとしたら。
彼は思い出さない方がいいのだろうとも思う。
新しい生活をしていくのに当たって、
きっとあの施設の記憶は良いものではなくて。
自分の存在も、たぶん彼の邪魔になると思った。
それに自分自身、“前の職場”について。
靄がかかったように記憶を封印しようとしている。
帰ろうか、と立ち上がりかけたところでかけられた言葉に。
アマルテアは表情を強張らせた]
……ノア。
[くしゃり、と顔を崩して。彼のことを見遣った。
いつか聞いた台詞。
あの日のことを思い出して、胸が熱くなるのを感じた]
奇遇ね。私もあなたのことが大嫌いよ。
[いつか言った台詞を、そのまま言い返してやった。
けれど目の前にいるノアは自分の知っているノアではなくて]
なんで、あなたが泣きそうな顔をしているのよ。
[泣きたいのはこっちの方だ。
なのにどこか彼は泣き出しそうな顔をしていて。
ああ、無性に腹が立つ]
本当に、ずるいわ。
[涙がポロリ、と零れ落ちた。
こんな男の前で、2度も涙を見せるなんて。
悔しくて悔しくて、堪らない]
勝手に出て行って。勝手に忘れて。
本当に、身勝手な男だわ。
[涙を白衣で拭って、今度こそ立ち上がる]
……っ。
[彼に背を向けて、個室を出た。
研究室の人たちが何事かと、自分を見遣った]
お騒がせ、しました。
[頭を下げて。そのまま研究室を出ようとするだろう**]
[規則正しい、時計の針の音。
時折吹き付ける風で振動する、窓の音。
日に三度鳴る部屋のベルの音。
それだけが、今の私の全て。
"いつの間にか"視覚と手の感覚を亡くした私の窮屈な世界。
そんな世界で、私は考えるのだ。
"いったい、自分は何者なのか――"]
[私の記憶に眠る、沢山の人々。ジリヤ、アマルテア、マユミ、多くの獣と人。
その言葉も、顔も、容易に思い出すことができるのに。
たった一つの思い出せない要素。
どうして私は、彼女らを知っているのだろう。
そうして、また呼び鈴が鳴るのだ]
[「クラリッサさん、昼食の時間ですよ]
日に三度来る介護人。目も見えず杖も使えず親族もいない私は、彼が居なければ生きることさえ出来ない。
これが、私の求めた自由?
いや、そもそも....。
どうして私は、自由になりたいのだろう]
…あれ?キミなら知ってると思ったんだけど
[どうして知ってるだなんて思ったんだっけ。それは思い出せない
嗚呼 確か前の職場に似たような事を言ってた気がするなぁ…。なんて朧気に覚えているような]
どうだろうね。僕は嫌な思い出しか無いよ
それに…。どうしてか、前の職場が恋しくなるんだ
嫌なのに、未練があるみたいで
[その理由はよくわからない。その相手が目の前に居るって事すら、ノアは忘れてしまって。誰かを監視して、嫌われて。そこに囚えるのが普通の生活が日常だったなんて]
――ッ!!!
[自分が嫌いだという事くらいわかっていて。その台詞を聞いて、アマルテア=メティスという女性を、いつもいがみ合って嫌い合って、嫌味を言い合っていた相手を
真っ黒に塗りつぶされた記憶が少しずつ晴れていくようだった]
なんで…。“また”泣くのさ
[釣られるようにこちらも一筋の涙が頬を伝って、出て行く彼女の手を掴もうとするも、それは叶わないで手は空を切る]
まっ――!!!!
[もし、もしもここで彼女と別れてしまったら二度と会えない気がして
嫌いな相手なのはわかっている。まだ、言いたかった言葉は思い出す事が出来ないけれど。空を切った手を握り、決心したように個室を飛び出す]
まだ……
話は終わって、ない。だろっ!!
[既に周りに挨拶をして、出ていこうとする彼女を見付ければ走って引き止めようとして
それから、足を引っ掛けて一度盛大にすっ転んでしまう]
痛ッ…!!
待って……待てよ!!アマルテア!!
[転んだ事からか、それとも普段運動していなかったからか。足は既にガクガクになっていてもう走る事は出来ないだろう
壁に体を預けながら、それでも体を引きずって歩こうとする自分の姿に研究員は近寄ったりしてきただろうか
適当にあしらってから、一歩。更に一歩と歩みを進めて]
ボカァ、キミの事が嫌いだ
大っ嫌いだ!!!けど…けれど!!
[彼女は止まってくれたりしただろうか。否、止まらなくても言葉を続けなければまた忘れてしまう
塗りつぶされた記憶を探し当てるように、掴んだものを離さないように。頭で考えるよりも先に口を動かして]
――僕はキミの事が大好きなんだ!
[それはいつか告白したように、同じような言葉で
“けど”の続きを、嫌いなのに好きだなんて矛盾を。彼女が聞こえていてもいなくても。ただ、言ってから思い出して]
なんで、忘れてたんだか…
[こんな大事な事を、と自虐的に笑ってしまう
まだ記憶に靄がかかっているようだけれど、今はただ一つ。大切な事を思い出せて、虚無感を抱えたまま満足してしまった**]
|
[ ”兄のほうが唄が上手いから” 僕はいらない ”兄とおなじくらい上手かったら” 僕も居られた? さんにんいっしょに、居られたのかな。
……ねえ、にいさん。
靄の中、兄の背中と赤い鸚哥が並んでいた。]
(41) 2015/07/17(Fri) 00時頃
|
|
[ 遠くから僕を呼ぶ声>>39がして 目の前に、兄と暮らした森の薄闇が広がって ぼやけた視界がようやく像を結んでゆく。]
…………あ、 ぁ………
[ 瑠璃の中の井戸のような虹彩が、ぎゅ、と回って ]
おいてかないで……。
[ 混濁した記憶のまま、子供のような口調で 背中を撫でてくれるひとの前で膝を折る。
しゃがみこんだ僕のむこう、夜目の利く梟の目には 薄暗い廊下の中に彼>>40の姿は見えただろうか。
”普段は”指紋が無ければ開かぬという扉は 閉じているのか、開いているのか。 管理者ならば 知っているだろう。*]
(42) 2015/07/17(Fri) 00時頃
|
|
[開閉に認証が必要な扉は 閉まっていなければ用を為さない。 故にその時>>42もまた、二人の前に在る大扉は 行く手を阻むように塞がっていただろう。
彼は迷わなかった。
廊下から警備の人間が 獣人達の方へ向かうのが見えた。
地を蹴る。 左袂から出した小刀のさやを抜いた。
「すまんな」
警備員の耳元で囁いた声は聞こえたのかどうか。 興味もなかった。]
(43) 2015/07/17(Fri) 00時半頃
|
|
[腹を刺されうめき声を上げる警備員から刀を抜けば 払ったはずの血の馨がまた着物に滲む。
彼は踵を返し、大扉前にて しゃがみこんだフィリップを見下ろした。]
なんてざまだ。 ……姫君の手を引くなら 最後まで引いたらどうかな。
[淡々とそれだけ云って、 彼は大扉のセンサーに指で触れる。 「外」の匂いがふわりと満ちた。
梟はどうしていただろうか。 その黒曜のうつくしき瞳を見たならば。 「はやくいきなさい」と静かに促しただろう。]
(44) 2015/07/17(Fri) 00時半頃
|
|
[どうか、どうか。 彼らがオルフェウスのように振り返ることなく 地上へ向かってほしいと ――そう、願うばかり*]
(45) 2015/07/17(Fri) 00時半頃
|
落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/17(Fri) 00時半頃
|
大丈夫よ。
[フィリップは、何かに脅えているように私には見えて。 私は努めて穏やかな口調で、語りかける。 膝を折ったフィリップ>>42の頭を、そっと撫でた]
私は、あなたを置いてどこにも行かないわ。
[むしろあなたが私のために、自ら置き去りにならないかの方を私は心配しているくらいなのに。 その視界の端、月見の姿が見えても>>40、今はフィリップを落ち着かせることの方が大切で。 緊張すれば、きっとそれはフィリップに伝わってしまう。だから私は気づかぬ振りを決め込んで、静かにフィリップの頭を撫で続けた]
(46) 2015/07/17(Fri) 01時頃
|
|
[ 彼女の声>>46が僕を此処に呼び戻す。 ぐるぐる廻る記憶と、近寄る警備員の足音に 僕の焦りは増していく。
はやく、はやく、いうことを聞いて 僕の両脚。]
………っは、
[ 何のために僕は彼女からジリヤを奪ったのか この翼を空に届けるためだろう?
折った膝が 硬い鱗のような脚が 立ち上がろうと硬い床で無機質な音を立てるのと、
近寄る管理者の足音が聞こえて来たのは ほぼ、同時。
夜を斬るように黒衣が舞う。 誰かに向かって放たれた言葉>>43は 氷のような温度で それに混ざる血の芳香が、重い空気をさらに重くした。]
(47) 2015/07/17(Fri) 01時半頃
|
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[ 目の前の地面に赤い池が現れて その中で蹲る見知らぬ「人間」。
どうして、とマトモな脳があれば問うただろうが 見上げた血の馨を纏った管理者に 目をそらすように 俯いて。
そっぽを向いた僕の頬を、明らかな外の風が撫でれば 急に開く扉へ目を向けて 扉の傍ら、センサーの前で佇む彼>>44へ ようやく ]
……………どうし、て。
[ やっと音にできたのは たったの4文字で 譫言のように あふれた音。
>>44”言われなくとも”と、湧いた疑問を掻き消すように 僕を宥め続けてくれたひとの 手を取ろうと。**]
(48) 2015/07/17(Fri) 01時半頃
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[警備の人間が駆け寄ってくるのが見えた>>43。 けれど大扉は閉まっていて。そもそも、フィリップを置いて逃げるなんて選択肢は私にはない。 そんなことをするくらいなら、ここで殺された方がましだ。 フィリップの背中を、頭を撫でる手に、力がこもる]
――――――……!?
[けれど、目の前で起こったのは、思いも寄らぬ展開だった。 月見が、警備の人間に駆けて。そして流れる、血>>44。 そして開かれる、大扉]
……どうして。
[思わず、フィリップを撫でていた手も止まってしまった。頭に手を乗せたまま、呆然と私は呟く。 それはもちろん、こちらにしてみれば願ってもない展開だったけれど。 そんなことをして、月見に何のお咎めもない……なんてことは、もちろん、ありえない。 静かに促されて、私はもう一度、どうして、と呟いた。 それでも、フィリップが我に返ったなら、私は逃げることを躊躇わないだろう]
(49) 2015/07/17(Fri) 01時半頃
|
|
―――そうか、 ……死ぬのか。
[ 男はゆくりと、囁いた 。 地を這うような声だった。 そうしてまるで ――― 昔に捨てた、 口調だった 。
死ぬ? なぜ。 人を傷付けたから 。 それだけ。 たった、それだけである。 男は自身の髪を耳に掛けた 。]
それはそれは、 ……面白く無い。
[ 折角見つけた” たのしい ”こと 。 ” たのしい ”もの。 ” たのしい ”―――人。 まるで玩具を取られたかのように、男は不貞腐れた顔をした。 何故この愉快さを、 胸を疼かせる愉しみを 誰かに奪われなければならないのか ―――
そう、 誰かの死に様などは 見たくない 。 ]
(50) 2015/07/17(Fri) 02時頃
|
|
なら簡単だな、ジリヤ。
―――俺と一緒に暮らさないか。
[ 男は口端を上げ囁いた。 まるで悪魔の囁きだと、罵声を浴びせて来た誰かの気持ちが解った気がした。 遠くから漂う風が、 外の香が髪を揺らす 。 男は紛れて、彼女の頬を引っ張った 。
そしてまた、 手を差し伸べる。 ]
ハイか、 イエスか。 欲しいのはそれだけ。
[ はたして獣を匿うと知れたら、 ひとはどう思うのか。 男の興味は尽きず、――ただ好奇心に突き動かされた。 ]**
(51) 2015/07/17(Fri) 02時頃
|
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( 会いたい ) ( 会いたい ) ( 会いたい ) ( ―――だれに? )
僕のうすのろな足が、止まった。人混みを避けて歩いて来たはずのそこが、いつの間にか人に埋もれる。 僕はすこし、息苦しくなった。
「 ふるさと 」 「 もすきーと 」
僕を動かすふたつのワード。 ぼくは、 ……なにを探しているんだろう?
ぽっかりと胸に穴が空いた気持ちだった。 はてな?クエスチョン。 こんな空虚な気分は、……ああそうだ、塔を出てからだ。 疑問を飛ばしても、僕にはわからない。 わからないんだ。
どうしてぼくは、こんなにさみしいのか。 それさえ。*
(52) 2015/07/17(Fri) 02時頃
|
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[二人とも「どうして」と重ねたから、 彼は小さく肩を竦めた。]
いきていたいんだろう。
[なぞるのは尚、 鮫に投げかけられたあの言葉>>250だけ。
フィリップ>>48が我に帰って 梟>>49の掌をとるならば 彼の出番は終わり ――きっと長話は無用]
はやく。
[君達は。まだ、未来があるはずだ。 そう思いながら再度促せば、 彼らは行ってくれただろうか。
その背を見送ることぐらいはできればいいけれど。*]
(53) 2015/07/17(Fri) 02時頃
|
落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/17(Fri) 02時頃
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ああ、ヴェスパタインの手なら、きっと、安心して逝け。
…え?…は…?
[一緒に暮らさないか、と囁かれる。>>51まるで悪魔のささやきだ。いや、その見た目がではない。…その、抗いがたさが。]
お… [お前はそれでいいのかよ。この施設には、来れなくなるかもなンだぞ?お前の職だろう?そんな、言葉は、相手は求めていない。求めて、いるのは…]
[ただ、ひとつ、顔を相手の胸に埋めたままこくり、とうなづく。縛られたかった。自由でいたくなかった。なんでも、好きな事ができる、誰の事も気にしないでいい。それは…とても、とても寂しい事なのだ。あの路地裏でも、この地下施設でも、自由だった、自由で、寂しかった]
後悔、するなよ…アタシが扱いにくいの、知ってンだろ…
[顔を埋めたまま、つぶやく。赤い顔を、隠すために]
殺しときゃよかったって、後悔しても、遅いからな… そンときゃ、アタシの純情を弄んだ報いを受けて、貰うからな…
[ボロボロの上着よりも、直接に、重さが、香りが、入り込んでくる。心を縛る鎖が、とても、心地よい。離れがたい。]
(54) 2015/07/17(Fri) 02時半頃
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…連れてってくれよ。足、挫いたんだ
[ふらふらと、立ち上がる。弱さを簡単に吐き出す。もう、彼相手なら、いくらだって本音を言える。尖った棘で隠した、臆病で寂しがり屋のハリネズミのこころを、さらけ出せる]
(55) 2015/07/17(Fri) 02時半頃
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[そうして、その手を取った。手を繋げるのは…繋ごうと思うのは、同じ生き物である、証だ]
(56) 2015/07/17(Fri) 02時半頃
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[いきていたい>>53その返答に、我に返る。 そうだ。私は、ここから出て行きたい。ここから出て、生きたい。 その為に、ジリヤを置いてまで、ここまで来たのだ。 人間を傷つけたジリヤを置いてきた私が、ここで人間を傷つけた人間をその後を心配するのはおかしな話だ]
フィリップ。
[顔を向けると立ち上がったフィリップ>>47が、私の手を取った>>48。 その顔に、決意をこめて、頷いて。 私は月見に向かって一度深々と頭を下げた。 逃がしてくれることへの感謝か。それとも、旅立ちの挨拶か。それは私にも良くわからない。……今までお世話になりました、でないことだけは確かだけれど。 踵を返し、もう振り向かず、私たちは大扉をくぐる。 外の世界へと向かって**]
(57) 2015/07/17(Fri) 02時半頃
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[ゆうらり、幽鬼のように血塗れた刃を持ち 外の風に着物の裾を靡かせた。 >>57 こちらに頭を下げたマユミの絹糸のような黒髪が揺れる。 彼はそれを無表情で見届けると、 大扉をくぐる彼らの背を見送る。]
(58) 2015/07/17(Fri) 11時頃
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……それはそれは、 …――怖いですねえ。
[ 純情>>54、と 。男は矢張りと思った。思って尚、言及はしなかった。此方の要求――と言うには拒否権など無かったが――に一つ頷いた彼女へ、満足そうな笑みを浮かべながら 。
軈て男はふらふらと覚束なく立ち上がる彼女へ、深く差し伸べた手さえ握り返されたなら、その体躯を寄せ楽に持ち上げた。 お姫様だっこ―――などではなく俵抱きではあるが。男は髪を揺らして出口へと歩先を向け直した 。いついつ彼女を外へ連れ出しても構わないが ―― 今なら殊更楽であろうと。 自身の頬や腕に擦れる「 針 」…ではなく、「 髪 」に擽ったささえ覚えつつ。
以前此処から出た「 鮫 」は、 あの後どうなったのだろうか? 不意に思い出した事柄 。 男はふるりと柔に首を振った。
また逢うこともあるだろう。 ―――いずれ。 ]
(59) 2015/07/17(Fri) 11時頃
|
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家事くらいはしてくださいね、 ジリヤさん。
[ 男は声色に笑声を含ませながら、彼女に言うた。踵を鳴らし歩けば、靴音は白亜のそこに響き渡ったであろうか。 ……職を辞さなければならなくなったなら、またあの教会へ戻るのみ。 ただ安安と此処を辞めるという気にもなれずに。
暖炉の中 。 梯子を登る前 。 男は物惜し気に白亜のそこを振り返った 。―――「 崇拝 」を得ることは出来なかったが、それでも。 ……存外、悪く無いものであった、 と。]
(60) 2015/07/17(Fri) 11時頃
|
|
[ そうして梯子を登る際一度担ぎ上げた彼女を降ろせば、男は先に梯子を登った 。登ってから、日の刺す第三棟に ―― 大扉から射し込んだ光に、目を細めた 。
微かに海の、香りがする。 ]**
(61) 2015/07/17(Fri) 11時頃
|
|
[ 馬鹿で愚直で工夫もできない鳥頭は、 ひたすらに前にすすむばかりで できることといったら …………。 梟に言ったら許して貰えなさそうな手段ばかり。
( ああ…いつだって兄さんがなんとかしてくれてたんだ )
へこたれたまんまの僕のあたまを優しく撫でる手と 肩にとまって鋭い嘴でどつく兄。
( 痛い、痛い。 痛い痛い痛い。)
生きているから、痛い。]
……いきていたい。 生きていたい。 ぼくは空に、行きたい。
[ こちらを静かに見つめて肩を竦める男>>53に 目的を確かめるように呟いて 僕の翼の手を握る。 僕の名>>57と頷きに、僕もこくりと返して。]
(62) 2015/07/17(Fri) 11時頃
|
|
[「獣を閉じ込めておきたかった」はずの胸の飾り。 翼が無いのに飛んで行ってしまった 彼のたいせつなひと。
( 僕には、翼があるから )
なんて言葉が浮かんだのは どうしてだか。
ふわり、開いた扉が招く風が 床の上で踊る。 血を吸った和装の袂が揺れて ……けれど、靡くはずの長い髪が無い。
切られた髪、彼が鍵に触れた指の意味。]
―――未練は、断ち切れた?
[ 大扉をくぐる直前、卑劣で優しい彼へそれだけ投げかけて 僕は、前を、上を、未だ見ぬそらを 見る。
――――外へ。**]
(63) 2015/07/17(Fri) 11時頃
|
|
[投げかけられた声>>63がある。 それに一つ、首を傾げた。 なにかを言いかけて口を開いたが、それもすぐに閉じて]
さようなら。
[彼はフィリップに向けてそれだけ言うと 二人の獣人が去った後、 彼は蹲る警備員の傍へと歩いていった。*]
(64) 2015/07/17(Fri) 11時頃
|
|
あぁ、そンなことしやがったら、この髪でぐさ…おおっ
[引っ張り上げられて、担がれる…この体格差なら、まぁ、当然だ。たとえ、ジタバタしたとしても、逃れようのない抱き方。それでも、この窮屈さが幸せだった。今日、この日まで、抱きしめられるのはなかったのだから。抱きしめる、緩やかな束縛、自由から離れた、幸福]
…わーってるよ。路地裏とはいえ一人で暮らしてたンだ。大体は出来る。 [この抱き方なら、顔は見えないはずだ。幸せそうな顔が、存分に出る。…声色にもでていることは、気付かないが。下されれば、自分も梯子を登り。後についていく。痛いは痛いが、登れないほどではない。もう、あの檻は振り返らず。なんの未練もない。…マユミたちも、うまくやったはずだ。何せ、これほど抜け出しやすい日は、そうないのだ。]
(65) 2015/07/17(Fri) 11時半頃
|
|
…土と、海の香りがする…
[大扉から入ってくる、久しく嗅いでなかった匂い。庭園のものとは違う、生命を感じる、粗野な土の匂い。潮の香り。確かに、外だ。ずっと、ずっと望んでいた…そして、隣には表に出せないが、ずっと望んでいた…温もりが、ある。神様なんて、きっといないのだろうな、と思った。人を傷つけて、嘘をついて。その直後に、こんな、欲しいものを、くれたのだから…あるいは、本当に、いて、あの本の通り…全てを許してくれるのかも、しれない]
(66) 2015/07/17(Fri) 11時半頃
|
|
[第三棟の少しはずれ。]
やぁ……すまないね。 だけどそんなに痛いのかい。
[蹲り何事かを言う警備員を見下ろし、 血塗れた小刀を掌で弄んだ。]
昔から「警察」には恨みがあるから 少ゥしばかり深く刺してしまったかもしれないが ……にしても、刃渡り五センチだよ?
[気狂いと罵られてはにっこりと朗らかな笑みを深め 彼はそれから監視室の方へ向かった。 監視カメラにはがらんとした施設内が映っている。 机の上においてある手紙をぺらりと捲れば それはノアのものだった。]
(67) 2015/07/17(Fri) 12時頃
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――シャイだねえ。
[別れの挨拶くらい、とは思ったが、 すぐに口を閉ざして、小さく肩を竦める。]
……いや、
[忘れてしまえばいい。ここであった嫌な事は。 そうして”良いこと”が少しでもあったなら それは覚えていきていけばいい。
あの学者の顔を思い出しながら エゴイスティックにそう思って、 彼はからん、と刃を投げ出した。 ]
(68) 2015/07/17(Fri) 12時頃
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常々不思議だったんだよ。 ……ここを創った御仁は、 一体、何を考えていたんだろうかと。
[聴くものもいないが、ぼやく。 ムーンストーンに一つ触れ、]
『……沖に出たらば暗いでせう、 櫂から滴垂る水の音は……、』
[いつかどこかで読んだ詩を、口ずさんでいた。**]
(69) 2015/07/17(Fri) 12時頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/17(Fri) 12時頃
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[振り返りはしないけれど、私は少し、考える。 そういえば、あの日私が暖炉の抜け道を知った切っ掛けも、この人だった>>2:3。 考えてみれば、それはあまりにも、無用心。 だって彼は、私が図書室にいることを知っていた>>2:2のだから。 獣を逃がそうとするこの人が、どんな人なのか私は知らない。なぜ管理者なのかも知らない。 10年間、私は孤独を愛してきた。特に人間とは、まともにコミュニケーションをするつもりが全くなかった。 そのことを、後悔はしていない。今更聞くつもりもない。 けれどあの日、一言くらい、返しておけばよかったと。 そんな小さな後悔をした。
――――――“あなたも、本が好きですか”]
(70) 2015/07/17(Fri) 12時半頃
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[空気が、変わった。 私の嗅覚はそれほどいいわけではないけれど、それでも確かに、空気が違う。風が、頬を撫でる。……外の匂いがする。 そう、今まで暮らした鳥籠は、こんな風に空気が動くことが、なかった。風が、なかった。空が、なかった。 私は手を取り合ったまま、フィリップの方を見て、口元に笑みを浮かべる]
はぐれてしまわないように、側にいてね。 外の世界は、広いから。
[嗚呼、潮の匂いがする。土の匂いがする>>66。10年振りの外の世界で。 私はとうとう翼を広げる。さて、飛ぶのも実に10年振りだ。飛び方は覚えているつもりだけれど、ちゃんと上手に飛べるかしら**]
(71) 2015/07/17(Fri) 13時頃
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[ 太陽というものは、こんなに優しくないものだったっけ。
記憶に靄をかける甘い匂いは、思い出せないくらい遠く 世界に光が満ちるにつれて 塗りつぶされていた記憶に色が差してゆく。
兄は、そんな僕を知ってか知らずか 我慢ならないというように ひとあし?ひと翼?先に 僕等を置いて蒼穹へ餐まれ 見上げた空のまんなかで 紅の星になった。
繋いだ手>>71は 温かい。 向けられた微笑みは、僕を守るように大きく、優しくて 僕はたからものを守るように彼女をつつむ。]
はぐれそうなのは、兄さんのほうじゃないかな。
[ 僕らの頭上、おおきく旋回する兄を茶化して 彼女が翼を広げる感覚に、両腕に力を込めて目を閉じた。]
(72) 2015/07/17(Fri) 15時頃
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[ この躰からも剥がれ落ちてゆく”甘い匂い”が 僕に過去と兄を返すかわりに 大切なそれを奪っていく。
…………もっとも、兄の時とおなじように 奪われたことにすら 僕は気づけないのだけれど。
耳はバタバタとはたく海風に塞がれて 頬を撫でる潮風が、目元にぴりりと滲みる。 細くひらいた瑠璃色の目は それ以上に美しい水面を映し 世界は白砂青松の如く。
「 にゃぁ ミャォ 」
うみねこが自分達の空に 見慣れぬ客人を迎え入れた。**]
(73) 2015/07/17(Fri) 15時頃
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|
大丈夫よ。 あなたのお兄さんは、あなたを見失ったりしないわ。
[もちろん私もそのつもりだけれど、と言い添えて、私を包み込む優しい腕>>72に体を寄せる。 大切な人を、間違っても落としてしまうことのないように、私もしっかり抱き返して。 行くわ、と短く囁くと、10年振りの空へ飛び立った。
赤い星のような彼の兄を視界に収めながら、本来は夜の住人たる私が、光の下を飛ぶ。10年振りの太陽の光は、いっそ暴力的だと思うほどに眩しくて、まるで私は笑顔を作る時のように目を細めた。 夜に溶けるはずの翼は、青空の中の染みのように目立つだろう。逃亡中の身としては、それはあまり都合がいいことではないけれど、私の翼は大きいから。きっと追いつけるものなどそうそういない。
羽音のあまり立たない梟の翼で、人間の気配を避けるように、建造物のない方を選びながら飛び続ける私は。 自由と引き換えに失った大切なものに気づくことはなく**]
(74) 2015/07/17(Fri) 16時頃
|
……え。ノア!?
[盛大にすっころんだ音に驚いて、後ろを振り返る。
アマルテア、と自分を呼ぶ声が聞こえた。
その声が。ついこの前のことなのに、懐かしくて。
胸が張り裂けそうになる]
ちょっと。そんなに無理して動いて。
[打ちどころは悪くなかったのだろうか。
ふらふらの彼に、慌てて駆け寄ろうとして。
―――時が止まった]
[―――だいすき。
確かに彼はそう言った。夢じゃない。
ぽろり、と再び涙が零れた。やっぱり、ずるい。
自分はこの男に振り回されっぱなしだ。
たった4文字の彼の言葉で。
自分はこんなにもおかしくなってしまう]
……ばか。
[胸が熱い。この身が蕩けそうになる。
なんでこの男を前にすると。
自分はこんなに弱くなってしまうのだろう]
転んで、すりむいてるしてるじゃない。
私に手当てされるのは嫌なんでしょう?
[いつかのやり取りを揶揄して、
無理に笑ってみせようとしたけれど。
やっとのことで浮かべたのは泣き笑いのような表情で]
やっぱり、あなたって相当に物好きだわ。
[人目なんか気にしてやるものか。
呆気にとられる研究員たちを尻目に、駆け寄って。
ふわり、と彼を抱きしめた]
……私も、好き。大好き。
[やっと素直に言えた。嬉しくて。胸が熱くて]
次、私のこと忘れたりしたら。
許さないんだから。
[なんて睨んでみせる。
やっぱり、自分は可愛くない女だ**]
|
[ 兄が何かに気付いたように進路を定めてから どのくらい飛んだだろう。
傾いた太陽が眼下の森を赤黒く染めて、 沢の水はオレンジの絵の具を溶いたみたいな朱。 高度を下げれば鼻を掠める森の馨は もしかしたら 彼女にも馴染みのある匂いだったかもしれないが。
人里遠く、ひときわ大きな楢の木の上に 蘇ったばかりの思い出と、 夕日を映して真っ赤に燃える兄が 灯る。
彼女の翼がその下に降り立てば 僕は人でない脚で木に宿り 僕の翼を抱きとめるだろう。
僕ともうひとりの兄さんで作った 文字通りの鳥小屋は 住人を失って埃にまみれていたけれど その一角に、我が物顔の お客がひとり。
『 Coucou, coucou, coucou, 』 **]
(75) 2015/07/17(Fri) 18時半頃
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―― 大扉前 ――
[ ―――声が柔らかくなった>>65と、思った 。 今やどんな表情をしているのだろうと思えば、 …少しだけそちら” も ”振り返ってみたくなりつつ。 ……されど男は素知らぬ振りで、またずる賢くも平生と変わらぬいろを灯すのだった。 ]*
(76) 2015/07/17(Fri) 21時半頃
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[ 第三棟を見渡せば、遠くに誰ぞの姿>>67でも見ることはできただろうか ? 出来たとして、男は特に何も動かずに。 ……そう、どうせまた逢えると思っていた為に。彼の視線が此方へ、また歩先さえ向かうことがあれば、軽く会釈くらいはしたことだろう。]
これから先階段ではありますが 、―――歩けますか?それとも先のように担ぎますか。
[ 男は後から梯子を登る彼女へ、最後の段にて手を差し伸べた。その手が取られることもあったなら、ゆるりとその体を引き上げたことだろう。 そうしてふわりと包む潮の土の香に、何故か懐かしささえ感じながら。―――かつりと、靴音を鳴らした 。 「 さいしょのいっぽ 」の踏み出し方を 彼女はどう選ぶだろう。
まるで望んでいたと、願っていたと、……祈りにも似た表情を浮かべる彼女を尻目に映し。その隣、矢張り男はゆらりと影を揺らめかす。
―――長い長い階段を 上り切る先。独つだった男の影も、いまや隣に並びて二つ。 何か景色が変わることは ――あるだろうか? ]**
(77) 2015/07/17(Fri) 21時半頃
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…担いでくれよ
[梯子の最後、手を差し伸ばされて、引き上げられる。担ぐかどうするか、という質問には>>77こう答えて。遅くていいなら、歩けはする。だが、歩けるが…それでは、むしろ相手を待たせるだろうことと、それと…身体が、ぴったりとくっつく不自由を、もう一度味わいたくて。そう告げる。『さいしょのいっぽ』は、ひたすら不自由に。それが、誰かと関わり、生きるということなのだ。あれほど大切にしていた自由を失ったハリネズミは、終始幸せそうで。本人は表に出していないつもりなのだから、驚きだ。]
[潮の香りが、どんどん強くなっていく。この、海すら内包する広い世界で、自分はこれから、この男の心のぬくもりを感じれる範囲を離れずに暮らしていくのだろう。もしかすると、この施設よりも狭いかもしれない世界。でも、そこに積極的に囚われていたいと思う。…ハリネズミは本当は、いままで、凍えて死にそうだったのだから。毛を逆立てて、反抗して、怒って、それで発した熱で、心を温めて生きてきたのだから。ハリネズミのジレンマ。たとえ、ハリネズミは棘で自らも傷つけようと…ぬくもりを求めることは、やめられないのだ。]
(78) 2015/07/17(Fri) 22時頃
|
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…ヴェスパタイン
…相手の身体が、近くにあるってのは、こんなに、あったかいんだな。…知らなかったよ。
[抱きしられた事のないハリネズミは、担がれた状態で幸せそうにつぶやいて。扉の向こう、射す太陽の光は、プラチナの髪の毛にキラキラと反射して。まるで、その髪の毛に、ハリネズミのずっと欲しかった宝物が、宿ったようだった。自由を失ったハリネズミ。それは、居場所を、見つけた…という、事だった。]
(79) 2015/07/17(Fri) 22時頃
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あいたたた……
[足を見れば擦りむいているし、腕を見ればどこに引っ掛けたのか切り傷と、前の職場の傷が開いて出血していたりと散々で
それでもアマルテアが近付いてくれば声が伝わったようで安心する]
キミに手当てされるのは嫌いだね
治療されるのがじゃなくて…
[言いかけてからふと、思う。嫌いなはずなのに、今はその治療される傷すらも、嫌じゃなく感じてしまう]
…僕が嫌いなのは染みる消毒液かな
[くすぐったい気持ちで、ニヘラと笑ってアマルテアの方を見る
彼女に治療されるのが嫌だったはずなのに。今ではそこまで嫌いにもなれないのはきっと、気持ちに素直になったからだろうか]
キミも物好きだよ、ホント…
[抱きしめられればその身を委ねて、安心したように目を閉じる
嫌いなのに、大好きで。そんな矛盾を抱えたまま、空いてる手で頭を撫でようとする]
もう忘れないぞ、と
まだ、思い出す事も沢山あるってハナシ
[睨まれれば慣れたように笑って、彼女にそう返す
いがみ合っていた時を、嫌い合っていた時の思い出話でもゆっくりしよう。なんて考えて**]
そうね、思い出すことが沢山あるわ。
[頭を撫でられれば、くすぐったそうに顔を赤くする。
思い出話もしたいと思ったし。
今彼がどうしているのかも、興味があった。
やはり自分の記憶は、靄がかかったように鮮明ではなくて。
彼と会話で、なにかキッカケが掴めたらと思う]
……ねえ、ノア。
お願いがあるのだけれど。
[お願い。アマルテアらしくもない言葉だった。
甘えるように上目遣いで切り出すと]
|
[外の世界に、たった一人だけ会いたい人はいたけれど、今どこにいるのかわからない。 10年前まで暮らしていた場所は、私を匿うための、人里離れた森の奥。 私がいなくては、その場所は意味を失うから。一人になったかあさまが今も尚そこに住み続けているとは思えなかった。 といっても、そのうちあの場所にも行ってみるつもりではいる。 フィリップに、私の育った場所を、見てもらいたいから。 かあさまに、いつか会えるという希望も、捨てない。 世界は広いけれど、時間はあるし、そしてなによりも、もう私は自由なのだから。
赤い鸚哥に導かれる>>75ようにして、場違いな昼の空を梟は飛ぶ。 嗚呼、空から見た世界は、とても広くて綺麗。 そうして、夜の気配が少しずつ忍び込む頃、どこか懐かしいような森が眼下に広がった。 目印になりそうな大きな楢の木に宿るフィリップの兄を追いかけて降りていけば、先に木に移ったフィリップが抱きとめてくれる]
(80) 2015/07/17(Fri) 22時半頃
|
……場所、移さない?
[アマルテアの顔は羞恥で真っ赤だった。
ふたりは研究員たちの奇異の視線に晒されていた。
抱き合ったままの恰好は、やはり恥ずかしい。
どこからかヒューヒューと囃し立てる声が聞こえる。
いやもう、冷静になると相当恥ずかしい。良い大人です私たち]
それに、あなたの傷の手当てもしたい。し。
[しどろもどろになって、言葉を紡ぐ。
本当に自分らしくないと思った。
なんでこの人の前では、
いつもの気取った自分でいられないのだろう**]
|
ありがとう。 お邪魔します。
[着いた場所は、かつての兄弟の住処のよう。 抱きとめてもらったことと、お招きに感謝してそんな挨拶を。 長旅お疲れ様、なんて言おうかと思ったけれど、当然ながら長らく住人を失っていたその住処は埃まみれで。まだちょっと一息つけそうにない]
まずは……お掃除かしら。
[第二図書室を片付けたことを思い出す。あれはこのための予行演習だったのかしら、なんて思って。 そして、私はようやく、その場所に先客がいることに気づく。 掛けられたその声は、歓迎の声なのか、それとも迷惑がられているのだろうか? 瞬きを一つして、先客を見つめた]
(81) 2015/07/17(Fri) 22時半頃
|
お願い…?
[甘えるようなアマルテアに対して嫌味を言う気にもなれず、黙ってそれを聞けば一瞬にして顔が赤くなって
周りを見れば好奇心だの、囃し立てる声が聞こえてはしっしっと手を振る]
……移動しよう、うん
ここじゃ流石に恥ずかしいってハナシ
[冷静になってみれば何をしているんだろう、こいつ等。というくらいな恥ずかしい事をしていて
抱き合っていたのをゆっくりと話して、お互い赤くなった顔を見ないようにそっぽを向いてしまう]
あー、もう!見るなってハナシ!!!
お前等持ち場に戻れよ!…戻れってば!!!
[そう叫んでから、ゆっくりと立ち上がって再度自分の部屋の方へと歩き出す
振り返ってアマルテアの顔を見るほどの度量はなくて、震える足を引きずりながら壁に手をついてゆったりと歩いて]
…キミも来るだろう?
治療器具なら多分部屋にあるぞ、と
[そう彼女に問いかければ、付いてきてくれるだろうか**]
[ノアに案内されるがままに、再度彼の部屋の中へ。
扉がばたんと閉まると、唸るように手を額に当てた]
……ごめんなさい。
今後、あなたが働きにくくならないといいのだけれど。
[彼女には珍しく、しおらしく謝った。
たまには素直に反省することだってある]
腕、見せてくれるかしら。
今度は泣かないわよね?
[なんて意地悪く笑って。やっといつもの調子だ]
[目ざとく部屋で見つけた消毒液を手に取って。
ふふん、と得意気に笑ってみせる。
ここからは自分のフィールドだ、と言わんとばかりだ]
化膿したら大変だわ。
[なんて大げさに言ってみせて。
彼が良いと言ってくれたら、治療を開始するつもり]
……ねえ、私って。前の職場でどう働いてた?
[そう切り出したのは、しばらく経ってからで]
私も、記憶が曖昧なの。
[正直に、打ち明けた。彼はどういう反応をしただろうか**]
あー、大丈夫だってハナシ
ここじゃそういうの無縁だから、新鮮なんだぞ…と
[最早諦めたようにしおらしく謝る彼女に安心させるように笑って
それから泣かないでなんて言われれば少しだけむくれてみたり]
別に泣きやしないさ…多分ね
それを引っ張ってくるのは卑怯だぞ、と
[嗚呼 こんなにも楽しい会話が出来るものなのだろうか。なんて嬉しく思う反面、彼女が忘れているらしい記憶について、少しだけ不安になったり
治療に関しては覚悟を決めたように傷口を差し出してから、彼女の質問を受け取って、暫く考え込んでしまう]
前の職場…か。僕とキミが仲悪かったのは覚えてるみたいだぞ、と
[獣人、という話題を出した時。まるでわからないとでも言うような彼女を見逃すわけがなく
自分がしている研究を知らないわけがないのだから、彼女のそれは不自然だった]
ヒトを…いや、獣になったヒトをヒトに戻そうとして
被験体と称して自分の薬を使っていた
[それで自分と仲が悪かった。と言えば自分はどちら側だったか、わかってくれるだろうか
それから、曖昧な記憶に関して言うべきか迷って。静かに口を開いた]
――キミのお兄さんは、覚えてる?
[彼女の返答をじっと待つ。真実を伝えるべきか。そして、知ってしまったとしても自分は彼女に間違っていると言えるだろうか**]
|
……今回限りですよ、と言うのは。 ―――意地悪ですかねェ…
[ ” 要望 ”に、男は嗤った。” にやり ”は今でも変わることなく、ただ不気味に影を落とす。 幸せそうな” にんげん ”の表情を見た男の単なる思い付きの 。 ” 意地悪 ”は、果たして。
軈て男は隣に在る影を柔らかに担ぎ上げた 。ちくりと刺さった髪先も、大して意にも介さず。 ――否。ひとつ、 「 貴女に似合う頭巾でも、買って来ましょうか 」とのみ。言葉を浮かせたのだったか。 ]
(82) 2015/07/18(Sat) 00時頃
|
|
[ ………螺旋の階段を登る 。地下に居れば果てし無くさえ思われる其処を 怠惰な足取りで。 塔の壁、隙間から垣間見得たひかりは確かに――「 そと 」のものであった。 男はそれを鬱陶しそうに見つめては、また一段と足を乗せた 。脳裏、思考の端。 ちらりと「 鍛える 」との文字も過りつつ。
その道中で、紡がれたのは ―― 「 自由 」で「 孤独 」であった針鼠の声>>79だった。言葉の底に、過去のしがらみ――実際は寧ろ彼女は柵など嫌っていたが――その背景、また心うちが見えた気がした。 まるで「 しあわせ 」で、「 さみしかった 」ような言葉付きに、男はほうと息を吐く。 ]
(83) 2015/07/18(Sat) 00時頃
|
|
………これからもっと、知ればいい。
[ 短く返した其れは、見方に寄れば投げ遣りにさえ聞こえたかもしれない。 されど男は別段、面倒な表情は映さずに。 ただ、平生と変わらぬままであった。
――― 間も無く足を上まで運んだならば。 眩いばかりのそこに手を翳しつつ、 男は自身の家へと彼女を招待しただろう。―――それは新たな、温もりとして。]**
(84) 2015/07/18(Sat) 00時半頃
|
|
…すごく、意地悪だな。
[その言葉に>>82は、そう返す。不気味なニヤリは、いまや、ただただいたずらっぽく見えて。はぁ、と、ため息をつく。幸せそうな、ため息。]
…そうだな。じゃあ…ヴェスパタインに合わせて、尼さンか?
[頭巾でも買おうか、との言葉にはそう返す。返してから、あ、と思う。考えてみれば、修道服はこの髪から他人や自分を守るのに、かなり適した構造ではないだろうか。丈夫な麻布の頭巾をした上に、ベールを二重に被るのだから]
[『外』の光が見える。あれだけ欲した外の。だが、それに全く興味はなかった。どれだけ自由にあるきまわって、果てなき果てまで探し回ったとしても、ここより幸せな場所はないと、確信できるからだ。もしもこの螺旋階段を登った先が狭い独房でも。きっとハリネズミは受け入れるだろう。そこは世界一幸せな独房なのだから]
(85) 2015/07/18(Sat) 00時半頃
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|
……ああ、教えてくれ、ヴェスパタイン。
アタシは…まだ、何にも知らない。他の奴が知らないことばっかり覚えて、知ってることは殆ど、知らない。だから…こんなに、人がいる世界で。人と、触れ合うことを、知らなかった。
あの、初めて撫でてきた時… それを、初めて知ったから…
これからも、教えてくれ
[いままで、誰にもしてこなかった分なのか、たくさん、お願いをする。身体の、心の、ふれあいを、積極的に望んで]
(86) 2015/07/18(Sat) 00時半頃
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幸せって、どこまで幸せになれるのか、とか…
[いまが最高潮に思えてならないが、それでも、きっと知らないだけで、もっと上はあるのだろう。だっていまの幸せも、前は想像すらできなかったのだから]
(87) 2015/07/18(Sat) 00時半頃
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|
[ まるで魔法の言葉みたいに、 決して忘れてはいけない呪文みたいに。 僕を突き動かす二つの言葉が、脳底に貼りつく。
焦燥 。
それは『 こいしい 』から? ただ、『 あんしん 』したいから?僕にはわからない。 わからない、 ……解ろうと、していない。 ]
(88) 2015/07/18(Sat) 00時半頃
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|
……、 ………
[ 地下に居たときは、外に出るとしても付近までしか許されなかった。 僕はいつのまにか近しい記憶の外に行っていたことに気が付く。 消えた人混み 。 ちいさな僕に気付かずに、僕を蹴る人はいない。 僕は首をぐぐ、と伸ばして遠くを見た。 ―――とおくとおく、のそら。 合わせ鏡の、うみ。
『 ―――うみ、 』 ( 記憶のだれかが呟いた気がした。 )( 僕はきょろりと辺りを見渡す )( ……落胆したこころは、 なんだろう? )
一体何れ程の時間が、此処に来るまでに費やされたのだろう? 疲れたときには甲羅にこもっていたから、太陽の動きさえ掴めずに。
「 まるで砂漠に迷ったみたいだ 」 僕は思った。 思って、ひとまず誰かが焦がれた「 うみ 」へ向かおうと足を伸ばした―――その先、 ]
(89) 2015/07/18(Sat) 00時半頃
|
|
?! ―――ァ、
[ 驚愕に浮いた声が、喉元からこぼれた。 獣の鳴き声は小さく、しかし大きく。 踏み出した先 いや先なんてなかった。 丘だったんだ、――いや、崖かもしれない。ころころと甲羅に隠れたまま、僕は急斜に転がり出す。 時折突っかかる障害に、ない眉を顰めながら ]*
(90) 2015/07/18(Sat) 00時半頃
|
―― →路地裏 ――
[ あれからどれ程経ったのだろう。もしかしたらあかあかとしたそれから紫へ、“しんかい”と一間、覗き込まれたその黒へと。
やがてはまた、ぐるりと天に陽を繰り返すのを。
“ほんもの”のひかりが、その空気すらも変えていくのを、感じていたかもしれない。
潮騒のなか、2羽の“とり”が羽ばたくのを。そうして、“ひと”と“けもの”とが踏み出す、一歩目のそれをフードの奥、聞くことすら。]
|
[ おちて、おちて、そのさきは?
僕はひょこりと首穴から顔を覗かせた。 転がり落ちて、叩かれた体躯は痛く。ずきずきとした鈍痛が僕を苦しめた。
――けれど。
すん、 鼻を鳴らすと 先よりもたくさんの潮の香がした。 ぱちりぱちりと瞬きをして、僕は目を開く。 ――うみねこが、 鳴く。 ここは、 ]
(91) 2015/07/18(Sat) 01時頃
|
|
( うみだ、 )
[ 誰かの焦がれた、 海だった。
青はどこまでも青く 空には雲が身を横たえらせる。 『 このけしきだ 』と、僕は思った。 ―――” なに ”と比べてかも、わからないまま。
この景色だ。 どこかで見たような、懐古。 誰かが焦がれたこの景色を。 しょっぱい水を。
僕は、以前と変わってしまった姿のまま。 そして変わらない、 独りのまま。
『 漸く 』と思ったその裏、 ―――僕は、 ]
(92) 2015/07/18(Sat) 01時半頃
|
|
、……も、 …――き― と、
(93) 2015/07/18(Sat) 01時半頃
|
―― →路地奥 ――
[ 白亜から逃れた向こう側。 “ひと”の気配を、
そのままのまなざしを、儘うける「そと」の世界に、壁に擦らせた体を街中へと運んでいく。
いきていたい、いきたい。――いきなさい。言われたとおり、漕ぐ足は止めず。
先ほどの――つい持って逃げてしまったままの――林檎の1つを、すり、と鱗の指で擦りあげながら。
途端皮が剥け、濁と果汁がすり切れた手袋の奥へしみ込む。空気に触れた身はやがて変色し、甘いにおいをぷんと漂わせた。
ならない虫を抱えた腹に、ただひりとした切迫を感じつつ。――ぼと、と路地に熟したそれを落とすまま。
欲しいと焦がれるそれに目を逸らしていれば、「 」を求めてぜんぶをくい潰す事もなかった。
手に触れるそれを――、どうして、欲しいと思ったのかすら、やはり思い出せなかったけれど。*]
|
[ …… 近くに『 ふるさと 』がある気がする。 行かなければならない。そうしなければならない。 そうしたら、 僕は一体、なにになれる? 独りのまま。 ずっと、
口から漏れた泣き声が、 『 合言葉 』にも似た彼の名前を呼ぶ。
( ―――こんな姿では、 きっと。 ……気付かれることも、無いんだろうなあ。 ) なんて。 ]
(94) 2015/07/18(Sat) 01時半頃
|
|
[ 君は、いま どこにいるの ]
( こてりと、僕は四肢を投げ出した ) ( 『 ふるさと 』より先に、彼をと願っては ) ( ―――僕の先は長いから、また逢えるまで――と 。 )*
(95) 2015/07/18(Sat) 01時半頃
|
|
[ジリヤ=アコニタム。アコニタムとは、トリカブトのこと。 花言葉は、「人嫌い」「厭世家」「復讐」…]
(96) 2015/07/18(Sat) 01時半頃
|
|
[『美しい輝き』
ハリネズミの髪はキラキラと…窓から射す「外」の光を反射し、輝いた]
(97) 2015/07/18(Sat) 01時半頃
|
―― →? ――
[ からからと乾く喉奥、「はて」かもしれないと、――文字に読む砂漠を思い返しながら。
ひらけたその奥、“しんかい”じみた視線の先。
鱗のように揺れ立つ波、泡じみた白は幾度も、すなの粒を舐めては引き返していく。フードをおろし、先を1つ、小高いそこから見下ろせば。
茫洋と、「それ」は広がっていた。
誰かがうたったそらが、ひらひらとした光が、とおくまで映し込まれている。
鼻腔へ滑り込む潮のにおいに、いつかなじみの彼と開いた本のなか、綴られた言葉を。
彼の声で初めてしったそのなまえを、小さく零し落とす。]
―――うみ、
[
踏み出した足をゆるく、階段へと今度は下ろし込み、かわきの正体すらしらない躯を進ませる。
潮騒の――うみねこのこえを下ろしたフードの下、露わになった耳奥へ流し込みながら。
“いばしょ” “いきられるところ”
――ふるさと。
反芻は絡め合うように腹底へと落ちていく。
それでも、やはりたりないとなく虫は、満足にいえる奥は、持つ事はないまま。
――ひた、とその足を止めたのは、聞き覚えのある誰かの声を。……” ”と、一間先を、もとめたその声を、きいた気がしたからだったか。]
……チェビィ?
[ やがて声のそのさき、ころり、と。甲羅にくるまる“なにか”へと足をむけ。
すり切れた手袋、一応と覆われた指先を触れかけ、――やがて迷いなくのばせば。
今度は、届く事はあっただろうか。*]
|
――― おまえが望むなら、 どこまでも。
[ 「 崇拝 」とは違う、別の――それが「 使命 」ならば。
男は一度彼女を降ろし、 その耳許で囁いた 。 ]*
(98) 2015/07/18(Sat) 02時頃
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