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ッ
[頬に衝撃、痛み。
口の中は切れはしなかったけれど、それでも気分は悪い。
いっそ狂気と呼んでもいいかもしれない感情に、
硬翠を細めてそれは睨みに変わる。
湯を頭から掛けたまではいいが、男の反応を見るに、
どうもこれはこちらの文化にはないことらしい。
自国の公衆浴場は蒸し風呂だが、こちらもそうなのだろうか。
けれど湯がはってある以上はそういう文化なのだと思っていた]
『意趣返し?お前が洗えと言ったのだろうに』
[男の言葉に応える声は至極当然みたいな顔をしていただろう。
別に怒られる筋合いはないとばかりに首を傾げた]
『…全身?』
[どうやって、とばかり首を傾げる。
訝しむかのような声と表情のまま、とりあえず湯をもう一度組み上げて
それから石鹸を取りに行くことから始まった。
今更気づいたのだが、どうやら石鹸には蜂蜜が使われているらしい。
向日葵の蕊のようなその濃いゴールデンオレンジは、
泡立てると甘くていい匂いがした]
メモを貼った。
― 現在軸・客席 ―
[主人を睨んでから、いくらか経った頃。
反抗的な態度に主人はどんな反応を返していたか。
ふと、耳が舞台から聞こえた青年の叫び声
自然と舞台に漆黒が向く。]
―――…な、に……?
[一見、裸のまま拘束されているだけのように見えたが、
彼の耳にはいつの間にかヘッドフォンがつけられていて。
それに気付くと同時、彼に何かを囁く男
…っ、……
[わざとらしい視線。
その行動から、恐らくあの男も私を餌に彼を苦しめているのだろうと推測した。
ぎり、と唇を噛み締めるが、今は怒りよりも。]
や…やめ、………
[視線は舞台に縫い付けられたまま。
叶うならふるふると首を振ろうと。
そしてまた男と目が合って。
その次の瞬間。
漆黒が大きく見開いた後、顔をくしゃりと歪めた。]
――――もう、やめて…ッ!!
[客席から舞台へ、透き通るような声が投げられる。
耳を塞がれた青年には届かなかっただろうけど、墨色の男の耳には届いたか。**]
メモを貼った。
イイ顔。
[硬翠が睨み上げてくると、男は愉悦に顔を歪める。
其れから青年の様子を眺めていると石鹸を取りにいくようで。
男は指図するでもなく彼の好きにさせることにした。
男二人の浴室にそぐわない甘い香りがふんわりと広がる。
泡立てた其れをどうするのかと、首を傾いでみた]
[歪んだ表情なんて見ていても気分がいいものではない。
とりあえず石鹸を泡だててみたまでは良かったのだが
普通にその甘い匂いに和んでしまって、それどころではなかったのを思い出す。
全身を使えと言われたのだが、どういうことなのだろう。
軽く首を傾げて、それは風呂上がりに体を揉み解せということなのだろうか。
これ自体は自国にいたころに何度かやってもらった事があるがとても気持ちがいい。
まあ、概ねそんな感じでいいのだろうと気楽に考えて]
『来い。こちらだ』
[あくまで浴槽の湯は綺麗に保ちたいので、泡を飛ばすのもどうだろうと
頭から湯を被った男を泡のついた手で手招く]
[細かい泡の立つ蜂蜜の石鹸。
自身の髪の色を薄くしたようなその色から香るにおい。
泡だらけの手で招かれて男は立ち上がった]
はいはい、仰せの通りに。
[お手並み拝見といった風合いで彼の前に仁王立ちになる。
当然前を隠すような素振りは見せない]
[石鹸の匂いが気に入ったのだろう、来るのを待つ間泡を吹いてみたりもする。
立ったままだったので、当然洗いにくい]
『立ったままでは洗いにくい』
[視線を床へと。
男が座ったかどうかはさておいて、軽くもう一度湯をかけてから
泡に塗れた手はまず男の背を撫でるように洗い始める。ごく普通の洗い始め。
少しだけ横着してそのまま肩から腕を洗うと、少し自分のほうが小さいので、
まるで二人羽織みたいになった。男の背に胸が当たるけれど、まったいらなそれは
柔らかさに感動する事も何もなさそうだった]
メモを貼った。
メモを貼った。
[シャボンがふわりと舞う。
ちらりと視線を流していると、声がかかった]
ああ、そうか。
これでどう?
[視線の先、床に尻をつく。
硬いタイルが冷たかったが湯が流れれば左程気にもならなくなった。
泡が触れる]
――…
[背と言わず腹といわず無数の蚯蚓腫れ。
其れは昨日今日のものでは無い。
それだけでない幾つもの傷跡が泡で隠されていく]
へぇ、洗い方ちゃんと知ってるじゃない。
[腕をとられながら胸が背に触れれば、男は正解だとばかり小さく笑った]
『いいだろう』
[肌が渇いていると石鹸は泡をたちまち潰すから。
石鹸の匂いが気にいった事もあって、何でもかんでも嫌がる普段に比べれば
随分と機嫌良く動いていたか。
洗い方を知っている、という言葉に、首を捻るがそのまま洗い続けた。
全身に残る傷跡は、随分と古いものに見えた。
泡がついている手とはいえ、滑らせれば引っ掛かりを見せるような場所もある。
男が肌を見せないのはこれが理由なのだろうか。
まあ見せられたところで何があるわけでもないからして。
ただ、気にするよりも今はこの面倒な命令を済ませてしまおうと手は動く。
肩、腕、背面。そこまで済んでしまえば今度は前。
一度湯の桶を傾けて石鹸を泡立てなおし手男の前に座りこむと
首筋から鎖骨、胸へと白い泡を纏った掌は滑る]
……口のききかたに気をつけるんだね。
後が怖いよ?
[愉しげに笑いながら告げてやる。
前にまわる青年に気付くと、苦笑が漏れた。
泡が擽るように流れていく感覚へ僅かに身を捩りながら]
こらこら、全身使えって言っただろう。
此処、使うんだよ。
[口出しせぬ心算ではあったが
そうじゃないと首を振った。
人差し指で相手の胸をつつく]
『この性格を気に入って買ったなら、諦めるべきだろう?』
[笑う声に諦めろとばかりに告げる。
また濃くなった蜂蜜の香りに呑気にしていたら
聞こえた駄目出しに首を傾げる]
『さっきは、合っていると言ったはずだ』
[何が違うのだろう。軽く首を傾げた。
ここ、と言われて指差され、そこに在るものを見る。
どう見ても自分の胸しかない。
もう一つ首を傾げる]
やだな、
その鼻っ柱をへし折りたくて買ったんだから。
[少し違うと口元を歪める。
首を傾いだ青年には思いつかない様子。
男は肩を竦めて首を振る。
足を伸ばして座り直し]
さっき背中にしてたみたいに、その胸に泡つけて擦るんだよ。
全身使えって意味、わかるかい?
[ひらひらと手招く]
『…どちらもそう変わらん』
[小さく一つ息をついて、肩を竦めた。
そうしたら、目の前で同じ行動。
背中に、と言われたけれど]
『そのような事、した覚えがないんだが』
[要するに偶然の産物だ。
幾らか睨みながら、それでも手招かれたら
応じないわけにはいかない]
まあ、Jadeにとってはそうかもな。
[両肘をタイルにつけながら、天井を見上げる。
床に寝そべるようにして、青年が跨るのを待つ]
してたよ、さっき
腕洗うときにさ。
早くおいで。
洗わないと終わらないよ?
『…買われた人間には、変わらない』
[買われた、その事実は変わらないから。
無意識の行動を告げられて、表情は幾らか険しく。
洗わないと終わらない。それは間違いなく事実だ]
『……解っている、そんなこと』
[声が苛立ちを含んだ。
先程までは石鹸の甘い香りで機嫌も良かったのに、
最早それどころではなくなった。
石鹸と湯を足す桶を手近に引っ張って、渋々とその上に乗る。
泡まみれの手は、どうも男の上につくには安定が悪かった]
― 現在軸・客席 ―
…あッ、痛―――!
[主人が髪を絡め取って引いたのは、少し前の事。
私が願っていれば、彼は少なくとも今よりは楽になれていたかもしれないのに。
髪を引かれた時に囁かれたのはそんな言葉。
はらはらと涙を零しながら、それを聞いた。
本当にそんなつもりがあったのかどうかは知らない。
けれど、もし私が願っていて、助ける事が出来ていたなら。]
わ…た、し……
[怒りのままに反論した事を酷く後悔する。
今も尚、髪は引かれたままだが、顔が歪むのはそのせいではなかった。]
そりゃそうだよ。
わかってるんなら、ほら。
[ぺちぺちと太腿を叩いて笑った。
浴室の適度な湿度で風邪は引かずに居られるだろうが
このままでは何時までたっても終わらないと告げて。
青年の機嫌が段々悪くなるに反比例して
男の気分は満たされていく]
それで、その泡を此処に塗って
胸で擦るみたいにして?
[指示を出して、腕を枕に男は目を閉じる。
口元は相変わらず弧を描いていた。
彼がその通り男の上で踊り始めたら
滑る泡と男の身についた無数の凹凸が彼の胸を刺激する筈]
…っ……
[青年の悲鳴が耳に届いたのはその折。
彼が何をされているかはわからないが、私のせいで彼が余計に苦しめられているように思えて。
咄嗟にやめてと舞台へと叫んだ。
青年から返ってきた言葉は何とか耳に届く。
その言葉にまた胸が軋んで、壊れそうになる。
手が自由なら、襟元をぎゅっと握り締めただろう。]
ぅ、ぁあ……っく、…ああぁ…
[次第に嗚咽が漏れて。
零れ落ちる涙は止まらない。
そこに落とされる、蜘蛛の糸。>>*19
それが金目の青年に何度も向けられた言葉という事は知らなかった。
だから。]
……もう、さからい ません、から
[この男の優しさは偽り。]
おねがい、…します
[そんな事わかっていたのに。]
―――かれを、たすけて…くださ、…
[それでも助けを請わずにいられなかった。
言い終えて瞳を閉じるのと同時。
またひとつ、雫がこぼれおちた。]
メモを貼った。
メモを貼った。
[叩かれた太腿、苛立ちを隠さないままそこに乗る。
いっそ泡のついたこの手でも男の口に突っ込んでやろうかとは、思うだけ。
石鹸を手にとって、濃い泡を更に。
自分に塗ればいいのか、それとも男に塗ればいいのか。
迷ったけれど、男に塗っておくことにした。
胸、と言われてどうしようかと考えて、それでも先程のが正しいというなら
仕方ないから上半身を男の上に伏せる。
なだらかではない胸は、泡のせいで酷く滑る。
それだけでも嫌なのに]
…っ
[泡よりも、男の肌を走る傷のほうが厄介だった。
まるで、指先で軽く遊ばれているみたいで、
時々動きがぎこちなかったり、止まったり]
[弾力の足りない身体が男の胸の上で滑る。
傷のある身が青年の胸の飾りに与えるのは
捏ね回すのとはまた違った刺激。
時折動きが固まるのをくすくすと笑いながら、
男は足を彼の太腿の間に滑り込ませる]
ああ、気にせず続けていいよ?
[動くたびに軽く刺激してやりながら
寛いだ様子で泡が広がっていく胸元で
彼の反応を観察していた]
メモを貼った。
[妙に滑るのは泡のせい。動きが止まるのは、肌の凹凸のせい。
柔らかさなんてかけらもないのに、こんなことをさせて何が楽しいのか。
笑う男は随分と楽しそうに見えた]
──ッ
[足の間に滑り込む足。後ろに下がりづらい。
どう考えても故意だ。それが苛立ちの原因。
微かに上がり始めた体温を、隠すものもない。
それでも、許可が下りるまではどうにか続けようと]
[其処だけ弾力を感じる皺袋を刺激してやりながら
男は欠伸を一つ]
終わったら起こして。
ちゃんと全部洗うんだよ?
[目を閉じ、口元に笑みを浮かべたまま
青年の行為の先を促す。
浮かぶ表情が男が本当に眠ったわけで無いと教えている。
何処まで泡姫の真似事が出来るか、試しているのだった]
― 回想軸・道化の部屋 ―
[男が股の間に顔を寄せると咄嗟に脚を閉じそうになったが、
じゃらと鎖の音がすれば思考は冷えて、行動には移されない。
じっと灰青は一点を見詰めて。
その視線に羞恥心と恐怖心を募らせたのも一瞬の事。
卑猥な音と共に、ぬるりとしたものが身体に入ってくる感覚。
それには身体を揺らして短い悲鳴を上げた。]
―――…ッん、 んんっ、…!
[加えて忠告があって、口から落ちそうになったものを再度指で押し込まれた。
苦しそうな声を漏らし、男の舌がまた下腹部へと落ちればぎゅっと目を瞑る。]
……ッ
[欠伸。事もあろうに。
性への刺激も何もかもをひっくり返す、苛立ち。
いっそ男を踏みつぶして起こしてやろうかと思ったが、
さっさと終わらせたくてそれが今は勝った。
それにしても全部胸で洗えとでもいうのだろうか。
文句を言われないうちにさっさと済ましてしまうに限る。
体が渇いてきて泡の効率が悪くなればまた泡だてて。
こっぢが変に意識するからいけないのだと割り切って、
胸から下腿へ、爪先へとゆっくり体を滑らせた]
〜〜〜―――ッ!
[くにくにと男の舌が動く度に小刻みに身体が跳ね、軽く歯が当たると大きく仰け反りそうになる。
足枷の錘が落ちてしまわないよう、すんでのところでそれを耐えて。
叫ぶ事も出来ない故に、ただ上を向いて声にならない声を上げた。]
(いやだ、いや…っ、きもちわるい)
[身体は反応しても、それが数刻前の情事と変わらない行為だとしても。
心は閉じたまま、嫌悪感を訴え続けていた。
やがて男が口を離せば、その顔に漆黒を丸めた。
男の口の周囲が紅く染まって、その紅が何であるかを想像するのは容易い。
カッと顔に熱が集まったが男は気にせず私の口の中のものを
取り出して手にすると]
―――っや…!
[ぐっと先程まで舌を差し込んでいた場所へと押し込んだ。
次に男が手にしたのは。
太めの針と――――]
…な、にする……気…
[問いかけてはみるものの、先程の言葉>>4:*7から想像は大方できていて。
彼はどうやら本気で実行しようとしているようだ。
その姿には、顔に集まっていた熱も瞬時に冷える程の恐怖を覚えた。]
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