人狼議事


126 生贄と救済の果てに〜雨尽きぬ廃村・ノア〜

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メモを貼った。


[何故、彼女が避けなかったのか
 例え問われたとしても、彼女は答えなかった。
 それは、魔法使いであろうとする彼女にとって
 矛盾した願いでもあったからだ。

 彼女は、魔物のままのイアンの声に笑みを向け。

 答えない。]


[死に瀕した彼女は、目を閉じ、音を聞く。
 雨音。水の跳ねる音。魔物と、誰かが戦っている音。

 何時尽きるか分からない、彼女の命。
 赤い雨で、彼女の命は流され始めている。
 このままなら、彼女はきっと死ぬのだろう。

 彼女の頬に、右手が触れる。
 冷たく冷えた彼女の身体。

 このまま死ぬのなら。
 せめて魔法使いの『生贄』になることを彼女は願う。]


[生と死の狭間を漂っている彼女の意識。
 その所為か、彼女の耳に人とは違う声が聞こえている。

 このまま彼女の命が流れきってしまうのならば
 彼女の願いは。

 命の灯は狭間で揺れる。
 人としての死か。
 魔法使いとして誰かの『生贄』になるのか。
 それとも――。

 それは、私にも分からない。
 彼女の唇は、笑みを描いたままだ。**]


メモを貼った。


[時と共に。
 赤い雨は彼女の体温を奪っていく。
 彼女の血液と混ざり、暗い紅へと変わっていく。

 彼女は、魔法使いとしての誉れを願う。
 私は、せめて彼女に人としての最期を祈る。

 もう一つの可能性は、私も彼女も。
 考えていない。]


[嘗て、彼女は禁術を行い
 其れによって、左目の光と右目の視野を失った。

 もう一つの可能性――誰かが救済すること。

 たまたま、一緒の要請になっただけだ。
 代償を負ってでも、彼女を救済する者はいないと
 彼女は思う。
 その必要はない、と。

 しかし、もし救済されたのならば。
 彼女は。]


[イアンが水を蹴り、彼女から離れていく
 その音も、彼女にはもうよく聞こえない。

 煩い位彼女の身体を叩く雨音も
 今はもう遠くのことのように。]


メモを貼った。


メモを貼った。


[私は思う。
 笑顔とは
 無表情よりもその感情を隠す表情だ、と。

 彼女が常に笑みを浮かべているのは
 その内にあるものを、覆い隠す為だ。

 魔法使いには感情は、不要。
 時に判断を鈍らせ、迷わせる。

 魔法使いは、
 いかなる場合も冷静で
 冷酷でなければならない。

 彼女は、そう考えている。

 だから笑みを浮かべるのだ。
 生贄にされている、この状況でさえ。]


[彼女が生贄にされ、発動した魔法は雷。

 ――光と音を伴う放電。

 彼女は、雷の力を宿した矢尻を使っていたけれど。
 私は、それだけが理由とは思えなかった。

 光を失い、音によって生かされていた彼女。
 そんな彼女の彼女の最期の魔法が雷だったことは。

 きっと
 偶然なのだろうけれど。]


メモを貼った。


[…… 一つ、昔話をしよう。
 長くて、それでいて、つまらない話だ。]


[彼女が、魔法使いになった頃だから
 十数年前になるか。


 彼女は、一人の魔法使いと出会った。
 とある要請で同行するようにと言われた
 所謂、相棒、と言う奴だ。

 その魔法使いは、彼女より少し年上で
 彼女より少し、長く魔法使いをしていた。]


[本名を忘れた、と。
 彼女が告げた時、ならばと相棒が呼び名を与えた。

  ツェツィーリヤ。

 それは。その相棒の名を、
 彼女が生まれたとされる国での呼び名に変えたもの。

 相棒ならば同じ名が良いだろう、と。
 笑う相棒に、彼女は小さな笑みと頷きを返した。

 それ以来彼女は、相棒と行動をする時
 ツェツィーリヤと名乗るようになった。]


[昔から、彼女は魔法使いであろうとしていた。
 彼女は相棒にもそれを求め、相棒はそれに頷いた。

 どちらかが、瀕死になったのなら
 迷わず『生贄』にすると。

 何度共に要請に当たったのだろう。
 自然と過ごす時間が多くなる。
 互いにそれを苦とも思わなかった。
 心地の好い関係だった。]


[二人で挑んだ、とある要請。

 苦戦した。
 魔法が尽きかけ、一つは壊れた。

 そして、彼女の相棒は魔物の攻撃を受け、死に瀕した。
 相棒は、約束通り、『生贄』になることを望む。


 ――しかし、その約束は破られた。]


[禁術を用い、彼女は相棒である魔法使いを救済する。
 彼女の左目が最後に写したのは
 相棒の、顔。

 助けられた相棒は
 代償を負った彼女を庇うように。

 辛うじて魔物を倒した。
 どうやってなのか、分からない。
 ただ、相棒は必死だった。]


[その日の夜。
 相棒は彼女に問うた。

  どうして、救済したのか。

 と。
 其れに対し、

  わからない。

 と、彼女は答えた。]


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