人狼議事


191 忘却の箱

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視点:


【人】 見習い医師 スティーブン

-ざわめき-

[診察室へ、数名のスタッフが駆け込んでくる。
その表情は険しく、言葉は鋭い。]

――クリスと、シーシャが……

[スタッフが口々に言葉を発する。

曰く、近隣住民の評判が。
曰く、何かあった場合遺族へどう説明すれば。
曰く、管理体制への指摘が。

その一つ一つを聞きながら、スタッフである彼らの考えを、男は感じていた。

勿忘草病は感染するものではない。
だが知識があり身近で世話をしている彼らですら、それは忌むべきもので人々の目に晒すものでないと考えているのだ。
それは。]

(14) sainos 2014/09/14(Sun) 13時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

君たちは―――どうすべきだと思ってるんだい?

[内心の反吐がでそうな感覚を抑え込み、男はスタッフに問いかける。]


出先での急変は確かに心配だ。
―――だが、彼らだって外出する権利があるんだ。


[そうして目の前の人間に対して、静かに、しかし血のにじむ声で告げる。]



彼らは人間だ。

(15) sainos 2014/09/14(Sun) 13時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

[二人が帰ってきたのは、すっかり夜の青い闇が手を伸ばしたころだった。

帰宅を告げるスタッフの声に診察室を出る。]


おかえり。


[医師はそう言って、微笑みながら二人の頭をなでた。
謝罪の言葉を聞きながらくすくす笑う。]

―――どこに行ったんだい?よければ……僕にも聞かせてくれないかな。

[久しぶりに青年の目に灯っていた光に少しだけ、驚きと喜びを感じながら。]**

(16) sainos 2014/09/14(Sun) 13時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

-その夜更け-

[細く開けた窓からは、少しだけさやさやと風が入っていた。

窓をそろそろ閉めようか。
寝床についたものの体のおさまりは悪く、寝返りを打った瞬間、ざあ、と風が大きくレースのカーテンを膨らませた。]

―――……?

[身を起こし窓に手をかけ―――またざぁっと風が、花びらを乗せて吹き込む。>>87


――――花びら?誰の?]


………ああ。君か―――

[窓の外を見れば、中庭の淡い光の中、林檎の木がさやさやと揺れていた。

しばらく男は、その木をただ見つめていた。]

(17) sainos 2014/09/15(Mon) 20時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

-昼下がり-

[男はすでに「咲いてしまった」みんなのカルテを一つ一つ机に並べていた。
今までも、一気にみんな咲いていくことはあった。
季節の変わり目は、特に顕著な気がする。

――かつて自分が書きつけた文字をゆるゆると指でなぞる。

これらのカルテは、一部のコピーを外部の研究機関からの依頼で渡す以外は、ほとんどが書庫の鍵付き書架にしまわれる。


今まで、様々な患者たちがここで暮らし、そして―――]

(18) sainos 2014/09/15(Mon) 21時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

[追憶はドアのノックで途切れる。

開けばそこには賄い婦がいた。
少し怪訝そうな顔をして、屋上から花が降ってくる、と彼にドライフラワーを手渡す。]


………!!!


[見た瞬間、彼は跳ね上がるような勢いで屋上への階段を駆け上がり始めた。]

(19) sainos 2014/09/15(Mon) 21時半頃

【人】 見習い医師 スティーブン

-屋上-

[屋上の扉を開けた瞬間、まさに彼は、そのフェンスを乗り越えたところだった。>>81]


やめろ―――!!



[男は珍しく声を張り上げる。
目の前の青年の、広げた両腕に広がる、花、花、花。


花が記憶を吸って咲くなら、彼の花は、いったい何を吸って。]

(20) sainos 2014/09/15(Mon) 22時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

[羽根みたいだろ>>82、と問いかける声に、くしゃりと顔をゆがめる。]


―――覚えてるよ、覚えてる。


[彼は、他の患者よりも長くここにいた。
―――いや、他の患者に取り残されて、ここにいる。

何度も何度も傷つき、時には自分を傷つけて、ここに。]

(21) sainos 2014/09/15(Mon) 22時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

[男に何が言えるだろう。

何が言えただろう。

忘れることを忌み嫌う青年と、忘れることのできない男。

対鏡のように向き合った二人は真逆のはずなのに、抱える悲しみは何故か似ていた。]

(22) sainos 2014/09/15(Mon) 22時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

―――シーシャ、待て―――待ってくれ、まだ―――

[まだ、君は、人間だ。

その言葉を最後まで言う前に、ふわりと白い羽が宙を舞う。

はじかれたように金網に、体をぶつけんばかりに走りこめば、宙を舞う白い花の中で、シーシャの唇が、かすかに言葉を形作った。]


―――僕は、何もしてない―――


[救われていたのは、僕のほうだったのに。]

(23) sainos 2014/09/15(Mon) 22時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

[糸が切れたようにがくりと膝をつけば、下から喧騒が薄く聞こえてくる。


金網越しに舞い込んできた白い花びらが手のひらに触れ、男はかつて彼がそうやっていたのと同じように、くしゃりと握りつぶした。]*

(24) sainos 2014/09/15(Mon) 22時半頃

【人】 見習い医師 スティーブン

-いつか-

[早朝、中庭の花々に男はホースで水を与える。]


おはよう。

今日はいくつ実をつけたんだい?

ずいぶんたくさん咲いてたね。

今日も元気だね。


[掛ける声の先の花が、雫に揺れる。
一通り水遣りが終わったころ、スタッフが男に声をかけた。]

―――ああ、新しい患者だね。わかった。

(25) sainos 2014/09/15(Mon) 23時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

[診察室に座っていた患者が、少しおびえたような顔でこちらを見る。]

緊張しないでいいよ。少しだけ話をしよう。

[そう言ってカルテにペンを走らせる。]


この花は、いつから咲いたんだい?

[椅子に座ったまま、男に対して言葉を一つ一つ選びながら、自らについて語る。
それを一言一句逃さぬよう書き留める。
男の仕事は、救うことではなく、覚え続けることなのだ。

そのために、ただひたすらに、記録を続ける。]

(26) sainos 2014/09/15(Mon) 23時頃

【人】 見習い医師 スティーブン

[彼の記憶の中には、たくさんの花が詰まっていた。]

(27) sainos 2014/09/15(Mon) 23時頃

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