270 食人村忌譚
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―4日目の夜の村―
[長い、長い豚小屋の夜を振り払い、
思い出を携えながら、夜の村を巡っていく
村の入り口で、一員として受け入れられた
この家で、長い時を息子と過ごした
その傍らの、もともと馬小屋だったという物置で、
若いミナカタに抱かれて一子を授かり、
この道端で、幼い容とともに、歌を口ずさんだ
別れの挨拶も交わさぬ隣人とも、
この辺りでよくすれ違っていたことだろう
母と歩む源蔵の姿を、よく目にしたのはこの道か
1人となった志乃に幼い時分の自身を重ね、
空手を握りしめた場所は、ここ
心中は知れずとも、進が頬を赤くした木材置き場に
その後、櫻子と辿った道なりを振り返れば、
1人鎮守し続けた社には、いつもゆりの姿があった
夜をともに歩んだリツは、今日も辺りを哨戒しているのだろうか]
[やがて、歩んでいく先に、
焼け落ち間もない家が映る
小さな村だ この家に暮らしていた、
2人の兄弟が誰かもわかる
家事と葬儀は許された村八分
葬儀も認めぬ村九分
弔人もないこの場所は、2人だけの聖域だろうか
兄弟がどんな思いで、
死へ向かったかは知らぬまま
ただ、家の前で立ち止まり、
そうであろうと思えることを、ぽつりと呟いた]
ずっと傍らにいてくださる方と、
添い遂げることができたのですね
[この村では得難いだろうと思いながらも、
櫻子に向けた言葉を思い出す
体なき身では、転生のことまでは至らない
ただ、最期の時まで共にいられたであろう、
目先の部分のみ切り取り、思う]
どうか、安らかに
[それは、村九分で弔いもできぬ息子と比べても、
幸せなことであろうと、両手を組んだ
やがて、その場も後にして、
夜とともに、思い出の村を巡っていったことだろう**]
[ススムの亡骸は相変わらずそこにあった。
魂の入らぬそれは、ただの抜け殻
見下ろしていたのは少しの間。
意識はまだ、村の中
死して尚、囚われている錯覚
自分の居場所が欲しかった
家畜と自分は違うから
自分だけの居場所が**]
[ふと意識が浮上する。
目を開ければ焼け煤けた景色が目に飛び込んできた。
足元へと視線を落とせば人間であったであろうモノが転がっていた。
死なせた後悔はないし、死んだ後悔もない。
あるのは胸を満たす多幸感。
これだけ焼け焦げていれば誰にも喰われない。
弟を喰ったのは己だけ。
己の腹の中に弟を抱え、このまま永遠に。
転生もせず二人ずっと一緒にいられる**]
[視線を動かせば弟の姿が目に入る。
その弟は別の場所を見ていて
ぴくり、肩眉を上げて錠の傍に寄り、顔を覗き込む。]
死ぬと心が狭くなるようだ。
こちらを見てくれ錠。
他の誰でもない私を。
[言いながら錠の手を取り、その指を食む。
霊体がモノを喰えるのかは分からない。
分からないが想いを込めて噛み付けば歯に確かな弾力を感じるような気がした。
錠の全てを喰らっていないから。
このまま時間をかけて食んでいきたい。
そうして最後には全てを腹に収めてしまうのだ。]
ん、兄さん?
[不意に、顔を覗き込まれ、なんだろうと瞬いた。
そして、兄の言葉を聞いて、もう一度。]
……うん。
兄さんは、僕だけのものだから。
[指先を食まれながら、嬉しそうに笑った。
笑って、兄の肩口に、ゆるやかに凭れかかる。]
兄さんだけだよ。
だって僕は、ちっさな頃から、ずっと、兄さんだけを見つめて、追いかけてきたんだから。
けど……そんなの、ただの甘えだ、兄離れ出来ないだけだ、って。
ずっと、そう思ってたんだ。
………同じだったんだね、兄さんも。
大好きだよ。
[囁きは、耳元で。
そしてそのまま、少し強く噛みついた。*]
―4日目の夜/大美の家―
[思い出を辿る夜の巡りの終着点は、
独り立ちした息子、大美(ダイミ)の家だった
戸を通り越し、眠る我が子の姿にそっと微笑む]
最後のお別れに来たつもりでしたが、
こんな時間に、ごめんなさいね
[大美は布団をかぶった中にいた
深い眠りにあるようだった
早口言葉でやたらと母の気を引こうとしていた彼は、
自分の死を知っているのかどうかも、窺がえない
その傍らに正座して、息子を見ることもなく口を開く]
これから、どうなっていくのかは分かりませんが
囚われては、いけませんよ
[心に去来するは、石動の言葉から感じた、
先行きへの陰り
何に、とは言わなかったが、
これまで息子には、度々伝えてきた言葉だった
因習に、とは思わない ただ]
目に映るものだけに、今の自分の観念だけに、
囚われては、いけませんよ
[自分が来てからも、村からも少しずつ変化を感じていた
そもそも屠殺を特定の誰かに託すなんてことも、
自分が受けると言い出さなければ、
この村にはなかった発想だったのではないかと思う
ここに来た当初にいた者たちは、多くが鬼籍に入ったけれど、
因習に囚われた中での微々たる変化は、
肌に触れて感じてきた]
[絶え間なく革新を進めていた東京府を思い出す
街には異国が溢れており、軍は近代化されていった
それも、もう40年も前のこと
あの時感じた大きなうねりは、今どこまで拡大したのか
村に留まる自分には、もう、想像することもできない
やがて、この村もその激流に翻弄される日もくるのだろうか]
例え、この村が変革の時を迎えたとしても、
囚われることなく、柔軟に生き抜いてくださいね
[それだけ告げれば立ち上がり、
扉をすり抜けて外へ出る
鶏がけたたましく鳴き声をあげる
最後にすべきことを終えた江津子は、集会所へと歩みだす
見れぬかもしれぬと、源蔵に託したこと
ここで起こった顛末を、あまさず見届けるために*]
[偽者、出来損ない。
その言葉を聞く度に、
心の中に仄暗い気持ちが沸き起こる。
けれど、私にあの子を――志乃を憎む資格はない。
何より、目の前の妹の表情を
曇らせたくはなかった。]
偽者なんかじゃないよ。
ゆりは、立派な巫女様だった。
[あの時とは違う。
幼い妹の顔を覗き込んで、
その頬を伝う涙を、指先で拭う。]
ゆりは、私の自慢の妹だよ。
よく、頑張ってたね。
助けられなくて、ごめんね。
[頭を撫でる。縋り付く手を拒むはずもなく、
私も、彼女の背に手を回して
ふたり、わんわんと泣き喚いていた。
姉だというのに、
妹の苦しみに目を向けようとせず、
自分の事ばかりで。私というやつは、本当に。
ごめんね、と幾度繰り返したところで、
その言葉は風のように形無く失せていく。]
[いつまでそうしていただろう。
互いに温かさはない。ただ、そこには風があるだけ。
でも、確かに。
ゆりは私の腕の中にいてくれていた。]
私も、ゆりとこうやって話せて
とっても嬉しいよ。
その、こんなみっともない姉だから、
……嫌われてるんじゃないかな、って。
ずっと、怖かったの。
[母の――先代の眼差しを忘れることは
どうやったって出来そうにない。
それでも、ゆりは巫女である前に
ずっと、優しい私の妹であった。]
[事切れた自分の姿を一瞥して、
そうして、目を閉じた。]
……“次”も、姉妹だったらいいな。
今度は、ちゃんとした姉さんになるから。
[腕の中の小さな子。私の、大切な妹。
どうか、次の世でも共に、と。私は願う。
今度こそ、その手を離すことはしない、と。**]
―5日目の朝/集会所―
[源蔵、リツ、志乃が集うこの場所には、
幽体となったものも人知れず、紛れ込み潜んでいた
死を望む志乃の声に、先に死した者として、
薄く笑って首を振る
源蔵の返す言葉にも、同じ微笑みを送るのみ
何も、口を挟むことはない
死んだばかりに自分にとって、
死の果てに何があるかわ分からないのが理由の1つ
もう1つは、死と離れた生者にとって、
推し量るしかない死の意味に、
各々が生者の立場で、向き合っているのを察したから
源蔵の視線が動き、傷ついた男が姿を現す
江津子は何もできぬ幽体として、
ただ、傍らに佇んでいる*]
[ぼんやりと焦点の定まらぬ瞳が生者のやり取りを見詰めている。
あの場所には、自分の居場所はなかった。
毒、という単語をミナカタが出してくれていたのは覚えている。
きっと誰も、ススムを食わぬだろう。
この家畜ばかりの村になど二度と生まれたくはない。
このまま
誰にも看取られず、消えてしまうのが
ススムに定められた未来
此処に留まっているのは
彼の行く末を、見届ける為だけに]
この群れは滅びる。
そうですね、ミナカタさん。
[ふ、と嗤う声ひとつ置く。
彼の名は、ミナカタである。
どちらだ、と問う子供のような大人を
冷たい視線で一度見やり*]
[丞を床に縫い留めた鍬が、湿った音と共に倒れていく。
片目に刀が刺さったまま、飛び掛かるように覆いかぶさってきたその男の顔は、人というよりも獣らしかった。
やがてぽっかりと開きこちらを見つめるその空洞の、さらにその奥に、ミナカタとしてこの村で生きた男の本当があるような気がして、]
ぐ、 ぅあっ、は
[見えなくなるまで、その闇を睨みつけていた。
声をあげている意識もない。
がむしゃらに動かした手指が何かに触れれば、爪をたてる。蹴とばそうとした足は、鍬をわずかに動かしただけで終わる]
[己も何度も振るった農具によって自由を奪われ、
己の研いだ刃で殺されるは、業の報いか。
人を喰らわずとも生きられる術を持ちながら、
人の肉ありきの冬の過ごし方を良しとした。
忘れられた鬼の一字を自ら名乗り、命を奪う刃を研ぐを悦びとした]
………、 へ、
[最期に残したのは、笑いにも似た音。
ただ喉奥から込み上げる血が震わせた吐息は、命を繋ぐために取り込まれることなく、流れすぎた血に溶け、神社を穢す役に加わる]
[両目は潰され、鼻と口の境目はなく、捲れ裂かれた唇から歯ばかりが覗くその面立ちは、まさしく鬼。
その鬼から血を啜るは、
――――地獄はやはり、地上に在り*]
[どこからか、声が、
生者と異なる何かが聞こえて気がして、周囲を見渡した
視線は何かを捕らえただろうか]
そうかもしれませんね
いつかは、滅びる運命にあるのかもしれません
[声、いや、その何かは、
聞こえるはずのないものだったのかもしれない]
滅びの様を、ご覧になりたいのですか
だとしたら、それはどうしてなのでしょう
[ふと、気になって、問い返す
もし聞こえるはずのないものならば、これも空耳に対する、
受けてのいない独り言だったのかもしれないけれど*]
源蔵の心中、応対がし辛いのではないかと、視線を落とす*
いつか、滅びるようないびつな村なら
家畜しかいない、出来損ないの村なら
今滅べばいい。
嗚呼、僕は
……失敗してしまったんですね
[誰に返したでもない独り言のようにススムは囁き
そして嘆く]
人として生きられぬ家畜など
喰うて宿すしか能のない家畜など
生かす意味など、ないでしょう
殺さなくては。
あれは、不要な生き物だから
殺さなくては。
あれは、狂った群れの家畜共だから
ころさなくても
ぼくは、あのなかにはまじれない
僕だけが、僕だけだ
違うのは
[呪いを吐くよう
殺せ、と
生者の動きを煽るよう*]
そうですね
[生者の、死者の耳にも届かぬやもしれぬ意思
うん うんと頷くのは、
誰かの声に被さるからか
聞こえてくる呪いはやがて、
死した少女の面影を想起させる]
生かす意味などないかもしれません
混じれないなら、殺すのも一手かもしれません
[ですが――――と心に宿るのは、
鶏や牛の声に混じって、
生者たちの言葉が聞こえるからか]
知らなくていいと閉じてしまわれたら、
家畜の方からも、人を知ることは難しいです
門を閉ざして下界を遠ざけた先にあるものは、
村も、人も同じなのではないでしょうか
[語るうちに、志を感じた若者の姿、
仮に偽りであったとしても、
前へと進もうとしているように感じた眼差しを思い出し]
胸襟を開いて知ろうと踏み出されていたならば、
違いを乗り越えて分かりあう姿も、
描けていたかもしれません
知らぬままでは成し遂げられぬのは、
家畜の捌き方と、さほど変わりはしないのかもしれませんね
[お手伝いをさせてあげられず、ごめんなさいね
最後のこの言葉は、声にできていたのだろうか
口をつぐみ、生者達の生きざまを見届ける*]
[集会場の騒動とは無縁の、焼け跡の中で。
兄の耳垂に噛みつき、力を籠めれば、口腔にゆるく血の味が広がったような気がした。
何度も執拗に、吸い付き、しゃぶり、高い水音を響かせる。
合間合間に、甘えるように兄を呼びながら**]
[源蔵の短刀が指を切り落とす
短刀に力を加えた者は誰だったのか
ただ、分かる生末は、その刃がきっと、
生者の一人から命を奪う]
ミナカタさん…………
[分け入るつもりは微塵もなかった
ただ、寒いと訴える声>>*3を耳にして、
自然と足が向かっていく
無駄だと分かってはいても、傾ぐ体を抱きとめようと]
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