8 DOREI品評会
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…… そうだ。
[漆黒が瞬くところまで見て
そしてすぐに背を向けるように視線を外していく。
顔を向けずの侭、背中側に向けて ぽつりと]
俺の、…名前だ。
[買って欲しいと懇願する女の声が響く。
――― 取り残された者の末路が死ならば…]
…っ
[何も出来ずの 自分が不甲斐なく思う。
表情は険しい。]
『貴方の なまえ…。
なぜ 急に…?』
[名前を教えてくれた事は、素直に嬉しかった。
もっと言えば、話しかけてくれた事すら嬉しかった。
心のどこかで、もう話しかけて貰えないような気がしていたから。
だから、視線が外され、向けられた背中にはまた壁が出来た気がして。
少しばかり不安は募る。
急に名を教えてくれた事。
何か、意味があるのだろうか。]
[陰鬱な男の笑い声に、ぎり、と奥歯を噛んで
両手を力いっぱい握りしめた。]
…ッ、痛
[びり、と力めば身体に残る痛みに響いた。]
……
[呟かれた異国の言葉は解らない。
ただ、解らないけれど予想はついた。]
――― … 、…
[唯、この場で理由を言う素振りは見せずのまま
背だけを彼女に向け続ける。]
[舞台上の少女の悲痛な願いは客席に、私の耳にも届いて。
じくりと胸は痛む。
客席の男と主人が入札する様子も無く。
恐らくこのままでは、あの子は―――。
自然と眉が下がる。
無情にも時は過ぎ。
道化師のアナウンスが響き渡った。
落札されたNo.は…5。]
|
落札……ねぇ。
[身体を拘束されたまま、鋭い視線で道化を見つめる。]
私を「飼い馴らせる」か。 ……はたまた「引き裂く」のか。
いずれにせよ、ロクな道のりじゃあなさそうね。
(53) 2010/04/13(Tue) 00時頃
|
―――…。
[問いかけても、返らない答え。
その理由を知る由は無い。
ただ、向けられ続ける背中に漆黒は徐々に翳って。
俯き、りん――…と鈴が啼いた時。]
『ごめん、 な さ、…。』
[唇から零れ落ちるように紡がれたのは。
彼の背だけに向けられた、謝罪の言葉。
小さく、震えたその声は彼の耳に届いたか。]
[痛い。
―― 痛い。
―――― いたい。]
……
[だから 尚、痛みを与えてはいけないのだと
振り返らない。
振りかえれない。
耳に小さく届くのは鈴の音と、 謝罪の言葉。]
ッ…
[唇を 静かに引いて 堪える。]
─ オークション後 用意される花束の話 ─
[ジェレミーの元へ送られる花束。何十本もの薔薇で埋められた柩のようなもの。装飾的な箱の中に、かぐわしい薔薇とジョーゼットのドレスで飾られたカルヴィナが横たえられている。]
清らかなまま死んだ乙女か、
女装の少年のようにみたいだね。
後、スカートをめくらなければさ。
[梱包は奴隷品評会の主催者ヨアヒムに完全に委任する事も出来た。グロリアは最初そのつもりだったかもしれない。けれども、今、イアンが梱包の最後を仕上げようとしている。]
ねえ、カルヴィナ。
手枷と足枷は、会場に運ばれた時も付いてたっけ。
意識があるまま、箱詰めされて運ばれるのは怖いかな。
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