254 東京村U
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― 新宿通り沿い喫茶店 ―
[それは相違なく不可思議で、とはいえどうでもいい事だと思っただからあまり深く考え続けはしないまま、青年は近くの喫茶店チェーンに入り、珈琲を飲み、]
…… 、
[いつしか、頭を垂れ、居眠りしていた。 朝からの「眠り」への一種恐れは昼の色々の内に薄れ、代わりに浅い睡眠の反動の眠気に襲われた、そのままに]
(276) 2016/10/02(Sun) 21時頃
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(これ、完成したら、何になるの?)
…………
(277) 2016/10/02(Sun) 21時頃
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[深い谷底にいた。酷く暗いのに、辺りがよく見えた。空を仰ぐと赤かった。赤い、何処までも赤い、まるで火のような、まるで血のような、この世の終わりのような、この世のものではないような、おそろしいまでの、赤。 自分は崖を登っていた。己が手足のみで、必死に登っていた。爪は割れて血が滲んで、だがそれに気をかける余裕はなかった。谷底は遠ざかっていく。谷底は暗くなっていく。それでも確かに見える。谷底には、無数の白い肉が、あらゆる人人が、蠢いている。 手が伸ばされる。遠い、届かない。 手が伸ばされる。届く事はない。 手が伸ばされて、それは、自分の両の足首を掴み、 見える。見えてしまう。白い顔。長い髪。黒い眼窩。赤い口。赤い口が、開いて、大きく、裂けるように、開いて、開かれて、]
(279) 2016/10/02(Sun) 21時頃
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つ れ
て っ
て
よぉ
(280) 2016/10/02(Sun) 21時頃
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…… !!
[がたり。テーブルを揺らして跳ね起きる。 振動でカップが傾き、珈琲が少しく溢れ流れた。 息荒く、咄嗟に辺りを見回し、ややあって、夢と現の境目を認め、ほっとする。 首筋に、背に、汗が伝い落ちるのを感じた]
(282) 2016/10/02(Sun) 21時頃
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─ 出られない駅 ─
[ほっとした。人の声がこんなにも心強いものだとは思わなかった。聞き慣れた同僚の声が、こんなにも日常を思わせてくれるものだとは。
東蓮寺は命綱のように、小さな端末を握りしめた。鈴里は、戸惑ったようだ。当然だろう、自分とて従妹の連絡を受けた時には戸惑ったものだ。
それでも悪戯と一蹴せず、話を聞いてくれる鈴里がありがたかった。出社、朝早く…彼女の言葉で、ようやく認識が”朝”に追いつく。]
目立つもの、は───
柱とか、普通の駅なんです。
でも標識だとか場所を示してくれるものは何もなくて。
階段……あっ、右側に階段があります。
昨日降りてきた階段かな…、…ちょっと良く分からないです。
俺、動かない方がいいとかあると思いますか?
ずっとあちこち歩いてみてるんですけど、全然出口が見当たらなくて。
[音がやや遠くなる。
切れそうになってしまっているのかも知れない>>*13
やはり電波が遠いのか。いつまた、この細い糸が切れてしまうかと思うと心配で仕方がなかった。自然特徴は忙しく早口になる。]
あっ、みよ子さん!!
もし出来たら、俺の従妹に連絡しておいて貰えませんか。
新宿駅ではぐれてしまったんです。
彼女、今大変みたいで心配していると思うので…!
名前は入間澪音。連絡先は───…
[果たして願いは聞き入れられたか、そもそも連絡先も聞き取れたか。ともあれ、願いを込めて伝言を託す。頼る先は他にないのだ。]
ごめん、って。
必ず帰るからって…おじさんとおばさんも探すからって。
みよ子さんにお願いすることじゃないかも知れないけど、すみません。
[早口でまくし立てる。いつこの通話が切れてしまうかも知れないのだ。ただ、ふ…っと、間を置くようにして投げられた問い>>*15
それに短く、音は途切れた。]
え………、みよ子さん。何言って、
〜〜〜、出たいですよ!!そりゃあ!
こんなところに長居したい人間がいると思いますか!
[八つ当たりめいた感情が爆発した。
大声で叫んでしまってから、あっと口を閉ざす。]
……すみません。でも、出られないです。
出たくないんじゃありません。
だって、そりゃそうでしょう!?
こんなところで、どこにも行けないなんて、
誰が望むと思いますか!??
[やはり口調は荒くなる。
それが誰の”望み”だったかなんて。どんな希望だったかなんて、その時思いすらしなかった。とにかく、ここから出たい。出なくてはいけない。そんな焦りにも似た気持ちが声を自然と大きくする。]
俺、出口探してみます……
だからお願いします、みよ子さん。
[自然と顔が俯いた。
しまいに出てきた声は、自分でも驚くほど*弱々しかった*]
[新宿の街を歩いていると、働いている人も働いていない人も眠っている人も、色んな人がいて、でも、その誰も私には気づかない]
何で私、ここにいるんだろう……。
あ、れ?
[駅の改札口から出てきた姿には見覚えがあった。
パパ、だ。私がいなくなっても、普通にお仕事には行くんだ、なんて少し思ったけど、違う。
パパは時間を気にしてるみたいだった]
そういえば昨日は早かったんだっけ……。
[パパの後をついて行くと、少し大きなビルへと入っていく。
知らないビルで、パパの働いているビルじゃない。
営業回りではなかったはずだけど、不思議に思ってそのままついて行った。
もちろん誰も、私が見えないみたいだった]
[受付で話すパパの声は、焦っているような、緊張しているような声。
受付の人が示した場所を聞いてパパはエレベーターへと消えていく。
その後はもうついていけなかったけれど、受付のお姉さんが話していた言葉から察するに、「面接」に来たらしい。
なんとなく合点がいって、右手の方を見る。
女の子は、――顔は見えないけれど――どこか嬉しそうに笑った気がして]
「パパさん昨日話してたの。「おしごと」のこと」
「行ったフリ」「ゴメン」「明日メンセツ」
「ふふ」
[嬉しそうな声に、私も少し嬉しくなった。
でも、あなたは誰なの? って聞きたかったけど、聞かなくても良い気がしてきた]
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……は、
[胸元を掴むように押さえる。心臓がうるさい程に鳴っていた。悪夢。突拍子もない悪夢。だが、奇妙に、現実感を伴った夢でもあった。足首に未だ掴まれた感触が残っている気さえして]
はあ、………ははは。 何なんだよ、もう、
[笑うくらいしか出来ずに、笑う、声は掠れていた]
(331) 2016/10/03(Mon) 00時頃
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