208 【突発誰歓】ーClan de Sangー【R18薔薇】
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ー図書室ー
[館内を彷徨っていた吸血鬼は、本来ならばそろそろ夕食の支度を始めなければならない時刻だったが、ケイイチの事をどうにも案じているようで、図書室まで来ていた。]
おや、ケイイチ。そこにいたか。 具合は……む、参休も。
私は、ケイイチを探しに。
(280) 2014/12/29(Mon) 13時頃
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ー厨房ー
[図書室でケイイチに今夜は必ず薬を飲むようにと頼んだ後、吸血鬼は厨房に来ていつもより随分遅い時間から夕食の用意を始めた。
今夜のメニューはパンと、赤ワインと………
端と吸血鬼の手が止まる。 薬を抜く子が一時にこんなに出ることは無かった。 何かが変わろうとしているのだろうか。
変わる?この生活が? また孤独に戻るのか……?]
(290) 2014/12/29(Mon) 17時頃
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[さて今夜は久しぶりにスパゲッティでも作ろうかとした所で、厨房にやってくる者がある。>>298]
やあ、チョウスケにジェレミー。 どうし……
[掛けようとした声は「吸血鬼殿」という呼称に阻まれる。その言葉に含まれる響きに、吸血鬼はじとりと冷や汗が垂れるような感覚を覚える。 吸血鬼だからと言って自分を迫害し苦しめた人間。 まるでその人間達の発する言葉みたいで……
そう考えていれば、チョウスケから吸血鬼にとって最悪の言葉が発せられる。>>299]
ど、どうしてそれを……
[吸血鬼は顔を青ざめさせ後ずさる。 肘が台の上のまな板にぶつかり、包丁が床に落ちた。
がらんがらん。鋭利な刃物が金属音を響かせる。]
(300) 2014/12/29(Mon) 18時半頃
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[自分たちが吸血鬼ではないと知った我が子たちは、 このクランから出て行くと言っている。 皆に知らせるとも。
吸血鬼にとって悪夢のような出来事だった。 皆に知られてしまったらきっと、 皆もここを出て行くと言うのだ。]
飲むのを止めたら……老いて死ぬ。
[「ただの人間の俺たちは」 ジェレミーの声が耳に入る。
そうだ、真実を知ってしまった彼らはもうただの人間。 愛しい我が子たちではない。 それならば……………
吸血鬼の瞳が紅く暗く光る。]
(303) 2014/12/29(Mon) 19時半頃
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こんなに月も紅いから、
[カーテンを掛けられた窓からは月の姿は窺えず、 ただ吸血鬼の瞳の中にだけ紅い月が浮かんでいる。
吸血鬼が口端を曲げると、 そこから垣間見えるのは鋭い牙。 人を殺す能力を持つ本物の吸血鬼の牙。]
(306) 2014/12/29(Mon) 20時頃
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[白く鋭い牙が、
素早く白い柔肌に突き立てられ、 そこから紅い血が溢れ出した。
……牙が突き立てられた吸血鬼の手首から。]
(307) 2014/12/29(Mon) 20時頃
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……こんなに月も紅いから、純粋な薬を作れる。
[吸血鬼の手首から溢れ出した血は床に落ちる前に凝結し、クランの入居者たちにとって見覚えのある錠剤となって床にバラバラと散らばる。]
これには記憶を薄れさせる効果は無いから、
[吸血鬼は棚から瓶を一本取り出すと床に放り捨てる。]
何処へなりとも消えてしまうがいい。 二人で一年分ずつはあるはずだ。
[要は床に落ちてる錠剤を 勝手に拾って瓶に詰めろということだ。]
我が子でもない者をここに閉じ込めておく趣味はない。
[そう話している間にも吸血鬼の腕から流れる血は錠剤となり、床にぶつかって音を立てている。*]
(308) 2014/12/29(Mon) 20時頃
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さあ……百年よりは長いし千年よりは短い。
[吸血鬼は衣服の中に手を突っ込むと札束を取り出し、それも床に投げ捨てた。]
(312) 2014/12/29(Mon) 21時半頃
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…………。
[吸血鬼の腕の血はもう止まっていた。 チョウスケの礼にも答えず、吸血鬼はカツカツと靴音を鳴らして厨房を去った。どうやら自室へと向かうようだ。*]
(318) 2014/12/29(Mon) 22時頃
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ー吸血鬼の部屋ー
[吸血鬼の鳴らした覚えの無い鈴の音が鳴り響く。>>320 自分は何故今日は夕食を作らないのだろう、と吸血鬼は思う。
別に一食くらい夕食を抜かしたって、 一回くらい薬を抜かしたって我が子達は死にはしない。
我が子達…… 私の孤独を埋めてくれる我が子達。
あの子たちと共に生きるようになってから、 日々は輝き出すようになった。]
(325) 2014/12/29(Mon) 23時頃
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ー部屋ー
[吸血鬼は机に突っ伏しているが、泣いているわけではない。吸血鬼は涙を流す術を知らない。
>>331戸が開いて、吸血鬼は顔を上げた。]
君も、いなくなるのか?
[吸血鬼は最も長くの時を過ごしてきた我が子に尋ねた。]
(334) 2014/12/30(Tue) 00時頃
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悲しいよ。
[口にしてから、迫害される悲しみとはまた違うなと吸血鬼は思った。]
君がいなくなったら私は悲しくなる。 チョウスケとジェレミーがな、出て行ってしまった。
[吸血鬼は理由までは説明しない。
吸血鬼は、涙も流さずにただ眉を下げて悲しげな表情を作るだけ。]
(337) 2014/12/30(Tue) 00時半頃
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独りには、なりたくない。
[ぽつり。]
(338) 2014/12/30(Tue) 00時半頃
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からくり……そうだ。君も知っていたか。
[ゆるりと目を伏せる。]
いくら血を注ぎ続けても、 人間は人間のまま。 私と同じ存在になることはなかった……。
[我が子の記憶を朧げにしようと思ったのは、或いは自分自身をも騙す為だろうか。 彼らと自分とは同じ存在だと。]
あちらで生きていけない……。 だから、ここを出ていかないと?
私と一緒にいてくれるのか……?
[彼の意思を近くで確認したくて、吸血鬼は椅子から立ち上がり彼に寄る。 そして或る日のように、彼に向かって手を差し伸ばした。]
(343) 2014/12/30(Tue) 00時半頃
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……そうか。
[吸血鬼はただ、悲しそうな顔をした。 握り返されることのなかった手に。*]
(350) 2014/12/30(Tue) 01時頃
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