234 麻雀邪気村-3rd season-
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[力尽きた中放たれた一打は、冥王の手の内に吸い込まれた――]
[生命反応《バイタル》は下がり、身体をゆさぶられてもまともな反応を示す事は出来ず。
成すがままに抱きかかえられ。
違和感に気付かれた頃か、あるいはその少し前か。
うっすらと瞳と唇を開き]
――……おとうさま?
[幻覚を見ているのか、幼子のように呟き。
再び意識はブラックアウトしてゆく。
救護室で手当てをされ、目を覚ますのはもう少し先の話だろう**]
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還ってきた――冥府の底より、龍帝が還ってきた。
[雀眼に映った未来は覆された。だが――これでいい。
先の実況アナウンスでも指摘されたこと。 意図的に、龍の必要とする牌を切ったのは確か。 つまるところ、差し込み行為となんら変わりはない。
ならば、何故。 無論、龍とコンビ打ちをしているわけではない。 口にしたような、蘇生の切っ掛けとなった牙への礼でもない。
龍に斃れられては、困る。ただ、それだけのこと。
雀界の勇者と冥府の王。卓上に燦然と輝く二つの太陽。 龍が斃れれば――ただ、巨星同士がぶつかり合うだけの神々の闘い《ラグナロック》が起こるだけ。
その未来を、変えなければならなかった。そのための、龍への差し込み]
(19) 2015/08/09(Sun) 18時半頃
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[そう、卓上に第三の太陽――真なる龍帝が、降誕すれば。
力学的計算は、二点間であれば単純だ。ただ力の大小だけ。 だが、それにもう一点が加わるだけで、途端に複雑になる。 複雑な力関係、能力の相性、交じり合ったオーラ――計算できない混沌《カオス》が生まれる]
ですが――そこにこそ、私の勝機もある。
[そう、それが麻雀。それこそが麻雀。下克上《クーデター》は起こり得る。 一対一で闘えば敵わぬ相手でも、複数人の思惑が絡めば、単純な力関係どおりにはいかない――、]
(20) 2015/08/09(Sun) 18時半頃
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……、しかし。
[龍が還ってきた代わりに、雀使が墜ちた。 先にギリギリの勝負を繰り広げ、力を認め合った相手の脱落を悼む。 運命の流れを僅かに変えたとしても、誰かは呑み込まれる。そういうことだ。
――気を抜けば、自分も呑まれる。
いや――違う。呑まれる。そんな受動的で、勝てるわけがない。
冥王を、勇者を、龍帝を、隠者を――こちらが呑むつもりで、打たねば]
(21) 2015/08/09(Sun) 18時半頃
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[――そして、南4局の幕が上がる]
……配牌から仕掛けてきますか、隠者。
[卓に及んだ気配。隠者のもとに、何かが引き寄せられていく]
ですが、私の親番――私も最初から全開でいきます。
[女帝は、14牌が手元に揃うまで、手牌を伏せたままにしていた]
136牌から14牌を引いたとき、配牌の組み合わせは102億1253万3760通り――、 その平均値は、4向聴。和了の形になる確率は――僅か、33万分の1。
[伏せて並べた14牌。その両端に、両の手を添えて]
ですが、いまなら――……、
[そう――そこになにがあるかは、観測するまで、不確定。 ――それを14牌まとめて、やろうというのだ。 シュレディンガーの黒猫の生死を、14匹まとめて定める――雀氣を、その両眼に集中する]
(22) 2015/08/09(Sun) 19時頃
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……、……っ!!
[タッ――ン!! 卓上に立てた14牌の絵柄が、女帝の観測によって、いま定まる。
1牌2牌3牌――暗刻。 4牌5牌6牌――暗刻。 7牌8牌9牌――暗刻。
そして、10牌目――揺らいだ絵柄が、元に戻った]
ぐっ……、!
[他家の雀氣に圧されて、集中が乱れた。10牌目から先は、ただの配牌。
なるほど――猫は九つの魂を持っている。有効牌と定められるのは、いまはそこまで。
だが、手にした、9つの有効牌《ナイン・ライブス》――配牌としては、それでも強力には違いない]
(24) 2015/08/09(Sun) 19時半頃
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これは……、
[輝く羽が、祝福のように降り注ぐ。そんな、幻視]
死なせない――ですか。 なるほど、あなたが口にすると、信じたくもなる。
[事実――龍の牙に、一度は救われた]
――ですが。
[龍圧が勇者を押し留める間に、手は進む]
(引いたッ! 有効牌……!)
[ツモ牌を手牌と入れ替え――暗刻3つに対子2。四暗刻《フォーチュン・フォー》、テンパイ]
(32) 2015/08/09(Sun) 21時半頃
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ええ、死んでもらっては困ります。
[さらっと、そう応じて]
ところで、万物の声――と、言いましたね。 これは完全に、興味本位の問いですけどね、龍帝《カイザー》。
[不要牌を、タンッと捨てて。 勇者を襲う龍圧の横合いから、問いかける]
――この雀卓。 あなた方の――いえ、私たちの雀氣にも耐える、この卓。
数多の猛者たちの魂が注がれ続けた、この、不壊の雀卓《ラウンド・テーブル》。 暗黒の青天井《アポカリプス・オブ・ブルーヘヴン》をも耐え抜いたとされる、この卓。
[言葉を継いで、それを慈しむように、撫でて]
この戦いを――どう見ているのでしょうね。
(34) 2015/08/09(Sun) 22時頃
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[ところどころ――暗褐色の染みや、凹んだ痕の残る、年季の入った卓。
ことによれば、この卓に座る誰よりも――雀界の死闘を視てきた卓。
龍帝が万物の声を聴けるというのなら、聴いてみたいと思った。
彼女の数学には何の関係もない、ただの、雀士としての興味本位]
(35) 2015/08/09(Sun) 22時頃
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……彼女が。
[視線を、向けて]
道理で――よく心得た、実況をするわけです。
[納得と感嘆を、洩らして]
……いずれ、私たちの闘牌も――彼女の語る伝説になるのでしょうか、ね。
(43) 2015/08/09(Sun) 22時半頃
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――勇者オスカーッ!!
[その牌を――そのままは、通さない!!
リーチ一発を防ぎ――そして、己が手を、一段階上にと書き換える!!]
――その捨て牌――貰い《カン》ます!!
[手牌から繰り出した3牌と結合し、並べられる4牌。 確率論的には愚手とされる、大明槓――だが、女帝にとっては、違う]
(44) 2015/08/09(Sun) 22時半頃
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――カンッ!!
[勇者の捨て牌で啼いた、大明槓。その嶺上牌は、彼女の暗刻に一致した]
まだです――もう一つッ!!
[更なる嶺上牌。それも、また]
カンッ!!!
[更に]
――カンッ!!!!
[四連続の、啼き――すべて、カン]
(45) 2015/08/09(Sun) 22時半頃
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……、通りますよ。通ります――、ですが、勇者《オスカー》。
[傍らに並ぶ、四つの槓を、指差して]
――私を無視して、龍帝のみに向かったあなたへの呪いです。
[勇者、王侯、皇帝――届かずとも、それを一刺しする毒は持つのだと]
包《パオ》――責任払いとも、いいますね。 この四槓子の確定――私がツモで上がれば、すべて、あなたの払いです。
[頭待ちの単騎で、くっと喉を鳴らした]
(49) 2015/08/09(Sun) 22時半頃
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[生と死のハザマ、シルク……いや、オーレリアなる少女は在りし日の幻を見ていた。
幼かったあの日、父は自分の目の前でマ王の凶牌に倒れた。
やがて母方の祖父の家に引き取られる事となり、変貌した生活や多数の習い事に忙殺されて、歩くより先に打っていた麻雀の事すらもいつしか遠い過去となり、日々は流れていった。
しかし、しばらく前に偶然テレビで冥王戦を見た時、強い衝撃を受けた。
自分は決して、麻雀を忘れては居なかった――]
[裏闘牌場《アンダーグラウンド》に足を踏み入れるまでに、そう時間はかからなかった。
姿を変え、名前を変え、それなのに何故だろう。
”生きている”という実感が深く胸の内から溢れ出て来たのだ。
これが自分にとっての天命なのである――と]
[その時と似た感覚が、緋龍《ドラゴン》の死を予感した時にも広がった。
彼を助ける事。
そして、悲しい連鎖を止める事。
それこそが麻雀を再び始めた理由。
それこそが雀使として覚醒した理由なのだと]
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はっ……!?
[龍帝の、和了。それに、半瞬、亡失して。
『――私を無視して、龍帝のみに向かったあなたへの呪いです』
つい先刻、己が口にした言葉が、重苦しく響いた]
ああ……そうです、ね。 私も、知らず、同じ過ちを――龍帝《アナタ》を無視して、勇者のみに集中するなど。
[苦笑じみたものを浮かべて、点棒を払う]
ですが、次は――そうは、いきません。
[親番は安手で流されたが――まだやれる。改めて、決意を]
(62) 2015/08/09(Sun) 23時頃
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[急速に己の身体から、魂から、力が抜けていくのを感じる。
役目を果たしたせいだろうか。
雀使としての力は少女から光の粒となり、まるで満天の星々のように天へと昇ってゆく。
もう先ほどまでのような打ち筋は――奇跡《ミラクル》を起こすような事は出来なくなるのだろう。
しかし、未練など欠片たりとも存在しなかった。
何故ならそう。
雀使の力は――羽の形となりて、真龍の帝王《ドラゴレット・カイザー》の元へと舞い降りているのだから]
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……こ、れは……?
[勇者の構築した世界――無垢なる天空の血潮≪ブラッド・オブ・スカイ≫]
私は、既に、点棒を支払ったはず……、
[だが、現実は――。そうして、すべてを理解した]
……余計なことを、勇者 《オスカーッ》!
[叫んで、ぎりっと]
ならば――その甘さの代償《パオ》は! あなたに支払わせてあげましょう……!!
[手は、四槓子にドラ16――トリプル役満である]
(72) 2015/08/09(Sun) 23時半頃
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いえ、その和了りも――私が観測するまで、確定しません。
[龍帝がそのつもりなら――同じ土俵で、書き換える!!]
(77) 2015/08/09(Sun) 23時半頃
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それで――その手を和了といいますか、龍帝。
[雀氣の応酬で、真っ赤な眼球に血涙を浮かべながらも、そう笑った。 そう、変化したのは、勇者が摩り替えた1牌だけではない――全てがばらばらの、14牌。 勇者の氣がぶつけられた隙に、そうやってのけた]
――チョンボですね。満貫払い、ですよ。
(78) 2015/08/09(Sun) 23時半頃
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馬鹿は――あなたもでしょう、オスカー。
[荒い息で、応じる]
あなたが――あそこで、聖剣を抜く理由がどこにありました!! 私は――私は、龍帝の發のみ、それにしてやられた!! それが全て!! だというのに!!
[情けをかけられた――それは、雀士にとっての屈辱!!]
(82) 2015/08/10(Mon) 00時頃
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……な……、
[オスカーが、和了れた。それは、つまり――]
龍帝が、罰符で流局にしなければ――、
[――オスカーがツモれば、もっともダメージを受けるのは、親の私――]
ツモられていれば――飛《コロ》されていた……?
[呆然と、そう呟いた。そして、龍に視線を向ける――何故、助けたのかと*]
(88) 2015/08/10(Mon) 00時頃
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――隠者《ハーミット》!! いえ、よもや、あなたは――!!
[数牌に、その数と同等のドラを付与する能力――]
――争いを呼び!! 血で血を洗う闘牌を招き!!
後先考えずにレートをハネ上げる――あの伝説の、愚者《フール》では!?
(95) 2015/08/10(Mon) 02時頃
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[気圧される。ひどく気圧される。
ともすれば、これも掌中なのかもしれない。
だが、だが――黙って、敗れるわけにはいかない!!]
そうまでして、見たいのですか! 青い地獄《ブルーヘヴン》を!! ならば――、あなたが、その身で味わえばいい!!
[狂気じみた哄笑を洩らす、隠者の捨て牌を、啼く]
(96) 2015/08/10(Mon) 02時頃
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[意識を失ってる間も、力の残滓が共鳴《リンク》を起こし、卓上《ヴァルハラ》の様子を、そして雀士《ジャンキー》の様子を教えてくれた。
緋龍《ドラゴン》が復活した事。
女帝《エカチェリーナ》の美技。
勇者《オスカー》の愚直なまでの覇道。
そして、倒れてしまった所を抱き抱えられた自分の姿すらも――]
っきゃあああああ!! 何するんですのーーー!!
[救護室のベッドの上、己の叫び声で目を覚ます姿がそこにあった。
起き上がった瞬間、体に繋がれたチューブに引っ張られてしまって身動きがとれず四苦八苦して]
……あ、あれ?
こ、ここはどこですの?
――はっ!
勝負《デュエル》、勝負《デュエル》はどうなってますの!?
[救護班の医師たちが慌てる中、焦りながら尋ね。
モニターの存在を教えられてそちらへ視線を向け、息を呑んだ]
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カン――!!
[9s――ドラ36。]
――あ、がああああああああっ!!!!
[バチバチバチッと、指先に電光が迸る――だが!!]
カン――!!
[9m――ドラ36。手にした嶺上牌は――]
く、ふっふふふ……!! 足りない足りない足りない足りないッ!!!
[ぶっ、と。鼻血を溢れさせながら、四牌を露にする]
カン――!!
[9p――ドラ36。手にした嶺上牌は――]
(97) 2015/08/10(Mon) 02時頃
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