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[ナユタの居場所を教えるように羽を羽ばたかせるアンジェラ。
その意図は理解すれど…]
………ああ、わかってる
[しかし、鉄格子の向こうに声を届けようという素振りはなく。
先だっての事件の原因を鑑みるに、己の接し方に問題があるように思えてならなかったからだ。
ワットの意志を叶えたいという望みは確かにナユタのものなのだろう。
理解はすれど、故人が何を思い、どうしてそう望んだのかを理解できぬまま、ただそう言っていたから叶えたいと言う大きな子供のような彼にかける優しい言葉を知らない。イワノフやチャールズ程に自分は大人ではないのだ。
かける言葉が見つからない。
また暴走でもされては、とも思う。罰を望む言葉も、罰された所で矯正するものでもない、としか思えない。まるで駄目だ。
相手が話しかけてこない限り、それが見つかるまでは此方から声をかけることはできないのだろう。]
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[だかしかし。
拘束室に来て、尚救護室の己を案じる言葉…が皆まで発せられることはなかったようだが、その気遣いに関しては自分よりも余程ナユタの方が出来た人間なのかもしれない。
と思う。
辛辣な言葉が悪意から出ている訳ではない。
多少の親しさが、物言いを率直にしすぎている面もある。
しかし相手の心に通じぬ言葉は、用を成さない。]
………。
[重々承知しているが故に、やはり黙すよりなかった]
―拘束室―
……分からないな。
[サイラス
それに答える第二皇子の言葉。
耳を傾けて、やはり独り言のようにぽつりと。]
貴方の言う通りの道だとすると。
"ボク達"にとってはどちらも変わりはしないです。
和平の道でも軍が変わらないならボク達は戦い続けるだけ。
大戦の道なら言わずもがな。きっと数も増えるんでしょうね。
最初に死ねと言われるのはボク達。
それが嫌とは言わないけど……あの方の望みじゃない。
[何を選んだらいいのか分からなくなってきた、とため息零す。]
[それから、随分と考え込んで。]
アンジェラ、おいで。
[自分の居場所を教える為に羽ばたく鷹を呼び戻す。
肩に止まらせ、また沈黙。]
……メルルお嬢様。
今も、泣いているんですか?
[鉄格子の向こう側へと、おずおずと問い掛ける。]
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[おずおずとした問いかけに、思わず半眼になる。]
………。
一体、幾つの時の話をしている。
それにお嬢様はやめろと言っただろう。
[憮然と応え、ひとつ息を吐き、問いかけた]
………具合の悪いところは?
ああ、方向音痴以外で。
[時が止まったような、静かな眠り。
深いわけでもなかったが、あまり言葉の交わされぬ――それが、各々の交差する複雑な思い(
おそらく、隣室の羽ばたきにも、密やかな会話にも、寝息は乱れない。]
………。
ゲイル様。
ボクは、今も貴方を泣かせているらしいから。
[少し考えてから言い直す。
『メルル』も『お嬢様』も止めろと何度も言われた結果落ち着いた、子供の時の呼びかけ方。]
方向音痴?
肉体的な問題はありません。
[歩くたびにくらくらふらふらとしては居るが、実は方向音痴になっている自覚は無い。]
らしい、か。
誰がそんなこと、言ったんだ。
様もいらん。同年輩で同職位なのにおかしいだろう。
[子供の時分とはいえ、泣いている姿を見せたことなど、1度か2度程ではなかっただろうか。
よく覚えてはいないが、その時も随分と派手に言い争いをした挙句だったような気がする。
幼少の時分から強気な性格は大して変わらなかったので、泣きだした事にナユタが(失礼なことに)少なからず驚いていたような、うろ覚えの記憶がよみがえる。]
そうか、つまり制御と情緒には些か問題があるようだな。
そっちの不具合は私よりもチャールズ師父の得意分野だし、丁度そちらにおられるようだから心配ないな
[肉体的な、と言った言葉にはそう返した。]
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真面目?
ボクは当然のことを言っているだけです。
能力の暴走が珍しくなくても。
一兵士と師団長では別です。
重傷者、死者をだしてからでは遅いです。
[第一皇子
鉄格子越しにまっすぐ見つめたが]
………――。
はい、どのような罰でもお受けします。
[罰を与えるとの言葉に目を伏せ、頷く。]
呼びにくいので。
[ほぼ即答でゲイル
ゲイル様が泣いているところ見た記憶は、あまりないです。
でも、ボクが兵器で居ると貴方が泣くんだと。
泣かせたいわけじゃ、ないんですよ。
[あまり無い、ゲイルが泣いた記憶。
今と同じ、人だ兵器だと交わらない、理解できなかった会話の末だったと思う。]
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強い感情変化は制御を難しくする。
なるべく平静で居る気だったけ…――。
[隣りの救護室の扉が開いて閉じて、今度はこちらが開く。]
……………………そうですか。
[拘束室にやってくるなり宣言する第一皇子>>
全く、軍人男ってのはどうしてこう…
[戦いしか生き方を知らないのは、ナユタだけではないことは解っていた。ミッシェルと飲めば脳筋だの支援するこっちの気も知らんでだのの愚痴と共に漏らされる言葉を呟く。
戦いに生きる者程、その中で命を落とすことを望んですらいるような素振りがある。
自身を傷つけるような、命を粗末にするような言葉がどれだけ後ろに控える者に辛さを強いるか、解っていないのだろう]
……仮に泣いているとして。
泣かせたい訳でもないなら、どうしたいんだ?
[天井を仰ぐ。]
………。
別にボクは死ぬのや戦うのが嫌とは言いませんよ。
害虫は叩き潰すべき。必要あれば「死ね」とも命令してください。
ただ、ボクは第13師団の皆を守るように頼まれているので。
何も結論の無いまま、辺境の地で忘れられ、疲弊させられ、ゆっくりと死に続けるのが終わればいい。
殿下ならそれが出来るはずと…――。
[ワットから聞いた事ではあるが、それが望みだと、第一皇子
……今、込み入っているんでしょうか?
[首を傾げ、ゲイルに尋ねてみる。]
[ラルフがナユタに話しかけるようなら、特に自分との話を急かす様子は見せない]
いいえ、世間話です。
ランドルフ殿下がエンライ師団長にお言葉を賜るというのなら、勿論それが優先されてしかるべきですよ。
[無邪気とすら言える皇子の行動に、別の意味で天を振り仰いで淡々と告げた]
ナユタそんなに優先度の高い話はしていないと思うな。と平静に返した
ゲイルの返事を聞いて、込み入ってませんと第一皇子に返した。
― 現在 ―
がん。
ごいん。
ばたん。
連れられたのは拘束室だか、
正確にどこだかなんて、知ったこっちゃない。
連れられる前と同じ状態で、
大破した右腕を床へ投げ出し、
キリシマは倒れ込んだ。
違うところといったら、
意識はあるが起き上がる気力がない、といったところか。**
キリシマの倒れこんだその重い音には、流石に目覚めて辺りを見やる。
……自分で止まれるなら兵器じゃなくて人らしい。
だから止める、努力はします。
必要なことですから。
[ゲイル
そのまま浮力をなくして落ちそうになってちょっと焦った。]
でも、生き方、戦い方は、変えられません。
貴方がボクの話を聞いてくれないのは知っているけど。
[鉄格子を見上げた。]
[金属質な重いものがぶつかる音。
その音に目を開けてから、自分が眠り込んでいたことをようやく知った。
ぱち、ぱちと二三度瞬いてから、救護室にいる人数を確認する。
記憶から先変わったのは、第一皇子の姿がないくらいか。ならば、増えたのは隣、の。]
……私、どれくらい眠ってました、か。
[目覚めて最初に口にしたのは、時間を問う言葉。]
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[第一皇子に恋バナだなどと思われている事に思い至らなかった。
本人としては、師団長となった当初から、その座を退くまで婚姻をする心算はないからだ。
というか、歴代の数少ない女性師団長の例を見ても、単純に激務すぎてできない。
ああそうか。じゃあ聞かん。
好きにしろ、貴方の人生だ。
[結果拗ねた]
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[鉄格子を見上げていた蒼灰は、第一皇子
……じゃがいもならともかく、難しいですね。
ボクは厨房に入るなと言われているので。
[最初の調理当番の日。
包丁やら調理道具やらを全部弾き飛ばしたのは第13師団に語り継がれる惨劇だった。]
ボク達の故郷は戦場です。
……『生きろ』というご命令。
最善は尽くします。
[絶対に生きるとは答えられない。
そう答えたところで、拘束室の扉が開き響く金属音。]
………!
キリシマ師団長!
なんで……。
[放り込まれるように床に倒れる姿
思わず駆け寄ろうとするのと、近づいてはいけないとの判断。
ついでに無くなっている平行感覚と合わさり。
結果、盛大に転んだ。]
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[少し前。己の謝罪にヨーランダが返す言葉を聞く。気遣ってくれているのだと、よくわかった。申し訳ないという気持ちは変わらずあったが、一旦は収めるようにして、頷き]
……有難う御座います。
[微かに笑んで礼を言う。
それから、眠りゆく様子を見守っていた]
[暫くの後――がん、と。
金属的な衝撃音が響いた]
! ……
[反射的に、音がした方に顔を向ける。起床したヨーランダの問い掛けを聞けば、感覚的に大体の時間を教えただろう]
[重い金属が拘束室に落ちる音に、はっとする]
キリシマ殿が拘束されたのか…
[覗きこんでいる訳でもないので、鉄格子越しにその姿が見えるわけもなかったが。
事態の行く末を思い、息をついた]
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[ぐしゃ、と顔面から床に突っ込んだ。
気を失わなかったのは慣れているからとしか言いようが無い。]
………。
…ほら、聞いてくれない。
[ゲイル
怒らせないような言葉選びが苦手なのもあり、面倒になって心情を伝える努力を早々に諦めているのもあったりするのだが。]
……怪我しているようですけど。
何があったんですか?
[空中に退避していた鷹がキリシマの上に舞い降りる。
それを眺め、倒れたまま問い掛ける。]
[バーナー師団長から大体の時間が返ってくれば、ゆるゆると頭を振って眠気を払う。意図せずとはいえ眠り込んだ分、大分体調も戻りつつあるようだった。]
――すみません、話の途中、でしたよね……
起こしてくださって、構いませんでしたのに。
[それから、音の主を思う。]
エンライ師団長……は、すでにいらっしゃる。
キリシマ師団長、でしょうか。
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身体が、酷く、ほんとうに酷く、重い。
ラミケシュの音波を浴びたときとは、較べものにならない。
うつ伏せのまま黒眼だけを動かせば、
なぜか倒れたままのナユタの姿が見えた。
≪ なんで
も、なにも、 ≫
頭の上になにかが乗った。
音からして、たぶん、鷹。
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いえ、気にしないで下さい。
何より貴方の体調が心配ですから。
よく休めたのなら良かったです。
[ヨーランダに、首を緩く横に振って返す。壁の鉄格子の方を見ながら、ヨーランダとゲイルの推測に頷き]
そのようですね。……
……あちらは、今どうなっているのでしょう。
[まだ外に残っている師団長達の事を思い、呟いた]
[
話を聞かないと決め付けたのは其方なのに、「ほら聞いてくれない」だと?
ああ言えば、そうではないと此方が取り縋るのでも思っていたのだろうか。
まあ何も考えていないただの無神経の産物なのだろう、とつきあいの長さから憶測はすれど。]
私は話を聞かない人間だと、貴方は認識しているんだろう。
そう決めつけられて、もうこれ以上私的なことで何か話そうとは思わんよ。どうぞ、好きに認識しているといい。
ああ、業務に私情は持ち込みませんので、ご心配なく
[酷く呆れた顔をして。
皇子らとその場に居る師団長にそう付け添えた。]
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[
どうやら私は話を聞かない人間らしいので。
無駄でしょう。
[最早苛立ちを通り越してあきれたらしい]
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