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メモを貼った。
いえいえ、此方の話です。
お店の忘年会?慰安会?するんですっけ。
それなら、早い方が良いですよね。
お暇な夜があれば教えてください。
一緒に飲みましょう、戸崎さん。
[地獄耳ではあるけれど、聖徳太子ではないので店員同士の談話はブツ切れ。お誘いの声だけちょっと潜めて、迷子にならないように気を付けますから。なんて。**]
メモを貼った。
【人】 吹牛方士 芙蓉――師も走る頃―― (0) 2019/11/27(Wed) 01時半頃 |
……困っちゃった?
[口実とか、何の話だろう。
聞き返せば、此方の話です、と。
そう言われてしまったら、聞き返せない。]
そう、みたいです。
みたいっていうのは、なんか変ですけど……
[慰労会の話は、頷いて肯定した。
多分、おそらくきっと、それほどしないうちに。
近所住まい同士で、例えばどら焼きを作りに家に当日行くくらいには、みんな行動が早いので。
酒瓶を持ってやりたいといえば、その日の賄いからはじまってしまったっておかしくない宴だ。]
[一緒に飲みましょう、には、ちょっぴりの警戒。]
……あの、でも、わたし、お酒ダメなんです。
味もよくわからないし、すぐ酔っ払っちゃって。
でも、そう、そういう風に、誘われて、応えられたらいいなって思って――
[自分でも気が付かないうちに、随分と思いつめたような顔になっていた。
およそ、店員からお客様に対して見せていい顔じゃなかった。
無理をしてるわけじゃない。本当は飲みたくないとか、そういうことじゃない。
ただ、今、こうして断りを入れることで。
目の前のひとを失望させやしないかという思いでいっぱいだった。]
ほんのちょっと、とかでも、いいですか。
[そっと伺うように、勇気を絞る。
隣の桐野江さんには、もしかしたら宅本さんが困らせたようにも見えたかもしれない。
そうじゃない、とは言い切れないけど。
でも。
店員同士の仲でさえ、二人きりでなくてさえ、男性と夜を過ごすのを躊躇うのに。
この人にはそう思わないのは、なぜだろう*]
【人】 吹牛方士 芙蓉[仕込み済みのシュトーレンのことは把握していたし、厨房奥に向かう背中を止めたりまではしないが。 (11) 2019/11/27(Wed) 20時半頃 |
[兵は拙速を尊ぶ。
日々、季節の食材を仕入れるこの店全体の気風として、念入りに打ち合わせし完璧を目指すより、とりあえずやってみよう。と賽を振る姿は想像に易い。
うんうん、と幾度か首肯を重ねて。]
お酒が駄目でも、白けない飲み方なんてもありますよ。
僕も初公判の前は呑まないようにしているので、心得ています。
それに直ぐに酔えるのはお財布に優しいじゃないですか。
[無理を強いるのは望むところではない。
彼女の困った顔は忌避するものではないが、客の間は行儀の良い手合いだと思われたい。アルハラとチャンスを天秤に掛けて、思案を暫し。]
それでは ―――…、
[意気地なしと自らを罵る準備をしてから口を開く。妥協か折衷案かどちらにするか決めかねるまま。
冗談です。と、なかったことにだけはしたくなかったが。
しかし、言葉のサーブも完璧なタイミング。
駅の向こうに夜だけ開いているカフェバーがあるんです。
この店からだと歩いて15分くらいですかね。
夜パフェなんて背徳的なこともしているんですよ。
如何でしょう?
[引っ込めかけた誘いが大きく踏み出す。
候補に挙げたのは、此方の営業時間外に飲みたくなったら顔を出す己の遊び場。――― 己の脚では辿り着くまで三十分ほど掛かるから、それほど近い印象はないけれど。]*
お酒がだめでも、白けない飲み方。
[それは、渡りに船だった。
きっと一番、自分が欲しているもの。
期待の乗ったオウム返しの声は、先程までの沈んだ面持ちをぱっと塗り替える。
初公判、という言葉の響きは宅本さんの職業を意識させるけれど、飲める人が飲まないようにしているというのは信頼できることのように思えた。]
お財布に優しい。
それは、そうですね。
[だから、少し笑えた。]
駅の向こうに――
パフェ、も。
[そんな場所があったなんて。
飲まないから、バーに対する情報はほぼゼロに近い。
今日はこのあと、アップルフィリングが待っているだけ。
少しくらいは許されるんじゃないか、なんて。]
迷わないように、しないとですね。
[歩いて15分を心配しつつ。
今夜このままでもいいのかしらと、浮き立つ心をわずかに覗かせた。]
[アップルパイがひと切れ取り分けられたと知ったのはその後。
さらに半分に切って乙坂に分けたのは、気落ちしてる先輩のため、だけじゃなかった*]
気心知れた人たちなら、下戸でも気にしないと言うのは分かるんですが、気持ちの問題ですよね。
[彼女の同僚にしても、上司にあたる店長にしても、飲酒の有無で態度が変わるようには見えないけれど、変わるのは自身の気持ちだ。彩を差す面持ちに少し安堵の呼気を隠し。]
はい、パフェも。
[彼女を誘っているのは確かだが、己もその響きに誘われる。
宇都木の腕は信頼しているが、流石に恒常メニューにパフェがないのにパフェグラスがあるとは思わない。食器からリクエストするにはハードルが高い。
背の高いグラスならあるだろうが―――、やはり、パフェグラスの縁っこは波打っていて欲しい。]
[瞳でだけで静かに笑うのは、美味しいものを食べた時とはまた違う喜びの表現。
腕時計に視線を落とせば、閉店まで然程もない。
今日も良く食べ、良い時間を過ごした。
けれども今日は彼女を誘って延長申請。]
片付けが終わるまで、店の前で待ってますね。
ナビゲーターは任せてください。
[地図は読める。何故か迷ってしまうだけで。
一人でなければ、何処へも楽々。]
― 夜のカフェバーへ ―
[彼女の仕事上がりを待ってから、いざ秘密の特訓へ。
口頭で住所と目印、それに「Foxtail」の店名を伝えてえっちらおっちら。]
深夜の道を誰かと歩いていると少しワクワクしますね。
一人だと、大体早く帰ろうとしか考えないんですが。
[他愛無い会話も挟んで、ウサギの巣穴からキツネの尻尾にワープ。踏切を待たなかったから、所要時間は10分ほど。
地下1階の店舗は煉瓦の壁に、橙の照明が灯る隠れ家スポット。開店時間は夜の遅くから明け方まで。
店内は酒を出すにも拘わらずカウンターが無く、客層は妙齢の夫婦が多かった。子供を寝かせてから、そっと贅沢するような、そんな店だった。
丸い小卓の椅子を引き、彼女に勧め。]
ガード下の飲み屋台なんてのも知っていますが、其方は上級者向けなので。
[ちゃんと冗句のひとつも添えながら。]*
ん……そうなの。
店のみんなは気にしないのは、わかるんだけどね。
[実際みんなから出てくるのは、無理するなとか珍しいとか。
敢えて触れなくてもいいと言ってくれているようで、心地いい。
でも、気持ちの問題だ。自分自身が、飲めるようになってみたいって。
或いは、酒の席でも気負わずにいたいって。]
ええ……!?
だめです、寒いじゃないですか。
お隣、行きますし。
[閉店後でも明かりが付いている隣のビル。
迷うことのない距離感、こちらから訪ねるのは苦に思わないと。]
[結局、迎えに行ったのか待たれたか。
今は、きつねの尻尾を追いかけていた。]
わくわくする、わかるかも。
わくわくっていうか――どきどきしてる。
[冒険だ。夜の街をこうして歩くのも、お酒を飲もうとするのも。
一人で帰れるか心配で、必死に道を覚えようとランドマークを探しながら歩いた。
勤務中上げている髪は、そのままにしていると頭痛の種になるから、今は解いて。
長い髪はマフラーの内側で撓んでいる。
小さなバーの看板が見えれば、思いの外早くついたのに安心したような、少し残念なような。]
[丸椅子を勧められる頃には、どきどきは表情にまで出てきていて、緊張がまる見えだったと思う。
パフェがあるとわかっていても、飲まなきゃいけないわけじゃなくても、素敵なご夫婦が和やかに笑み交わす中不釣り合いだと思っても、気を張ってしまっていた。]
お、手柔らかに、おねがいします。
[上級者向けには誘われない初心者は、テーブルに指をついて頭を下げた*]
[待ち合わせにわくわくしていたのは本当だ。
この辺りは治安も良いから夜道に覚えるのは危険よりも非日常感であったことも。
けれど、遠慮と譲り合いの間をとって、事務所の窓から店先を見張っていた視界に私服の彼女が見えた、ら。
事務所をうろうろ二周した。
エプロンを外して防寒したくらいなのに、妙にそわそわとした気持ちに急かされて。
そのそわそわを抱えたままの短い行程。普段と比べるまでもなくあっさり到着し、新記録樹立に少し安堵した。
外で気持ちを落ち着ける為うろうろし始めたら、確実に迷子になる。]
[ついた丸テーブルは、うさぎのカウンターよりも二人の距離を近くする。彼女の緊張感を前身で浴びて、小さくわらい。]
此方こそよろしくお願いします。
―――…とはいえ、白けないコツと言うのは案外単純で、楽しそうに華やかものを飲むくらいなんですけどね。
戸崎さんに希望が無ければ、アルコールを抜いたサングリアとカルーアミルクを頼んでみましょうか。飲めなかった方は僕が頂きますから。
[己が口にした条件を満たすのは前者。ついで足した後者は地味だが飲み易さではカクテルの中でも群を抜く。カルーアの比率も好き好きなので変更に応じてくれる店も多い。
初心者向けに二杯提示して、狐のスタンドからメニューを抜いた。]
パフェはマスカットがありますよ。
宝石みたいに積まれてるやつ。
………、
………お酒に緊張しますか?
それとも、このお店か ―――、
夜遅くに異性と一緒にいることに?
[強張る彼女に向けるべきは、もっと慮る言葉が相応しい。だが、つい、口を滑らせ聞きたいことを聞いてしまった。
店員と客の肩書を外した途端、詮索めいた態度は恥じ入るものだが、少しはにかんだだけで撤回しなかった。]*
楽しそうに、華やかなものを――が、がんばります。
[縮こまっている今では、楽しそうなど夢のまた夢。
せめてテーブルについた指を下ろそうと、膝の上に。]
サングリアは、ワインにフルーツを漬けたやつ、ですよね。
カルーアミルクは飲んだこと、あります。コーヒーの。
[どういうものかという知識はあるのは、飲食勤めのなせる業。]
サングリアは、華やかかなあ。
[華やかなものを楽しげに。アルコールも抜き。
これならよさそうと、ほぅと詰めていた息を吐く。
ぴちぴちに張っていた緊張の糸が、少しだけ緩む。]
[マスカットのパフェは響きだけでおいしそうで、興味を引く。
メニューを覗き込もうとして――三択の質問。]
え、あ……ええと。
お酒と、……お店に、少し?
こういうの、初めてだから。
[思えば、最後の選択肢には緊張していない。
していたって、不思議じゃないのに。
もっと警戒心を持つべきかもしれないと思っても、いまさら宅本さんに対しての緊張の糸は戻ってこない*]
お酒を勧める方は、楽しそうな空間が好きなんですよ。
でも、深入りし過ぎると潰れちゃいますから、程ほどにね。
[彼女の了承が得られれば、先にドリンクだけオーダー。
夜にしか開けていないからか、カフェを頭につけていても形態としてはバーの色味が強い。そうしてファーストドリンクを決めてからメニューをゆっくり吟味。]
赤ワインをグレープジュースに変えたり、白ワインをグレープフルーツジュースに変えたりするんですよ。僕はモヒートのアルコール抜きと言うのも好きなんですが、夏の方が美味しいんですよねぇ。
おや、御存じでしたか。
でも、カルーアミルクは度数が高いので初めのうちはミルク多めで頼むと良いですよ。
戸崎さんが潰れてしまったら ―――、僕はとても心配しますから。
[最後は僅かに顎を引いて声量を小さくした。
何でもない、極普通の注意だと言うのに、何故か不埒に思えて。]
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