202 月刊少女忍崎くん
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―回想:一年前 坂の上 第二七頃公園―
[息も切れ切れ、なんとか公園にたどり着いて、 まどかはそこからの景色を見下ろした。]
[遠く遠景に薄い霧が立つ上からの街並みを、 先程よりも強く朝焼けが染めている。 街を流れる大きな河に、朝日がきらきらと反射していた]
[目の前に広がる光景に、まどかはゆっくりと瞬きをして 切れ気味の息を静かに吐いた。 まどかの目にも、朝焼けがきらきらと反射した]
(57) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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[被写体はばっちりだ。まどかは首に下げたカメラを構えて ファインダーを覗く。…もう少しだけ、構図が物足りない。 おそらく視点の高さだろう。自分の身長には難儀しっぱなしだ。
幸い、立ち位置がそれほど変わらないところに 小さな段差があった。 まどかはそれに登って、再びファインダーを覗く。 次こそは満足の行く構図になった。]
(58) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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(ん…よしっ 完璧…!)
[整えた息を静かに吐いて。 シャッターボタンに伸びる指に力を入れた]
(59) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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[坂の上、高台になった公園からは、 橋のかかった川と町並みが見えていた。
よしっ、と鷹野まどかが、ファインダーを覗いたその瞬間、
その切り取られた風景に、 さっと、人影が重なった。
シャッターを切る指を止める間もなく、 ごっっ と 一陣、風が過ぎ去る。]
(60) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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ぅえっ?!?!
[ファインダーの奥が一瞬、少し暗くなる。 風が過ぎ去るその瞬間。 かしゃ、と軽い音が上がってシャッターが切られた]
(ななな なにいまの?!)
[何か大きな影だった気がするが、 影の動きが風のように早かったうえに ファインダー越しの視界はあまりに限られている。
それが何なのかわからないまま、 まどかは画面を操作して先程の写真の具合を確認した]
(61) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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[フレームに映りこんだのは、横顔だった。
朝日へ向かって駆け出すひたむきな。
微かに息を切らしながらも、 前を見据えた真剣な眼差しで、
首裏に湿布を貼った男子の横顔だった。]
(62) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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[鳥の羽ばたきが頭上を登っていく。広い肩が上下して、 走っていた足が緩やかに止まる。]
……だめだったか……
[憂いを帯びた横顔が、朝の清涼な空気の中、青空を見上げた。 追っても捕まらない青い鳥を名残惜しむように朝日に目を眇め、 長身の青年は、緩く息を吐いた。]
(63) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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(なん…だこれ…っ!?!?)
[やたらと大きい影だとは思ったが、 まさか人影だとは思っていなかった。 奇跡的にもそれなりにピントの合った写真>>62に、 まどかは目を疑った]
(64) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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[デジカメの画面の中。
首裏に湿布、という満身創痍そうな見た目の中でも どちらかと言えば庶民性が感じられるその男子の横顔は]
[まっすぐと前を見据え。 ほかで見たこともないほど、真剣な顔をして。
朝日に照らされて、輝いていた]
(65) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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……… 、
[彼のひたむきさは、
たとえ一瞬の出来事の中でも。 手の平に収まる小さな画面の中でも。
しっかりと強く強く映し出されて]
[まどかの胸を大きく打つ]
(66) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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…………… 、
[まるで、今撮ろうとしていた筈の 街を区切る大きな河が朝日を反射するように。
画面を見つめるまどかの目が、きらきらと輝いた]
(67) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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[画面から、顔を上げた。 まどかからそう離れていない位置。
朝日を見上げて、青空にも近い長身が緩く息を吐く。 画面の中の彼がそこに居た>>63]
(68) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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[風のごとく、フレーム内に飛び込んだ青年は、 そのまま暫く空を見上げていたが、 そのうちに、なにかを諦めたのだろう。
湿布の貼られた首後ろを押さえて、黒いジョギングウェアを来たその男は、視線を地上へと降ろした。 カメラを構えていた手も緩やかに体の横へと下ろす。]
───?
[と、首をめぐらせた先、 踏み台の上で少女が、 一眼レフをもって立ち尽くしていた。]
(69) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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[踏み台にのって漸く首を曲げずに話せるくらいの、 小柄な背丈にはややも大きく見えるカメラが目に止まる。]
……それ
[視線をカメラに固定したままで、 男の手がもちあがった。 無愛想な声と共に、指が、カメラの目をさす。]
(70) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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[こちらに気付いたのか彼の首が、 澄んだ朝の空からこちらに向く。]
ぅ、ぅえっ?
[思わずびく、と肩を小さく跳ねさせる。 彼の目線を追って自分のカメラを見て、 数秒だけの沈黙が流れた]
(71) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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(……………あっ!?!? そそそそうだ! わたし無断で撮っちゃったってことだよね!!?)
[彼もそれに気付いたのだろう。 もう一度カメラを指差すその目を見る。 無愛想な声を上げて歩み寄ってくる彼の長身と、 その真顔にまどかは思わずたじろいだ]
(ひっ… でかいっ こ、こわい!! こ、これ絶対!! 絶対怒ってる…!!)
[当然だとも思う。 勝手に撮られていい気分をする人はそう多くないだろう。 まどかは慌てたように、頭を下げて]
(72) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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ぁああああ、あのっ! 〜っ ご、ごめんなさい!!
最初から撮るつもりじゃなくて!!そのっ!!
ま、街! 街を撮るつもりだった、んです!! あの、事故で…!!入っちゃって…っ!!!
[彼へと、自分のカメラを差し出した。 デジカメの画面に映し出されているのは、 先程の偶然撮れた写真だ。
ピントが合っていなければ、 事故だというのも簡単だったのだろう。 まどかにとっては幸運だったのだが、 ある意味不運だったともいえる。
きっと怒られる、と怯えながら 長身の彼を見上げて様子を窺った。]
(73) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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………
[ゆっくりとそちらに歩み寄ると、寧ろ慌てた様子で 少女の方から駆け寄ってきた。 町を取っていた。という謝罪の言葉と同時に、 持っていたカメラがずいっと差し出される。]
…
[一回り以上は大きな手が、小柄な一年用のジャージを羽織った少女からデジタル一眼レフカメラを受け取る。]
(74) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[ひっくり返すと、小窓に先ほど彼女がとったと思しき画面が映し出されていた。
撮れていたのは、走りこんできた自分の横顔と、 空の向こうに豆粒のような黒点になった鳥の姿。]
───…
[その後ろには、朝日に照らされる町並みと 川の表面が、キラキラと映っていた。 手前の顔にピントが合わされてはいるが、 町と川幅の広さが、よくわかる。]
(75) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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ジェームスは、マドカの写真を暫く黙って見つめ
2014/11/15(Sat) 22時頃
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これ、
[たっぷりの間を挟んで、顔が上がる。 無愛想な顔が、正面からそこにいるカメラの持ち主を見止めた。]
もらってもいいか。
[軽く、渡されたカメラを持ち上げる。 低い声が緊張した面持ちへとむけられた。]
(76) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[手渡したカメラの画面を、彼は黙って見つめている。]
…………………… っ
[遠くに鳥の声が聞こえるだけの、静かな時間が続く。 たかが1分もないだろう時間が、ひどく長く感じられた]
(77) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[静寂を破るように、低い声が届く]
ぅ、ぅえっ は、はは はいっ!
[横顔の彼がまっすぐとこちらを見て>>76]
[…それはまどかが思っていた 非難でも、罵倒でも苦言でもなく。]
(78) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[まどかは驚いたように、目を丸くして。 怯えが残っているのか。口を小さくとぱくぱくと開いた後。
意を決したように声を出した]
(79) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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ぁああの カメラだけは勘弁してください…っ!!!
(80) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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写真の方だ。
(81) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[一息に生じた誤解を否定して、怯えた様子を見やる。]
…焼き増しでいいから。
[よく言えば落ち着いた、淡々とした声が話を続けた。 渡されたカメラを差し出す。]
……
[じ。と私服の上に羽織られたジャージを見て、 す……と一眼レフを返して空いた手が、 まどかの頭あたりで水平に動き高さを測っていった。]
(82) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[見やる視線はジャージの上に置かれている。 145pの高さを測り終えて、 ジョギングウェア姿の忍崎は頷いた。]
人楼高校の、鷹野だろう?
[── 美術の選択で一緒の。と、 添えて頭のつむじをみて、 うん。と改めて確認したように、 長身の同学年生は、少女の名前を口にした。]
(83) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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あ、あああっ しゃ、写真の方かっ 写真の…………… ぅえっ?
[再び驚いたように目を瞬かせて 焼き増しでいい、と淡々という彼の顔を見る。]
[…怒られると思っていた。 だから、まさか必要とされると思ってもいなくて。
まどかの手に、カメラが返る。 画面には、先程の写真がまだ映っている]
(84) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[…確かに、いい写真が撮れたと思った。
まるで感情までも、映し取ったような。
この一瞬はもう過ぎ去ったあとだというのに。 それでもまだ、新しい感情が湧かせてくれるような。
……彼も、いいと思ってくれたんだろうか。]
(85) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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……………………… 、
[やけに、自分の心臓を打つ音が大きく聞こえた気がした]
(86) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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