194 花籠遊里
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― 帰国 ―
[結局、彼の涙を見ずに羅針盤代わりの徽章を置いて国を出た。 彼是残してきてしまった気がするが、所詮、花街の一時の夢。
その癖、夢から抜け出て、現実になることを待っている。 中々皮肉にして滑稽なこと。
しかし、逃げたのではない。 夢から覚めたのだと思う。
花籠で死にゆく櫻に、お前は花では無いと告げるためか。 墓守を廃業せよと申し付けるためか。
彼が花籠に納まっていた経緯を詳しくは知らないが、 余り褒める事のできぬ親御だったのだろう。 だが、己は見ず知らずの女に感謝をしている節がある。
彼を根を蔓延らせる樹でなく、 二本の足を持つ人に生んでくれたこと。]
(2) momoten 2014/09/23(Tue) 21時頃
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[多くの男が彼の傍を過ぎて行ったように、 同じ事をして見せた男は、夢の覚めた先で彼を待っていた。
面倒で、甘からず、泣かない櫻の子を。*]
(3) momoten 2014/09/23(Tue) 21時頃
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― 某国大使館 ―
『―――まさか、 徽章一つであれほど雷が落ちるとは思わなかったな。』
[呟いた言葉は祖国の言葉、母国の言葉。 花街で覚えた異邦の言葉と違って、語尾も揺れない。 だが、露骨な辟易を滲ませ、広い執務机に向かう男が一人。
エクトゥール・エトワル・ダルジャン参事官。 若くしてキャリアの道を進む新星。 花街を過ごす夜と一線を画する悪辣なる男。
ひらひらと花の合間を飛ぶ蝶でなく、本来海を跨ぐ人。 男の勤めは昼と夜とで表裏如く異なり、二面の顔を持つ。 そんな男が億劫そうな声を上げ、綴っているのは始末書である。]
(4) momoten 2014/09/23(Tue) 21時頃
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[地位を示し、国権たる徽章を失くしたと告げれば、大使の呆然を買った。何処にやったと問われ、花に貸したと答えたら、きつく灸を饐えられた。
金で出来た徽章では在るが、そのものの価値よりも宿る意味が大きい。他国の花街で換金され地下に流れるなど、許せぬことだったのだろう。ご丁寧なことに、アレには個々の――即ち、己の名も刻まれている。
しかし、己は始末書を書きながら何処か楽観していた。 あの櫻が一時の銭金の為に、自身の預けた徽章を売り払うとはこれっぽっちも考えては居なかった。 それは余りにも櫻を侮りすぎている。
きっと彼のプライドが許さない。]
『……さて、俺も働かねばな。 あいつばかりに、賭させるのでは廃ると言うものか。』
[独り言を呟いて、書き上げた始末書を机に放り、 代わりにレターセットへと手を伸ばした。*]
(5) momoten 2014/09/23(Tue) 21時頃
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[彼の手を取り、攫って仕舞った方が良かったのかもしれない。
案外、堪え性のない男がそんな風に考えたのは、 一度や二度では足りず、異国の秋はすっかりと深まっていた。 風は鼻頭を掠めて冷たく抜けて、季節は冬が間近まで迫る。
それでも、決して一時の気の迷いでなく、 あの臆病な彼に踏み出す一歩を強いたのは、 梢に留まった数多の蝶と別のものになる為だ。
彼に己の死体は埋めさせない。 残したたった一つの約束は遺品などではなかった。]
(29) momoten 2014/09/24(Wed) 21時半頃
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[花の都と名高い異国の街は霧の街と違う華やかさがあった。 気候が違うのか建築様式も何処か異なり、 大通りには賑やかな店が軒を連ねている。
鮮やかな彩の花がバケツ一杯に活けられて。 ショーウィンドウに宝石のようなチョコレートが飾られ。 二階建ての真っ赤なバスが行きかう籠の外の世界。
見るものすべてが彼を出迎えるのに、 海の向こうまで呼んだ張本人は、見当たらない。 逢いたくないと思う時は、顔を見せるのに、 彼が探し出すと見つからぬ不条理。]
(30) momoten 2014/09/24(Wed) 21時半頃
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[例え、国内と言えど、外交庁幹部の名前など早々知れ渡っているものではない。ただ、彼が行き交う人々に見せる徽章は誉れと和平の象徴。 金に輝く徽章を見せびらかして歩く彼が不審視されるまで、時はそう掛からなかった。
『これを何処で手に入れた』『異邦人か、何処からきた』 『何故、お前がこのような物を持っている』
警察が彼に浴びせる早口など、到底聞き分けられないものだ。 異邦人から徽章を毟り取り、出所怪しい身分証をジロジロと不躾に眺めた挙句、折角海まで渡ってきた彼の苦労を鑑みず、怒号と共に牢へと放り込んだ。
冷たい鉄製の檻の中、彼はまた幽閉の身の上に。 その上、此度は大層待遇が悪く、留置所の空気は淀んでいた。
彼の身分を改めた訳では無いが、花の都の警察は、九割九部九厘、彼を罪人であると見做したらしい。
花主が揃えたのだろう旅券は公的な検問を抜ける細工が仕掛けられていた。言葉も地理も、何もかも分からぬ彼が一人で異国の地を踏めるまでは采配してくれたようだ。
―――だが、その旅券が致命的なものとなった。]
(31) momoten 2014/09/24(Wed) 21時半頃
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― 留置所 ―
[不法入国すれすれの渡海に、盗品の所持。 挙句、彼には盗品を使った強請りの疑惑までかけられている。
金目当てに高官に近づく輩など掃いて捨てるほどいるのだ。]
『しかし、こんな美人が詐欺なんて世も末ですねぇ』 『外見に騙されたんだろうナァ、牢を覗いたか?華のかんばせとはああいうことだぜ。』 『刑務所に送られたら、さぞかし苦労するんでしょうなぁ』
[彼の牢を見張る凡夫達は、珍しい虜囚に興味津々で、 何処か下卑た色の滲む雑談を交わしている。 美しいものには目がないと謳われる国民性か、 華として人を惹き続ける生き方をしてきた彼に興味を持たぬはずがなかった。]
『あれだけの上玉、掃き溜めに鶴だろうナァ』 『……そうですよね、でも。どうせ、刑務所に行くのなら…』 『………、』
(32) momoten 2014/09/24(Wed) 21時半頃
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[彼が憂いている傍で、ほんの少し空気が変わった。
じめじめとした牢獄が、不意に木格子の地下牢と重なる。 彼がそれを察するよりも早く、カシャン、と鍵が上がった。
彼に希望を与える微かな音。 直後、絶望を与える確かな光景。
警官服に身を包んだ男が二人、 好奇と僅かな欲に浮いた眼を持つ男が二人。]
(33) momoten 2014/09/24(Wed) 21時半頃
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[彼に危機感を与えるには十分な状況。 花として買われるのではなく、花として散らされようとする。
彼は生まれながらの花。
入り口を塞がれ、男達の腕が彼に伸びる。 彼に慰めを求めてきた腕では無い。 罪人を罰すると云う名目で、向かう折檻。
彼は苦難に咲く可憐な花。
抵抗など、屈強な男達二人に抑え込まれ、 手錠が細い手首を背中で戒めた。 粗末なベッドに投げ出された痩躯を押さえつける腕が重い。
金子の為でも、慰めの為でもなく、 ただ、欲のために。彼は穢されようとしていた。]
(34) momoten 2014/09/24(Wed) 21時半頃
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[その事実が彼にどれ程の絶望を与えただろうか。 黴臭い枕に顔を押し付けられ、襟ぐりを引かれて背中が剥き出しになる。
荒い息遣いと、遠すぎる蝶の影。 海を越えて、蝶を追いかけ、しあわせを夢見て。
それなのに、待ち受けていたのがこんな結末だと、 三文小説すらも描かないような幕切れ。]
(35) momoten 2014/09/24(Wed) 21時半頃
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[ 花は所詮、花にしかなれぬのか。
枕に閉ざされた視界と、這い寄る体温。
諦めて仕舞え、諦めて仕舞え。 所詮花は摘まれるもの。と、彼の幸せを拒む。]
(36) momoten 2014/09/24(Wed) 21時半頃
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[――――しかし、伸びてきた腕は何時まで経っても、 彼の白皙に触れることはなかった。
代わりにバタバタと騒々しい音が立ち回り、刹那落ちる沈黙。 次に彼に触れた指は仄かに温かい武骨な指だった。
彼にしてみれば、とうとう年貢の納め時かもしれない。 頬に触れた指先は、そのまま慰めるように緩く撫ぜ。
浅く、されど、確かに、安堵の呼気を吐き出した。*]
(37) momoten 2014/09/24(Wed) 21時半頃
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― 少し前 ―
[今日も彼は来なかった。
秋風はそろそろ冷たく、落ち葉を回す。
さて、次の出向までは洋々過ごせる身の上が、 毎日大使館に出向いてデスクワークに向かうのは、 出世を求める訳でも、勤勉な性根であるからでもなかった。
――――単に待ち人がいたのだ。]
(47) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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[出国の段にて多少の不安要素はあったが、 案外、恩の押し売りと、花への寵愛だけは欠かさぬ花主のこと。 確固とした杞憂を抱くほど、彼の手腕を侮っていなかった。
―――が、やはり、待たせる者と待つ者では時の流れが違う。 普段の彼は待つ者で、己は待たせる者だった。 逆しまの状況は、もしや初めてのことかもしれない。]
―――…港ねぇ、
[船を見ようと来ぬものは来ぬ。 そんな事は分かりきっていたが、待つのは如何にも不得意だ。 三十余年生きた男は今更己の悪癖を自覚し、息を漏らした。]
(48) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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[慌てた様子で秘書官が飛び込んできたのは、丁度その時。 別珍に包まれた徽章の光は、花の香りよりも強く己を惹く。
約束は叶えられた。 彼は反故することなく赤誠を示した。
事情を取り留めなく説明しだした秘書に構わず大股踏み出し、 すれ違い様に煌く徽章を奪った。五指で掴んだ約束の果て。
漸く明けた櫻の季節に、荒ぶ木枯らしなど、障害にもならない。]
(49) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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― 地下牢 ―
[異邦人とは本来奇異に映る。言葉が通じず、造形も違う。 畏怖すら抱く花の美貌が、花の都を無事抜けて、 のこのことやってくると考え居たのは己の迂闊だった。
彼は一歩、足を踏み出すだけで櫻香を撒く。 良く笑い、良く喋り、櫻の香で人を惹く。
警察に殴りこんだ外交庁幹部は、有無を言わさず押し通る。 足を止めず、要人を引き取りに来たと告げれば、 意外な――彼がずっと訴えてきた――真実に驚く詰署員等。 呆然とする彼らから止める者など出なかった。
薄暗い地下に降り、花に群がる羽虫を鋭い眼光で殺す。 彼が花をやめたその時、彼らは踏鞴を踏んで逃げ出した。
陵辱の憂き目を見ることなく、人になった彼に視線を滑らせ。 乱れた黒髪と、ほんの少しの加圧に色付いた背中を見た。]
(50) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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[花の彼なら誰にでもくれてやろう。 花束と括り、花瓶に活けて、愛でもしよう。
だが、今の彼は、譲る気になれない。]
―――…再会早々罵倒するんじゃねぇよ、可愛げのねぇ。 お前さんが暢気に渡海しているからだろうよ。
[皮肉めいて絞った声は、僅かに上がっていた息を誤魔化した。 伸ばした指は、彼の頬から眦を慰めるように往復し。]
(51) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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[そこで、ふと口角を持ち上げ、彼の面差しと対峙した。 恐怖をご自慢の掘った穴に埋めて隠し、気丈に振舞う彼。 隠しきれていないように見えるのは、きっとそれが人の証だ。]
別に構やしねぇよ、呼ばすとも俺が行けば良いだけの話。 花に通うは蝶の特権――…ああ、もうどちらも違ったな。
[相変わらずの揶揄語り。 フェイスラインを辿る指先が、彼の小さい顎を捕らえ。]
物知らずなお前さんじゃあ、舌が回んねぇと思うが。 いや、どうせ、呂律も回らん時じゃねぇと呼びそうにねぇか。
[笑みを噛み殺しながら、彼の顎を引き、自身の首を傾けた。 空の左手を黒髪に差し、緩く梳きながら、静かに寄せる顔。
今度は、眼を閉じろなどと無粋を語ることもなかった。]
(52) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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―――…『エクトゥール』だ。 閨ではそう呼びな、櫻子。
[重ねた唇から、そっと、人の蜜を彼だけに注いだ。*]
(53) momoten 2014/09/25(Thu) 00時半頃
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[健気を抱えて海を越え、 考えたこともなかった世界に足を踏み出した彼。
やはり外の世界は怖いところだと怯えさせただろうか。 花が一輪で生きていくには果てしない世界。 けれど、二人で生きていくなら、きっとそう悪いものじゃない。]
――…櫻子、
[重ねた唇から注ぐ蜜は、彼の名前を象り。
控えめな指先が服に皺を刻み、 妙に甘やかな羞恥に彩られる彼に目元を緩めた。
彼が瞼を下ろしてくれて助かった。 己は今、大分緩い顔をしている自覚がある。]
(75) momoten 2014/09/25(Thu) 21時半頃
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―――…良いさ、これから俺が教えてやらぁよ。
どんだけ喧しく泣いて喚いても、もう、置いてったりしねぇ。 [彼は一度捨てられ、花となり。 今度は花籠を出でて、二度目の花となる。
悪辣で、傲慢で、身勝手で、我侭な、 けれども、唯一人を待っていた男の。
男は、恋に落ちる音を聞きながら、 物語の終わりに、美しい花御前《はなよめ》を手に入れた。*]
(76) momoten 2014/09/25(Thu) 21時半頃
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― La Vie en cerisier ―
[彼を引き取った男が連れ帰ったのは、 小さいながら郊外より花の都見下ろす屋敷であった。 古い建物に関わらず、余り生活感がしないのは、 つい最近、手に入れたものであるから。
山賊か海賊か強盗宜しく、 諸所の手続き済ませたがる警察を振り切り、 彼を肩に担いで戦利品めいて攫った先。
玄関潜って、足は一直線に自室へ向かう。 屋敷自体は差して広くは無いが、中庭も抱えており、 彼に宛がわれていた個人部屋と比べれば雲泥の差。
しかし、手入れをする召使はまだ揃えておらず、 男の不精の片鱗覗かせ、薄い埃が積もる場所も。]
(77) momoten 2014/09/25(Thu) 21時半頃
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―――…さて。 うんと寂しい想いでもさしてやるんだったか。 しかし、その前にお前さんにゃ、褒美をやらねぇとならんな。
[寝る部屋、と主張するが如く、広い寝台を収めた自室。 己の上背を納めても余る広大なシーツの海へ、 軽い彼をぽすんと放り、早速と言った調子で声を掛けた。]
……良く来た。櫻子。 もう、花籠へやる心算はねぇが、閉じ込める気もねぇ。 お前さんは何処へでも好きな場所へいける。 だが、帰る場所は此処にしろ。此処以外は許しゃしねぇ。
俺は強欲だが分別はある男だ。 俺のものは俺のもの、余所のものは余所のもの。
(78) momoten 2014/09/25(Thu) 21時半頃
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[堅苦しく喉を詰めるネクタイのノットに指を掛け、 布擦れの音を聞かせながら、傍に捨てた。 シーツの海に溺れる彼をサルベージする振りをして、 そっと寝台に片手を突き、顔貌を覗きこむ。]
そして、お前さんは俺のものになった。
呼べや、櫻子。ベッドで呼ばせたことはねぇ名だ。 お前さんにこの先の分も、全てくれてやる。
[彼へと己の名を強請り、低く笑気を零しながら。 機嫌良さ気な身は、先ずは頬へと、淡くキスを捺して見せた。*]
(79) momoten 2014/09/25(Thu) 21時半頃
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墓荒らし ヘクターは、メモを貼った。
momoten 2014/09/25(Thu) 22時半頃
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[彼が掌から零れ落としてしまった沢山のもの。 幼心や好奇心は、これから己の庭で育てられる。 彼は自身を捻くれていると思っているが、到底同意できない。]
お前さんだけの家じゃねぇよ。 主人は俺さね、掃除や炊事でもしてりゃ暇も潰せるだろう。 そうして、俺を待ちゃあ良い。 もう、俺は蝶でも蛾でもねぇ。 ―――…ちゃんと帰ってきてやるからよ。
[本当は、彼が家に明りを灯していてくれたなら、 それ以上望むことは何も無かったけれど、 愚直に告げるほど己は素直に出来てない。
今か今かと、必ず帰る己を、彼が待っていてくれるなら、 それで良い等、誰に注いだ毒より確実に己を侵す。]
(86) momoten 2014/09/26(Fri) 00時頃
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仕事は終わった。 もう数刻経ちゃ陽も落ちる。 夜まで待て? 冗談じゃねぇよ、何夜越えたと思ってんだ。
[低く笑った男が、何処から夜を数え始めたのか彼は知らない。 櫻が花弁を散らし、人に変わるまで、もう散々待った。
鼻先を頬に摺り寄せ、距離を詰め、空の右手が首筋に触れる。 武骨な感触を肌理に添わせ、衣の袷に指を掛けた。]
眼ぇ、見ろよ。 もう、隠し事なんざさせやしねぇ。
[言葉尻に足すのは、眦に捺したリップノイズ。 物慣れぬ生娘のような彼に興は挫けず、寧ろ笑みが深まった。]
恥らえよ、特別だ。 抵抗して良いぜ、お前さんを金で買わない初めての男だ。
(88) momoten 2014/09/26(Fri) 00時頃
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[差し出した舌で頬を嬲り、足を左右に開かせるよう膝を進めた。
強引ではあるが決して無理強いでない所作は、 今まで彼に見せてきたような、花にする手順ではなかった。 僅か和装を乱せば五指は平たい胸を這い、鼓動を手繰る。]
―――…櫻子、
[元より低い声が、彼の傍で空気を揺らす。 ゆっくりと摘み上げた乳嘴を柔らかく親指の腹で擦り、 硬い皮膚の感触が、心音を引き上げるように懐いた。]
………愛いやつよな。
[毒でも蜜でもなく、真情からこんな言葉を吐き出すような男だと、自分でも知らなかった。*]
(89) momoten 2014/09/26(Fri) 00時頃
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[己の一言に頬を桜色に染める様は中々如何して。 あんなに可愛げなく、凛と咲いていた花の癖。
触れるたび、語りかけるたび、彼が隠していた内側を理解する。
ついつい笑みを噛み殺し、胸を擽る快諾に吐息が弾む。 淡い体温が彼の肌に染み、唇で追いかけ接吻を降らせた。]
しかし、お前さんは案外、強情で寂しがりじゃあないかい。 牆壁を立てて、花籠に篭城して、顔を見せれば逃げちまう。 そんな男から寂寥を溶かせ?
―――…生涯の大業になりそうだ。
[面倒くさそうな口振りを作って見せるが、 彼の素直に引き摺られ、形ばかりも煩わしさを醸せない。]
(112) momoten 2014/09/26(Fri) 20時頃
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[彼が身じろぐ度に黒髪が揺れ、夜を模して拡がり行く。 夜に融けてしまいそうな櫻を捕らえ、首筋に顔を埋めた。 顎の付け根を強く吸い上げ、散らす花弁。 血脈を辿り、露わになる鎖骨に浅く歯を立て、甘く紙散らす。]
抵抗しないのかい? ……なら、美食を邪魔されねぇってことか。
―――…甘ぇな、お前さんは。
[彼の性格か、彼の味か。 詰る声すら糖度が絡み、喉が焼ける心地。 だが、悪くない。いや、癖になりそうだ。
じりじりと指の腹で尖りを潰し、凝った末端を愛撫。 時折、惨く引っ張り、直ぐに爪先で掻いて慰める。 じわりと膝の皿で彼の股間を押し上げれば、高い声を聞いた。]
(113) momoten 2014/09/26(Fri) 20時半頃
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[そうして、双眸を細め、匂い立つ色香に瞳の奥が焦げていく。]
……お前さんに眩むとは、俺も随分末期よな。
[花としての色では無いと知りつつも、 首裏に欲が這いまわる心地を往なせず、慣れない。 己はいつもその前に奪って、身の充足を得ていた。
けれど、此度ばかりはそうもいかない。
臆病で、意地っ張りで、何かと喧しい―――、 可愛い櫻が愛着を求めているのだ。
否など、どの口が唱えられようか。 花落ちるより、花に落ちるとは、真に度し難い。]
(114) momoten 2014/09/26(Fri) 20時半頃
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[指先を胸より退かせ、脇を滑らせ、腰に至る。 彼の強請る声色にずくりと疼く下肢を抑え、 白く長い両の足を開かせ、下着を容易く払った。
同時に彼の腰を持ち上げるよう手繰り、和装の下衣がはらりと捲くれ、彼の屹立が視界の内。 更に覗かせた舌先が彼の菊座の内へと侵攻。
傲岸で悪辣なはずの男は、彼の身体を労わり、熱い軟体で窄まりに触れ。ぴちゃりと鳴る水音は酷く生々しく。 手ずから準備などしたことの無い男は丁寧に、丹念に、体液を彼の縁へ注いで、また滑らかに掘削。 彼の呼吸の合間を狙い、秘所が拓く度に浅い内壁を舌が巡る。]
―――…熱ぃ、挿れたら融けちまいそうだな。 お前さんの中に、全部。
[更に身を引き寄せ、彼の背中へ己の滾る熱を押し付けた。 彼の内を犯したがる欲は着衣越しに脈を刻み、 それでも、果てない熱を堪え、彼を慈しみ愛でる。
花を扱うより柔らかな手順。 彼は、恐らく今後、二度は逢わない、そういった特別な人。*]
(115) momoten 2014/09/26(Fri) 20時半頃
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―――…、……おぅ。
[彼の甘えた声が愛いなんて言ってやらない。 彼に惹かれているとも、見せたくない。
しかし、相手は賢しい手練だ。 語尾の微かな揺れに混ざる希求すら、きっと彼に伝わる。 寂寥感を満たし、隣に並び、同じものを見て、心を添え、 ―――二人で生きることに、応と返したのだから。]
(125) momoten 2014/09/26(Fri) 22時半頃
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[れろりと柔らかな舌が形を変え、浅い場所から攻め立てゆく。 窄まりが竦む度に口付けを与えて慰め、 襞を軟体で掻き、唇が自然と円弧を形作る。]
――…見えるかい、櫻子。 一丁前に、すっかり感じてるじゃねぇか。
[戯れに五指で彼の屹立を撫で、雫をささやかに払うと、 彼の薄い腹へ、パタリと淫液が散った。 武骨な指間でねち、と捏ねる糸を見せ、 性器と繋がる卑猥な光景で彼の恥辱を煽る。
己の舌で、指先で、彼が啼くのは酷く心地が良かった。 満ちるほどに飢えていた数多の夜と一線を画し、 着実に腹の底へ溜まっていく。
うつくしい櫻の一片が、何枚も、何枚も。ひらひらと。]
(126) momoten 2014/09/26(Fri) 22時半頃
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[淫蕩な身体は熱く、己の身にも伝播した。 たっぷりと濡らした内壁を挫くように、舌を尖らせ、 蠢く柔襞を擦り立てて、彼の身体を拓いていく。 軟体を伸ばし、粘膜を啄ばみ、蜜を啜る。 飲み込んだ分は、きっちりと後ほど返せば良い。 たっぷりと、彼の中に。
ハ、と零した吐息が窄まりを嬲り、痙攣を誘う。 途端、己の左胸の辺りに加圧を覚え、少しだけ片眉を顰めた。
こんな感覚を、己は知らない。 覚悟はしていたが、この蜜だか毒だか知れないものは良く回る。
軟体を蛇行させながら、絡みつく内襞を刺激し、 彼を浸食していた軟体は緩やかな後退を選んだ。 見下ろした彼に、我慢できないなど言いたくない。 奪いたいと言うには、ぬるま湯に浸りすぎて、 欲しいと紡ぐには、柄でもない。
だから、口から付いて出たのは飾り気の無い一言。]
(127) momoten 2014/09/26(Fri) 22時半頃
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―――…好きだ、櫻子。
[らしくないと己を窘める前に、彼の膝を大きく開かせた。 答えなど聞いてやらない、呼べば良いのだ。
彼にだけ与えた、己の名を。 本音を紡ぐ、蝶ではない男の名を。]
(128) momoten 2014/09/26(Fri) 22時半頃
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[眼差しを邂逅させた途端、下肢に凄まじい圧迫感を与えた。
強大な質量が彼の華奢な身体を軋ませ、めり込んでいく。 時間を掛けて、己の熱量を彼に教え、腰を揺すると、己の腰に焼けるような熱が拡がった。]
―――ッ、 狭ぇな、あんまり熱烈に歓迎するんじゃねぇよ。
[片眉を揺らしながらも、己の楔は歓喜に震え、 彼の中で最終的な成長を遂げ、空隙をみちりと埋め尽くした。
足を抱えなおし、熱くなった己の身体を更に押し付け、 彼を掻き抱くように上体を倒してゆく。]
………好きよう、溶かせよ。 ――――…全部、お前さんにくれてやらぁ。
[彼の両脚の間で揺れる屹立に指を添え、 緩く扱く律動に合わせて、ズン、と深く彼を突き上げた。 粘膜に接吻捺すような一打、熱を払う瞬きに合わせ、音もなく、満足そうな笑みを見せた。*]
(129) momoten 2014/09/26(Fri) 22時半頃
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― 花蝶の夢 ―
[厭だ、と声が聞こえた。>>4:71
確かな拒絶は、胸に降り積もり、心を冷やしていく。 寄り添えとは思わなかった、理解されたいとも。
ただ、一時。海を渡る際に、抗えぬ本心に従っただけ。
けれど、それも。 蝶の、或いは夜蛾の、或いは毒虫の夢想だったようだ。
強く握り締めた徽章が、共有しようとした約束が、 己の強靭な心が、脆くも砕けてしまいそうだった。
所詮、花は花でしかなく、蝶は蝶でしかない。 どちらも人から酷く遠い、幸いなど夢物語。]
(141) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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[その夜、己は購った花を抱いた。]
(142) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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[手荒く扱うのは花として、虐げるは蝶として。 厭だ、厭だと膨れる彼の本心など理解もせず、 剥いた背中に罰として爪を立てた。
もう彼は花でないと花主は言う。 だが、違う。花とは金に縛られる者のことではない。 花とは、咲くことしか出来ぬ者のことを言うのだ。
花を買うには花籠を、花を飼うには植鉢を。
強姦めいて貫き散らした櫻の花。 櫻は散ったか、未だ咲くか。
――――いよいよ、この手で散らそうか。]
(143) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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[中に幾度も精を放ち、身体の奥底から悪辣で汚した。 酷使した秘所は紅く熟れて、創を負っているかもしれない。
しかし、そんなことは如何でも良かった。 抱き潰して意識も虚ろな彼の黒髪を掴み、 己の逸物を彼の乱れ髪で拭った。
彼が身体を捩る度、下の窄まりから精液がゴプリと零れる。 粘性の白濁は濃く、毛先から爪先まで欲に塗れた花。
それでも何故か満たされないのは、いつものこと。 いつも以上の茫漠を抱えている事実からは眼を逸らした。]
(144) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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知っているかい、櫻子よ。 お前さんは今宵で御役御免だ。
お前さんは捨てられたのよ、 あの花主にも。この花籠にもな。
[襤褸のように扱い、牀榻に捨てる彼の体躯。 本当は彼に預けようとした徽章が、己の証を手の中で転がし、 そっと、彼の顎を掬う。もう咲くことしか出来ない花を掬う。]
(145) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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―――…拾ってやるよ、感謝しな。 お前さんは誰かを慰められりゃそれで満足だろう。 俺がお前さんのちっぽけな価値を認めてやらぁ。
………煩わしさなんてな、慣れてるよ。
[彼を傷つけ、根を刻み、切花へと変えていく。 返し刃で抉られた心は血を噴出すが、彼も己も泣けはしない。 何処まで行っても交じり合わぬ蝶と花の末路。
鋭い徽章の切っ先を、彼の耳に宛がい、力に任せて貫いた。 吹き出る血は、涙の代わりであれば良い。 痺れを伴う指先は、歓喜に震えるものだと誤魔化した。
彼は手に入れた。 もう、それで良いじゃないか。 これ以上の形などありはしない。]
(146) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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[彼は花、己は蝶。夜の全ては夢物語。
狂おしい涙も、甘い口付けもなく、彼は男に手折られた。]
(147) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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[男は花を海の向こう側へと連れ去った。 居場所を失った花は摘まれた悪辣に抗う術を持たない。
古びた屋敷の庭は荒れ果てて、雑草ばかりが背を伸ばしている。 土いじりな得意な花に庭師の真似事などさせはしなかった。 墓守の真似も、もうさせない。
首に輪を掛けて、地下に繋いだ花は、 色ばかりを増すのに、何故か死体のように思えた。
櫻の下に埋まった、亡骸のように思えた。]
(148) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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[張型にたっぷりと塗した蜜は、彼の身体を火照らせるもの。 帰宅まで飢えていろと言わんばかりに、 嵌めた貞操帯が彼の飢餓を一層深いものへと変えていく。 唯一人の主人の帰りを、渇望させるように。
三日と空かず彼を抱く主は、今宵も地下へ続く階段を下る。 終わりの無い淫欲の中、飼われる花は、 今宵も男により花弁を開くことになる。
終わりは知らない。或いはもう終わってしまった。 出口も行き先もない、長い長い夢のようだ。
何処かで間違えたとは思わない。 櫻は余り笑わなくなってしまったが、 翅を休めるだけなら贅沢は言わない。
ギィ、と重厚な扉が開き、一糸纏わぬ花に向けて、 せめて悪どい笑みを作って、苦いものを飲み干した。]
(149) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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ただいま、―――…俺の花。
[慾と悦に塗れた一時が始まるはずなのに、 自分の声は自棄に冷えて聞こえた。 気のせいだと、自身に言い訳をする回数は増え続けているが、 最早、そんなことにも気がつけない。
男はそろりと、青白くなった櫻花に手を伸ばす。 今宵も彼の耳朶で、己の本当の徽章《おもい》が輝いていた。]
(150) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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[さぁ、明けない夜が始まる。 すれ違ってしまった想いも、教えられなかった名も、 全てを隠して、永く、闇い、夜の始まり。
今宵も光を恋うて、夜蛾が――――、
* 櫻の梢に留まった。 *]
(151) momoten 2014/09/26(Fri) 23時半頃
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[やらしい顔で笑った彼に文句はつけない。 どうせ、彼に見透かされている。
取り繕い、隠すのは、今だけやめておく。 無粋だからじゃない、―――余裕が足りてないからだ。]
堪えた甲斐もあったってもんだな。 良い顔だ、寝所に鏡置こうぜ。 お前さんに見せてやるよ、―――…教えてやるよ。
[彼が己に抱かれてどんな顔をしているか。 揶揄ではなく、本音からふざけた言葉を吐き出して笑う。 逸れてしまった彼の気を惹くように。 罵声でも悪態でも、彼の声が聞きたかった。
余りに稚いと脳裏に巡ったが、無視をした。 もう、彼に何も隠さないと決めたのだ。]
(167) momoten 2014/09/27(Sat) 01時頃
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[伸びてくる両腕に身を寄せる事を、花の頃は忌避していた。 彼を買う数多のように、慰められるだけの男になりたくなかった。 言えば、きっと笑気を誘うので言わないが、 彼の抱擁に応える今は、考える以上に特別な意味を持つ。
貫いた痩躯を抉るように腰を突き出して、愉悦を追う。 強引に腰を使い、圧倒的な質量で追い詰め、 奥底ばかりを亀頭懐かせ、柔く解いた。
重ね合わせた脈動は、お互いの心音として交じり合い、 触れた場所から境界線を見失って、融けていく。 確かに彼の寵愛するショコラよりも、甘い。]
(168) momoten 2014/09/27(Sat) 01時頃
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―――…櫻子。いつか、俺が。 お前さんの寂しさとやらを、埋められたなら名を教えてくれや。
捨てたなんて言わせねぇ、失くしたとも。 ……お前さんの全部を、俺に寄越せや。
[彼が苦労の果てに多く捨ててきたもの。 一朝一夕では理解出来ない悲しみを、己は生涯掛けて知る。
彼が庭に埋めてしまった心の欠片を野蛮な男は掘り起こし、 一つずつ彼に持たせていく。土いじりなど趣味で無いのに。
背に立つ爪に唆され、彼の屹立を追い上げると共に、 二度、三度と深い場所を激しく突き上げた。 彼の薄い腹に波を立たせ、離さぬように強く擁した。]
(169) momoten 2014/09/27(Sat) 01時頃
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――――……ッ、
[どこにも行くな、と囁いた擦れ声は、呻き声に紛れた。 同時に、迸る熱が彼の奥で弾け、奔流が爛れるような熱を撒く。 飛沫は浸潤と犯し、息を乱して重ねる肌。
視界に納まる輝石の雫が、酷く尊いものに思えた。 黒髪を掻き抱いて、引き寄せ、キスで噛み付く。
誰にも渡さない、誰にも見せない、誰も知らない、 己のだけの雫は、己の腹ではなく、胸を満たしてくれた。]
(170) momoten 2014/09/27(Sat) 01時頃
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[恋に落ち、涙が落ち。 彼と己は、想いで心と身体を埋めていく。
きっと、この生温い感覚の名を、 ―――――― しあわせ と、呼ぶのだ。*]
(171) momoten 2014/09/27(Sat) 01時頃
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― そして ―
[悲しみを埋めた果てに、彼は名を教えてくれるらしい。 命題と言うには聊か、大袈裟だがそんな生き方もそう悪くない。 ポッと明りの灯る家に帰ること。 異国の著書を二人で読み耽ること。 斜めに植えられた桜で花見をすること。
己の名を呼ばれること。
そんな、彼の名を、己はきっと知っている。 そう、彼の名は、
* しあわせ と、言う。* ]
(189) momoten 2014/09/27(Sat) 02時頃
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