296 ゴールイン・フライデー
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─ Der Appetit kommt beim Essen. ─
[ぐるりと見渡す範囲に探す姿がないことへの溜息なぞきっと、店の活気と看板娘の笑顔にかき消されただろう。
店で過ごす時間は週に一度、一皿ないし二皿と、グラス一杯の酒が無くなるまでと決めていた。 つまらない意地のせいですれ違いを起こす可能性は十分に考えられたが、戒めねば、いつまでも待ってしまう。 毎日のように足を運んでしまうだろう、女々しく未練たらしい性格は30年近く前から自覚している。
シュパーゲルの冷製ポタージュに、トマトとモッツァレラ、バジルを乗せたブルスケッタ。 こんがりとローストし、オリーブオイルと塩胡椒、粉チーズにレモンを数滴纏うシュパーゲルも添えてもらった。そのまま齧るでも、スープに浸すでもいい。]
(9) 2019/05/19(Sun) 18時頃
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[ゆっくり、じっくり。 ひと口、ひと匙を味わうささやかな晩餐。 あの人を待つための時間稼ぎ? いやいや、まさか、そんなの────当たり前だろう。
皿までキンキンに冷えた冷製スープは早々、温くなることもなく、お陰で普段より長い時間、ぐるりと店内を見回すこともできた。
まだまだ働き盛りだろう、いつも清潔で立派な靴を履いている紳士。 お堅そうなスーツに身を包みながら、近しいサイズの胃袋を抱えているのだろう、食欲旺盛な男。 近づけば甘い香りが鼻を擽る、一見気安い雰囲気の伊達男。
ワイングラスを傾ける姿が様になる青年は、そのまま映画のワンシーンに登場してもおかしくなさそうだ。 いつだったか、グラスハープを披露していた男の姿はまだ見えないが、彼ともすれ違いになってしまったのだろうか。
偶にマーケットでも顔を合わせる、柄は悪いが気の良さそうな男が携える杖には、少しだけ眉をひそめた。]
(10) 2019/05/19(Sun) 18時半頃
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[喩え顔ぶれが同じであっても、選ぶ皿が違えば、腰を据える場所が違えばまったく同じ景色になることはない。 万華鏡のようにくる、くると変わる眺めに足りぬ色彩を追ううちに、遂にスープは空となり、ワインも残りあと僅か。
今夜は会えず仕舞いだろうか、それとも先週の夜が最後の逢瀬となるのか。行儀悪く肘をつき、落ちる溜息をまたしても掬ってくれたのは、やや遅れて春の兆しを見せる看板娘。
徐に差し出されるカクテルグラス。 乗せられた薄紅色の氷菓は、恋に浮かれ、はしゃぐ頬の色そのままだが、咄嗟に思い浮かべたのは別の、紅。]**
(11) 2019/05/19(Sun) 18時半頃
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[鳥渡したサービス、と運ばれてきたトマトのジェラート。 恐らく来店時の会話を覚えていたんだろう。 これしきで野菜不足を補える筈もないが、気遣いが嬉しかったし、助かった。
何せ、待ちわびたドアベルが鳴ったのはついさっきのこと。 もう少しだけ、同じ空間にいたい。せめて何を頼むのかくらい知ってから帰りたかった。自意識過剰が過ぎて、同じ物を頼むなんてことすらできやしないが、気になる奴のことは、何だって気になるものだろう?
ひとくちで消えるジェラートを、丹念に舌の上で蕩かせる。 瑞々しい甘さと独特の酸味と青臭さ。一度に飲み込もうとしたせいか、瞬間、僅かに咽喉が詰まる。 胸の奥まで苦しくなるような感覚は、まるで────。]
(47) 2019/05/19(Sun) 23時頃
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[ごろ、と。薄っぺらいマットレスの上で寝がえりを打つ。 特に予定もなく、怠惰に過ごす日曜日。
頭の中だけがフル回転だった。 主にあの人について知った、新たないくつか。 飼うほどに猫が好きでと、それが叶う環境にあること。
何処のどんな猫か知らないが、運がいいことだ。 この先、恐らく寿命が尽きるまで。 あの掌に撫でられて、同じ部屋で、もしかしたら同じベッドで寝て、好きなだけ戯れるんだろう。
愛されるのが当然だという顔で。 どんな我儘も粗相も、甘ったれた鳴き声と、柔らかな毛皮を擦りつけることで赦して貰うんだろう。
それがどれだけ、恵まれているかなんて考えもしないで。]
(48) 2019/05/19(Sun) 23時半頃
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……莫迦みてえ
[まさかこの齢になって、猫に嫉妬する日が来ようとは。]
(49) 2019/05/19(Sun) 23時半頃
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[ごろ、と逆側に寝返りを打つ。 比較的整然とした棚に並ぶのは、もう長いこと開けていない靴箱にカレンダー、それから古いラジオ。
固定の周波数から流れてくるのは、耳馴染みのいい男の声。 切欠なぞ覚えていない。始めはほとんど耳に届いてもいなかった。くだらない恋愛相談が莫迦莫迦し過ぎて、逆に面白がるようになってからは工場で、移動中の車の中で、時報代わりにもなると流すようになり。
土日も放送があると知ってからは、むさ苦しい部屋に陳腐でポップなラブソングが流れる始末。 内容によっては無意識に突っ込みも入れていた。
"そういうアンタはさぞ大層な恋愛してきてんだろうな" とか。
"よくそんな気障な台詞、素面で言えるな" とか。
共感を覚えたり感心したり、思わず声を出して笑う日も。]
(57) 2019/05/20(Mon) 00時頃
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[睫毛を伏せる度に、脳裏に鮮やかに映るのは店を出る前に垣間見た、まだ瘡蓋も薄い赤い筋。
血が滾るような高揚は、酒のせいじゃない。 頬の火照りが収まらないのは、暑さのせいじゃない。
食後の一服も忘れ、塒へと駆け出した。服を脱ぐのももどかしく、そのまま冷水を浴びて、蹲って頭を抱えた。獣が残した爪痕に何を想像したか、なぞ。絶対に知られたくない。
離婚して暫くしてから、開き直りと自棄で、遊び人めく振舞いに興じたこともあった。 老若男女、薄く浅い、一夜の付き合い。 すぐに向かないと気づいて諦めをつけてからは、すべてのリビドーを労働へと変えてきた。妻と娘への裏切りを忘れぬように、金という形ででも、返せるものがあったことに感謝しながら生きてきた。
それが、どうだ。あと少しで役目が終わるからって、枷が外れるからって、こんな────。]
(58) 2019/05/20(Mon) 00時半頃
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[いつになく張りのある声が、ひときわ大きくスピーカーから響くのと同時に起き上がり、再び冷水を浴びに向かう。
食べれば食べただけ腹が減るのは何故だろう。 始めはなんとなく、気の良さそうな顔を眺めるだけでいい気分になれて、其れだけで良かった筈なのに。 ひとつを知れば、更にもっと知りたくなる。 どこまで知れば満足できるかなんてわかりゃしないのに。
じ、と。唇を咬み締めて俯く。 あの夏も、こんな風に苦しかった。会いたくて、ただ、会って顔が見られるだけで、声が聞けるだけで幸せだった。
──どんな声だったか、もう覚えちゃいないのに。 美化された思い出だけがいつまでも、べったりとくっついて剥がれない。]**
(59) 2019/05/20(Mon) 00時半頃
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[まだシュパーゲルの季節も終わっていないというのに、2日連続で水浴びした結果、久しぶりに風邪を引いた。
日頃の不摂生も祟ったのだろう。仕事を休むほどではないが日常生活にやや支障をきたすという、一番たちの悪い程度の症状は治りが遅く。
大事をとって休みを貰った金曜日。 ティッシュで擦りすぎた鼻は赤く、咽喉は掠れている。漸く熱は下がったが、空腹でぼやける思考に届くのは、いつもの軽快なラジオの音。]
(89) 2019/05/20(Mon) 23時頃
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[どうせすぐに伸びるからと適当に髭をそったあとの、しみったれた顔を鏡越しに嗤う。脂の乗った分厚いステーキ肉から遠ざかって早幾年。貧層な食事に似合いの身体に余分な蓄えはないが、潤いもない。]
あーあ、ひっでェ面……
[だから、だろうか。いつだって食事を楽しみ、栄養満点に見える身体に自然と惹かれた。時折盗み見る食事の風景は、腹よりも胸を満たしてくれる。
布の下、みっちりと詰まっていそうな肉は固いだろうか、それとも意外と柔らかいのか。触れる機会がない故に、想像するのを止められない。
──もしも、自分が猫だったら。 遠慮なしにぐりぐり、額を押しつけられるのに。]
(90) 2019/05/20(Mon) 23時頃
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……阿呆らし
[ひとりごち、ごし、とタオルで顔を拭う。 週末は大事な約束があった。冴えない顔を見せれば相手に気を遣わせるやも。
下手に風邪菌をばらまいてしまっては申し訳ないからと、今夜は外出を控えるつもりだった筈が、気づけばクローゼットの前にいた。数少ない私服の中から、比較的マシなボタンダウンのシャツを選び、デニムに足を突っ込む。]
……っと、そうだ。今のうちに磨いておくか
[時計を見遣れば、いつもよりまだ早い時間。 薄ら埃の被った箱に手を伸ばす。定期的に風を入れて、革を磨いているが、もう長いこと履いていない革靴。 最後に地面を踏んだのは確か、娘が小学校に入学した時。]
(91) 2019/05/20(Mon) 23時半頃
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[素人知識で革靴の手入れを終え、手を洗って家を出る。 仕事用のブーツでなく、スニーカーを履くのも、そも、私服でタヴェルナに訪れるのなんて何年振りだろうか。
誰が見ているでもなかろうに、妙にそわつきを覚え、ポケットから煙草を取り出した。いつもの一服の合間に、今夜の注文について考える。 無意識に、以前あの人が食べていた鴨のローストが思い浮かんだが、反射的に胃を抑えた。だめだ、まだ早い。 もっと消化が良く、栄養があるものにしよう。
いつものシュパーゲルはルッコラにバジル、トマトにモッツァレラ、生ハム……ポーチドエッグまで添えるか。オリーブオイルに岩塩とレモンをひと搾りした、鳥渡だけ豪華なサラダ仕立て。 メインはマリアンヌ自慢のブイヨンで炊くチーズリゾットに決めた。どれだけ咽喉が痛んでも、譲れないアルデンテ。]
(92) 2019/05/21(Tue) 00時頃
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おう、猫。珍しいな、どうした?
[脳裏にメニューを描いている間に、足元に何か柔らかくて温かいものが触れた。見降ろし、灰が落ちぬようすぐさま携帯灰皿を取り出す。
喫煙中は決して近づいてこない看板猫。今週はパン屋へ立ち寄ることもなかったから、凛々しい顔を見るのも一週間ぶりだった。 寂しかったか?なんて声をかけ、背中を軽く撫でてやる。
──猫相手なら、こんなに簡単なのに。]**
(93) 2019/05/21(Tue) 00時頃
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