214 サンタ養成学校卒業試験
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─ 廊下 ─
おまじない。か。
[きらきら、きらきら。 未だ輝きの余韻が残る、クリスの言葉。>>1:269 冷えた指先で、ひたりと痛みが引いた額を撫ぜ。 ふと思いついて、作業室に方向転換。
持ち出したのは生物学部が開発した塗料。>>1:291 明かりを灯す妖精や蛍を引き寄せる甘味を混ぜたそれは、 道先を標すには光量が足りないため、 ソリの見分けや目印に使用するもの。
缶と筆を片手に、再び廊下を歩く。]
(11) 2015/01/25(Sun) 17時頃
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─ ソリ置き場 ─
[厩舎の近くにある、ソリ置き場。 入学してからというものの。 暇さえあれば設計工学部の作業室と このソリ置き場を行き来していた気がする。]
…………あ。 校長せんせ。どうも。 試験勉強は、まあ。ぼちぼち。やってる。
[出入口で点検を終えた校長とすれ違った。>>1:84 試験のことを聞かれれば、のろのろと視線が泳ぐ。 芳しくないことはバレバレだろう。]
明日のおまじない。しようかなって。 これやったら、戻るから。
[見逃して、と首を竦めた。]
(13) 2015/01/25(Sun) 17時半頃
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[作業室からソリ置き場までの途中。 甘味に誘われた妖精たちが、ちょこっとだけ味見、と。 こっそり缶を、少しずらして。
ぽたり、ぽたり。
廊下に不規則な光の足跡を残したことには、 まだ気づかないまま。 校長の背中が見えなくなれば、作業に取り掛かろう。]
(25) 2015/01/25(Sun) 19時頃
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[点検を終えて、並ぶソリ。 よっこらせ。座り込んだのは前の方。ハーネスを括る横辺り。
缶の中の塗料に、筆を浸す。 さざめきだした好奇心旺盛のニンフ達が寄ってきて。 無色だった塗料に、鮮やかな色を乗せてくれる。
それは、赤と白。 描くのは、ポインセチア。 祝福を祈る、クリスマスの花。 皆の無事を。夢を。合格を。願う。
────おれからみんなへの、おまじない。]
(26) 2015/01/25(Sun) 19時半頃
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[窓の外で、光が散るのが見えた。>>4 しゃんしゃん、しゃんしゃん。 ソリの鈴の音が聞こえてくる。>>1:248]
実技練習中、かな。 ……いい音。たぶん、慣れてる乗り方。 テッドかな。イアン、ピート…それとも、ミナカタ?
[配達学部の顔が、頭の中でゆらゆら。ゆらゆら。]
(34) 2015/01/25(Sun) 21時半頃
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[サンタ養成学校に進学する時。 なんで配達学部じゃないの、と言ったのは誰だったか。 ソリを操るのは、不得手ではなかったから。 操縦が不得手で道を諦めた者の想いは、わからない。 おれはただ、ソリが作りたかっただけだから。
養成学校に来て、色々知った。 ただソリを小さくすればいいわけではないことも。 乗りやすいように。トナカイが引きやすいように。 プレゼントをたくさん運べるように。
そして小型ソリ一直線だった思考に変化を与えたのは、 級友であり、誰でも乗れるソリを考えているモニカだった。
乗れないからこそ、見える視点。 モニカの話にはいつも感心しっぱなし。]
……明日。ちょっとでも、上手く飛べるといい。
[筆記は問題ないだろう級友を、想い。描く。]
(35) 2015/01/25(Sun) 21時半頃
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[試験のソリ、一台一台に描いていくささやかな花。 きっと、気づかない者は気づかない。それでいい。
いつだったか修理したソリに描いた、雪花草。 あの後しばらくして。 壊れたのは、テッドのソリだと知った。>>32
訊かれても、何も言わず首を横に振ったのは、 やっぱりギネスが何も言わないから。>>1:290 おれが言うことじゃないと思った。から。]
ずっと、黙ってるつもりなのかな。 ……もうあの花、消えてるよね。
[幾度となく描き直されてることは、知らないまま。>>1:181 いっそ、ソリのように触れたら色々伝わればいいのに。
それぞれ裡に秘めたままの級友たちを、想い。 筆の先で、白いポインセチアが花ひらく。]
(53) 2015/01/25(Sun) 22時半頃
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サミュエルは、テッドのソリの音がした。気がする。
2015/01/25(Sun) 22時半頃
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[甘味の香りに吸い寄せられた妖精。 ほわ、と優しい光がポインセチアに灯る。
隣の席の、能面みたいでちょっと意地が悪い級友。 そのくせどこか抜けていて。 昼間もトナカイに遊ばれていた、揺れる尻尾。
あれは入学したばかりの頃の実習だったか。 短期を起こして切り落とそうとしたのを見て、驚いた。>>1:255 慌てて鋏を止めたのはなんとなく。 勿体ない。そう思ったから。]
……トナカイの気持ちはちょっとわかる。かも。
[筆を止めて、一息。 ゆるりと指先が辿るのは、記憶の曲線。]
(75) 2015/01/25(Sun) 23時半頃
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ぎゃっ!?
[徐に頭を掴まれ、飛び上がった。>>67 振り返ったそこには、記憶から抜け出たような級友の姿。]
……はー。 おどかすなよ。
[まだ心臓がばくばくいってる。 大きく深呼吸を一つ。二つ。]
(76) 2015/01/25(Sun) 23時半頃
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……悪戯じゃないし。 だから無罪。
[嫌な奴に見つかった。>>84 光の妖精を集める花は見られたけど、詳細は黙秘。 おまじない、とか言ったら笑われる。気がする。
ぐらぐら、ゆらゆら。 前後に揺れる頭。離さない掌を、ぺち、と叩く。]
勉強はこれ終わったら。やる。 そっちこそ、実技練習は──… わぷ。
[見上げている額に落ちてきた紐に、目を瞬き。 筆を持たない方の手を伸ばす。 掴んだのは、紐ではなく三つ編み。]
(95) 2015/01/26(Mon) 00時頃
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……いつもの尻尾じゃない。
[額から紐が落ちる。 三つ編みに指を絡めて呟く声は、不満混じり。]
朧はさ。 なんで情報理工学部に入ったの?
[答えてくれるまで三つ編みは人質。]
(96) 2015/01/26(Mon) 00時頃
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[能面が笑った。>>106 何をしていたかわかっている口調だ。 意地の悪い笑みに。囁きに。棒読みの呟きに。 くい、と人質の三つ編みを引っ張って仕返しする。]
なんだ。もう実技練習してきたんだ。 うん。いつもの方がいい。
[ソリに乗ってきた、と言っても。 誤魔化そうとする仕草に、 最後の実技の成果は悪かったのだなと推測する。]
(121) 2015/01/26(Mon) 00時半頃
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子供の声? 誰かって、誰。
[それだけじゃ、わからない。 おれも言葉が足りないけど、この級友もかなり足りない。 これまでちゃんと聞いたことがなかった。 聞いても誤魔化されてばかりだった。
三つ編みを引いて下がってきた目線を、じっと見る。 折れたのは、朧の方。]
……じゃあ、隣。 おれも、もうしばらくここにいるから。 長くなっても大丈夫。
[三つ編みから指を解いて、空いている隣を指した。 落ちた編紐を拾って。塗料の缶の横に置く。
筆を再び、塗料に浸して。 描きかけだった花を描きつつ、隣を促した。]
(124) 2015/01/26(Mon) 00時半頃
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サミュエルは、朧の飛んでった意識が戻ってくるのを待って。筆を動かす。
2015/01/26(Mon) 01時頃
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[惑う視線の意味は、掴み損ねる。>>131 よほど、言い難いことなのか。
我儘なんて、今更だろう。 同い年なのに、自然と周囲を子供扱いする級友の目は、 いつも少し大人びて。 一歩引いていて。
混ざろうとするのを拒否してるような。気がしてた。>>117]
じゃあ、風邪引かない長さで。まとめてよ。 引き摺られたくないし。
[ちらりと見た隣。 三つ編みの跡が残る尻尾が、揺れる。>>132 通った我儘。思わず口元が緩んだ。]
(148) 2015/01/26(Mon) 01時半頃
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─ ソリ置き場 ─
[描きかけだったポインセチアの影に楕円形を一つ。 細くて長い線を一本、ちょろり。 先っぽを持ち上げたのは、それをいつも見てるから。>>1:192
いつかのモミの木ソリの端っこにも、これを描いたっけ。>>158 空に夢見る、小さな小さな勇者の姿。
筆を動かし。隣から聞こえてくる、淡々とした声を聴く。]
……朧が大人びてるのって。 だからなのかな。
[ずっと、大人たちに囲まれてたから。 親にも、甘えて来れなかったのだろう。>>155]
(206) 2015/01/26(Mon) 23時頃
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なんで黙ってたの。 誤魔化すような話じゃないのに。 でも、ソレを口にしないとこ。朧だよね。
[なんとなく。 口にしない子供が、朧の姿と重なる。 おれは口にするの、遠慮しないから。朧じゃないから。 ほんとのことなんて、わからない。けど。]
……どうかした?
[何かを叩く音に、筆を止める。横を見た。 無上表のままで、頬だけ赤い。初めて見る。]
(207) 2015/01/26(Mon) 23時頃
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おれ、笑ってた? わぷ。ちょっと。花、ゆがむ。
[後頭部に触れる掌。ゆらゆら、ゆらゆら。 先に行けばいい、と言うのに。 待っててくれること、わかってる。]
よし、できた。 つぎは──……朧?
[描き終わって次に。と。 移動する手を取られて、目を丸くする。 触れた肌の下。とくとく、とくとく。鼓動が響く。]
(208) 2015/01/26(Mon) 23時頃
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……あったかい。 これは、しかたないの。 手袋してたら、描きにくい。
[顰める顔に、首筋を指腹でなぞってくすぐった。 離すぞを睨まれても、やだよ、と駄々捏ねる。 散々渋って、宥められ、手があたたまるまで甘えて、 立ち上がった。 気づけば塗料も残り少ないし、おしまいにちょうどいい。
鮮やかな赤。混ざる緑と白。 軽くなった缶と一緒に編紐を取り上げると、 余計な一言を思い出す。>>164 やっぱり意地が悪い。]
おれ、サボってないし。 面倒なだけ──…あ。なんか光った。
[歩きながら左手首に結ぼうと四苦八苦。 外に出ると、頭上の空で駆けるソリが輝いた。>>143]*
(210) 2015/01/26(Mon) 23時頃
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─ 移動中 ─
[紐を結ぶのは一旦保留。あとでやる。]
風邪引いても、引きずって連れ帰るの。 おれはやだよ。朧重そう。
[隣のくしゃみに、さっきの仕返しを。>>165 しかめっ面に、くすりと笑い。のろのろ手を伸ばす。 まだ癖のついたままの尻尾の先っぽ。つん、と引っ張った。]
じゃ。おれはこれ戻してくる。
[軽くなった缶を持ち上げ。道を違えることを伝え。]
朧の願いもさ。あるなら言ってみたら。 叶うかわかんないけど。 飲み込むより。たぶん。ずっといい。
[お節介を投げて、尻尾の先から指をするりと。離した。]*
(227) 2015/01/26(Mon) 23時半頃
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[設計工学部の作業室。 塗料の缶を戻すと、壁際に並べた模型が目に入る。 入学して、初めて作った小型ソリの模型。
ソリの設計基準とか小難しいことを、知らない頃。 夢と。想いと。我儘と。希望と。 それらを詰め込めるだけ詰め込んだ、 両手に収まるサイズの模型。スチレンボード製。
昼間作ってたのはまだ完成していない。けど。]
……見てくれるかな。
[模型を手に、再び廊下へと。]
(243) 2015/01/27(Tue) 00時頃
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─ 廊下 ─
[外の空は、賑やかだ。 窓から見えるソリの軌跡。 あれは、配達学部の未来のサンタクロースたちと。]
モニカ?
[思わず、窓を開けて目を凝らす。>>247 それは二人乗ってるソリが珍しいからではなくて。
点々と光りの玉が尾を引く。>>237 トナカイの蹄の跡に残る軌跡が、夜空に浮かぶ。]
(265) 2015/01/27(Tue) 00時半頃
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サンタクロースの、ソリだ。
[子供の頃、こうして空を見上げて。 ずっと願ったもの。夢のように思い描いていたもの。
軽やかな鈴の音。 落ちてくるきらきら星。>>261 見上げたまま、白く煙る息を霞ませた。]
(266) 2015/01/27(Tue) 00時半頃
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………っくちん。
[くしゃみがでた。 空を駆ける級友達にひらひらと手を振って、窓を閉める。
まだ夜空に残る、サンタクロースのソリの跡。 きらきら、きらきら。 運んでくるプレゼントは、きっと。]
(274) 2015/01/27(Tue) 01時半頃
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─ 研究室 ─
[研究室前。 アリスとはたぶん、すれ違い。>>270 中のエルフを脅かさないように、小さなノックを。 来訪を告げ、扉を開く。]
……ギネスは、不在?
[働き者のエルフに、聞いてみる。 首を振る姿に、そっか、と短く息をつく。
ふわふわ、ふわふわ。 何をもってるの?と手の周りにじゃれつくエルフに、首を竦めた。 空いていた本棚の隅に、そっと模型を置く。]
(280) 2015/01/27(Tue) 02時頃
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これ。ここに置いていいかな。 おれが初めて作った模型なんだ。
[卒業が決まっても、ここに残ることは知っているから。>>1:286 面倒見がよく、さり気なく気遣うのが上手く。 仏頂面だけど、人一倍情が深い級友へ。>>1:52 残すなら、この場所がいい。]
あのさ。 ギネスに伝えてくれる?
[何かをねだるエルフの目に、ポケットを探る。 飴玉があった。これがお駄賃。 喜んで跳ねるエルフに渡して、伝言を頼む。]
(281) 2015/01/27(Tue) 02時頃
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──……「ありがと」って。
[昼間伝えられなかった感謝を。 クリスの時のように、ほんの微かな声だったけど。 それは校舎裏から戻った級友へ、届くだろうか。>>256]*
(282) 2015/01/27(Tue) 02時頃
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[後頭部が冷たい。 ちょっと前にぶつけられた、雪玉のせいだ。>>283]
……さむ。 明日雪だっけ。
[トナカイに引っ張られても恨まないくせに。 逃げて行った、大人びた子供の悪戯。
編紐を、なんとか左手首に括りつける。 足首とかなら、両手で括れるから楽だけど。 見える位置につけたかった。 なんとなく。]
(292) 2015/01/27(Tue) 03時半頃
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戻って復習。しなきゃ。
[きらきら、きらきら。 まだ空を駆けている、サンタのソリ。目を細めた。 明日は、きっと。
寮の部屋には、要点の凝縮されたノートが待っている。]**
(293) 2015/01/27(Tue) 03時半頃
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