231 獣ノ國 - under the ground -
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/16(Thu) 22時頃
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誰だい、って。……本気なの?
[個室に通されると、アマルテアは揺れる瞳でノアを見つめた。 やがて大きなため息を吐くと、観念したように]
いいわよ、分かったわ。
[投げやりな口調で言うのだった。 変な気分だった。見知った男に自己紹介をするのは]
さっきも名乗ったわよね。 私の名前は、アマルテア=メティス。 今は近くの診療所で医者をしてる。 あなたとは、元同僚。地下施設で一緒に管理人をしていたわ。
[簡単に自己紹介を終えると、顔を上げて]
(+14) 2015/07/16(Thu) 22時半頃
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まさか記憶喪失にでもなったとでも言うの? それとも―――
[少しだけ迷う素振りを見せてから]
今の職場まで来られて迷惑だ、という意味で。 そういう態度を取っているのなら、すぐに帰るわ。 あなたの今の生活を、邪魔する気はないもの。
[じっと、ノアの瞳を見つめて。 “あの日”のことも。すべてなかったことにしよう、と]
ただ、もしもそうだったとしたら。
(+15) 2015/07/16(Thu) 22時半頃
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―――あなたってやっぱり、すごく嫌な男ね。
[嫌味たっぷりに、そう言ってやった**]
(+16) 2015/07/16(Thu) 22時半頃
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本気も本気 ボカァ、不思議な事に前の職場は覚えていても誰が居たか覚えてないんだ
[適当な仮眠用ベッドに腰掛けてから買ってきたミルクティーを一口飲んで 彼女の名前を再度聞けば、ブツブツと呟いて。どこかで聞いたし、どこかで会った。きっと間違いなく彼女は自分の元同僚なのだろう それなのに、どうしてか彼女との思い出が何一つない]
今の職場は楽しくないからね。他人行儀になる事もあるかもしれない なんたって、僕は必要とされてるようでされてない 獣人を人に戻す気も失ったんだから……
[結局、前の職場を出ても何も変わらなかった。全てを諦めて、投げ出して。過去にしがみついて、成長していない すぐに帰るなんて言われてもきっと止めるだけの話があるわけでもない。けれど、続けられた、嫌な男と言われれば]
キミ、失礼な事を言うようだけど
(+17) 2015/07/16(Thu) 22時半頃
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――ボカァ、キミの事嫌いだな
[言ってから、ズキリと頭が痛くなる。前にも言った言葉で けれど、嫌いなのに。何か言葉を続けなきゃいけない気持ちになる。その言葉が見付からなくて、まるで手探りに暗闇の中を探っている気持ちになる]
嫌いだ…。キミの事は…… なのに、なんで。なんでだろうな
[胸が苦しくなって、心臓の辺りで握り拳を作って俯く 呼吸がしにくい。普段どうやって息を吸って吐いていたかも忘れて、思い出す事に集中してしまうような それなのに、思い出せなくて。ふと顔を上げてアマルテアを見た時には今にも泣き出しそうな顔でもしていただろう]
(+18) 2015/07/16(Thu) 22時半頃
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キミの事が――
[言葉が出なくて、息が詰まる。それから諦めたかのように肩を落として]
…なんでもない 悪かったね、嫌な男で。こういう性格なんだ
[彼女が出て行くのならば止める理由も無い。胸にポッカリと空いた大きな穴に気付いてから、虚無感に襲われ、蝕まれていくのを感じた**]
(+19) 2015/07/16(Thu) 22時半頃
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― 第三棟 ―
[廊下に出れば、 鸚哥の声が聞こえてくる。 あゝ、彼らがきたな、と思った。]
[黒い睫を伏せて一度、息を吐き
行く二羽の鳥。夫婦星のようにも見える彼ら。 少し遠いそれらの姿を目に焼き付けて
胸に も一つ、呼吸を通すと、 少し重い袂に意識をやった。]
( ………… )
(40) 2015/07/16(Thu) 23時頃
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[ノアの態度>>+17は嘘を吐いているようには見えなくて。 半信半疑のまま、彼の話に聞き入った]
“獣人”を、人に戻す……?
[唐突に飛び出した“獣人”という単語に首を傾げる。 あれ、獣人ってなんだっけ。なにか大切なことだった気がする。 胸の中で、モヤモヤが広がっていく]
今の職場は楽しくない? ……そう。前の職場よりは、楽しくやってるように見えるけど。
[正直な感想だった。あの何もかもが真っ白な施設で。 彼と私はいつも反発していて。 ええと、何で揉めていたんだっけ]
(+20) 2015/07/16(Thu) 23時頃
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[もしも記憶喪失が本当のことだとしたら。 彼は思い出さない方がいいのだろうとも思う。 新しい生活をしていくのに当たって、 きっとあの施設の記憶は良いものではなくて。 自分の存在も、たぶん彼の邪魔になると思った。 それに自分自身、“前の職場”について。 靄がかかったように記憶を封印しようとしている。 帰ろうか、と立ち上がりかけたところでかけられた言葉>>+18に。 アマルテアは表情を強張らせた]
……ノア。
[くしゃり、と顔を崩して。彼のことを見遣った。 いつか聞いた台詞。 あの日のことを思い出して、胸が熱くなるのを感じた]
(+21) 2015/07/16(Thu) 23時頃
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奇遇ね。私もあなたのことが大嫌いよ。
[いつか言った台詞>>2:95を、そのまま言い返してやった。 けれど目の前にいるノアは自分の知っているノアではなくて]
なんで、あなたが泣きそうな顔をしているのよ。
[泣きたいのはこっちの方だ。 なのにどこか彼は泣き出しそうな顔をしていて。 ああ、無性に腹が立つ]
本当に、ずるいわ。
[涙がポロリ、と零れ落ちた。 こんな男の前で、2度も涙を見せるなんて。 悔しくて悔しくて、堪らない]
(+22) 2015/07/16(Thu) 23時頃
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勝手に出て行って。勝手に忘れて。 本当に、身勝手な男だわ。
[涙を白衣で拭って、今度こそ立ち上がる]
……っ。
[彼に背を向けて、個室を出た。 研究室の人たちが何事かと、自分を見遣った]
お騒がせ、しました。
[頭を下げて。そのまま研究室を出ようとするだろう**]
(+23) 2015/07/16(Thu) 23時頃
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[規則正しい、時計の針の音。 時折吹き付ける風で振動する、窓の音。 日に三度鳴る部屋のベルの音。
それだけが、今の私の全て。 "いつの間にか"視覚と手の感覚を亡くした私の窮屈な世界。
そんな世界で、私は考えるのだ。 "いったい、自分は何者なのか――"]
(+24) 2015/07/16(Thu) 23時頃
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[私の記憶に眠る、沢山の人々。ジリヤ、アマルテア、マユミ、多くの獣と人。 その言葉も、顔も、容易に思い出すことができるのに。 たった一つの思い出せない要素。
どうして私は、彼女らを知っているのだろう。
そうして、また呼び鈴が鳴るのだ]
(+25) 2015/07/16(Thu) 23時頃
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[「クラリッサさん、昼食の時間ですよ]
日に三度来る介護人。目も見えず杖も使えず親族もいない私は、彼が居なければ生きることさえ出来ない。 これが、私の求めた自由?
いや、そもそも....。
どうして私は、自由になりたいのだろう]
(+26) 2015/07/16(Thu) 23時頃
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…あれ?キミなら知ってると思ったんだけど
[どうして知ってるだなんて思ったんだっけ。それは思い出せない 嗚呼 確か前の職場に似たような事を言ってた気がするなぁ…。なんて朧気に覚えているような]
どうだろうね。僕は嫌な思い出しか無いよ それに…。どうしてか、前の職場が恋しくなるんだ 嫌なのに、未練があるみたいで
[その理由はよくわからない。その相手が目の前に居るって事すら、ノアは忘れてしまって。誰かを監視して、嫌われて。そこに囚えるのが普通の生活が日常だったなんて]
――ッ!!!
[自分が嫌いだという事くらいわかっていて。その台詞を聞いて、アマルテア=メティスという女性を、いつもいがみ合って嫌い合って、嫌味を言い合っていた相手を 真っ黒に塗りつぶされた記憶が少しずつ晴れていくようだった]
(+27) 2015/07/16(Thu) 23時半頃
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なんで…。“また”泣くのさ
[釣られるようにこちらも一筋の涙が頬を伝って、出て行く彼女の手を掴もうとするも、それは叶わないで手は空を切る]
まっ――!!!!
[もし、もしもここで彼女と別れてしまったら二度と会えない気がして 嫌いな相手なのはわかっている。まだ、言いたかった言葉は思い出す事が出来ないけれど。空を切った手を握り、決心したように個室を飛び出す]
まだ…… 話は終わって、ない。だろっ!!
[既に周りに挨拶をして、出ていこうとする彼女を見付ければ走って引き止めようとして それから、足を引っ掛けて一度盛大にすっ転んでしまう]
(+28) 2015/07/16(Thu) 23時半頃
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痛ッ…!! 待って……待てよ!!アマルテア!!
[転んだ事からか、それとも普段運動していなかったからか。足は既にガクガクになっていてもう走る事は出来ないだろう 壁に体を預けながら、それでも体を引きずって歩こうとする自分の姿に研究員は近寄ったりしてきただろうか 適当にあしらってから、一歩。更に一歩と歩みを進めて]
ボカァ、キミの事が嫌いだ 大っ嫌いだ!!!けど…けれど!!
[彼女は止まってくれたりしただろうか。否、止まらなくても言葉を続けなければまた忘れてしまう 塗りつぶされた記憶を探し当てるように、掴んだものを離さないように。頭で考えるよりも先に口を動かして]
(+29) 2015/07/16(Thu) 23時半頃
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――僕はキミの事が大好きなんだ!
[それはいつか告白したように、同じような言葉で “けど”の続きを、嫌いなのに好きだなんて矛盾を。彼女が聞こえていてもいなくても。ただ、言ってから思い出して]
なんで、忘れてたんだか…
[こんな大事な事を、と自虐的に笑ってしまう まだ記憶に靄がかかっているようだけれど、今はただ一つ。大切な事を思い出せて、虚無感を抱えたまま満足してしまった**]
(+30) 2015/07/16(Thu) 23時半頃
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庭師 ノアは、メモを貼った。
2015/07/16(Thu) 23時半頃
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[ ”兄のほうが唄が上手いから” 僕はいらない ”兄とおなじくらい上手かったら” 僕も居られた? さんにんいっしょに、居られたのかな。
……ねえ、にいさん。
靄の中、兄の背中と赤い鸚哥が並んでいた。]
(41) 2015/07/17(Fri) 00時頃
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[ 遠くから僕を呼ぶ声>>39がして 目の前に、兄と暮らした森の薄闇が広がって ぼやけた視界がようやく像を結んでゆく。]
…………あ、 ぁ………
[ 瑠璃の中の井戸のような虹彩が、ぎゅ、と回って ]
おいてかないで……。
[ 混濁した記憶のまま、子供のような口調で 背中を撫でてくれるひとの前で膝を折る。
しゃがみこんだ僕のむこう、夜目の利く梟の目には 薄暗い廊下の中に彼>>40の姿は見えただろうか。
”普段は”指紋が無ければ開かぬという扉は 閉じているのか、開いているのか。 管理者ならば 知っているだろう。*]
(42) 2015/07/17(Fri) 00時頃
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[開閉に認証が必要な扉は 閉まっていなければ用を為さない。 故にその時>>42もまた、二人の前に在る大扉は 行く手を阻むように塞がっていただろう。
彼は迷わなかった。
廊下から警備の人間が 獣人達の方へ向かうのが見えた。
地を蹴る。 左袂から出した小刀のさやを抜いた。
「すまんな」
警備員の耳元で囁いた声は聞こえたのかどうか。 興味もなかった。]
(43) 2015/07/17(Fri) 00時半頃
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[腹を刺されうめき声を上げる警備員から刀を抜けば 払ったはずの血の馨がまた着物に滲む。
彼は踵を返し、大扉前にて しゃがみこんだフィリップを見下ろした。]
なんてざまだ。 ……姫君の手を引くなら 最後まで引いたらどうかな。
[淡々とそれだけ云って、 彼は大扉のセンサーに指で触れる。 「外」の匂いがふわりと満ちた。
梟はどうしていただろうか。 その黒曜のうつくしき瞳を見たならば。 「はやくいきなさい」と静かに促しただろう。]
(44) 2015/07/17(Fri) 00時半頃
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[どうか、どうか。 彼らがオルフェウスのように振り返ることなく 地上へ向かってほしいと ――そう、願うばかり*]
(45) 2015/07/17(Fri) 00時半頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/17(Fri) 00時半頃
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大丈夫よ。
[フィリップは、何かに脅えているように私には見えて。 私は努めて穏やかな口調で、語りかける。 膝を折ったフィリップ>>42の頭を、そっと撫でた]
私は、あなたを置いてどこにも行かないわ。
[むしろあなたが私のために、自ら置き去りにならないかの方を私は心配しているくらいなのに。 その視界の端、月見の姿が見えても>>40、今はフィリップを落ち着かせることの方が大切で。 緊張すれば、きっとそれはフィリップに伝わってしまう。だから私は気づかぬ振りを決め込んで、静かにフィリップの頭を撫で続けた]
(46) 2015/07/17(Fri) 01時頃
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[ 彼女の声>>46が僕を此処に呼び戻す。 ぐるぐる廻る記憶と、近寄る警備員の足音に 僕の焦りは増していく。
はやく、はやく、いうことを聞いて 僕の両脚。]
………っは、
[ 何のために僕は彼女からジリヤを奪ったのか この翼を空に届けるためだろう?
折った膝が 硬い鱗のような脚が 立ち上がろうと硬い床で無機質な音を立てるのと、
近寄る管理者の足音が聞こえて来たのは ほぼ、同時。
夜を斬るように黒衣が舞う。 誰かに向かって放たれた言葉>>43は 氷のような温度で それに混ざる血の芳香が、重い空気をさらに重くした。]
(47) 2015/07/17(Fri) 01時半頃
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[ 目の前の地面に赤い池が現れて その中で蹲る見知らぬ「人間」。
どうして、とマトモな脳があれば問うただろうが 見上げた血の馨を纏った管理者に 目をそらすように 俯いて。
そっぽを向いた僕の頬を、明らかな外の風が撫でれば 急に開く扉へ目を向けて 扉の傍ら、センサーの前で佇む彼>>44へ ようやく ]
……………どうし、て。
[ やっと音にできたのは たったの4文字で 譫言のように あふれた音。
>>44”言われなくとも”と、湧いた疑問を掻き消すように 僕を宥め続けてくれたひとの 手を取ろうと。**]
(48) 2015/07/17(Fri) 01時半頃
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[警備の人間が駆け寄ってくるのが見えた>>43。 けれど大扉は閉まっていて。そもそも、フィリップを置いて逃げるなんて選択肢は私にはない。 そんなことをするくらいなら、ここで殺された方がましだ。 フィリップの背中を、頭を撫でる手に、力がこもる]
――――――……!?
[けれど、目の前で起こったのは、思いも寄らぬ展開だった。 月見が、警備の人間に駆けて。そして流れる、血>>44。 そして開かれる、大扉]
……どうして。
[思わず、フィリップを撫でていた手も止まってしまった。頭に手を乗せたまま、呆然と私は呟く。 それはもちろん、こちらにしてみれば願ってもない展開だったけれど。 そんなことをして、月見に何のお咎めもない……なんてことは、もちろん、ありえない。 静かに促されて、私はもう一度、どうして、と呟いた。 それでも、フィリップが我に返ったなら、私は逃げることを躊躇わないだろう]
(49) 2015/07/17(Fri) 01時半頃
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―――そうか、 ……死ぬのか。
[ 男はゆくりと、囁いた 。 地を這うような声だった。 そうしてまるで ――― 昔に捨てた、 口調だった 。
死ぬ? なぜ。 人を傷付けたから 。 それだけ。 たった、それだけである。 男は自身の髪を耳に掛けた 。]
それはそれは、 ……面白く無い。
[ 折角見つけた” たのしい ”こと 。 ” たのしい ”もの。 ” たのしい ”―――人。 まるで玩具を取られたかのように、男は不貞腐れた顔をした。 何故この愉快さを、 胸を疼かせる愉しみを 誰かに奪われなければならないのか ―――
そう、 誰かの死に様などは 見たくない 。 ]
(50) 2015/07/17(Fri) 02時頃
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なら簡単だな、ジリヤ。
―――俺と一緒に暮らさないか。
[ 男は口端を上げ囁いた。 まるで悪魔の囁きだと、罵声を浴びせて来た誰かの気持ちが解った気がした。 遠くから漂う風が、 外の香が髪を揺らす 。 男は紛れて、彼女の頬を引っ張った 。
そしてまた、 手を差し伸べる。 ]
ハイか、 イエスか。 欲しいのはそれだけ。
[ はたして獣を匿うと知れたら、 ひとはどう思うのか。 男の興味は尽きず、――ただ好奇心に突き動かされた。 ]**
(51) 2015/07/17(Fri) 02時頃
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( 会いたい ) ( 会いたい ) ( 会いたい ) ( ―――だれに? )
僕のうすのろな足が、止まった。人混みを避けて歩いて来たはずのそこが、いつの間にか人に埋もれる。 僕はすこし、息苦しくなった。
「 ふるさと 」 「 もすきーと 」
僕を動かすふたつのワード。 ぼくは、 ……なにを探しているんだろう?
ぽっかりと胸に穴が空いた気持ちだった。 はてな?クエスチョン。 こんな空虚な気分は、……ああそうだ、塔を出てからだ。 疑問を飛ばしても、僕にはわからない。 わからないんだ。
どうしてぼくは、こんなにさみしいのか。 それさえ。*
(52) 2015/07/17(Fri) 02時頃
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