126 生贄と救済の果てに〜雨尽きぬ廃村・ノア〜
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[廃屋を出てコリーンの痕跡を探す。 その途中で見かけたのは何者かが通った跡、氷の帯。
これから対峙するもののことを考えて。 体力面でホレーショーに劣るからと、全力で走りはせず、しかし可能な限りの早足でそれを辿る>>5:5。
行きつく先は、またしてもあの広場で――]
(5) 螢 2013/06/22(Sat) 17時半頃
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『だめぇぇえええッッ!!!』
[雨に阻まれながらも、はっきりと聞こえるのはコリーンの叫び>>5:40]
[疲弊したブーツで、広場の入口へと一息に飛べば、
倒れこむホレーショーと、 それを支えようと駆け寄るコリーンが見えて。>>5:43]
[次の瞬間。 言葉に表すことのできない『音』と、 目を開けていられないほどの『光』が、 広場に溢れる。]
(6) 螢 2013/06/22(Sat) 17時半頃
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[それは恐らく、何らかの供物の力。 でもそれ以上の何かが、その中心から溢れだしていて。]
[それは、広場を越えて 付近の森を、崩れかけた廃屋を、重く雨雲の垂れこめる空を、 ――生気のない灰色の世界を、瞬く間に飲み込んで白く染め上げていく。]
[何も存在しないかのような白き空間に飲み込まれて、 それでも少女の目は、一つの像を結ぶ。]
[ボロボロになった男を左腕で抱きしめ、 ――優しく右手をかざす女神の姿を。]
(7) 螢 2013/06/22(Sat) 18時頃
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[それは、言うなれば白昼夢で。 本当はそんな光の世界などなかったのかもしれないけれど。]
右腕に宿る魔法使い達の魂を、願いを乗せるかのような≪救済≫の光は、 供物の盾を越えて、たしかにソフィアの元へと届いたのだった。]
(8) 螢 2013/06/22(Sat) 18時頃
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―回想・廃屋にて―
[そこ>>5:18でソフィアが目にしたものは。]
……!! ヴェラさん…っ
[手を組み横たわるヴェラの姿>>5:3。 思わず駆け寄るがしかし、
…わかっている。先程、その命が尽きる瞬間を見ていたから。 正確には、その魂が引き継がれる瞬間を、だけれども。]
(9) 螢 2013/06/22(Sat) 18時頃
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なんで…どうして… お願い…目を覚ましてよ…っ。
[触れたヴェラの体は、既に温度を失っていて。 あの時>>1:31のように治療を施したとしても、もう彼が目を覚ますことはない。
雨を遮るはず廃屋の床に、小さな雨が降る。]
[滲む視界の隅に映るもの、 遺体の近くには、ローブやロケット、白狼の毛皮と共に、広場に置いてきたはずの革袋>>3>>11。
それが示すのはつまり、ヴェラが一度広場にそれを取りに戻っただろうということで。]
(10) 螢 2013/06/22(Sat) 18時頃
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『…お前はここにいろ』>>2:195
[革袋を握りしめて、思う。
もし。 あの言葉に従って、広場に留まっていたならば。 この人がここで冷たくなっていることは、なかったかもしれないのに…]
[なんのための回復魔法だというのだろう。
必要な時に、必要とされる人に、 それが叶わないのなら。
――こんなもの、ただのガラクタに過ぎない。]
(11) 螢 2013/06/22(Sat) 18時頃
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[残されている衣服などから、ツェツィーリヤやイアンもまた、死んで霧散したことが伺えた。
つい数時間前に廃屋で出会った時のことが、まるで遠い日の思い出か何かのようでいて、 しかし逆に、二人の向けてくれた優しさは鮮明に蘇ってくる。
人を救うために、などと口にした所で、 結局は誰も救うことができず、 少女はただひとり、自分の無力を噛みしめる。]
(12) 螢 2013/06/22(Sat) 18時頃
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[手にした袋の口を開いて、中身を確認する。
最初に見た時は、瀕死の猫が入っていた。 現実から目を背ける一因、ヴェラを追わなかった言い訳が。
次に少女は、この革袋に自身の迷う心を――自分の悪いところを全て詰め込んで、決別しようとした。 その結果、軽率な行動を取ることになるとは知らず。]
[そんな経緯があったから、この袋はソフィアにとって災厄を閉じ込めたパンドラの箱。
触れる度に災いをもたらすそれは、あの禁断の箱と同じなのだ。]
[…でも、もし仮にそうだとするなら。
この袋の底にも、あるのかもしれないと思って。 最後に一つ、残されたもの。
――『希望』が。]
(13) 螢 2013/06/22(Sat) 18時頃
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[出てきたのは一本の酒瓶で。
それの意味するものはソフィアにはわからなかったけれど。 こんな殺伐とした状況に似合わぬ嗜好品の存在に、思わず泣き笑い。]
なんで討伐要請に…こんなもの持って来て… 任務中にみんなで飲もうって言うんじゃ、ないでしょう? これしか入ってないのに最後まで大事に抱えて、 馬鹿みたい…もう…
[予想を裏切る物が出てきてしまったから、笑いでもしないとどうしようもなくて。 泣いて歪んだ顔で笑っても、そうは見えなかったかもしれないけれど。]
[袋から取り出した液体をじっと見つめて、
これは残された希望だと、 何か意味が込められているのだと、
…そう、思うことにした。]
(14) 螢 2013/06/22(Sat) 18時半頃
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[袋を広場に置き去ったのは、自分の弱さを殺すおまじないのはずだった。
今、再び袋を開け放ってしまったから…閉じ込めたはずの"弱い心"は再びソフィアに戻ってきたけれど。]
(認めなくちゃ。
…逃げたことも、間違えたことも、
この弱さも含めて、全部。)
(15) 螢 2013/06/22(Sat) 18時半頃
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[コリーンが魔物でないだろうことは、状況が嫌と言うほど語っていて。 廃屋を出た彼女を、探しに行かなければならないだろう。
自分が傷つけてしまった罪なきヤニクの怪我の具合も気になる。
そして、ホレーショーは。
――恐らく、魔物なのだろう。 コリーンの言う氷蜥蜴が、その正体。
…でも。だったら。 優しい忠告をくれた彼>>3:58。あの言葉は、一体…?]*
(16) 螢 2013/06/22(Sat) 18時半頃
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―回想・広場にてホレーショーを治療しながら―
[ふわり、ふわりと、たくさんの羊皮紙が魔法のヴェールへと変化を遂げる中で。 苦しげに息を吐きながら、年長の魔法使いがソフィアにかける言葉は。]
『気を許すなよ』>>3:57 『戦うと決めたら耳を傾けるな』 『隙を見せたらお前が死ぬぞ』>>3:58
[『謎の魔物』の嫌疑をかけられ、7人の魔法使いがこの廃村に集められた。
ホレーショーの目には、この状況を知ってなお人を疑おうともせず、敵かもしれない者を躊躇いなく治療するソフィアが危なっかしく映ったのかもしれなかった。]
(17) 螢 2013/06/22(Sat) 18時半頃
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(でも。私はこれ以外に、方法を知らないの…)
[信じること、受け入れること。
剣を持ち戦えない私は、能動的に人を救うことができない。
だから、この腕には何も持たずに、両腕を広げてただ受けとめる>>3:47。ありのままの姿のあなたを。 ――それは、受動的な救済。求められる助けに、手を差し伸べること。
…人か魔物かなんて関係なく、『救いたい』、それだけを願って。]
(18) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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[されど、魔法使いとしてこのままではダメだともわかっているから、ホレーショーの忠告には深く感謝して。
魔法使いとして生きるのなら戦いへの心構えを持てと、そう理解はした。
…が、覚悟を決めなければと思いつつもまだ捨てきれない心の内を、ぽつりぽつりと呟く。]
ホレーショーさん。私… 魔物を殺すことに、躊躇いがあるのです。
(19) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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殺せないんです…命を奪うということが、怖くて。
だって死ぬのは、怖いでしょう? あんな姿でもまだ、彼らだって生きてる。…生きてるんです。
…もちろん、魔物の姿で生き続けたって、幸せになれないし、 そんな苦しみからは解放してあげなきゃって、思うのだけど、 私は、彼らを殺してそれを「救いだ」と言うことが… 自分のやることに、そう言い切るだけの自信が、持てなくて…
(20) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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[どんな魔物であれ、『殺害』しなければならない。それはアヴァロンの掟。
でもそこに迷いを…躊躇いの気持ちを持つ限り、 自分に殺される魔物は、この右腕に宿る魂は、救われることはないのだろう。
…そんな中途半端な行為を、許すことができない。 頭で理屈はわかっていても、しかし心はそう簡単に割り切ることもできなくて。]
(21) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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[自分の弱さに目線は下がる一方だけれど、続きはいくらか顔を上げて、]
…私ね。ホレーショーさんみたいに、強くて優しい人になりたいな。 右腕にたくさんの魂を宿して、その運命を全部背負って… でもそんな重たいものを抱えても、優しさを忘れずにいて。
ホレーショーさんに殺される魔物は、幸せかもしれないですね。 強く真っ直ぐ生きている人の腕に宿る魂は、 きっと優しさに包まれて、眠りに就くのでしょう… これだけの魂を取り込んで、 優しく支え続けるあなたのこの右腕は、 ――魂の揺り籠。 私には、そう思えるから。
[右腕の治療をしつつ少しはにかみながらも、少女はそう伝える。]
(22) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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―回想・廃屋を出て歩きながら―
[…彼が魔物だとは思いもしなかったから、そんな言葉をかけて。
その場には二人きり、しかも相手は戦いに不慣れなソフィアだ。 回復が終わり次第いつでも襲うことができただろうに、なぜ襲わなかった?
その時は何か理由があったとして。 最後には殺すであろう相手に対して、なぜそんな忠告を?]
(23) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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[優しく言葉を重ねる彼が、魔物だとは思えなかった。 …思いたく、なかった。
『戦うと決意出来たんなら』 『ソフィアお前は強い』>>3:117
あの言葉は。力強く肩を叩く手は。
あれは、嘘じゃなかった。 彼が向けてくれた笑みに、偽りはなかった。 ――そう、信じてる。]
(24) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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[だからこそ、思う。 私を救ってくれた彼を、救いたいと。
迷う私に手を差し伸べて、道を示してくれたホレーショー。
その行き着く先を私は誤ってしまったけれど、 でも彼がかけてくれた言葉の数々は、真に私を思い遣ってのものだった。]
(25) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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『魔法使いは…人として死ねなければ』 『魔物になるだけだ』>>3:57
『俺ももちろん魔物になる可能性もある』 『遅かれ…早かれ』>>3:116
(26) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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[彼がそんなことを口にしたと、ふと思い出す。
あの時すでにホレーショーは、魔物としてコリーンやヤニクと戦っていたけれど。 ソフィアへ向けられた優しさは、人としての彼のもの。
…恐らくまだ、心までは魔物になりきっていないだろうから。 "人"として。せめて"人"であるうちに。
――人として、死んでもらうこと。 それが彼への、ソフィアなりの救済。]*
(27) 螢 2013/06/22(Sat) 19時頃
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―白昼夢から覚めて―
[広場の中央。 瀕死だったはずの男が立ち上がった>>33のは、光の壁が消えた後だったかどうか。 その身を起こしてはいるが、様子がおかしいコリーン>>4の姿も見え、
…その周囲には、魔物が群がり始めている>>3。]
ホレーショーさん! コリーンさん!
[本当は、魔物となった男を殺しに来たはずだったけれど。 目の前で行われた≪救済≫には、きっと意味があるだろうから、 今はこの周辺の魔物をどうにかするのが、先。]
[腰のレイピアを素早く引き抜いて。 少女は広場の中央に――動けないコリーンを庇うように降り立った。]
(34) 螢 2013/06/22(Sat) 21時半頃
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[討伐するはずだった対象を背にし、それとは異なる魔物と対峙する。 が、名前を呼ばれれば静かに笑んで、軽く振り向く。]
…なんでしょう?
[返事をすれば、背を向けたままのホレーショーに託される言葉>>35。 それはやはり嬉しくて、勢いよく返答を返す。]
はい…! こちらは、任せてください。 …私、もう迷いませんから。
[ホレーショーの殺害を決意したその時に。 もう、迷いは捨ててきたから。]**
(38) 螢 2013/06/22(Sat) 22時頃
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[背中にコリーンを庇いながら、周囲の魔物と対峙する。
魔物を『殺害』することを…この右手に宿すことを、『救済』とする。
――そう決意したからだろうか。 躊躇いを捨てた心は、体は、不思議と軽かった。]
[最小限の動きで踏むステップ。貫いて、飛び退いて。 周囲の魔物が駆逐されれば、右手を翳して。]
…お願い。私に、力を貸して?
[行うのは彼らの『肉体の殺害』。願うのは『魂の救済』。 そうして吸収した力は、消耗していたブーツへと流れていく。
戦い続けるために。救い続けるために。 お願い、私と共に……]
(44) 螢 2013/06/23(Sun) 20時頃
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『ソフィアさんは、逃げて』>>39 [恐らく失明しているのだろう、目の焦点の合わないコリーンの手にそっと触れて。]
…逃げません。 私は弱いかもしれないけど。 今逃げたら。私は一生、自分を許せないです。 ここであなたを救わないで、この先私は誰を救えるというの?
[ホレーショーを助けてと乞われて――その手を無言でぎゅっと握り返し、離した。]
(45) 螢 2013/06/23(Sun) 20時頃
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[ソフィアは広範囲への攻撃ができない。 ホレーショーは少し離れた位置で焔の大蛇を放っている。
彼の元へ行くということは、無防備なコリーンの傍を離れるということ。 …いくら彼女の願いとはいえ、それはできない。]
[冷たい雨が体力を奪う。 もう何時間、この雨に打たれているだろうか。
死の淵から生還した男と、視力を失くした女、そして力のない自分と。 下級の魔物が相手とはいえ、このままでは不利であることは明白で。
――さぁ、どうする?]
(46) 螢 2013/06/23(Sun) 20時頃
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[暫しの逡巡。 そのうちにコリーンが立ち上がって>>43。]
行きましょう、みんなを迎えに。 ヴェラさんのいらした廃屋の位置はわかります。 ヤニクさんの方は…探してみます。
[コリーンを支えながら、強く頷きそう返事をした。 ヤニクのことを聞いて返答の間が空いたのは… …恐らく、既に。それが察せられたから。]
(47) 螢 2013/06/23(Sun) 20時頃
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[ブーツの力で、飛び続けてもいいのだけれど。 二人を一度に連れ出すことは難しい。 であれば。これは賭けだけれど、きっと――]
コリーンさん、ちょっと、待っててくださいね…
[書物を入れている鞄を探る。 出てきたのは…
――車輪の、欠片>>1:65。]
(48) 螢 2013/06/23(Sun) 20時頃
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