168 LOVEorDEATH2〜死者は愛を知りたいようです
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[部屋に戻ろうとして、はた、と止まる。]
(――利用、か。)
[意識が途切れる少し前、白石の言った言葉。 自分を利用していいと。確かにそう言っていた。でも。]
……あー、もう。
[その気持ちはとてもうれしくて、とても、とても。でも、だからこそ。]
――大事にしたいとか。
[意識が溶ける前に口に出そうとして、音声にならなかった言葉。
俺は、利用したいんじゃない、必要としたい、と。]
(43) 2014/03/23(Sun) 22時半頃
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[最初はなりふり構わない演技だった。 でも抱きしめてその細い肩に、どうしても自分のわがままをぶつけられなくて。]
(……俺ってヘタレかもなあ。)
[利用していいと、打算でいいと。自分は家庭的でないと。 そう言って白石は自分をどうして卑下するのだろう。 朝、眠っていたその横顔はとてもあどけなかった。
利用じゃない。必要として、必要とされたい。
人間は弱いから、ダメなところもあるから、だから、お互い支えあいたいと。 俺の重い部分を持ってくれるなら、白石の重みも支えたいと、するりと思ったんだ。]
(44) 2014/03/23(Sun) 22時半頃
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――っし。
[ヘタレはヘタレらしく、とりあえず正直にぶっちゃけてみよう。 この気持ちの正体が何なのか、まだよくわからないけど、それでも答えを探してみよう。
あのカミ様の思う通りに結局なってんじゃねえか、と少しだけ苦笑いしながら、コーヒーを手に自室のドアを開けた。]
(45) 2014/03/23(Sun) 22時半頃
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[自室に入ると、白石は起きていたようだった。]
――おはよ。飲むか?
[湯気の立つマグカップを白石に差し出す。]
……どうした?
[その表情はどことなく陰りがあるようにも思えた。 まさか直前までカミ様がここにいたとは思っていない。]
(46) 2014/03/23(Sun) 22時半頃
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……どしたんだよ。
[自分のカップをちゃぶ台において、白石の隣にすとんと座る。 上ずった声の返事に思わず顔を覗き込んだ。]
砂糖とかいるか?
[そう言って取ってきたミルクや砂糖もちゃぶ台の上に。]
(49) 2014/03/23(Sun) 23時頃
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おっけ、はいよ。
[そう言って、ちゃぶ台においたミルクを少しマグカップに足して、改めて白石に渡す。 自分も少し乾いた口の中を潤すように、ブラックコーヒーを含む。 二日酔いの頭痛が徐々に緩まっていくようで。
夢見が、という言葉に少し苦笑いする。]
あー、すまん。重かったよな。
[朝自分が彼女を抱きしめていたことを思い出して少しだけ目をそらす。 顔がほんのり熱いのはたぶん、コーヒーを飲んで温まったからだ。たぶん。]
(52) 2014/03/23(Sun) 23時頃
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――昨日、変なとこ見せちまったよなあ。
[苦笑いしながら頭を掻く。酒に酔うのは3年ぶりだった。]
ありがとな、ほんとに。
[そう言って、手に持っていたマグカップを再びちゃぶ台に置いた。]
……ちょっとだけマジな話していいか?
[白石に向いて、少しだけ姿勢を正す。]
(53) 2014/03/23(Sun) 23時頃
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[この格好で、と言われてぷっと吹き出す。]
俺だって似たようなもんだ、気にしねえよ。
[知らずこわばっていた緊張が緩んだ。ぽろぽろと気持ちが口をつく。]
――昨日、利用していいって言ってくれたじゃねえか。 すっげえうれしかったんだ。うん。
ずっとさ、白石さんは自分は家庭的じゃないとか言ってるけど、うん……その、俺は白石さんをかわいいと思うし、仕事できてすげえと思う。 料理は俺のほうがたぶんできねえと思うしさ。
[うまい言葉が出てこない自分の頭が恨めしい。]
(56) 2014/03/23(Sun) 23時半頃
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俺は……なんつーか、白石さんを利用したくないんだよ。 これは俺のわがままかもしれないけど、俺は白石さんを大事にしたいし、必要としたいし、必要とされたい。
[そう言って、まっすぐ白石の瞳を見る。]
俺は、白石さんがしんどいときは白石さんを支えたいし、俺がしんどいときは支えてほしい。自分勝手なんだけど。
[少し笑う。自分勝手さに呆れられたらどうするかなあと思った。]
恋愛とかわかんないし、おっさんだし、子持ちだし。 ただ、うん。ここに来て、白石さんと話してて、俺はそう思った。
[白石はどんな表情だっただろうか。]
(58) 2014/03/23(Sun) 23時半頃
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[ハナのことを引き合いに出されて、少し考える。]
――どうしたらいいか、話し合うかな。
[考え考え、喋る。]
――もうどうしようもなくこじれちまったら別だけど、まだ白石さんとハナは直接会ってないだろ?
「もしも」なんて死ぬほどある。 俺だって、白石さんの親とか友達に反対されるかもしれない。すげえ嫌われるかもしれない。 でも試してみて、話し合って、解決策を考えたらいいんじゃねえかな。
ハナは大事だ。白石さんも大事だ。 どっちかを切らなきゃいけないってことはないはずだ。 もしかしたら、いろいろ白石さんが我慢しちまうことがあるかもしれない。 逆にハナが嫌がることがあるかもしれない。 じゃあ3人で話し合ってみるってのはダメかな。
(61) 2014/03/24(Mon) 00時頃
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[俺はもしかしたら楽観主義なのかもしれないけども。]
たとえばそれが何年もかかることだとしても、俺は――何年でも時間かけたいと思う。 何年かかったって、生きてりゃどうにかなるんだ。
[まっすぐと白石を見る。
死者は――思い出は消えなくとも、もう増えることはない。 生きるということはそれだけで無限の可能性を持っている。
些細なことでも、生きていればやれることは山ほどある。]
(62) 2014/03/24(Mon) 00時頃
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[気が早い、と言われて思わず笑う。]
……かもなあ。
[ふいに白石の髪が揺れて、こちらに近寄る。 触れる髪の毛の、絹糸のような柔らかさに頬が熱を帯び。 俺の指がそれをかきあげ頬に触れる。
お互い浴びるように飲んで、格好もよれよれで、それなのにその体温に、その柔らかさに、すでに抜けたはずの酒がまた血をめぐるような感覚を覚えた。
思わず、手に力が入る。体は知らず彼女を抱き寄せようと。]
――お前なあ…
[理性が灼ける音がした。]
……これでも一応、我慢してたんだからな?
[そう言って、その唇に。]
(66) 2014/03/24(Mon) 00時半頃
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酔ってたんだから仕方ねえだろー。
[景気よく寝息を立てていた、と言われてくつくつ笑いながら返す。 寄せられた唇。今度は少し長く、深く。]
―――するわけねえだろ。
[唇が離れたあと額をくっつけ、少し笑う。 お互いの吐息が頬をくすぐる。
首筋に唇を寄せ、その細い肩を強く抱きしめ。
こーいうところももし覗かれてたらずいぶん悪趣味だなとちらりと思った―――]**
(69) 2014/03/24(Mon) 01時頃
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― 現世 ―
[さてさて。
影木留伊と、田端紗英。
二人の男女が消えたのちに、また同じように部屋の扉は消え、時は彼らが死ぬ少し前まで巻き戻った。
その時、件の生き物の姿が、真っ白な空間のどこにもなかったことに、気づいていた人はいなかったろう。
全員が死んだ、あの日。
あの日と何ら変わりなく、夜道を歩く、田端紗英。
彼女が歩道橋まで差し掛かると、その途中でカエルの姿をした自分と、視線がかち合った。(>>+4)
あの部屋の中で、姿を変えたことはないし、また、変われることも特に誰かに言ってはいない。
気づかれることはないだろうけれど。
そのまま、見守ったままでいれば少しの間をおいて携帯を取り出そうとした田端が立ち眩む。
けれど、あの時のように転がり落ちていくことはなかった。]
[突然の死。
小さな、いくつかのタイミングの噛み合わせ。
その歯車がほんの少し、狂ったのだろう。]
んふふ♪
[カエルはその場で少しだけ、笑い声のような、小さな小さな鳴き声をあげて。
次に田端が視線をそこにやった時には、その緑色の姿は消えていた。(>>+5)]
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-回想・夢の中- [顔を上げるとそこにはずっと見つめていた顔がある。]
"――どうすんの?"
何がだよ。
"いい子じゃない。行っちゃいなよ。"
おめーなぁ……
"前に約束したでしょ?"
何がだよ。 "あたしが死んだら弘樹は自分の幸せも探すこと。"
…そんなの忘れた。
"またそうやって言う。"
(78) 2014/03/24(Mon) 21時頃
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[意識は徐々に浮上し、その終わりが迫る。]
"ハナのこと、頼んだよ。"
わかってる。
"――今度こんなとこ来たらぶん殴る。"
俺だってきたかねえよ。
"……じゃあね。"
[声はそこで途切れ、ゆっくりと体の感覚が戻る。 ――開いた瞳に、白石が映っていた。]*
(79) 2014/03/24(Mon) 21時頃
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-自室-
[しばし横たわっていた体を起こし、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲む。 常温のそれは、ほんの少しだけ体に水分を流し込む。
隣の白石はどうしていただろう。 少しまだ慣れないこの感覚に顔が熱い。]
(82) 2014/03/24(Mon) 21時半頃
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[水を取りに行こうかとも考えるが、心地よいけだるさは、まだこの場を離れたくないと言っていた。]
――どうすっかな。
[何をどうすればいいのか、自分でもよく分かっていない。]
(83) 2014/03/24(Mon) 21時半頃
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だな、風呂入りてえ。
[お風呂に入りたい、という言葉に深くうなずく。 身を起こした彼女の頬にそっと触れる。]
…の前に。
[もう一度だけ、唇を寄せて、少し笑う。]
(87) 2014/03/24(Mon) 22時半頃
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――んじゃ、とりあえず風呂浴びるか。
[そう言って押入れからバスタオルを出す。 もちろん相手の部屋にもあるとは思ったけども。
いくつか言葉を交わしながら、部屋を出る。 リビングに誰かいたら、軽い調子で風呂を使うことを告げただろう。]
(89) 2014/03/24(Mon) 22時半頃
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-風呂場-
[少し熱めのシャワーが肌を叩く。 石鹸の泡が汗を流す。
シャワーを止めると、先ほどのぬくもりを思い出してしまいそうで。]
――ガキか俺は。
[苦笑いするが、鼓動はまだ静まらない。 まさか生き返ってもこのせいで心筋梗塞起こしたりしないよな。
風呂場には他に誰かいただろうか。 にやけそうな顔を必死に抑える俺の姿は滑稽に見えたかもしれない。]
(91) 2014/03/24(Mon) 23時頃
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――ふぅあっ!!?
[いきなり声をかけられて奇声がでた。 おい、一瞬心臓止まるかと思ったぞ。]
……あぁ……?
[恐る恐る振り向けば、湯船からひらひらと手を振る槇村がいた。]
おい、いつからいたんだよ。
[ため息交じりに問いかける。シャワーを止めるいいきっかけになったかもしれない。]
(98) 2014/03/24(Mon) 23時半頃
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-風呂を出て-
[槇村と何事か言葉を交わしたあと、風呂を出る。 タオルを首にかけたままリビングに向かえば。]
――…おう。
[白石がいて、自然顔は笑顔になり。 ダメだ俺、だいぶダメだ。
冷蔵庫から水のボトルを取って、それを直飲みする。 口元をぬぐって、空になったボトルをゴミ箱に投げ込むと。]
……うん。
(100) 2014/03/25(Tue) 00時頃
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―風呂の中で―
はぁ!?
[おい全然気づかなかったぞ。 いや、俺が頭ふわふわだったのか? 鼻歌歌って上機嫌なところを見られたことが妙に恥ずかしい。 いや、恥ずかしいことしたつもりはないのだが。]
――おい、ちったあ声かけてくれよ。
[そう言いながら俺も湯船に入る。 桜が揺れている。最初に入った時には考えることばかりで見る余裕すらなかった。]
(102) 2014/03/25(Tue) 00時頃
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-リビングにて-
[この気持ちも、記憶も、もし生き返れば消えてしまうのだろうか。]
(―――だとしても。)
[くつくつと少し笑う。]
(生きてりゃ何とかなるだろ。)
[リビングの白石を、もう一度抱きしめたいと思った。 この感覚を忘れないように。 この部屋に来た時のようにぴしりとした格好の白石が、この部屋に来た時よりもとても愛おしくて。]
(105) 2014/03/25(Tue) 00時頃
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[これが恋かはよくわからない。 ただ寂しさを埋めているだけかもしれない。 それでも大事にしたいという気持ちは、相手を愛おしいと思う気持ちはふつふつと湧いてくる。。
ハナに対してのいとおしさと、また違う味がする。 まるで――夜明けのコーヒーのような。]
すまん、待たせたよな。
[そう言って白石に声をかける。 なんとなく、どうにかなる気がした。]
(108) 2014/03/25(Tue) 00時頃
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[今は答えを出さない。 今は結論を出さない。
――それをすぐに出せるほど、若くない。
それでもそれでいいと思えるならきっとそれでいい。]
んじゃ、いくか。
[そう言って、あの日はびくともしなかった青い扉を見つめた。]
(109) 2014/03/25(Tue) 00時半頃
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[白石がドアに手をかける。 その扉はゆるりと開き。 俺は彼女に笑顔で言う。]
――んじゃ、またな。
[好きだ、なんて言えない。 愛してる、なんて嘘くさい。
ただ、また、その顔を見たい。
後ろから聞こえる本田の声に、くつくつ笑って少しだけ振り向く。]
――――…。
[掛けた言葉は、はたして届いたか。 そしてそのまま、目の前は白く染まる―――]*
(114) 2014/03/25(Tue) 00時半頃
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-回想・風呂の中-
―――っ!!
[唐突に核心をつかれ、思わず湯を叩く。]
あー……見てたか?
[もし見ていなかったとしてもその反応で答えは明らかだ。 まずったなあと思いながらも、にへらと顔は緩む。]
まー、うん。まあ、な。
[どうしてもあいまいな言葉になってしまう。でもその中ではっきりしてることだけは言える。]
―――大事にしたいと思ったんだよな。
[槇村はいい大人がガキのようにいう言葉にどう返しただろう。]**
(116) 2014/03/25(Tue) 00時半頃
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