241 線路上の雪燕
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[見守る。シェリーと他二人――ともにラウンジ車ですれ違っただけの彼らの方を。 鉄錆のような馨が辺りに漂っている。
狼の姿はなかった。 なくてよかった、と思う。そうであれば今頃、 抱いた決意をすべて放り出して逃げていたところだ。ひとりで。
やがて。 さらっと頭数に入れられていることに首を傾げていると、>>2 シェリーもこっちに気付いたようだった。>>4]
シェリー、あたし、……。 こんなに、あぶなかっしいことするだなんて、思いもしなかったよ。
[先に謝られてしまえばぷりぷり怒る気も失せてしまって。 彼女が抱いた決意>>4:141を思い起こしても先へ行く勇気は出なくって]
(9) Akatsuki-sm 2015/12/03(Thu) 16時半頃
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もう、やめにしようよ。 ……冒険は。
あぶないよ。とっても。それに……、
[言葉を区切って辺りを見回す。
狼? それも人に化けられる類の? それが一匹。 どうなったところで自分達には何の関係もないのだと、 そんな、大人びたセリフを、キャロライナよりずっと大人な誰かが言ってくれるのを期待、してしまう。
けれどイアンと呼ばれた男の人は見届ける気があるみたいだし、>>2 ではペラジーと呼ばれていた>>4:84白いフードの人物は……]
(10) Akatsuki-sm 2015/12/03(Thu) 16時半頃
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……!
[傷口。>>14 その言葉にはっとなって、キャロライナはシェリーをまじまじと見つめた。 傷口は、ハンカチを渡された後でもまだ目立つものとなっていただろうか。 ともかく一瞬にして、自分が、どうしようもなく、 取り返しのつかないことをしてしまった可能性に、思い至る。
――ちゃんと、周りを、シェリーのことを、見てはいなかったんだ、あたしは。 目的を果たすことにばかり気を取られていて]
(22) Akatsuki-sm 2015/12/03(Thu) 21時半頃
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……ごめん、
[おそるおそる背けていた視線を元に戻す。 その頃にはペラジーの提案も一区切りしていたか。>>15
付け足す言葉は何もない。 ただ、不安そうな面持ちで、 シェリーの服の袖をつかんでいた。無傷の腕を引くように]
(23) Akatsuki-sm 2015/12/03(Thu) 21時半頃
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ー 或る廃村 ー
[風に揺れる漆黒のコートの下、
滲み出た真っ赤な血だまりが大地を汚していた。
僅かに上下するそれは白い朝霧の中。
見守る者も、追う者も居ない。
その下から、赤く染まった子供の手が緩慢に這い出した。
何か、掴もうとして、そのまま力を失う。]
………こに…いるん…だよ…ね……
…………ね………
[伸ばした方向には、靴跡が付いている。
靴跡は真っ直ぐに馬小屋に向かい、そこで途絶えている]
[伸ばした方向には、靴跡が付いている。
靴跡は真っ直ぐに馬小屋に向かい、そこで途絶えている。
[空っぽの馬小屋の中から、駆け出す物が1つ。
小さな白鼠だった。血の匂いを嗅ぎつけたのだろうか。
素早く裸の地上を駆け、膨らんだコートの上に駆け上がると
ぢぢ、と首を傾げてからふすふすと匂いを嗅ぎ。
突如毛を逆立てると、逃げ去っていった。
霧の向こうに、四つ足の生き物が立っている。
毛皮で覆われ、逞しい前半身に対して
後ろ足はややほっそりとしていた。
音も立てずに微動だにせぬ子狼の側に歩み寄ると、
その首元に、大きく開いた己の顎を埋め込んだ。]*
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………うん、……戻ろう。
[ゆるゆるとほっとした表情を浮かべて、頷き返す。>>25
もう、ずいぶんと冷えてしまった。自分も、シェリーも。 手を握られたことでそれに気付く。 上着を着ないで飛び出したらしきイアンという人もくしゃみをしていたし、>>36 ――きっと、誰もかれもが冷えて――あるいは、冷めている。 明けきらぬ夜の中で、動きを止めている雪燕さえも。
相変わらず、月明かり以外には頼るもののない、暗い場所。 沈む夕陽をも思わせる色の髪も、 寒風に揺られながら、照らされることも何かを照らすこともなく]
(44) Akatsuki-sm 2015/12/04(Fri) 00時半頃
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[やがて夜闇を裂いて、懐かしき汽笛の音が鳴り響く。>>37]
…………すっっごく見覚えあるパターンね。 これ。
[誰にともなく呟く。 荷物はない。むしろこの冷え切った身体がお荷物という有様。
もしもシェリーが走れない場合抱えて……はどう考えても無理だから、 せめてもの情けに手をしっかりと握って、イアンへと告げる]
はいはーい、しっかりついてくよ!
(48) Akatsuki-sm 2015/12/04(Fri) 00時半頃
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[切符は、見せる必要はない。 駅じゃないところで停車したのだから]
えーっと、……そもそもここって医務室とかあんの?
[搭乗口から乗り込んで辺りを左右に見回して。 結局、その道の人に聞くに限るとラウンジ車を覗き込む。 サクラコも黒い髪の男の人もいなかった。 外に飛び出した時より人口密度がだいぶ減っていて、 ラウンジ担当の者も疲れた顔を隠さないでちんまりと座っていた]
あの、……、
[視線が合った。苦笑する]
怪我人の手当てをしてもらいたいんだけど、どこにいけばいいかなーって。
[その間、キャロライナとしてはずっと、シェリーの手を離さないつもりでいたのだけれど、 さて、実際のところはどうなっていたことやら**]
(52) Akatsuki-sm 2015/12/04(Fri) 00時半頃
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― ちょっとだけ、一等車両 ―
[――まさか遊びに行くのではなく、お見舞いのためにこの車両を訪れることになろうとは。
シェリーが、傷口を洗いに行っている間に、>>62 騒動に紛れて気絶したらしい>>61サクラコの様子を見に行くことにした。 もちろんシェリーにはちゃんと伝えてある。
雪燕は軽快に走り出している。 いくらかの遅れは出る>>#3とはいえ、目的地――スウェルグに到着するのに支障はない。
夜闇を切り裂くのは、今や先頭のライトだけではなくなっていた]
(73) Akatsuki-sm 2015/12/04(Fri) 18時半頃
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[車掌室の外もまた人でごった返していた。 処置を終えたらしき者に駆け寄る家族か知人らしき面々がいる一方、 車掌室に入りきらなかった怪我人が不愛想な表情でたむろしていたりもする。>>72
あんまり、長居したくない状況。迅速に行動するべし。
乗務員を呼んでサクラコについて訊く、が、 お見舞いしたいから中に入れてほしいといっても取りあってはもらえなかった。 彼はおそらく人払いの役目までは仰せつかってはいなかったのだろう。>>34 しかし、何かを勘ぐり、邪推し、 結果的にその役目を果たす形になったというのはキャロライナの知らない話]
(74) Akatsuki-sm 2015/12/04(Fri) 18時半頃
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…ちぇー。じゃあ伝言だけでも伝えといてよー。 「キャロから、お大事に」ってさ。
[しぶしぶ顔でそう告げると、 背を向けた。ラウンジ車へ戻るために*]
(75) Akatsuki-sm 2015/12/04(Fri) 18時半頃
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― そして彼女はスウェルグの土を踏む/7:40 ―
[穏やかなノックの音で目が覚めた。>>#4 深夜、叩き起こされた時よりずっとましな顔立ちで、 キャロライナは老齢の車掌を迎え入れた。おつとめごくろうさまです。
ラウンジでシェリーと一緒に乗んだハチミツ入りホットミルクのおかげで、 短いながらもぐっすり眠ることができた。 開かれたカーテンの向こうから飛び込む陽の光を浴びればもう準備万端といった風情]
わぁ…… 海! 海が見える!
[指差した先。 騒乱の夜が寝物語であったかのように、海は青く静まり返っていた]
(116) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 02時頃
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[……それにしてもずいぶんと目立つ格好になったものである。
サラグニッド駅から雪燕に乗った時との違いは、 大きなぬいぐるみが一体、手荷物に追加されただけだが。
そんな、目立つ格好のまま、雪燕に同乗した見知った顔を探す。お礼やら何やらを言うために。 しかし足を向けてくるのは、長旅を終えた面々をカモにする、 海沿いの街の新聞売りや軽食屋達ばかり]
おっちゃーん、これひとつちょうだーい!
[――上等上等。 ちょうどいい具合にお腹もすいていることだし**]
(117) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 02時頃
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あっ、おはよう、だね。 えっと……イアンさん!
[鳩の人、という呼称は知らなくとも、 昨夜どんな名で呼ばれていたかはしっかり覚えていた。>>132 手……ではなく、鳥籠を振る様子に目をまあるく見開く。
――あたしが鳩だったら目を回しちゃいそうだよ!]
(145) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 21時半頃
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[ペラジーが近付いて来れば赤毛を揺らしてぺこりと一礼。>>123]
へーきへーき。むしろ元気すぎるくらい……かな。 ホント、無事着いてよかった。話には聞いてたけどすっごくいいところ! 海は綺麗だし、……こういうのとか、 情緒ある、って言いそうじゃない?
[言いつつ指差したのは、簡素に《 Swelg 》と駅名のみが刻まれたプレート。>>#5
やがてシェリーもやってくれば、賑やかな一団が形成されることになるか。 無論見た目的にも目立つ]
(146) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 21時半頃
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[やりとりを小耳にはさみながらも小腹を満たすのに余念がないのがその時のキャロライナであった。 黒髪の男の人>>129には、軽食を冷めないうちに詰め込む、 若干お行儀の悪いところを見られてしまったかもしれない。 新聞を読みながら、であったので、 お行儀の悪さ度合は三割増しだ。
そういえば街規模の新聞の一面に、 今頃は西の大陸に行ってるはずの父の名前など普通はあるはずがない、とふと気付くが。 買ってしまったものはしかたない。 丁寧に折りたたんでトランクにしまう。
キャロライナの知らいない誰かさんにとっては、 古い友人だったり、恩人だったりするかもしれないこれまた別の誰かさんの――人生の一端が詰まった紙束を]
(148) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 21時半頃
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あ………、 あの時はごめんなさい。 ちょっといてもたってもいられなくって……
! サクラコ……、そういえばサクラコは無事―――、?
[こちらに気付いた黒髪の男の人に、 謝ったり訊きたいこと訊いたりと忙しなくしている中、 彼が呼んだ名前の片方に違和感を感じ、ペラジーの方を向く。>>150 当のペラジーも困惑している様子。>>160]
だってさ。普通にペラジー君でいいみたい。
[と、シェリーの勘違いをただし。 とりあえずな乗れば場が丸く収まると判断してシェリーに続けて名乗る]
あたしは……キャロライナ。キャロライナ・バートン。
[父親は無名の冒険家でありうんぬんはやっぱり言わなかった]
(163) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 22時頃
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安全な、鉄道網……。
[雪燕は穏やかな海を湛える終点の街に着いて。 しかし昨夜の出来事は決して寝物語ではないのだ。だから気になってしまう]
その……もしも昨夜のようなことがあなたの国でも起きたら。 ……じんろう、が入り込んだら、ココノエさんはどうするつもり?
[ばけもの、という呼称を使うのは躊躇われて。 昨夜誰かが噂していた単語をうろ覚えのまま使って問う]
(167) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 22時半頃
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……。む。 それ見た目は大丈夫だけど中身が大丈夫じゃないパターンじゃないよね? 頭打ってヘンになったりなんて……してないよね?
[なぜ、途中で言い淀んだのだろうかと思って、 浮かんだ推測をココノエ氏に問う。>>168 頬に手で触れた意味までは分からぬまま]
(176) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 23時頃
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[その後、問いに応じてココノエ氏が語る構想を聞いた。>>171>>172 表情は熱心そのもの。だが、どういうことかちゃんと理解できたのは最後の一部分だけ。 圧倒的に勉強が足りてない少女は、しかし]
……ってことは雪燕よりもっと早い列車をつくるつもりね! すごいじゃない! 30年後が楽しみだわ。
[そう言って目を輝かせたのだった*]
(177) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 23時頃
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― スウェルグ・12:46 ―
[シェリーが口にしていた「おばあちゃん」という言葉に、>>137 家族のことを思いだしていた。今や連絡先も謎の父親のことを。
あの、青く広がる海の、ずっとずっとずーーーっと西の向こうに大陸があるのだとしたら。 眼前の、凪いで穏やかな海に手紙を流せば、 ずっとずっとずーーーっと西の向こうの大陸まで届くのだろうか]
届いたとしたって。 親父が受け取れるかどうかわかんないじゃん。海沿いにいるかどうかだって……。
[しかしどうしてだろうか。この考えを無碍にできないのは]
(204) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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[結局、「青いうみねこ亭」に行く道中でレターセットを買った。 空のボトルは……なかったので、行く先で融通してもらうことを考えなければ。 料理屋なら望みは高そうだけれど。
きっと、キャロライナはこれからもずっと、 整った道、誰かが敷いたレールの上を走る、 そんな“旅”しかしないだろう。
30年後はおろか、もっと近い未来の10年後だってまだわからないけれど。 それだけは確実だろうと。
だから、届くか分からない手紙を海に向けて流すことが、 キャロライナ・バートンにとって最初で最後の“冒険”になる]
(205) Akatsuki-sm 2015/12/05(Sat) 23時半頃
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[冒険譚に相応しく、長い手紙になりそうだ。
惜しむらくは――― 軽快なる線路上の雪燕の鳴き声を、 ボトルに封じ込められないこと。それくらい**]
(206) Akatsuki-sm 2015/12/06(Sun) 00時頃
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