56 いつか、どこかで――狼と弓のワルツ――
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[目の前が赤に染まる。
頬と額を撫でられ、どこか穏やかな気分になる が]
俺は、…
ッ ――――――… !!!!!
[続きの言葉を紡ぐ代わりに、
出てきたのは、怒りとも、悲しさとも、形容しがたい咆哮。]
落ち着け。
[ベネットの死を前にして、自身を乱している様に見えるイアンにも、ベネットと同じように安心させるように頬に触れて。
続く彼の咆哮は、ひどく胸に響いた。]
…ああ。
[咆哮は収まり、息を大きく吐き出す。
赤みを帯びた瞳が、ブラウンに戻っていく。
それは静かに、静かに怒りを胸の内に溜め込むように。]
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[イアンが浮かべた笑みに、少し安心したような、まだ少し心配しているような表情になるが>>37]
……はい、任せて下さい!
[今すべきことは、ベネットを運ぶことだと言い聞かせて。 生存者優先の為、他の兵の力を借りられはしなかったが、鞄が軽くなっていたのと、ベネットが軽装備だったのが幸いし、何とか背中に背負う。]
うん、!
[オスカーに声をかけられて、強く頷くと足を速める。>>38 駆ける、というわけにはいかなかったが、砦が近づけば、手を貸してくれる者もいただろう]
(43) 2011/07/02(Sat) 14時半頃
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―砦―
[砦に着くと、ベネットの遺体を安置所まで送り届けに行く。そして、その場にいた他の看護士から、ムパムピスとフィリップの訃報を聞き、目を見開いた]
なんで……?ムパさんとフィリップは、砦の中にいたんでしょ?
『敵軍の捕虜がいたらしいの。捕らわれていたんだけど…牢が、空になってたって。その近くで、二人は倒れていたという話よ。まだ捕まっていないから、私たちも警戒の必要がある』
[もしかしたらそのまま外に逃げたかも、という同僚の言葉は既に耳に入っていなかった。時折戦場にでるフィリップとは違い、ムパムピスが自分より先に死ぬことはないだろうと思っていたのに。突然の死が、まだ信じられずにいて。
戦の無情さを改めて感じ、唇を噛んだ]
(44) 2011/07/02(Sat) 14時半頃
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[休憩をとる旨を同僚に伝え、砦の中を歩いていく。 戦の始まる前に、ムパムピスと話した事を思い出しながら。>>0:153>>0:157
――生まれ変わりが本当にあるのなら。 いつか死んでいった人たちとも、再び会える? でもムパさん。私は、戦のある世界には、生まれたくないよ。
あの時、言えなかったことを胸中で呟いた。 もし生まれ変わりがあるというなら…戦のない平和な世界。せめて、彼らがそんな国に生まれているのを願う。]
(45) 2011/07/02(Sat) 15時頃
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―礼拝堂前―
……んっ、
[つきん、と一瞬、頭に痛みが走る。奇妙な光景が頭に浮かんだ。 見た事のない景色。覚えのない、顔の見えない誰か。 騎士とは違う服。臙脂色に緑色…それと赤い…狼?
ふるりと頭を振り、押さえた。 戦の中だと、たまにそんな白昼夢?を見ることがあった。健康に異常はなかったから、殆ど気にしたことはなかったけれど。
…従軍神父のことを考えていたからだろうか。 気づけば、礼拝堂の前にいた**]
(47) 2011/07/02(Sat) 15時半頃
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[ふと、聞こえた彼女らしくない囁きに、顔を顰める。]
…誰のせいでも、ねーよ。
[その囁きは、自分で少し、吐き気がした。
“ベネットが死んだのは、誰のせいだ”
―――、考えるのが怖かった。
それは、オスカーへの囁きではなく、
自分自身への慰めかもしれないと。]
[彼からの囁きには、無言でかぶりを振って。]
…俺は、やることがある。
お前は休んでろ。
[ベネットの事で、受けている精神的ダメージは大きかろうと。]
…俺が、守ってやればよかったんだ。
[自分を慕ってくれた彼の顔を思い浮かべて。
か細過ぎる程の鳴き声は、向こうには届かないだろう。]
[やることがある、と言われて何を思ったか]
なあ、お前、俺の傍に仕えるのが役目だったよな。
……何かあったら、タダじゃ済まねーぞ。
[それは、遠まわしの心配で。]
俺がいないと不安か?
[俺は大丈夫だと安心させる様な声音で。]
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―礼拝堂前―
[ぼんやりと、その大きな扉を見ていた。 人並みに礼拝はしていたけれど、ここ数日は忙しくて、行く暇もなかった。]
ん……ここにも、血……?こんな所にまで……
[それが、自分が来る少し前に、ここで襲撃を受けたノーリーンの物だということは、知る由もなく。>>50]
(73) 2011/07/02(Sat) 23時頃
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こう見えても、…寂しがりなんだよ。
[どこか余裕を持った声色に、
冗談なのか本気なのか取れないような言葉を。]
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血……怪我。
[小さく呟いて。目をごしごしと擦った。]
……うん。行かなきゃ。
[負傷した者…まだ生きている者がいる限り、進まなくてはならない。
動かねばと自覚すると、喉が渇いているのに気づき…水を飲んでから、治療の手伝いに行こうと考えた。]
(77) 2011/07/02(Sat) 23時頃
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命令なら行ってやらん事も無いぞ。
[男に返す声音は、何時も通りの淡々としたもの。]
…俺が捕まえた捕虜が、脱走した。
フィリップと、神父がそいつに殺された。
お前も気をつけろ。
[いくら剣の腕が良くても、人を殺す技術に特化した人間を相手にする事は難しいだろう。]
へえ、んじゃいつでも命令される準備しとくんだな。
[いつも通りの彼女の返答に、
自分も少しだけ、いつもの調子を取り戻して。]
誰にモノ言ってんだ。
…見つけたら、殺す。
[睨みを効かせた瞳は、赤。]
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―医務室―
あ、イアンさ……
[医務室へ向かい、先程の件で声をかけようかとした所に、先に声をかけたローズマリーの姿を見つけ、少々ためらう。>>82
さすがに喧嘩をする元気もなかったが、彼女の首に包帯が巻かれているのを見つければ、眉を寄せた。]
(85) 2011/07/02(Sat) 23時半頃
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お前には、無駄な危険を犯してほしくは無いのだが。
[殺気を漂わせるような囁きに、ゆったりとした口調で返して。]
…俺が殺るから。
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…お怪我、されたんですか。 砦の中も安全とは限らないようなので…お気をつけ下さい。
……赤騎士団長に用事がありまして。 それが終わったら、自分の仕事に戻ります。
[こちらに気づいたローズマリーに告げる。疲れた表情と、負傷者の血にところどころ染まった服で、衛生兵だとわかったらしい。>>96]
あの…さっきは。余計なことを言ってしまってすみませんでした。
[戦場で思わず叫んでしまったことについて、イアンに軽く頭を下げた。慰めの一つでもかけたかったけれど、片割れを失ったばかりの団長にかけられる言葉はなく]
(98) 2011/07/03(Sun) 00時頃
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…なら任せたぜ。
[言って、今しがた公女から聞いた話を思いだし]
…どうも、姫様にも手ェ出してたらしいな。
領主護衛だって聞いたけど?
領主護衛?
[イアンの言葉に眉をしかめて。]
…っ。
[領主護衛を勤める程の男ならば、かなり手強い相手だという事が予測されて。
それにしても、何故領主護衛があんな場所に居たのか。]
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助かった?…そっか。それなら、良かった。
大変だと思うけれど…イアンさんは一人じゃないから。
[そう笑いかけて。頭を下げると、負傷者の治療に戻った]
(114) 2011/07/03(Sun) 00時半頃
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―砦の外へ―
うそ、毒?解毒剤…だめ、これは……!
[治療の最中、毒矢に倒れた死者の話を聞き。 遺体を見てみれば、砦内には解毒剤がないのが知れて。]
私、摘んでくる!
[次に犠牲者が現れることを考えれば、いつでも用意しておく必要がある。 近くの森に生えていたはずだ。副団長が襲われた知らせは、まだ来ていなかった。だから。敵が潜んでいるとも知らず、森を目指して、砦の外に走っていったのだ]
(116) 2011/07/03(Sun) 00時半頃
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[一本の矢が、衛生兵の首の側面を穿った。]
(117) 2011/07/03(Sun) 00時半頃
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[声をあげる間もなかった。 頚動脈をやられたのだろう、大量に血を撒き散らし、地面に崩れ落ちる。]
(118) 2011/07/03(Sun) 00時半頃
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…………!!!
[激しい痛み。血液が喉を塞ぐ。苦しい。 …痛い。涙がこぼれた。
薬。料理のレシピ。趣味のポプリ作り。包帯。公女への反感。友との約束。砦の仲間。衛生兵だった亡き父への憧れ。
娘を象っていたもの全てが、瞬く間に消えていく。 そして、何一つ残すこともできず、黒い瞳から光が消えた。
一衛生兵の死。
*戦場では、よくあること*]
(119) 2011/07/03(Sun) 00時半頃
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