182 【身内】白粉花の村
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不服というか……私には、無縁でしたから。 必要無いでしょう、そんなもの。
[手を下ろされれば、既に満足していたから抗いはしない。そのまま手を握られたものだから、少し怪訝そうな視線を向けはしたが。
どうして表情を偽らねばならないのか、いまいち分からなかった。 楽しいなら楽しい、悲しいなら悲しい。そう表現すれば良い。無理をして別の感情を纏って、何の意味があるのだろう。そんな窮屈な生き方が、楽しいのだろうか。 ……それならいっそ、交換してほしい。作り上げた偽りの表情と、張り付いた変わらない表情。両者に差等無いだろうから。
対峙する相手の思案顔を見るともなく見て。何となく彼の出すであろう答えは、予想出来ていた。笑顔とは裏腹に意地の悪い人だから]
(76) 2014/06/25(Wed) 10時半頃
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はは、先生は泣き顔がお好みですか。 それなら、その時は先生に一番に見せに行きますよ。
[そんな時はこないと分かっていたから、軽い口調で約束を落とす。 返された答えには、内心やはりとしたり顔を作って。けれど次いで伸ばされた指先に困惑する。 先程自分もそうした手前拒絶はしないが、居心地悪そうにその手と彼の顔とを交互に見た。 暗に止めろと言っているのだけれど、通じるだろうか。通じた所で、彼が止めるとも思えないが]
……何ですか、この手は。
[動かない顔等、触っていても面白くはないだろうに。そういう思いを込めて、自然睨み付ける様になってしまったのは、仕方が無い事だろう]
(77) 2014/06/25(Wed) 10時半頃
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ディーンは、セシルに話の続きを促した。
2014/06/25(Wed) 10時半頃
……それなら良かった。
でも、無理はしないでくれよ。倒れられたらたまらない。
[彼の驚いた声には苦笑を落とす。連絡をすると、そう言っておけば良かっただろうか。思えば伝え忘れたことは、他にもたくさんある気がする。けれど今すぐそれを形にする勇気は、残念ながら無かった]
暫くの間耐えてくれよ。
経過を看るって言っても、そう長い間じゃあない。
[ぶつけられた不満に苦笑して。甘えられているのだと分かったから、思わず宥めるような声音になった。
いつも歳上ぶるのに、こういう時は子供みたいだ。けれどそれが向けられるのは自分だけだと分かっているから、悪い気はしない]
変わったことなら、そちらの方がよっぽどありそうだけど……、
ああ、そうだ。花束が置いたままだった。必要ならそちらに送るよ。
[もしかしたら故意で置いていったのかもしれない。そんな考えはあったけれど。
そうでないのなら、車で行ける距離だ、あちらに送るのはそう難しくないだろう]
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[楽しみだと言われれば、すぐに笑みも引っ込む。 まさか本気にしただろうかとそんな事を考えるが、どうせ治る事は無いと思えば否定もしなかった。それにただの戯れだ。口約束なんて、破ろうと思えば幾らでも破れる。 ……彼の事だから、もしかしたら無理矢理にでも”約束”を遂行させられるかもしれない、とは。思わないでも無かったが]
そりゃあ、生きていますからね。
[やはり止めてはくれなかった様で、思わず視線も鋭くなる。上辺だけの気遣いの言葉に軽く苛立ったが、それでもまだ抵抗はしなかった。……まだ。
これは一体何なんだ。触診の様なものか?そんなの、散々してきただろうに。 戸惑いのままに動く視線は、どうにも抑えられなかった。余程止めてくれと言おうかと思ったが、先程の自分の行動を思えばそういうわけにもいかず]
(93) 2014/06/25(Wed) 14時半頃
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元々、あまり顔には出ない方でしたよ。 態度にはまあ……よく出る方ですが。
[現に今も不快だと示しているのだけど。続く筈だった嫌味は、どうにか飲み込んだ。 薄い唇に触れられれば、己の顔が玩具にされる事に、ついに耐えられなくなって。咄嗟に左手でその指先を振り払う。楽しげなその表情が歪めば良いと、少し強く叩いたのが、故意とバレなければ良いが]
……、そろそろお暇します。 包帯と紅茶、ありがとうございました。
[包帯は兎も角、紅茶は一口飲んだ切り口をつけていなかったが、一応礼を付け足す。飲みきらないのは失礼だと分かっていても、傷が痛んで嚥下するのが億劫だったのだ。
最後に一つ、お辞儀をする。そして引き止められる事が無ければ、そのまま扉へと足を向けるだろう]
(95) 2014/06/25(Wed) 14時半頃
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[吐き出された言葉に、少しだけ目を細めて。
彼のこういう負け惜しみの仕方は、微笑ましいと思えば良いのか、注意すれば良いのか、少々判断に困る。自分の体をもっと大切にしてくれと、そう言ったところで、果たして彼には通じるだろうか]
あまり拗ねるなよ。
そんなんだから子供扱いされるんだ。
[冷たくなった言葉に、どう返したものか分からなくて、結果こちらも突き放す形になってしまう。けれどその声音には、呆れよりも気遣いが含まれていただろう]
僕でよければ貴方の話し相手になるさ。
番号はそっちに登録してあるはずだから、いつでも連絡してくれよ。
[宥める口調は依然変わりなく。彼の視線の先に何があるかなんて、考えもしなかった]
――ああ、そうか。
そうだな、飾らせてもらうよ。
[送らなくてもいいと、その言葉に深く安堵する。
最初から送るつもりなどなかったと言ったら、彼は驚くだろうか?勿論、わざわざそれを伝えるつもりもないけれど。
花に罪は無いが、アレは近々ゴミ箱行きだ。自分には花なんて似合わない。それに、彼の為に作られたそれは、正直気に食わなかったから。
……貴方の傍にあるのは、僕の花束だけでいい。仄暗い気持ちを押し込んで、意識して軽く言葉を重ねる]
何かあったら、すぐに言ってくれよ。
僕が出来ることなら叶えさせてもらうからさ。
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ー2階廊下ー
[ヤニクの部屋から出て、一つため息を吐いた。 数少ない年長者だから敬ってはいるけれど、からかいあしらわれるのは苦手だ。彼の場合、何処までが本心か分からないから余計。
ため息ついでに足元に目を落とせば、自分の部屋から彼の部屋に点々と続く血痕が目に入る。一先ずこれをどうにかしなければいけないだろうと考えれば、渋々と歩き出した。自室に雑巾はあっただろうか。無かったら買いに行かなければ。
けれど廊下の先から聞こえて来た音>>99に、ふっと顔を上げる。視界に映ったのは、あのヘラヘラとした猫耳野郎で。よく見れば彼が拳を掲示板に打ち付けていると分かった]
……。
[話しかけるか否か、暫し逡巡して。けれど彼をああも激昂させた理由が知りたくて、ふらりとそちらに近付く]
(108) 2014/06/25(Wed) 20時頃
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何をしているんだ。
[後ろから覗き込む様にして、いつの間にか座り込んでいた彼越しに掲示板を見る。血に塗れたそれは幾らか見辛くなっていたが、転院者が出たのだと書かれていた]
ふうん。
[それに心揺れないでも無かった(主に、ヤニクと交わした約束の事についてだが)が、勿論それは表情に出る筈が無く。 ついと視線を下ろして、随分ショックを受けたらしい猫耳に目を向ける。先程の飄々とした姿とは全く違う目の前の彼に、少しだけ興味が湧いた]
……おい。 痛くはないのか、それ。
[彼の拳を指差してそう言った。頷くのであれば、治療という名目(ディーン自身も片手が不自由なので、多少不恰好な口実だが)で話を聞き出してやろう]
(110) 2014/06/25(Wed) 20時頃
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[彼のあげた情けない声に笑いそうになるが、どうにか堪えた。表情が変わらない病は、こういう時に便利だ。だって此処で相手の機嫌を損ねたら、目的が達成出来なくなってしまう]
……仕方ないな。 ホラ、手を出せ。
[面倒臭い。そうは思ったけれど、今更手を貸さない等とは言い出せず。無傷の左手を差し出せば、そのまま肩を貸すだろう。
向けられた笑顔には、少しの嫉妬心が煽られる。あるがまま感情を表に出す事が出来る彼が、羨ましい。勿論同じ奇病患者であるから、無闇な事は口には出さなかったけれど]
で、何処にあるんだ? その、忘れ物とかいうのは。
[腕力が無い事には定評がある。さっさとしないと支えきれなくなる事は明白だ。(今回は特に、怪我もあって随分体力を消耗している)だから急かす様に言った。 レティって誰だよ。そう思わなくも無かったけれど、まあ、関係無い事だ]
(114) 2014/06/25(Wed) 21時頃
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[言いかけた言葉には察しがついて。仲良しこよしがしたいわけではないから、気等使ってくれなくても良いのだが。まあ、気持ちは受け取っておこう]
……売られた喧嘩を買っただけだ。 ふん、とんだチキン野郎だったがな。
[酒の臭いは兎も角、血の臭いは先程の自傷のせいなのだろうけれど、深く話すつもりは無かった。聞かれて面白い話でもない。誰が好き好んで己の痴態を晒すというのか]
さっさと行くぞ、重い。
[少し歩いただけで、既に息がきれそうだ。早足でラウンジに向かう。近くにあるというのなら、この会話をしている内にも到着するだろう。
観察する様な視線が鬱陶しい。 言葉遣いに気を遣うくらいなら、その不躾な視線を止めてくれた方が余程助かるというものなのだが。 笑みを形作る唇と、前髪に隠された瞳と。どうにもちぐはぐな印象を受ける。 けれどまさか前髪を上げろ等と言える筈も無く、一つ鼻を鳴らした。気に食わない]
(120) 2014/06/25(Wed) 22時頃
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……話しやすい? それは初めて言われたな。
[はぐらかす様に言葉を吐き出して。 こいつは見た目よりも馬鹿じゃあないのかもしれない。そんな失礼な事を考えてみる。 ……だが間違っても賢くは見えなかった。だって猫耳だぞ、猫耳]
なら、話をすればそちらも話してくれるのか?
[前髪に隠されたその奥を、じ、と見詰める。表情は変わらないが、眼を合わせれば(此方からは見えないのだろうが)その瞳が好奇心に光っている事が分かるだろう。 別に打算故に手を貸したと思われても構わない。それは事実なのだから。 とはいえそれを知ったうえで、彼が話をしてくれるかは不安ではあるけれど]
(121) 2014/06/25(Wed) 22時半頃
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[観察するのを止めろと、先程きちんと言っておくべきだった。視線は嫌いだ。息が詰まって、気持ち悪くなる。 咄嗟に動かない表情を右手で覆う。二度三度と深呼吸をして、どうにか心を落ち着けた。
陽気な態度で此方を追い詰める相手に軽く苛立ちながら、それでもその場を離れないのはただ話を聞きたいからだろうか。我が事ながら理解出来ない。 ……けれど”失う物がない同士”と。彼のその言葉は胸に引っかかって。飄々としているくせに、随分と絶望めいた言葉を使うじゃないか]
それなら……話は早いな。
[多少荒くなった呼吸の合間、どうにか言葉を紡いで。その居た堪れなさにそっと視線を外す。 ああもう。どうしてこの体はこうも思い通りにいかないのか!]
……私の部屋は……今は止めておいた方が良い。 お前の部屋で良いだろう。
[自室は先程インクを盛大に零したばかりで、きっと未だ匂いが残っているだろう。 ディーンはインクの匂いに慣れているし気に入ってもいるが、慣れない者にはキツいに違いない。よりにもよって自室でダウンされたら面倒だ。 彼が諾と答えるなら、案内しろと催促するだろう。まだ回復しきっていないなら、再び肩を貸す事も吝かではない]
(126) 2014/06/25(Wed) 23時半頃
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……ああ。 暫くは不便だろうな。
[一人で歩ける>>127と言われれば少しの距離を置く。顔を背けるのは、見られたくないからだ。遠慮の無い視線も慣れつつあるけれど、やはり見られたくないのは変わらない。
彼の言葉に、自ら傷付けた傷口をじっと見て。握ってみようとすれば痛みにそれすら叶わないと気付く。 ああ煩わしい。痛みなんて、無くなってしまえばいいのに。そうすればこの仮面も、外す事が出来ただろう。 ……だが。そもそも彼の治療という名目だったのに、何故此方が心配されているんだ?]
ディーンだ。 ……ふ。よろしく、クシャミ?
[変な名前。そう思ったけれど、勿論口にする事は無く。ディーンにしては珍しく、友好的とも取れる態度で言葉を交わす。
先導する背中を見つめて、その視線が向こうを向いた事に安堵した。こっそり吐いたため息は、気付かれなかったろうけど。 さて、彼の部屋はどれだろうか。無意識に傷を摩りつつ、彼の後を着いて歩いた]
(144) 2014/06/26(Thu) 06時半頃
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……似合わない自覚はあるよ。
[彼の言葉に、その通りだろうと同調して。せいぜい自分に似合うのは、そこらの雑草が良いところだろうと自嘲する。
眉目麗しい彼の傍にずっと居たから、自らがどれだけみすぼらしいか、その自覚はあった。別に、卑屈になっているつもりはないけれど]
木?
それは……喜んで良いのか微妙なところだな。
[困惑混じりに、眉を下げる。幼馴染の意図など分からないし、皮肉じみた言葉もあって、平均より幾らか高いこの身長を揶揄されているのかと思ったのだ。
けれどまあ、それに反発する気も起きず、似合うかなあ……などと、木になった自分を連想してみたりもする。いまいちピンとこなかったが]
……ああ、そうだな。今度送るよ。
[生憎と、これまで学術書ばかり読んできたから、彼の気に入るものが選べるとは思えなかったけれど。それでも相手が自分が選んだものを、というのなら、拒む理由は無かった]
此方は少し忙しくてね、時間がかかるかもしれないけれど。
――きっと送るよ。
[本当は手渡し出来れば良いと、そう思ったが、今此処を離れるわけにもいかない。
早く他の患者の治療法を見つけ出さなければと急く心を隠して、出来るだけ穏やかな口調でそう言った]
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……お前の方が余程変な名前をしていると思うが……。
[先程飲み込んだ言葉が思わず口をついて出る。失礼な奴だとは思ったが、此処最近会ったのはそういう奴ばかりだし、こいつは未だマシな方だ。話が通じるだけ、随分良い]
[彼の部屋は、自分の部屋とは少し離れた位置にあった。これならまあ、お互い知らないのも無理からぬものだと納得する。そもそもディーンはあまり積極的に人と話す方では無いし、そのせいもあっただろう]
ああ、すまない。
[モノクロの部屋に足を踏み入れて、失礼だと分かりつつもぐるりと見回す。部屋内が白黒に統一されている事に気付けば、そんなに好きなのかとぼんやり考えた。勿論これだけで、彼の病に思い至るわけもない。
座る様に勧められれば、流石に家主を差し置いてベッドに座れる筈も無く。黒い椅子に座って、彼がベッドに座るのを待った]
(151) 2014/06/26(Thu) 09時頃
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[問いを急かす様な言葉に口を開こうとするが、己の病を言い当てられて。視線を此方に向けない彼を、じっと見る。 別に隠せる事でもないと分かっていても、見透かした様な口調には少し腹が立った。その為の観察か、と。小さく一つ舌打ちをして、右手で軽く顔を覆った。もう見られてないと、分かっているけれど]
ああそうだよ。最初は笑えないだけだったんだが、今はもうどの表情も出来ない。 ……で、お前は何故此処に居るんだ?
[それが最初の質問だ、と。投げやりな口調でそう言って、首を傾けて睨み付ける。 嗚呼、何から何まで不躾な奴だ。やはり気に食わない。少しは話の分かる奴かと、そう思っていたのだけど]
(152) 2014/06/26(Thu) 09時頃
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[ベッドに転がる相手に、行儀が悪いぞ、と小言を落とそうとして、けれど口を噤む。 別に自分は彼の保護者というわけでもないのだ。非常識さに呆れこそすれ、それに苦言を呈する程でもない。相手が寝ていても話は出来るのだ]
目か。……お互い難儀だな。
[告げられた病の内容とその余命に、険のあった目つきが幾らか和らいだ。 明日をも知れぬ命と聞けば、こいつは恐らく自分より先にし死ぬのだろうと、歪んだ優越感が湧き上がる。それが少しだけディーンを満たしてくれた。
それを隠して、示された髪を指先で弄ぶ。蛍光灯の光に金糸が反射して、きらりと光った。 身なりにはそれなりに気を使っているから、汚れは無い筈だ。であれば、彼の目の不調は明白で]
(156) 2014/06/26(Thu) 11時頃
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[笑っているのに笑っていない、その表情。ちぐはぐだ。そんな中で、彼の瞳はどんな輝きを湛えているのだろう。そんな興味が湧いたが、前髪に隠されたその先に自分が進む事は叶うだろうか。 見せてはもらえないかと、そう問おうとした所で、先の葡萄酒が話題に上る]
強くはないが、それなりに。 頂ける物は頂いておこう。丁度酔いたい気分だった。
[それが何処かのレティとかいう輩の物だとは知っていたが、悪戯っぽくそう答えて。 白い机の傍にあるコップが目に入れば、勝手に二つ取って一つを彼に差し出した]
お前は酒を飲んで良い歳には見えないがな。 ――まあ、小言は言わないさ。
[どうせ死ぬのだ。健康に気を遣った所で何になる。 医師達は良い顔をしないだろうが、バレなければ良いのだ。バレなければ]
(157) 2014/06/26(Thu) 11時頃
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[そういう考え方もあるのか。
けれどそれは持ち上げられ過ぎているようで、どうにも落ち着かない。残念そうな口調も相まって、返す言葉を無くしてしまう]
僕は……木も花も、そう変わらないと思うよ。
花の蜜がなければ、生きていけない生物だっているだろう?
[言葉の中の羨望には気付かなかったけれど、それに自虐が含まれていることを感じ取って、窘めるように言葉を送る。
少なくとも、自分は彼に救われているのだと、居なければならない存在なのだと、そう伝えたいけれど。
”花”という名目で語られたのであれば、それも難しい。……ずるい人だ]
貴方の為なら時間くらい作るさ。
長い付き合いだろう?それくらいさせてくれ。
[本当なら、彼の願いは何だって叶えてやりたいのだ。
勿論自分の立場や彼の体調を考えれば、それは許されないのだけれど]
――え、
あ、ああ。そうか、もうそんな時間か。
[時計は見ていたから、回診などには重ならない時間にかけた筈だ。すぐに嘘だと分かったけれど、彼が会話を打ち切りたいのなら、続けるつもりもない。何か悪いことを言ったかと、少し不安にはなったが]
つ、次は……君が、かけてくれないか。
……いつでも良いから。
[らしくもなく、懇願めいた言葉を吐き出して。少し上気した頬を自覚すれば、初めて、目の前に彼が居なくて良いと思った。こんな姿、彼に見られたらからかわれるに決まっている。
こんなおこがましい願いを口にするのは、随分と躊躇われたけれど。
どうか了承してくれと、祈る様な気持ちで返事を待った]
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[コップを差し出されれば、自らもそれに習う。二つのグラスがぶつかって、かつりと音を立てた。 葡萄酒を嚥下する彼を見て、初めてだとかいう酒の味はどうだろうと考える。自分の時は、甘いカクテルがやっとだったのだけれど]
……ふ。さて、誰の事だろうな? 私は止めなかっただけだ。
[責任を此方に押し付けてくる言葉に、肩を竦める。続く質問には、眉を寄せて]
知らん。 医者に聞いた方が早いだろう、そういう事は。
[彼が医者嫌いだなんて知らないから、軽い口調でそう言って、自分も葡萄酒を口に運ぶ。安物は正直好かないけれど、此処で上等な酒が飲めると期待する方が馬鹿だ。……今は、飲めれば良い。顎の傷口は痛むが、酔えばそれも分からなくなるだろう。
――そもそも、自分が質問するつもりだったのに、何故こいつに質問されているんだ? そんな理不尽な怒りが湧いて、グラスを持った手でぴし、と。相手を指差す]
(164) 2014/06/26(Thu) 13時頃
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なあ、お前は何であんな事をしたんだ? 何が気に食わなかった?
[”あんな事”とは掲示板を殴りつけていた事で。元はと言えばそれを聞き出す為に慣れない親切をしたのだ。……全く意味は無かったし、結局有耶無耶になってしまったけれど。
好奇心を抑えられない質問に、彼は答えてくれるだろうか。聞き出せないのなら此処に居る意味は無い。グラスの酒を飲みきって、退出の意を伝えるだろう]
(165) 2014/06/26(Thu) 13時頃
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[質問をしたくせに答えは聞かないとばかりに語られる話に、暫し聞き入る。
嗚呼何だ、こいつは生きたいだけかと、ふ、と。呼気を洩らした。 実際の所、ディーンだって大差無いだろう。生きたい。このまま死にたくない。……けれど治らないなら、いっそ。そう思っているだけで。 若い彼は、自分程達観出来ないのだろう。今された説明と、先の姿を重ねれば、多少なりとも同情心が湧いてしまった。
何か言葉をかけようとした所で、彼が立ち上がるのが見えて。ふと視線をそちらに向けたら、蹌踉めいた彼が倒れ込んできた]
(170) 2014/06/26(Thu) 14時半頃
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……はぁ!?
[完全に不意を突かれて、ずるりと体制を崩す。しかも両手は使えない。慌ててグラスを机に置こうとしたが、一歩遅く。(そもそも両手が使えたとして、ディーン腕力ではどうせ支えきれなかったろうが) 結局は支えきれずに、床に転げ落ちる事となる。持ったままだったグラスの中身が宙を舞って、二人に降り注いだ]
い……ったぁ! クソ、お前…!ば、ばかじゃないのかお前!!
[怒りのあまり、初めて酒を飲む相手に、「自分の適量ぐらい把握しておけ!」なんて叫んで。 落ちた時に痛めた背中と、着替えたばかりの病衣についた染みに頭を抱えたくなる。 こんな奴、同情してやるんじゃなかった! 絆されつつあった自分を自覚して、より怒りが増す。背中の痛みが引いたら殴る。絶対に殴ってやる]
お、おい、吐くんじゃないぞ……。
[そんな事を言ってる間に、彼は立ち上がっているだろうか。歩けない程ではない様だし、落ちた衝撃は全てディーンが受けたから、それも可能だろうけれど]
(171) 2014/06/26(Thu) 14時半頃
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[着る物を貸すからと>>172危なっかしく歩き出す彼を戦々恐々と見送る。 かなり酔ったらしい彼は、今にも嘔吐しそうで。別に彼の部屋だからそれ自体は構わない。構わないから、せめて自分が居なくなってからにしてくれ……わりと切実にそう考えた。
それと共に、もし彼が吐けば甲斐甲斐しく世話をしてやる自分が思い浮かんで(口の割に小心者で、具合の悪い人間を放っておけないのだ)ふるりと頭を振る。恐ろしい事を想像してしまった]
安心しろ、耳が付いていたら引き千切るから……。
[本気でそう返して、どうにか体を起こす。落ちた時に反射的に右手を出した様で、包帯にじわりと血が滲んでいた。ああクソ、痛み止めを貰っておけば良かった]
(180) 2014/06/26(Thu) 16時半頃
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……質問? 別に構わないが……おい、聞いているのか?
[持ったままだったグラスを机に置いて、クローゼットへ向かった彼に蹌踉めきながら近付く。 どうやら立とうとしている様だが、上手くいかないらしい]
……いっそ面白いな、お前。 ほら、葡萄酒をぶっかけられたくなかったらシャンとしろ。
[ぺちぺちとその頬を叩いて。一瞬その前髪を掻き分けてやろうかとも思ったが、どうにか思い留まった。 もし彼が明瞭な反応を示さないのであれば、本当にその頭に葡萄酒を注ぐだろう。いつだかの臆病青年にした様に]
(181) 2014/06/26(Thu) 16時半頃
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吐くなよ。 ……それだけは本当に勘弁してくれ。
[放置出来るものならしている。どうしてこうお節介を焼いてしまうのか。中途半端にお人好しな自分が酷く恨めしかった。 座り込む彼の隣りに自分も立て膝をついて座り、深くため息を吐く。いっそ背中でも摩ってやろうかとも思ったが、そんな皮肉が通じる相手かも分からない。止めておこう]
ああ、どうも。
[ジャージを受け取りつつ、そっけない言葉を返し、続いた質問に怪訝そうな視線を向ける]
生憎と、お前が知りたい様な事は知らないだろうよ。 それこそ医者に聞け……だ。
[そもそも彼が何を知りたいのかすら、自分には分からないけれど。どうせディーンの知ってる事なんて微々たるものだ。彼が知らない事を知っているとも思えない]
(187) 2014/06/26(Thu) 19時頃
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ところで……おい、お前もう酒は飲むな。 一生だぞ、約束しろ。
[今、此処で!語気を強めてそう言いつつ、葡萄酒の瓶を彼から離す。
相手には禁酒を強いつつも、自分のグラスに酒を注いで。それを一口飲み、さっきの分と足せば、漸く酔いが回ってきた。 無表情のまま顔を赤らめる姿はそれなりに不気味だったろうが、それを見られなくてももう気にならなくなる。酒の力は偉大だ。……あまり強い方ではないので、そろそろ止めた方が良いのかもしれないけれど]
(188) 2014/06/26(Thu) 19時頃
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