270 食人村忌譚
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PPP イルマは、メモを貼った。
ふゆのひと 2017/12/04(Mon) 06時半頃
[生温い風に四つ足は目を覚ます。
本来なら雪解けもまだ先、鼻先を掠めるのは
生木を凍らせる張り詰めた大気。
だが今、四つ足の鼻を湿らせるのは温度を持った風。
命の気配を湛えているくせに、ぼたぼたと零していく。
にぃ、と嗤った四つ足の口は深く裂けて、
赤い舌が鋭い牙を研ぎ直すように舐め拭いた]
グルルルル……。
[低い唸り声が喉の奥から漏れる。
前後に動く耳は片方しかないが、四方から聴こえる音を
逃すことは無い。
匂いと音を頼りに四つ足は雪に足を沈めながら
慎重に進めていく。
後ろから付いてくる仲間たちも真似ながら進む先に。
遠く遠くに雪に埋もれてある動物が
群れて住まう場所があった。
普段余程腹を空かせない限り、獣は近付かない場所]
[だが離れて動くドングリの様な影が見えて。
四つ足たちは動きを止めた。
そうして風下になるようにゆっくりゆっくり位置を変え、
雪の溜まり場に身を潜め。
茶褐色の毛並みの四つ足が距離を詰める。
どうしてその動物達がここにいるのか。
四つ足には関係なかった。
ただ、腹の膨らんだ柔らかそうな肉の匂いを
運ぶ動物たちに目をぎらつかせ。
道標のように赤い筋を付けた雪の上を、
一拍置いて一気に駆け抜けた]
ガルルルルッッッ!!
[この動物たちは群れになっても牙はなく、
時として火を噴く道具を使うのは知っていた。
だからまずその群れの首領を狙い、顔を潰す。
たちまち統制を失った動物の群れなど
後は好きに食い殺すだけだ。
これだけあれば暫く群れは生き抜いていくだろう。
早速柔らかで栄養満点な
腹の中身から食らい付いて気付く。
この血も肉も、この動物独特のものか。
何処かで口にした覚えがあった]
[何処でだったか。
牙を深紅に染めた獣は少し悩むような素振りを見せたが、
すぐに邪魔が入らぬうちにと、ガツガツと
食い進める。
何一つ変わっていない。
獣が家畜を食い殺しては生きる話**]
[崩れ落ちた、短い刀の刺さった身体
最期の鳴き声に触れて、ススムは眼を閉じる。
望みは叶わなかった。
人として生きる事
獣のように、喰って交わり死ぬだけの一生ではなく
誰ぞの役に立てる事、知識を追いかける事
身体だけでなく、情のある交わりを持つ事
どれ一つ成し遂げぬまま
意識が薄れていく]
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