164 天つ星舞え緋を纏い
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腕が使えんくらいで...手妻を諦めるようなタマ、かよ、お前が。
[焔放った右腕は、灼けて異臭を放つほど、こちらも、とおに使い物にはならぬ。
痛みに滲む脂汗は、すでに隠しようも無く、息も相当にあがっている。
もう片方の腕は、未だ焔を纏っていたが、坊主は、ゆらりと、それを火の玉に戻して宙に放した]
琥珀......終わりに、しようぞ。
[焔は、手妻師へとまた向かう。ゆらゆらと揺れる軌道は、ただ避けられるを嫌うためか、それとも、坊主の決して表には見せぬ内心か*]
─神社近辺─
…… っ、
[思わず後ずさりして、下からの一閃を完全に避ける事は叶わない。
少し掠めただけでも、灼かれるような熱さが過っていく。
それでも土の腕は止まらなかった。
ふたつ、歪な形は確実にその首を捉えて、 く、と締め上げる]
……お前の言う通りだよ。
おれは馬鹿なんだ。
[ぼんやりとそれを眺めながら、口を開く]
馬鹿で、何ひとつまともにできねぇんだから。
それでも仕事くれるひとに、文句言ってちゃだめだろ。
[先の怒鳴り声に籠められた意味はたぶん違うのだろうけど、気が付かなかった。
そもこれが、何処まで届いているかも分からない]
だからおれには、
抗うなんて、選べないんだよ。
[子供らしい我儘も、兄を引き止める言葉も、今抱いている本当の感情も。
全部全部押し込めて隠すのに、闇は丁度良かった。
まぶしい光を厭うたのは、いままでかくしてきたそれをすべて曝け出されてしまいそうな心地がしたから。
役立たずの癖にそんなものを抱いていると知られたら、軽蔑されてしまうと、そう思っていた]
……。
[力の浪費と、流れ続ける血の所為で、少しふらついて。
漸く土は溶けて崩れるけれども]
水を含んだ蝶を纏い、華月斎が地を蹴った刹那、下がろうとした坊主の足は、何かに縫い止められたように止まる]
[動けなかったのか、それとも、動かなかったのか]
ほんに、お前は…
[火の玉に包まれながら、右の掌を打ち込まんとする、その姿に、顔を歪めて]
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