人狼議事


164 天つ星舞え緋を纏い

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[厭わしいその光を、喰らい尽くしたいと願うのは、闇星なのか、それとも、夢幻の焔を烈火と変えた、己自身の闇なのか]

おおうっ!

[気合いを発して踏み込んできた華月斎の扇が目前で翻る。
一度手放した錫杖に手を伸ばし、坊主は、両手でぐるりと回した。
来るのが蝶ならば、再び焼き払うのみ、と、焔の渦を作り出そうとした時、華月斎が拳を引くのを見て、僅かの間、動きが止まる*]


……そこは謝るところなのか。

[転がり、起き上がった直後に飛ばした突っ込みは、さて、届いたか。

伸ばされた手をすり抜けて放った衝撃は狙い違わず、泥を穿ち、その先へと伝わるが]

……なっ……!

[それが齎したもの──崩れた泥が覆い被さってくるのは、予想外の事。
とっさに後ろに飛び退こうとするものの、力放った直後の事、自身の加速も儘ならず。
完全に埋もれるような事態はぎりぎり免れるが、泥の重さと崩れる勢いにその場に膝を突いた]


……ったく、子供の頃じゃあるまいしっ……。

[被った泥を振り落としつつ、口をつくのはぼやくような声。
そういや、昔は泥で遊んだりそれで人形を作るなんて思いもしなかったから、色々と驚いたな、などと過ぎったのは刹那のこと。

とっさに抱え込んで庇った笛は泥に塗れるのは免れていたから、それには安堵しつつ。

片膝突いた姿勢で、息を整える。
駆けるべき刹那を計りつつ、『時』は、力宿して銀に煌く笛を確り、握りなおした。**]


調子悪ぅてこれかいな…!

[嘘か真か、その真意は測れぬが、調子が悪いと言う法泉に呟きを落とす。
引き攣るような笑みが浮かんでいるのには気付かれたかどうか。
直後、火の玉を避けるために扇を翳した後にはその表情もなりを潜めて]

呵々、お互い様かぃ。

[代わりにどこか可笑しげな笑みが浮かんでいた]


[螺旋描く蝶は鋭さは持たずに、扇による風に乗りふわりと法泉を取り囲むように動く。
焼き払われるならば防ぐ術も無い。
けれど、意識がそちらへと向くのならば蝶は役目を終えたも同然]

おおおおぉおぉっ!!

[後方へと引き絞られた左の拳が法泉の右頬を目掛け振り抜かれた。
吸命の力も何も乗せぬ、華月斎の意志だけが込められた純粋なる腕力の一撃**]


嗚呼、紛らわしかったかなと思って。

[突っ込みに、のんびりと言葉を返していられたのもそこまで。
防壁を破った衝撃は右肩を打ち抜いた。
肩だけで無い、痛む全身を懸命に起こしたのは、泥が崩れて落ちた後。
膝付く相手を見ながら、立ち上がる]

……ったぁ……

[力なく垂れた腕からは血が一筋落ちた]


[なお土遊びは好きだったが、そうやって作り上げた何かしらはあまり良い出来だとは言えず。はっきり言って下手糞だった。
出来たものをひとに見せては首を傾げられ、ひっそり凹む繰り返し。
先の泥人形たちの出来から見ても、当時から成長していないのは分かるだろう]

まぁ、遊びだったらよかったんだけどなぁ。

[流れる血はそのままに呟く。
崩れた泥が途端に細かな砂へと変わり、舞い上がった。
丁度煙幕を張るかのように、ふたりの間に白い闇を作り上げる。
そうして、その向こうをじっと見据えて]


[視界が遮られる間を使って、一つ、人形を作った。
丁度己と同じ背格好のそれは、相変わらず不格好で、不細工な出来。
平時で見れば見紛う事など決してないだろう。
それでも今のよく見えない状況ならば、もしくは払われた後の一瞬だけでも、騙されてくれはしないだろうかと考えつつ。
人形から離れた位置にて姿勢を低くする*]


[華月斎の呟きは、坊主には聞き取れなかったが、浮かんだ笑みに気付くと、ひそりと口の端を上げる。
酒が切れているのは、本当だった。だが調子が悪いのは酒のせいばかりではない。明之進から受けた一撃が未だ芯に残っていることと、ともすれば、華月斎との戦いの高揚に乗じて、己の意識を塗りつぶそうとうする闇星に抗い続けているが為]

(誰にも、何にも…)

[呑まれなどするものか、と、坊主の内の闇は吠える。それが光であろうとも、近しい闇の星であろうとも…祓おうとするなら、喰らい尽くす、呑み込もうとするなら逆に呑み込んでみせようと]


[その間にも華月斎は新たな蝶を生み出し、彼の拳の動きに気を取られて、一瞬止めた錫杖を、坊主は慌てて横薙ぎに振った]

[気を散らすための胡蝶の舞いと、半ば気付いていながら焔を放ち、燃えながら尚も輝き踊る、眩しい光を放つ蝶達の向こうにいる男に]

は…!次はどんな手妻を…

[見せるつもりか、と、声をかけようとして]


…なんっ!?

[光をも突き破るような裂帛の気合いと共に、華月斎の渾身込めた拳が迫るを、見た]


[光の力も借りず、闇を恐れる事もなく、ただその揺るがぬ心根に宿る意志だけを乗せて、放たれた一撃……]

ぐ、あっ!

[只人の、力のみであれど、力のみであればこそ、それを避ける術を持たず、坊主は、右頬に届いた拳に左へと殴り飛ばされて、地に倒れた。
錫杖も、その手を離れて、地に転がり、焔を喪う]

き…さ…

[顎が砕けたか、脳が揺れでもしているか、声はすぐには言葉にはならぬ。ただ、ようよう半身起こした坊主の、狐のように細められていた目が、今は大きく見開かれて、唇の端から溢れる血潮を拭いもせずに、燃えるがごとき色を宿して華月斎を睨んだ]


...貴様、という奴、は...

[喘ぐが如き声が絞り出されると同時、ごう、と、空気が鳴り、地に座りこんだままの坊主の周りに、緋色の鬼火がいくつも浮かぶ*]


[のんびりと返された言葉に、妙なところ律儀だよな、と思ったのは、後の攻防に飲まれて言葉にはならず。
立ち上がる様子をじ、と見ながら、息を整える。
流れる紅に過ぎったものは、一時、飲み込んだ]

……ああ、そう、だな。

[呟かれた言葉は、否定するべくもなく、ぽつり、と呟く。
土遊びで作られるものがわからなくて首を傾げたのは、よくあった。
もっとも、与えられる遊び道具に慣れていて、何かを作るという発想がなかった当時の自分には、作ろうとする事それ自体がすごい、と思えていたのだけれど。
多分、ちゃんと言った事は、ない]


[崩れた泥が砂へと変わり、舞い上がる。
広がる白い闇の向こう、影が動いた。

僅かな時間、目を伏せていた事も相まって、それが人形とは思い至らず]

巡る秋風 雲散らし
ひょうと歌えば 空晴れる
渡る秋風 運び行け
先へ先へと 我が願い

[またひとつ、即興歌を紡ぎ力のせ。
秋風の如き軽やかさを持って踏み込み、見えた影へ向け笛を横へと薙ぎ払った。*]


[焔に触れた蝶はちりと燃え、舞い上がりながら燃え尽き行く。
その最中に放たれた拳は、焔の奥に居る法泉へと届いた]

──っ、 つぁ…!

[焼けた肌に負荷がかかり、爛れた箇所に亀裂が入る。
そうでなくとも殴るという行為は自身への反動があるもの。
吹き飛び倒れた法泉への追撃もままならず、痛みに耐えるために再び脇を締めて左腕を引いた]



───くっ、はははは。

化かし合いや言うたやろ。
なんでもかんでも出してくる思ぅなや。

[睨む法泉へ向けるのは出し抜いたことに対する優越の笑み。
尤も、自身を巡る痛みに歪められた笑みではあったが。
法泉のあのような表情を見るのは初めてではないだろうか。
幼い頃は大喧嘩するような切欠は無かったし、彼が里に戻って来てからは言わずもがなだ]

なんや、目ぇ開くんやんか。

[その容姿さえも揶揄ったが、正直優位に立ったとは言い難い。
左手はしばらく動かせはしないだろう。
握られたままの拳が小刻みに震えていた]


(そろそろ、あっちもええやろか)

[法泉が言葉を発せずに居る間、意識を一瞬だけ背後へと向ける。
川へと放った狐狸と人型人形は華月斎の指示通りに半紙を濡らし、狐狸自身も身体に水を含ませていた。
人型人形はその作業の間、狐狸が流れぬように支える役目。
そしてもう一つ、人型人形についた絹糸がある役目を果たす]

わいがなんやって───── げっ。

[ようやく絞り出された法泉の声に意識を戻すと、視界には幼き記憶に残る鬼火が彼の周囲に数多現れていた。
思わず嫌そうな声が漏れ、一歩後退る]

いやーやなぁ、怒ってもぅた?

[軽い声で余裕ぶるも、その額には冷や汗一つ*]


殺しちまったんだから。

[少し離れてそう呟いたのは、笛が薙ぎ払われるより少し前か。
人形は崩れただの泥へ。
昔にどう思われていたなんて知らないまま、ただ通じないなら失敗だからと、作ったものはこうやってすぐに潰してしまっていた]

よ、と。

[そうしてできた隙を狙って、手元に作っていたすこし大きめの泥団子を、光に向かってひょいと投げる。
一見ただの歪な土の塊、投げるのもあまり上手くはない。
かろうじて方角は合っていたが、相手まで届かないかと思われた瞬間、――音を立てて弾ける]


[笑い声をあげる華月斎が痛みを堪えている事は坊主にも見て取れた。さりとて、彼が優位と思わぬように、坊主の方にも余裕は無い。
ただ揶揄う声に、瞳だけは、すう、と細めて]

怒ったか、だと?

[ゆらゆらと燃える鬼火を従えて、ゆっくりと立ち上がる]

怒ってなぞおらんとも…

[にい、と、坊主の唇が弧を描く、溢れた朱を、親指で、ぐい、と拭い、唇に残った血は、ぺろりと舐めとる。その間も視線は真っすぐに華月斎を射抜いたままで]


むしろ感心しておるさ、琥珀。

[低き声音は、熱を帯びる]

よもや、それほど馬鹿者だったとは、わしも想像しておらなんだ。

[光と闇と、異能の力のぶつかり合うその最中、どこまでも「人」で有り続ける男に、「馬鹿者」と揶揄するように言いながら、坊主は燃える鬼火を両手の周りに纏わせる]

だが、そろそろ、引導を渡してしんぜようか。

[ごうごうと、坊主の両手が燃え上がる、それは坊主自身の膚をも灼いている筈だったが、笑み佩いた顔は、その痛みを覆い隠して]


お返しじゃ!

[どん、と足を踏み込んで、華月斎の前へと、身を運ぶ、たとえ、その身に燃える拳が届かずとも]

燃えろや、琥珀ぅっ!

[突き出された腕からは、集められた焔が火の玉となって、華月斎の顔を狙って飛んでいく*]


……っ!?

[笛を一閃する直前、捉えた呟きに息を飲む。
直後に伝わったのは、泥が崩れる気配。
勢い良く踏み込んでいた事もあり、勢い余ってたたらを踏むが、舞の足捌きで強引に持ち直す。
そこに生じるのは、明らかな隙]

……くっ!

[投げられた土の塊は未だ遠い、と。
改めて力込めようとするものの、それは予想外の動きを見せた。
弾け飛んだ土の塊──それは避けるも打ち落とすも往なすも、どれも容易くないと思えたから]

……避けてる暇がないのなら、


進めばいいだけのことっ!

[なればと選ぶは、一気に駆けて距離を詰める事。
弾けた土が身を穿つならばそれはそれ、笛と右腕さえ無事ならば、とそこ以外の防御は捨てる。

庇う右腕以外には相応衝撃も走るが、足は止めぬ。
幼い頃から舞の基礎を叩き込まれ、その技を一通り引き継いだ身は軽い。
その軽さを、秋風の軽やかさに乗せて。
一平太に向けて、真っ直ぐ、駆ける]


……この、馬鹿、がっ!

[少なからぬ苛立ちこめて怒鳴りつつ、右腕を大きく外へと向けて振った後、下から、掬い上げるように跳ね上げる。

それにあわせて大きく孤を描いた笛は、下から上へ跳ね上げる動きの一撃を放つ形となった。*]


[こちらを射抜く視線から目が離せない。
少しでも意識を逸らしてしまえば燃やし尽くされてしまいそうな感覚に陥る。
故に息を飲み、相手の挙動をつぶさに見詰め。
動く機会を見定めようと]

だぁれが馬鹿や。
引導も遠慮しとくでぇ。

[揶揄や宣告に対しても態度は崩さなかったが、隙を見出せずジリジリ後退るだけとなる。
燃え盛る焔が法泉をも苛んでいると見えれば、嫌悪するように眉根を寄せ]

阿呆がっ!!

[声を上げ、相手の踏み込みと同時に後ろへと飛んだ。
そして腰に結わえて撓ませていた絹糸を右腕で巻き取るように手繰り寄せ、右手に握ったままであった千切った半紙を投げつける要領で絹糸を後方から引き寄せた。
その反動で川縁に居た人型人形と、それにしがみ付いて居る狐狸が宙を舞う]


[後方へ飛んだとは言え、避けることが出来たのは法泉の拳の直撃のみ。
放たれた焔は距離をものともせず華月斎へと迫り────]


あ゛あ゛あああああぁあぁ!!


[やむを得ず盾にした左腕を盛大に燃え上がらせた。
投げつけた半紙は蝶に変わることなく地面へと舞い落ちる。
いくらかは燃え盛る左腕の焔に触れ、火の粉と化した]

 っ、 あ  が、 ぐぅうう……!!

[飛び退る間に焔を受けたために着地に失敗し、踵を地面に引っ掛け背から倒れ込む。
爛れ、肉の焼ける異臭が漂い、左腕を抱えるように身体を縮こまらせた]


っ、ぐ、  …っは、 ぁ

……ぁ、 …ふ、ぐ

[荒い呼吸を繰り返し、扇は握ったままに地面に手を突き、俯き加減になりながら身を起こす]

…ん、にゃろ……

手妻、出来んく なった ら、どないして くれる…

[この状態ではもはや左腕は使い物にならない。
狐狸達は近くへと戻ってきたが、どこまで返し切ることが出来るやら。
左腕を垂れさせ、右膝を地面へと突いて法泉を睨み上げた*]


[ぱちんと弾けた土の塊。
だけれども、その向こう側から光は駆けてくる。
驚いたように瞬きして]

……無茶しぃだな。

[眼を細くする。
あのまぶしいものを早く喰うてしまえと、身の内宿す闇が囁いた]

[そうしなければ。
ずっとかくしてきたものが、あの光に暴かれてしまうぞ、と]


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