91 時計館の魔女 ―始―
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あたしには、「聲」を操る力と、「響」を聞く力がある。
それだけでも、幸せ。
できれば、ミッシェルもツェリもペラジーもダーラも…イアンも…
皆生き返らせてほしいよ…
だけど、皆にはいつでも会えるから
「響」で。
ねぇ、みんな!
[明るい、若い聲で]
聞いて聞いてっ、あたし眼が見えるようになったの!
[嬉々として、語った**]
[世界が紅に染まる。]
…… ――、 あ、ぁ。
[痛みに溺れる。喉が渇く。身体が崩れる。魂が朽ちる。
その感触を刻みながら、黒狼はベスパタインに傷を残し、燃え尽きた。
零れる涙も、焔に焼かれ。]
……ソフィ、……
[自分の"勝利条件の推測"には、きっとこれで当てはまる、それでも、それは推測でしかなく。
自分の居ない場所に目の見えない彼女を一人残してしまう、恐怖に震えて。]
[紅い世界に、孤独だった。
理解してくれる誰かなんて、いなかった。
漸く、仲間を見つけて。
彼女たちのためにならば何でも出来ると、思った。
彼女たちを苦しめる人間なら、食べるためでなくとも、自ら牙を向ける程に。
愛していた。]
[鐘の音が響く。
"最後の獣、仲間を求め、愛した女性"。
自分の死を告げるその音と、願いを叶えるために再び姿を現した魔女と。
目を治し、喜ぶソフィアに、少し複雑な顔を向ける。]
……魔女様。
きっと、私の声も聞こえますわよね?
私の身体を、どうか、消していただけませんか?
ソフィアに見られたく、ないの。
[きっとすぐ傍で。
焼死した狼を、彼女の求める美しい世界に残したくなくて、どうか、と告げるその言葉。
受け入れられるかどうかは、狼には、判らない**]
……………シスター…?
[ふっ、と"聲"が聞こえた気がして。
あたりを見回そうとしたその時
赤い蝶が舞い上がる]
…わぁ…!
[きれい…と感嘆の声をあげる
どこかでシスターが笑っていこちらを見ているような気がして
ポケットにある紙切れをそっと取り出した]
[丁寧に折り畳まれた紙を、そっと丁寧に開く
カサ…
そこには、綺麗な女性の字で書かれた、短い文章。
[]
シスター…
[ぽたぽたと小さな水滴が円を作って、紙に模様がつく
だが少女は泣きながらも少し微笑んでいて]
…あたしも、聲でお喋りできて、楽しかった…
また………どこかで、会えたらいいね…!
[他の人には聞こえぬ"聲"で
きっとどこかでシスターやミッシェルが聞いてると信じながら
少女は呟いた。
その目は、まっすぐ前を見ていた。
その後ヤニクと謁見の間を後にしただろう]
[去り際に少しだけ振り替えって、ポツリと
誰にも聞こえぬ聲で]
素敵な物語を、ありがとう
…大好き
[その聲は、仲間に届いただろうか*]
[紅い蝶は舞い上がる。
願いを叶えてくれた魔女に感謝して。
それから――……]
おめでとう、ソフィア。
[世界を目にする仲間に微笑んで。]
ありがとう、ヤニクさんも。
[自分の死を慈しむ妖精の髪をそっと撫でて。]
お待たせしてしまったかしら。
……ミッシェル、エリナー。
[きっと近くにいてくれただろう、狼である彼女の名を呼んで。]
ゲームには負けてしまったけれど、私の願いは……
[紅い世界に、クスリ、小さな微笑みが*零れた*]
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