213 舞鶴草の村
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[さてさて、自分がもしも鼠小僧に盗まれるのなら、一体何を盗まれるだろう? やはり金かと思い当たれば、あゝ金が盗まれたら祖国に帰る事も出来ぬと、それは少し困ったものだと首を捻る。 ――だけれどそれよりも、もっともっと大切なもの。この歳になるまで培ってきた、"知識"と"経験"が盗まれるよりは、ずうっとましではあるけれど。]
……"あの子"は、元気かな。
[そんな事を考えてもいれば、ふと思い出すのはとある顔。自分とよく似た風貌の、自分よりも少し幼い男の子。 自分と揃いの耳飾りを付け、自分の弟だと言い張る其の子を、女は全く知りはしない――其の子の事は、とうの昔に"盗まれて"しまったものだから。
あゝだけれどその時も、"知識"でもなく"経験"でもなく、"家族"を盗まれた事にだけは、信心など欠片も無くとも神に感謝をしたものだ。 あの子は泣いて喚いて自分を責めはしたけれど、"忘れて"しまったのだから仕方が無いじゃあないか、なんて。]
(129) 2015/01/19(Mon) 17時頃
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――……それにしても、この飴のお陰でお腹膨れてしもうたね。 散歩だけして、今日は宿に戻ろうか……、煙草もそろそろ、頂きたいし。
[遠い記憶の一欠片を、また抽斗の中へとしまい込み。 思いの外詰まった腹に、餡蜜はまた次の機会にしようかと。
そうして自分の泊まる宿へと向けて、少うしだけ遠回りの道を選んで女はまたひとつ下駄を鳴らした。]**
(130) 2015/01/19(Mon) 17時頃
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薬売り 芙蓉は、メモを貼った。
2015/01/19(Mon) 17時頃
薬売り 芙蓉は、メモを貼った。
2015/01/19(Mon) 17時頃
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[ゆらり。目の前の銀髪が揺れれば見知った顔。 目立つその髪色もこうして夜の鮮やかな花達に囲まれても其れに劣ることは無く。よくそんな髪色で変な男に目ェ付けられないのか、と時折不思議になるくらいで。]
……“また”かィ? 花の寿命は何とやら、と云うけれど――、
アレはもう少し金になると思っていたのにねェ、 ――勿体無い。ああ。勿体無いよ。
[やれやれ、と首を横に。昨今流行っているらしい梅毒は着々と遊女を食い、その被害は少なくはない。売れる上臈が病に食われると上客に売りつけるのにも躊躇いが生まれるのもまた事実。 さて、どうしたものかと煙管を口に。ふぅ、と吐く煙は何処か寂しげに。]
なに、其れは――金を落とさねェ貧乏人にでも売れば良い話、か。 物欲し気に花を眺める奴らにゃァ、其れでも浮世の土産話くらいにはなるだろうさ。
(131) 2015/01/19(Mon) 17時頃
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[話を聞けば聞くほどに眉を吊り上げる。なんてことだ、情けない、と言いたげに。 病は仕方が無いことだ、惜しいが咎むような事はしない。だが足抜けだ心中だ、と。それらはどうしても理解に苦しんでしまう。 “籠の中の鳥”旅籠の前でのやり取りを思い出す――、彼女らは本当に籠の外へ逃げ出したかったのか。籠の中だけじゃァ、幸せになれなかったのか、と。]
ほう。……鼠の奴は怖いものがないと見た。 嫌ァ、怖い怖い。
なァに、鼠に金を盗み食いされぬように用心するに越したこたァないよ。
(132) 2015/01/19(Mon) 17時頃
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[くすりくすり。ほんのりと肩を竦めては『亀吉に心配されるなんてねェ』と眉を下げ。礼の意味を込めて銀髪を軽く撫でてやる。 中々に良い子ではあるが真面目すぎるように見える所が玉に瑕。たまには息抜きが出来ているといいけれど。余計なお世話か。 せめて今度労いに美味しいものでも、と考えて。]
そうかィ。……今日もお疲れさん。 今度暇を貰えたら声を掛けておくれ、――何かアンタの好きな物でも食べに行くさね。
こんなに細っこィ身体で倒れられちゃァ商売にならないからねェ。
[そう言い残すと礼を告げ、くるり。日が暮れるまでに今日の客を見つけておこうかと目を伏せた。]
(133) 2015/01/19(Mon) 17時頃
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旅籠 おもんは、メモを貼った。
2015/01/19(Mon) 17時頃
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[薬師に手当てしてもらった手を もう片方の手で 大事そうに包みながら 二度目は転ぶまいと ポク ポク 一歩一歩を 確かめるように気を配って歩く
次の上演まではもう数刻ほどあるか お腹がくるくると鳴けば きらきら光る 甘い甘い 餡蜜があたまに浮かぶ
橋を渡り 商店に向かうには 陸区を通る 田畑が広がる 草や土の匂いの濃い そこでは貧しいひとびとが日夜 汗水たらして泥に塗れている。
[生まれた頃から 役者となる運命が約束されていた女形は それらの苦悩を知る機はなくとも 赤を引いた瞼を、物憂げに落としながら]
(134) 2015/01/19(Mon) 17時頃
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鼠小僧が 義賊であって すべてを盗めたって きっと すべてが救えるわけやない
[だから 期待したって仕方がない。
ほう とひとつため息を零した。]
(135) 2015/01/19(Mon) 17時頃
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[陸区を抜ければ 町屋造りが並ぶ商店街
かあるく腹ごなしを と目当ての茶屋に立ち入れば 路上の長椅子に腰掛けて 餡蜜ひとつ と指を立てた。**]
(136) 2015/01/19(Mon) 17時半頃
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役者 鏡花は、メモを貼った。
2015/01/19(Mon) 17時半頃
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ー回想ー [また、という言葉にそういえばこの季節になってから何人が埋められたか、と思い浮かべてみる。…が途中で途方もない数に数えるのを辞めた。]
まあ、その儚い様を好む好き者はいないわけではないからね…。療養を自分で拒んだ結果だ。……ああ、でも姐さんがまだ売れると見るなら、慰み程度だけど薬でも買って来るよ。
[花魁とまでなれば療養で客の前に立たないという選択肢も出来る。それを拒み客を取り続けたからこそ、このような様になっているのだ。…遊女に関しては自業自得と冷めた目で見ているが、世話になっている姐さんが売るというのならその手助けくらいはしよう、と提案をするがどうだろうか。断られたとしても大して気に留めずにこの話を打ち切るだろう。
鼠小僧の話になると、姐さんは取られても取り返しそうだけどねと軽く笑う。髪を撫でられたならば、少し照れくさくなってまた笑うだろう。そして、好きなものでも、という言葉に微笑みながら返すと、去る背を見送った。]
…好きなもの、ならおもん姐さんの手料理がいいなあ。滅多に食べれないからね。…ああ、じゃあ次は良い知らせを。
(137) 2015/01/19(Mon) 17時半頃
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……はあ。そう、ですか。 それなら今度、何処かで拾って抱いてみますよ。
[損をしていると断言>>126されれば、僅かに面食らった様に目を瞬き。"大袈裟だ"、と。笑いこそしないものの、不思議そうに彼を見詰める。……猫とはそんなに良いものなのか]
じゅうは……、拾八? それはまた……ええ。……失礼しました。
[拾八歳>>127とて、薬師からしたら子供と変わりはしない。それでも、見目から受けた印象からは幾分年をとっていたものだから、思わず頓狂な声をあげる。 この国の者の姿形を若い若いとは思っていたけれど、また認識を改めねばならない様だ。彼から見た己が一体幾つに見えるのか。薬師は少し空恐ろしくなる。
……竹刀を持ち歩き、あまつさえ怪我をこさえるなんて、大人とは思えませんよ、なんて。そんな意地の悪い言葉は、残念ながら驚きにかき消されてしまい]
(138) 2015/01/19(Mon) 17時半頃
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[寄せられる眉に気を取られていれば、台の上にばら撒かれる銭に虚を突かれ。去り行く背をただ視線のみで追う。わざわざ出口までお見送り、なんてそんなもてなしまではしていないから]
ええ、また今度。 その時は、貴方は怪我をしていないと良いですね。
[手負いの猫なぞ相手にしたら、きっと無傷ではすまないだろうけれど。まあ、また薬が売れるのなら、それはそれで。 次の商いの事を考えながら、薬師は戸を出て行く彼を見送る]
ライオン、ね。 …………誰か他の人に聞かれたら、嗤われそうだ。
[背丈はそれなりにあるが、がたいが良いわけではない。そんな薬師が"ライオン"だなんて呼ばれているのを見て、他の者はどう思うだろうか。嗚呼、次に会った時には止めるように言わなければ。
急に静かになった店内で、薬師はただ眉を寄せる。 そうして一つため息を吐いたのなら、手慰みに薬でも調合しようと道具を取り出しただろうか*]
(139) 2015/01/19(Mon) 17時半頃
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あ、こんにゃろう。
[こっち指差して笑われりゃあ、俺ぁまたこいつの頭をわっしゃわっしゃと撫でてやった>>118。まったく調子のいい坊主だぜ。]
…やめとけやめとけ。重ぇよ。
[刀を持つ仕事がかっこいい。なんて言われりゃ、思い出すのは自分が前にやってた仕事…。思わずあんなこと言っちまって、すぐ後悔したねぇ。餓鬼に夢見させんのも大人の務めだってのに。 後の春松の言葉に便乗して、俺ぁ話を逸らした。]
へぇ、春松の家は刀鍛冶かい?そりゃあいい。もしそんときゃ頼みにいくよぉ。その名匠によろしく言っといてくれ!
[…まぁ、そんな時なんざ来させる気はねぇが、と刀を受け取りつつ思う>>119。…別に、この坊主を嫌ってたり恨んでたりするわけじゃねぇが…この刀に誓って、もう二度と人は斬らねぇと、決めたからな。]
…はっは!そうかぃ!俺も盗まれるもんなんかねぇわ! しくじってお縄頂戴されない様にきぃつけろよ!
[もちろん坊主が鼠小僧だなんて思っちゃいねぇが、冗談にこんな返しされりゃぁ、面白くなっちまって。ちいせぇ鼠小僧にささやかな忠告だ。]
(140) 2015/01/19(Mon) 18時頃
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[盗まれたら信じる、ね。まぁ俺もそんなところだし、そんなもんだよなぁ、噂ってのは>>120。 そんなところで坊主が店主のところへいったと思ったら首を捻りながら戻ってきた。かっか、こんな坊主にゃ盗みなんざ到底できやしねぇやな。 なんでだろうなぁなんて呟きを俺に投げかけてきたが、もちろん俺の答えは「さぁな」ってぇとこだ。]
おう。お前さんもきぃつけろよ!春松!
[元気よく出て行った坊主の背中にそんな言葉を投げつけて。俺もそろそろ行こうかねと。酒をあおって団子屋を出た。]
(141) 2015/01/19(Mon) 18時頃
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喧嘩屋 辰次は、メモを貼った。
2015/01/19(Mon) 18時頃
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― 伍区 ―
[日が落ちる迄に、門付けをもう二、三。 飯屋の戸口で渡された小さな握り飯をちまりちまりと齧りながら、品も何も在ったものじゃあないだろうけれど とつとつと杖を鳴らして道を歩く。
群れを離れた瞽女には、行き付けの宿屋などありはしない。 とは云ったところで、何時も何時も宿を取ったのでは、そう多くもない日銭はすぐに底が見える。 指先に触れた銀貨の感触を思い返しては 忌々しげに首を振った。]
…あァ、やだやだ。
[自分も大概未練がましくて堪らないと、自嘲じみて溜めた息を吐き捨て。 初めて街を訪れた頃、気の良い人間に叩き込まれた街の造りを反芻しながら、とつとつ、とつとつ と。]
陸区はどちらだったか ね。 宿場が肆区、…此処が伍か。
[小さな声でぽつぽつと呟いては、のらりくらり歩を進める。 求めるのは、雨風を凌げる寺か堂か。主が居ないのならば尚、良い。 風に吹かれて軽く持ち上がった笠を引き下げて 目的地に辿り着くには、もう暫く時間が掛かるだろうけれど。*]
(142) 2015/01/19(Mon) 18時半頃
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琴弾き 志乃は、メモを貼った。
2015/01/19(Mon) 18時半頃
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― 肆区・商店街大通り ―
[街を歩けば聞こえる囁き声は決して自分にあるものではないと考えて 聞こえる女の声。その全てが耳障りに変わりなかった]
粥が食いたいものだ
[ふと、劇場へ歩いている時にそんな事を思う。団子4本食べても歩けば腹が減る。そう考えていれば、聞こえる自分の名前>>111 丁度すれ違い様だっただろうか、別段お忍びで居るわけでも無いため不思議ではなかったが、その声に興味を持ち振り返るも姿を確認する事が出来ず]
…誰だ
[ふと呟いてみるが、その声は喧騒にかき消されてしまう いつも自分に向けられるものとは別の声色。それにまた興味を持ったりもするが、姿が見えぬのなら致し方無し]
良い声だ …だが、それだけだ
[相変わらず“怖い” と、一言呟いて、肆区を後にしたか**]
(143) 2015/01/19(Mon) 20時半頃
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懐刀 朧は、メモを貼った。
2015/01/19(Mon) 20時半頃
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