208 【突発誰歓】ーClan de Sangー【R18薔薇】
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さあ……百年よりは長いし千年よりは短い。
[吸血鬼は衣服の中に手を突っ込むと札束を取り出し、それも床に投げ捨てた。]
(312) 2014/12/29(Mon) 21時半頃
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…………。
[吸血鬼の腕の血はもう止まっていた。 チョウスケの礼にも答えず、吸血鬼はカツカツと靴音を鳴らして厨房を去った。どうやら自室へと向かうようだ。*]
(318) 2014/12/29(Mon) 22時頃
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ー吸血鬼の部屋ー
[吸血鬼の鳴らした覚えの無い鈴の音が鳴り響く。>>320 自分は何故今日は夕食を作らないのだろう、と吸血鬼は思う。
別に一食くらい夕食を抜かしたって、 一回くらい薬を抜かしたって我が子達は死にはしない。
我が子達…… 私の孤独を埋めてくれる我が子達。
あの子たちと共に生きるようになってから、 日々は輝き出すようになった。]
(325) 2014/12/29(Mon) 23時頃
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[最初に自分が手を差し出したあの子。
あの子と出会ってから、それまでの孤独とは違う時間が流れるようになった。
あの子が人間だと知り、いつかその日々が終わりを告げてしまうことを知った時、私はそれに抗う術を考えた。
その結論が吸血鬼である自分の血を少しずつ取り込ませて彼を不老にすること。
ついでに彼の記憶を失くさせて吸血鬼だと思い込ませれば、
彼はきっと自分と永遠に一緒にいてくれるだろうと思った。
だからそうした。]
[それから、自分とあの子が安心して暮らせる場所を
探して世界中のありとあらゆる場所に行った。
途中訪れた島国は閉鎖的な所でとてもじゃないが
吸血鬼の隠れ住むような余地はなかったが、我が子が増えた。
いつしか身を落ち着ける場所を見つけ、
「クラン・ドゥ・サン」と名付け、
仕事を任せられる執事も見繕い、
平穏で安寧な日々を過ごし……………]
[見上げた姿は、想像していたものよりずっと優しいものだった。
差し出された手は、冷ややかなものではなかった。
ただただ、寂しげに見えて、その手を握り返した時。
孤独な紅い眸に、仄かに揺れる灯の見えた気がした]
『いい子だ』
[何百回、それとも何千回となく繰り返し耳にした、
何時もの声。
永い間、その声の届く場所が己の居場所だった]
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ー部屋ー
[吸血鬼は机に突っ伏しているが、泣いているわけではない。吸血鬼は涙を流す術を知らない。
>>331戸が開いて、吸血鬼は顔を上げた。]
君も、いなくなるのか?
[吸血鬼は最も長くの時を過ごしてきた我が子に尋ねた。]
(334) 2014/12/30(Tue) 00時頃
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悲しいよ。
[口にしてから、迫害される悲しみとはまた違うなと吸血鬼は思った。]
君がいなくなったら私は悲しくなる。 チョウスケとジェレミーがな、出て行ってしまった。
[吸血鬼は理由までは説明しない。
吸血鬼は、涙も流さずにただ眉を下げて悲しげな表情を作るだけ。]
(337) 2014/12/30(Tue) 00時半頃
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独りには、なりたくない。
[ぽつり。]
(338) 2014/12/30(Tue) 00時半頃
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からくり……そうだ。君も知っていたか。
[ゆるりと目を伏せる。]
いくら血を注ぎ続けても、 人間は人間のまま。 私と同じ存在になることはなかった……。
[我が子の記憶を朧げにしようと思ったのは、或いは自分自身をも騙す為だろうか。 彼らと自分とは同じ存在だと。]
あちらで生きていけない……。 だから、ここを出ていかないと?
私と一緒にいてくれるのか……?
[彼の意思を近くで確認したくて、吸血鬼は椅子から立ち上がり彼に寄る。 そして或る日のように、彼に向かって手を差し伸ばした。]
(343) 2014/12/30(Tue) 00時半頃
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……そうか。
[吸血鬼はただ、悲しそうな顔をした。 握り返されることのなかった手に。*]
(350) 2014/12/30(Tue) 01時頃
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[かつて、その本を読んだ時、似たような話もあるものだと思った。
だから、きっとありふれた事だったのだろう、下働きの者を酷く扱う事も。
物語と異なる点は、幾つもある。
例えば子供は奉公にでたのではなく、物心ついた時から既にその地位にあったこと。
追い出されたのではなく、酷く傷を負った夜、支え合うように“友人”と二人、月夜に駆け出したこと。
月夜の荒野で地を潤したのは、その一人の血液だということ。
抜け出した一人は、今も尚生き延びているということ。
酷く飢え、渇いた身体にその血液はよく沁みた。
美味だと、その時確かに思ったのだ。]
その後に、主と会って、吸血鬼という存在を知った。
……それで、その衝動が抑えられないならと思って、薬を飲んで、きて。
[けれど、自分が本当に怖かったのは、血を口にすることではなく、生き延びる為に友すらも利用する自分の浅ましさなのではないか。
掌で、顔を覆う。
不思議なもので、言葉にするとそれらは連鎖的に途切れずに連なっていく。
そこで一度、言葉を切る。]
[男は隣に座り、スケッチブックを開く。
彼の口から落とされていくのは、『怖い夢』の話だろうか。
まるで民話にでもありそうな物語。
赤い血を啜った、働き者の少年の行く末。
“友人”を糧にした、吸血鬼の話。
話を聞いている間、男は声を出さなかった。
真っ白なスケッチブックの中にペンを走らせていく。
ただ、時折隣に視線を向けては
彼がどんな顔をしているのかを、見つめて。]
[止まることなく語られた話。
やがて、顔が覆われて言葉は途切れる。
同じように一度手を止めてペンを置いた。
無意識に手はのびる。
肩へと伸ばし、軽く抱き寄せようと。]
[───人を殺した記憶。]
…………。
[少しずつ、ゆっくりと、靄のヴェールが外れていく。
生きるために友人を手にかけたのであろう彼の話を聞きながら。
思い出すのは、男が『誰か』を殺めた理由。]
[語る表情には、笑み一つない。
彷徨う視線の先は、自らの言葉を追う。
恐怖よりも、嫌悪の勝る記憶。
けれど、その嫌悪を恐るならば、それすらも“怖い”夢となるのだろうか。
指越しの視線は、ペンの手の止まる方を見る。
伸ばされた指を拒むことなく、抱き寄せられるままに身体を預けた。]
……本当は、もっと沢山、覚えていないといけないんだと、思う。
けど、……もう、あいつの顔も、思い出せない。
[年の頃も、性別すらも、
恐怖ばかりが勝ってしまい、それ以上を覚えていられない。]
今話せるのは、ここまで。
……今晩も、薬、抜けそうなら、抜いてみるから。
朝になってまた何か思い出したら、書いて貰えるか?
[最後にそう付け加えれば、微かに笑う。]
[自らの記憶に向き合おう、自らを記録していこう。
そう思った切欠は、何だったか。
例えば、覚えていられない愛の言葉だとか。
例えば、温かな食事の味の良さだとか。
例えば、書き留められない旋律だとか。
きっと、そんな些細の事の積み重ね。]
……うん。
[笑みもなく落とされていく言葉に、小さく頷いた。
体重を預けるようにする体を抱き寄せて。
本当なら強く抱き締めてしまいたかった。
ぐっと、堪えて肩をとんとんとあやすように叩く。]
そか。
……、…。
[今己は、酷いことを口にしようとしている。]
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