194 花籠遊里
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[何故でしょう、僕を呼ぶベルさまの声はどこか少しだけ寂しげな色を帯びました>>218 僕がそう感じただけかも知れません、ですがそんな風に思ったのです。
止まったように思う時間も、緩やかながら進んでいます。 その流れに取り残されてしまったような、そんなお顔をなされるから 僕は背に回していた細い指先で、彼をそうっと抱き寄せるのです。]
僕は、此処に、咲いております。 何時も、いつまでも。 何度でも。
[嬌声溢れる狭間にて、そんなことを告げました。 僕はいつでも此処にいて、いつでもあなたさまを待っていると。
忘れることなど、ありはしないと。]
(220) 2014/09/16(Tue) 19時頃
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ベルさまの、ために──…っく、ぁ!
[指は増やされ、始めはきゅううときつく締め上げていたでしょう>>219 次第に堪えきれぬ喘ぎが、囀りとなって響きます。 裡を掻這う指先が、時折見せる急いた動きも 僕の胸を震えさせ、甘い毒で犯していくのです。
「そろそろいいかい?」という、優しげな問いが届きます。 こんな風に優しくしてくださる御方はそうそうとはおりません。 僕はこくりと小さな肯きを返して見つめ、ふわと微笑んだのでございます。
ベルさまの、張り詰められたその熱に触れて 受け入れる場所へと、導きながら。]
(221) 2014/09/16(Tue) 19時頃
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[抱き寄せた体温は、小さな問いを溢します>>222 その言葉は、きっと、きっと とても大切な問いなのだと思いました。 僕が応えていいようなことかどうかは判りませんでしたが 僕が答えなければならない、そんな気がしておりました。]
忘れません。 たった一夜でも、僕を買って、下さったの…ですから。
[一度だけ、彼の身体をぎゅうと強く抱き締めました。 お許しくださいますでしょうか。 寂しげなベルさまを慰めたい、そんな気持ちと同時に どうしても、僕の今の表情だけは見ないでいてほしかったのでございます。
微笑んでさしあげたかったのに。 きっとうまく、微笑むことができなかったからです。
胸の裡、呪詛がそっと過りました。]
(225) 2014/09/16(Tue) 21時頃
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‘Tis better to have loved and lost
than never to have loved at all.
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[やがてすぐに、身体を離します。 金の毒持つ姿へと、微笑みの仮面被るベルさま。 同じよう、僕も満開の櫻のふりを致します。
いつでも『しあわせ』です、と 微笑み答える、泣かない櫻になるのです。]
ベルさまが逢いに来てくださるなら、とても嬉しいです。 たくさん、たくさんお喋りしましょう。
[そして、夜を求められるのなら。 毎宵甘い蜜を、花を、溢れさせましょう。 ベルさまが『しあわせ』だと、謂ってくださるように。]
(226) 2014/09/16(Tue) 21時半頃
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[そんな寂しくも穏やかなやり取りも、やがて余裕などないものに変わるでしょう。 甘い毒の針が抜け>>224 隙間を埋めるようにと綻んだ蕾が熱を求める。]
一つ、に──…ん、ぁあっ!
[肯こうとしたのです。 刺される針の圧迫感で、身体は逆に撓りました。 痛みがあるわけではありません。 甘く甘い毒に酔いしれ、唇からは堪えることのない声が溢れます。 高い声は甘さを滲ませたまま、地下牢の中を囀ずるでしょう。]
(227) 2014/09/16(Tue) 21時半頃
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[この感情をどう表せばいいのか。
腹の辺りに渦巻くこれを。
怒りか、呆れか、それとも悲しみか、羞恥か。
『花』として誇りを持ち、美しく咲き誇れ。
俺を育てた花は口癖のように言っていた。
どんな辱めを受けようとも、どのような思いをしても蝶を惑わせる花であれ。
その言葉を道標に、今まで歩んできたはずなのに。]
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はい、約束です。
[後で、指きりげんまんでもいたしましょうか>>236 僕がベルさまを忘れてしまったなら、針千本残らず飲み干しましょう。
こうして、身体を重ね、情を繋ぎ。 いずれ訪れる結末までは、咲き誇る花であり続けるのです。
ベルさまが何かを謂いかけてらっしゃる気がしました。 ですが、唇は動きませんでした。 だから、僕も言の葉には致しません。
暖かな櫻の『花』が『しあわせ』そうに、笑むのです。]
(243) 2014/09/16(Tue) 23時頃
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ン、くっ… はぁ、っ あ
[愛おしいまぐわいの中、滲む寂しさを胸の裡に感じながら 彼が零す吐息に息を上げては、浅い呼吸を共に二人で繰り返しました。 圧し進められていく熱はやがて ベルさまが僕の名前を呼ぶと同じ頃に、締め付ける襞の奥へと辿り着いたのでございます。]
ル、さま… ベルさ …まっ
[きゅう、きゅうとそこは蠢いていたでしょう。 繋がりあう喜びに、涙の代わりに汗が伝い 噎せ返るような櫻の香を、纏いて蝶を誘うのです。
宣言通りに>>239繋がる部分が引き抜かれかけ 行かないで、いかないでと強請るように 欲を示すベルさまを、締め付け引きとめようとするのでした。
腕は自然と、彼の背中へと回ります。 肩口に額を押し付けてしまうこと、数度。 僕の中にある熱を感じながら、名前を何度も呼ぶのでございます。]
(244) 2014/09/16(Tue) 23時頃
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――……
[ごめんなさい、朧
と。蝶の言葉により友の貌を伝える際に小さく告げる
命によりその怜悧な顔を穢し、なおも言葉で責めねばならぬ事への謝罪と、それでも目を逸らせぬことへの懺悔であった]
看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 00時頃
看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 00時頃
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[「大仰な、」>>256と謂われてしまいました。 ですが、僕は本当にお約束するのです。 それはきっと、しっかりベルさまにも伝わっておりました。 表情が、空気が、それを物語っておりましたから 僕は安心して、微笑むことが出来たのです。
お優しい、お美しい、ベルさま。
そんな御方と夜を共に出来ることが『しあわせ』でなくて 一体何を『しあわせ』と謳いましょう。 誠の『しあわせ』を、彼が、感じてくれていたらと僕は思うばかりなのでありました。
叫ぶほどの声が、耳に 熱く猛った心が、身体に 突き刺さる矢の如く、切なさを増していくのでございます。]
ベル、… ──ベルさま、あ、あっ!
[僕だけだなんて、あゝなんと甘い蜜なのでしょう。 叫ばれる愛の苦しみに、僕は嬌声を上げました。]
(261) 2014/09/17(Wed) 00時半頃
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ん、ぅ …っ!
[隙間も無いほどに埋め尽くされた距離。 伸ばした手は、ベルさまの美しい髪を掻き抱きました。 小さな身体は律動に激しく揺さぶられますが 不釣合いにも壊れるほど柔でないのは、長年『花』として咲いてきた証でしょう。
奥まで穿たれ、櫻の芽を抉る熱に 一際高く、掠れた囀りが零れ落ちます。]
───あぁッ!!
[ベルさまの身体に縋りつくようにして。 二人の間に揺れていた櫻の枝は 情熱的で、どこか寂しげな今宵に
蜂蜜のように甘い精を飛沫させたのでございます。]
(262) 2014/09/17(Wed) 00時半頃
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───べる …さま。
[果ててしまったのは、先だったでしょうか。 きゅうと彼自身を締め付けながらも、蕩けた射干玉が見詰め上げ
愛しげに、櫻の香纏いて。 彼の名を呼んだのでございます。]
(263) 2014/09/17(Wed) 01時頃
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[ベルさまの熱が、色が、香が、僕を染め上げていく感覚は 裡側に、零すことなく注がれた白濁としたものだったでしょう>>270 感じれば僕の身体はふるりと震えます。 甘すぎるほどの余韻を残し、名を呼べば呼び返され>>271 本当におとぎばなしの「おひめさま」と「おうじさま」のようでありました。
荒い息。滴る汗。快楽の残滓。
そういう物に僕も、 ただ素直に柔らかく微笑みました。
頬を撫でられれば どこかくすぐったささえ、覚えてしまう気がいたします。 僕は甘えるように身を寄せ、汗伝うベルさまの頬へと頬摺りをしました。 僕の指に金糸が絡まっていたのなら きっとベルさまの指にも、射干玉色の糸がひとひら絡んでいたことでしょう。]
(278) 2014/09/17(Wed) 01時半頃
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───『しあわせ』、ですね?
[例えそれが、仮初のものであったとしても。 例えそれが、幻のものであったとしても。
今宵の間は、誠であるのです。
ほんとうに『しあわせ』そうに 僕は彼の黒子へと、そっと接吻けを落としました**]
(279) 2014/09/17(Wed) 01時半頃
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[こんな、ゆめものがたりが誠であれば
所謂『しあわせ』というものなのでしょう。
ですが、なりません。
『特別』になることも
『特別』をもつことも
『花』には許されざるべきことなのです。]
[僕たちに許されているのは、ただひとつ。
『花』として咲く。
ただ、それだけなのでございます。]
[――朧、朧
声ならぬ声で彼を呼ぶ
そんな顔をしないでと虚空を見つめる彼の頬から白を拭う
友にだけは、こんなに泣き濡れた姿を見せたくなかった
失望されたくないんだ、と]
看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 02時頃
愛しい愛しい吾が子達。
お勤め、ご苦労様。
夢を売り売り、躯を売って。
せっせと借金返しておくれ。
いやいや、返せなくとも構わないんだよ。
花咲く内は、私が愛でていてあげるからね?
[どうせいつかは枯れる花なれば。
月下の元 夢に揺蕩うことは許されよう。
押し潰した筈の芽は 結局は小さく蕾を芽吹かせた。
けれども孰れ摘み取られてしまうのだから。
蜜濃くなるその一瞬だけでも。
『花』として、『蝶』を望む]
[花しかしらぬ男の一面。
笑い、嗤っては、今宵の対価をばら撒いていく。
地下牢に舞うのは紙幣の花吹雪。
花弁の枚数が、今夜支払われた対価。
さあ拾えと、男は花々を見下した。
歪んだ唇に滲むのは、狂気の沙汰であっただろう。]
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