208 【突発誰歓】ーClan de Sangー【R18薔薇】
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[止まることなく語られた話。
やがて、顔が覆われて言葉は途切れる。
同じように一度手を止めてペンを置いた。
無意識に手はのびる。
肩へと伸ばし、軽く抱き寄せようと。]
[───人を殺した記憶。]
…………。
[少しずつ、ゆっくりと、靄のヴェールが外れていく。
生きるために友人を手にかけたのであろう彼の話を聞きながら。
思い出すのは、男が『誰か』を殺めた理由。]
[語る表情には、笑み一つない。
彷徨う視線の先は、自らの言葉を追う。
恐怖よりも、嫌悪の勝る記憶。
けれど、その嫌悪を恐るならば、それすらも“怖い”夢となるのだろうか。
指越しの視線は、ペンの手の止まる方を見る。
伸ばされた指を拒むことなく、抱き寄せられるままに身体を預けた。]
……本当は、もっと沢山、覚えていないといけないんだと、思う。
けど、……もう、あいつの顔も、思い出せない。
[年の頃も、性別すらも、
恐怖ばかりが勝ってしまい、それ以上を覚えていられない。]
今話せるのは、ここまで。
……今晩も、薬、抜けそうなら、抜いてみるから。
朝になってまた何か思い出したら、書いて貰えるか?
[最後にそう付け加えれば、微かに笑う。]
[自らの記憶に向き合おう、自らを記録していこう。
そう思った切欠は、何だったか。
例えば、覚えていられない愛の言葉だとか。
例えば、温かな食事の味の良さだとか。
例えば、書き留められない旋律だとか。
きっと、そんな些細の事の積み重ね。]
……うん。
[笑みもなく落とされていく言葉に、小さく頷いた。
体重を預けるようにする体を抱き寄せて。
本当なら強く抱き締めてしまいたかった。
ぐっと、堪えて肩をとんとんとあやすように叩く。]
そか。
……、…。
[今己は、酷いことを口にしようとしている。]
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