231 獣ノ國 - under the ground -
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[強く握られた手を引かれて、走る。走る。 頷いたのに、その手を取ったのに、どこまでも優柔不断な私は、後ろ髪を引かれて。 決してついていくのが苦になるような速度ではないのに、フィリップに引っ張られるように、走る。
わかっている。一番最悪のシナリオは、ジリヤが殺される上に、私たちの脱出も失敗に終わることで。 一番いけないのは、ぐずぐずと優柔不断に何も選べずにいることだ。 そして、このまま私がぐずぐずしていては、フィリップのことも、巻き込んでしまう。
あふれる涙はそのままに、私は歯を食いしばって、今度こそ覚悟を決めた。 一度強く目を瞑って、ためらいを振り捨てるように速度を上げる。 フィリップに追いついて、追い越して、 でも、繋いだ手は、絶対に離さない**]
(34) 2015/07/16(Thu) 20時半頃
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ああ、あぁ、わかってるよ。そうだな、ダメなんてありえねぇ。
…抗ってりゃ、いつかは出れる。だろ?
だから、先に出て待っといてくれよ。アタシは一人で出れるから。
[嘘を重ねる。目の前の人間に言っていることと、まるでチグハグな事を並べる。ジリヤは、この空の下で、生きている。そういう事にして、傷つけたくない。そんな臆病な、ハリネズミ。ちょうどいい距離を、見つけられなかった]
[ かけられた言葉に こころは泣いているのに
笑みがこぼれる。
たぶん、僕の中の針鼠が
変わらず彼女であり続けてくれたからだとおもう。
庭で少しだけなでた手の感触を思い出して
僕はそれを抱え込むように 刻むように胸に当てて
ぼくは彼女の声に 無言の別れを告げた。]
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[ 優しい梟は、ずっとずっと泣いていて 走りながら振り返るたびに、じくりと胸が痛んで詰まる。 けれど 立ち止まる訳にはいかないから 僕はいっそう強く 彼女の手を握って。
振り絞るように覚悟を決めた彼女の目は、 いつもと変わらない眼のはずなのに 決意と涙を乗せて、黒水晶のように光って見えた。 いつの間にか、僕のほうが彼女に助けられている。
知っている、暖炉までの風景。 知らない、ここから先の監獄。
暖炉の闇の中へ我先にと、兄が梯子を無視して飛んでゆく。 先に致命的な脅威があれば きっと教えてくれるだろう。]
……先に行くから、 追いかけてきて。
[ ずっと繋いでいた手を離して 僕は暗闇の中に姿を消した。]
(35) 2015/07/16(Thu) 21時頃
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[ ひとつ ひとつ 梯子を登るたびに変わってゆく 空気のにおい。
どこか甘い、脳を溶かすようなあの香りは 長く身を置きすぎて麻痺していたけど 「外のにおい」は明らかに 僕の記憶を蘇らせる。
どれだけ登っただろう、目指す先が白んで その先に兄さんが、 赤い、鸚哥が みえて。]
『 フィル!フィル! コッチ! 』
[ 大扉の前、羽ばたいているのは――――
( にいさん )
知っている、今迄だってずっとそう呼んできた ”兄さん” にいさん。 なんだろう、視界が歪んで わけもわからないまま 僕は 明に縋って泣いた時みたいに、ぼろっぼろに泣いていた。]
(36) 2015/07/16(Thu) 21時頃
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[ 彼女が現実に引き戻してくれるまで、
多分僕は
赤い鸚哥を見上げたまま呆然と立ち尽くしている。
そんな僕等を迎える者はあっただろうか。 行く道を塞ぐものは。
外の世界の足音は、此処まで届いていただろうか。 **]
(37) 2015/07/16(Thu) 21時頃
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私たち、獣がここを出られる日が来るなんて、思っていなかったわよね。
[私は言う。出られる日が来るなんて思っていない。けれど、願うことは許されるはずだと。
きっと来ないと思いながら、ここを出る日を夢見続けた日々]
鮫の彼だけじゃない。私たちもここを出られるって、証明してみせるから。
待ってるから。
必ず、来るのよ。
[女医の命を奪おうとして、殺されるかもしれないジリヤ。
足を挫いていて、今は逃げられないというジリヤ。
彼女が逃げられる未来なんて、私にはわからなくて。
けれど私には、願うことは許されるはずだ。
信じることは、許されるはずだ。
抗い続けた、そしてこれからも抗い続けるジリヤになら、できるはずだと]
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[走って、走って、たどり着いた未知の領域>>35。 一足先に、と飛んでいくフィリップの兄を見上げようとしても、その行き先は、闇に包まれていて]
わかったわ。
[先に行く、というフィリップに頷いて、繋いでいた手を離す。 どっちみち、手を繋いで梯子を上ることはできないけれど、先に行ってと言われていたら多分躊躇っていたと思う。 それは、スカートの中がとかそういう問題ではなくて、私を逃がすことを最優先するあまり、囮になろうとか冗談じゃないことを考えるのではないかという不安が拭いきれないからだ。 闇を睨むようにして、私は未知の領域へと、外の世界へと、梯子を登っていく。 先の見えない闇の中。けれどこの前にフィリップがいると知っているから、怖くはなかった。 いつしか、私の涙は止まっていて]
(38) 2015/07/16(Thu) 22時頃
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[やがて、目指す先に光が差す>>36。 道しるべのように羽ばたく鸚哥のシルエットが見えて。先を行くフィリップの背中も見えて。 道案内はありがたいけれど、少し声の大きさに不安になったりしたのだけれど]
……フィリップ?
[ようやく追いついたフィリップの背中が、なんだか呆然としているように見えたから>>37。 名前を呼んで、顔を覗き込んで、そして私は息を飲む。 フィリップが、泣いていたから]
フィリップ……。
[その涙の理由は、私にはわからない。 けれど、無性に胸が痛くなって。 泣かないで、と囁いて、私はフィリップの背中をそっと撫でた]
(39) 2015/07/16(Thu) 22時頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/16(Thu) 22時頃
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― 第三棟 ―
[廊下に出れば、 鸚哥の声が聞こえてくる。 あゝ、彼らがきたな、と思った。]
[黒い睫を伏せて一度、息を吐き
行く二羽の鳥。夫婦星のようにも見える彼ら。 少し遠いそれらの姿を目に焼き付けて
胸に も一つ、呼吸を通すと、 少し重い袂に意識をやった。]
( ………… )
(40) 2015/07/16(Thu) 23時頃
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[ ”兄のほうが唄が上手いから” 僕はいらない ”兄とおなじくらい上手かったら” 僕も居られた? さんにんいっしょに、居られたのかな。
……ねえ、にいさん。
靄の中、兄の背中と赤い鸚哥が並んでいた。]
(41) 2015/07/17(Fri) 00時頃
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[ 遠くから僕を呼ぶ声>>39がして 目の前に、兄と暮らした森の薄闇が広がって ぼやけた視界がようやく像を結んでゆく。]
…………あ、 ぁ………
[ 瑠璃の中の井戸のような虹彩が、ぎゅ、と回って ]
おいてかないで……。
[ 混濁した記憶のまま、子供のような口調で 背中を撫でてくれるひとの前で膝を折る。
しゃがみこんだ僕のむこう、夜目の利く梟の目には 薄暗い廊下の中に彼>>40の姿は見えただろうか。
”普段は”指紋が無ければ開かぬという扉は 閉じているのか、開いているのか。 管理者ならば 知っているだろう。*]
(42) 2015/07/17(Fri) 00時頃
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[開閉に認証が必要な扉は 閉まっていなければ用を為さない。 故にその時>>42もまた、二人の前に在る大扉は 行く手を阻むように塞がっていただろう。
彼は迷わなかった。
廊下から警備の人間が 獣人達の方へ向かうのが見えた。
地を蹴る。 左袂から出した小刀のさやを抜いた。
「すまんな」
警備員の耳元で囁いた声は聞こえたのかどうか。 興味もなかった。]
(43) 2015/07/17(Fri) 00時半頃
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ああ、必ず…
[一度、嘘をついたなら、エゴで、嘘をついたなら、せめて…突き通す、責任がある]
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[腹を刺されうめき声を上げる警備員から刀を抜けば 払ったはずの血の馨がまた着物に滲む。
彼は踵を返し、大扉前にて しゃがみこんだフィリップを見下ろした。]
なんてざまだ。 ……姫君の手を引くなら 最後まで引いたらどうかな。
[淡々とそれだけ云って、 彼は大扉のセンサーに指で触れる。 「外」の匂いがふわりと満ちた。
梟はどうしていただろうか。 その黒曜のうつくしき瞳を見たならば。 「はやくいきなさい」と静かに促しただろう。]
(44) 2015/07/17(Fri) 00時半頃
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[どうか、どうか。 彼らがオルフェウスのように振り返ることなく 地上へ向かってほしいと ――そう、願うばかり*]
(45) 2015/07/17(Fri) 00時半頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/17(Fri) 00時半頃
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大丈夫よ。
[フィリップは、何かに脅えているように私には見えて。 私は努めて穏やかな口調で、語りかける。 膝を折ったフィリップ>>42の頭を、そっと撫でた]
私は、あなたを置いてどこにも行かないわ。
[むしろあなたが私のために、自ら置き去りにならないかの方を私は心配しているくらいなのに。 その視界の端、月見の姿が見えても>>40、今はフィリップを落ち着かせることの方が大切で。 緊張すれば、きっとそれはフィリップに伝わってしまう。だから私は気づかぬ振りを決め込んで、静かにフィリップの頭を撫で続けた]
(46) 2015/07/17(Fri) 01時頃
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[ 彼女の声>>46が僕を此処に呼び戻す。 ぐるぐる廻る記憶と、近寄る警備員の足音に 僕の焦りは増していく。
はやく、はやく、いうことを聞いて 僕の両脚。]
………っは、
[ 何のために僕は彼女からジリヤを奪ったのか この翼を空に届けるためだろう?
折った膝が 硬い鱗のような脚が 立ち上がろうと硬い床で無機質な音を立てるのと、
近寄る管理者の足音が聞こえて来たのは ほぼ、同時。
夜を斬るように黒衣が舞う。 誰かに向かって放たれた言葉>>43は 氷のような温度で それに混ざる血の芳香が、重い空気をさらに重くした。]
(47) 2015/07/17(Fri) 01時半頃
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[ 目の前の地面に赤い池が現れて その中で蹲る見知らぬ「人間」。
どうして、とマトモな脳があれば問うただろうが 見上げた血の馨を纏った管理者に 目をそらすように 俯いて。
そっぽを向いた僕の頬を、明らかな外の風が撫でれば 急に開く扉へ目を向けて 扉の傍ら、センサーの前で佇む彼>>44へ ようやく ]
……………どうし、て。
[ やっと音にできたのは たったの4文字で 譫言のように あふれた音。
>>44”言われなくとも”と、湧いた疑問を掻き消すように 僕を宥め続けてくれたひとの 手を取ろうと。**]
(48) 2015/07/17(Fri) 01時半頃
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[警備の人間が駆け寄ってくるのが見えた>>43。 けれど大扉は閉まっていて。そもそも、フィリップを置いて逃げるなんて選択肢は私にはない。 そんなことをするくらいなら、ここで殺された方がましだ。 フィリップの背中を、頭を撫でる手に、力がこもる]
――――――……!?
[けれど、目の前で起こったのは、思いも寄らぬ展開だった。 月見が、警備の人間に駆けて。そして流れる、血>>44。 そして開かれる、大扉]
……どうして。
[思わず、フィリップを撫でていた手も止まってしまった。頭に手を乗せたまま、呆然と私は呟く。 それはもちろん、こちらにしてみれば願ってもない展開だったけれど。 そんなことをして、月見に何のお咎めもない……なんてことは、もちろん、ありえない。 静かに促されて、私はもう一度、どうして、と呟いた。 それでも、フィリップが我に返ったなら、私は逃げることを躊躇わないだろう]
(49) 2015/07/17(Fri) 01時半頃
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―――そうか、 ……死ぬのか。
[ 男はゆくりと、囁いた 。 地を這うような声だった。 そうしてまるで ――― 昔に捨てた、 口調だった 。
死ぬ? なぜ。 人を傷付けたから 。 それだけ。 たった、それだけである。 男は自身の髪を耳に掛けた 。]
それはそれは、 ……面白く無い。
[ 折角見つけた” たのしい ”こと 。 ” たのしい ”もの。 ” たのしい ”―――人。 まるで玩具を取られたかのように、男は不貞腐れた顔をした。 何故この愉快さを、 胸を疼かせる愉しみを 誰かに奪われなければならないのか ―――
そう、 誰かの死に様などは 見たくない 。 ]
(50) 2015/07/17(Fri) 02時頃
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なら簡単だな、ジリヤ。
―――俺と一緒に暮らさないか。
[ 男は口端を上げ囁いた。 まるで悪魔の囁きだと、罵声を浴びせて来た誰かの気持ちが解った気がした。 遠くから漂う風が、 外の香が髪を揺らす 。 男は紛れて、彼女の頬を引っ張った 。
そしてまた、 手を差し伸べる。 ]
ハイか、 イエスか。 欲しいのはそれだけ。
[ はたして獣を匿うと知れたら、 ひとはどう思うのか。 男の興味は尽きず、――ただ好奇心に突き動かされた。 ]**
(51) 2015/07/17(Fri) 02時頃
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( 会いたい ) ( 会いたい ) ( 会いたい ) ( ―――だれに? )
僕のうすのろな足が、止まった。人混みを避けて歩いて来たはずのそこが、いつの間にか人に埋もれる。 僕はすこし、息苦しくなった。
「 ふるさと 」 「 もすきーと 」
僕を動かすふたつのワード。 ぼくは、 ……なにを探しているんだろう?
ぽっかりと胸に穴が空いた気持ちだった。 はてな?クエスチョン。 こんな空虚な気分は、……ああそうだ、塔を出てからだ。 疑問を飛ばしても、僕にはわからない。 わからないんだ。
どうしてぼくは、こんなにさみしいのか。 それさえ。*
(52) 2015/07/17(Fri) 02時頃
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[二人とも「どうして」と重ねたから、 彼は小さく肩を竦めた。]
いきていたいんだろう。
[なぞるのは尚、 鮫に投げかけられたあの言葉>>250だけ。
フィリップ>>48が我に帰って 梟>>49の掌をとるならば 彼の出番は終わり ――きっと長話は無用]
はやく。
[君達は。まだ、未来があるはずだ。 そう思いながら再度促せば、 彼らは行ってくれただろうか。
その背を見送ることぐらいはできればいいけれど。*]
(53) 2015/07/17(Fri) 02時頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/17(Fri) 02時頃
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ああ、ヴェスパタインの手なら、きっと、安心して逝け。
…え?…は…?
[一緒に暮らさないか、と囁かれる。>>51まるで悪魔のささやきだ。いや、その見た目がではない。…その、抗いがたさが。]
お… [お前はそれでいいのかよ。この施設には、来れなくなるかもなンだぞ?お前の職だろう?そんな、言葉は、相手は求めていない。求めて、いるのは…]
[ただ、ひとつ、顔を相手の胸に埋めたままこくり、とうなづく。縛られたかった。自由でいたくなかった。なんでも、好きな事ができる、誰の事も気にしないでいい。それは…とても、とても寂しい事なのだ。あの路地裏でも、この地下施設でも、自由だった、自由で、寂しかった]
後悔、するなよ…アタシが扱いにくいの、知ってンだろ…
[顔を埋めたまま、つぶやく。赤い顔を、隠すために]
殺しときゃよかったって、後悔しても、遅いからな… そンときゃ、アタシの純情を弄んだ報いを受けて、貰うからな…
[ボロボロの上着よりも、直接に、重さが、香りが、入り込んでくる。心を縛る鎖が、とても、心地よい。離れがたい。]
(54) 2015/07/17(Fri) 02時半頃
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…連れてってくれよ。足、挫いたんだ
[ふらふらと、立ち上がる。弱さを簡単に吐き出す。もう、彼相手なら、いくらだって本音を言える。尖った棘で隠した、臆病で寂しがり屋のハリネズミのこころを、さらけ出せる]
(55) 2015/07/17(Fri) 02時半頃
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[そうして、その手を取った。手を繋げるのは…繋ごうと思うのは、同じ生き物である、証だ]
(56) 2015/07/17(Fri) 02時半頃
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[いきていたい>>53その返答に、我に返る。 そうだ。私は、ここから出て行きたい。ここから出て、生きたい。 その為に、ジリヤを置いてまで、ここまで来たのだ。 人間を傷つけたジリヤを置いてきた私が、ここで人間を傷つけた人間をその後を心配するのはおかしな話だ]
フィリップ。
[顔を向けると立ち上がったフィリップ>>47が、私の手を取った>>48。 その顔に、決意をこめて、頷いて。 私は月見に向かって一度深々と頭を下げた。 逃がしてくれることへの感謝か。それとも、旅立ちの挨拶か。それは私にも良くわからない。……今までお世話になりました、でないことだけは確かだけれど。 踵を返し、もう振り向かず、私たちは大扉をくぐる。 外の世界へと向かって**]
(57) 2015/07/17(Fri) 02時半頃
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[ゆうらり、幽鬼のように血塗れた刃を持ち 外の風に着物の裾を靡かせた。 >>57 こちらに頭を下げたマユミの絹糸のような黒髪が揺れる。 彼はそれを無表情で見届けると、 大扉をくぐる彼らの背を見送る。]
(58) 2015/07/17(Fri) 11時頃
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……それはそれは、 …――怖いですねえ。
[ 純情>>54、と 。男は矢張りと思った。思って尚、言及はしなかった。此方の要求――と言うには拒否権など無かったが――に一つ頷いた彼女へ、満足そうな笑みを浮かべながら 。
軈て男はふらふらと覚束なく立ち上がる彼女へ、深く差し伸べた手さえ握り返されたなら、その体躯を寄せ楽に持ち上げた。 お姫様だっこ―――などではなく俵抱きではあるが。男は髪を揺らして出口へと歩先を向け直した 。いついつ彼女を外へ連れ出しても構わないが ―― 今なら殊更楽であろうと。 自身の頬や腕に擦れる「 針 」…ではなく、「 髪 」に擽ったささえ覚えつつ。
以前此処から出た「 鮫 」は、 あの後どうなったのだろうか? 不意に思い出した事柄 。 男はふるりと柔に首を振った。
また逢うこともあるだろう。 ―――いずれ。 ]
(59) 2015/07/17(Fri) 11時頃
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