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言わぬ。
[簡潔に許可を出せば、イメージされる吸血鬼の犬歯とは程遠い尖りと大きさの歯が肌を掠める]
……ッ。
[痛みは僅かで、その噛み傷はごく浅い。
それでも顔を顰めくぐもった息をひとつ吐き。
受け入れた後その感想を聞き、若者の様子を眺める。
吸血の恍惚を感じた風でもない淡泊な様に違和感]
……ふむ。
[考え込む素振りを見せ]
まあ、悪くない味なら良かったと思おう。
大丈夫だ、シュロには黙っておく。
付き合わせてすまなかったな。
[血の流れる首元に手を遣って]
俺はまだ暫く、ここでこれの練習しようと思う。
[ひとりで集中したいと謂う意味込め、
鍵盤に手を置いた**]
[それでも、そのタオルが外されれば、濡れた赤い瞳がその顔を見上げるだろう。
瞬きの度、涙は溢れて次々落ちる。
自分よりもマシだとはいえ、彼だってきっと、そこまで多くを覚えていられるわけでもないだろうに。
その僅かを、自分の為に割いていいのか。
不安げに、眉は寄る。]
……ここを離れたら、……多少は、覚えていられる、かな、
お前の名前も、……声も、言葉も、全部、……
[それが、とても魅力的な提案に思えたのは、きっと気のせいではないのだろう。
全ての約束も、言葉も、自分の心の揺らぎ全て、覚えていられるのならば。
けれど、それは同時に、]
……忘れたいことも、……全部…… 思い出して、しまう……?
[震える声で、言葉にする。
世界は、そうも都合のいいようには、できていないだろう。
その掌を握ったのは、半ば無意識で。]
[タオルが落ちるのも構わず、体を起こす。
傾ぐ、重い頭を支えながら、それでも腕を伸ばし、指は繋いだままその頭を抱く。
その首元に顔を押し付け、緩く首を横に振る。]
……覚えていられないのがこの場所のせいだとして。
忘れていられるのも、この場所のお陰だと思う。
[苦い記憶も、傷の痛みも。
それを逃げだと言われようとも、永遠に逃げていられるならばそれもある種の救いと変わる。
忘却は、害と同時に救いでもあった。
少なくとも、自分には。]
……もし、いつか俺に、全部を受け止められる覚悟ができたら、
旅に出るのも、悪くないかもしれねぇな、って。
[『もし』『いつか』
それは成されないであろう、不可能にちかい不確定の未来への言葉。
けれど確かに言葉にした真意は、それが紛い物ではないと誓うようなそれ。]
[体を離し、タオルを拾い上げる。
再び寝台に横たわれば、自らその額にタオルを広げて。]
……昼まで、寝る
寝たら、また、忘れそうだけど、
……体、怠くて、
[涙の跡の残る顔のまま、目を閉じる。
繋いだ指に篭められた力を、そっと緩めた。]
クアトロ、……、 ……いや、
[曖昧に揺蕩う意識が、それを拾い上げたのは、ほんの偶然で。
それでも、忘れないように、言葉に紡ぐ。]
……ボリス、?
[その考えから意識を逸らすように、また彼がなんぞ探って来ないように、彼のスラックスを寛げてしまう。]
あっしがしたいからするんだよ。
[彼の物を外気に晒させると、れろと一舐め。
男の其れなどどう舌で慰めたらいいのか分からぬが、好きなように弄ぶ事にした。
鈴口だけ口に含むとちゅうちゅうと吸ってみたり、下から上へべろりと舐め上げたり。
最後には喉の奥まで彼の物をすっかり口の中に収めてしまった。
程なくしてあっしは望んだ苦い甘味を味わえた。*]
えへ。美味しい。
[溢れ落ちる涙を幾度か見つめ。
綺麗だなと、その雫を指に掬う。
続く言葉には、ああ、やっぱりと苦笑を洩らした。
本当に、何故そうも自身ばかりを痛めつけているのか。]
忘れたら、何度でも自己紹介しちゃるよ。
なんべんでも喋っちゃるし、なんべんでも呼んじゃるよ。
ヒュー、愛しとるよって。
[忘れられる度に男が傷つくじゃないかと、彼は謂った。
そんな永遠は嫌だと謂った。
傷付かないはずはない。
でも傷付くのは、忘れてしまう方だって一緒だ。
なら忘れる度に何度でも
覚えていてほしいと願いを込めて
繰り返し、伝えよう。
そんな永遠も、嫌だと彼は謂うだろうか。]
[はたりと、タオルが落ちる音がする。
聞こえる言葉は、きっと『怖い夢』のことだろう。
手を繋いだまま、硬い髪にもう片方の指が絡んで
引き寄せられてから感じるのは、体温、匂い、色彩。
首元には、涙の落ちる顔が押し付けられて。]
忘れたいこと、思い出したら。
わしが、忘れさしちゃるけ。
一緒に、夢にしちゃるけ。
また思い出したくなったら、二人で思い出せばええさ。
[そんな都合よくなんていかなくても。
怖い夢を見る夜に、独りになんてしたりはしない。
逃げたいときは一緒に逃げよう。
立ち向かいたければ、一緒に立ち向かおう。
隣にいて、傍にいたい。
臆病で泣き虫で不器用な彼の。]
ふ、はっ。
そうな、うん。
いきなりじゃもんな、そら、そうじゃわな。
[『もし』『いつか』なんて、いつ訪れるかも判らぬ言葉。
けれど前に落とした『また今度』とは違う響きで。]
多分全部受け止めようおもたら、重くて潰れるぞ?
[それでも、その日が、『いつか』『きっと』。]
───忘れずに、待っとるよ。
[訪れることを願って、抱きしめた。]
[拾い上げられたタオルは、再び額の上に。
横たわるのなら手もかしただろうか。
それでも繋いだ手はまだ離さずに。]
ん、そうし。
わしが聞いたけ、忘れとったら思い出させちゃるよ。
じゃけ、安心して寝り。
[涙の跡は指先が拭う。
目を閉じた彼の瞼に、触れるか触れないかの口付けを
落とそうかと顔を近づけて、]
ひゅ……、……ッ…
[紡がれた名前に、ぱたと音がした。
額のタオルにしみこんでしまったから
音の正体はわからなかっただろう。
わからなくていい。
自分自身でも、わかっていない。]
あっ 、あはは
[彼が身を乗り出し、スラックスをくつろげ、下着をずりおろして自身に触れる。握ったグラスの中身が危ういと、いっぺんに飲み干したあと、後ろの棚の端にグラスを置く。]
…、っ
[外気に触れ、彼の舌が先端にふれ、その感触に俯き快楽の予感に耐えたが、その後の舌の動きは不慣れで、ちろちろと弄ばれる様。]
、ふふ、かわいい
[赤い髪に指を埋めてそれを鋤き。
性的快楽をもたらすというよりは、ゆるゆると、達するには至らない鈍い快感。
もどかしく頭を抱えてその口の中を使い、蹂躙してやりたくもあるが、それは耐え。]
どうせなら、またがってほしいね
[そう強請るが彼はどうしても口でしたいのか、ようやく全てを口に収め。]
じゃあ、口を上下に動かして
[拙げな動きをする彼に要望を伝え。]
口は不慣れ?
ふふ、初めてしたみたいだね
[下への触れは、慣れている様にも思えたのに
それとも、これも彼の手管なのか
拙いとはいえ、次第にせりあがってくる
快感には目を閉じ、
その後、彼の喉奥に欲をぶつけ]
美味しい?
悪趣味だね…
[自身のものに口付けた彼の唇に、そのまま口付け。]
不味いよ
[そう呟いて*]
[愛している、その言葉は留めておけるのだろうか。
忘れたことすら忘れてしまえば、傷だって傷まなくなる。
それでも、痛みを感じぬ自分を前にしても尚、傷を負ってもいいと、彼は笑うのか。]
……いつでも、諦めてくれて、いいから。
[一緒に、二人で。
重ねられる言葉に、そう返したのは、やはり僅かの罪悪感から。
それでも、今直ぐ止めろと口にしなかったのは、その想いに少しでも触れていたかったから。
『もし』『いつか』自分に確固たる自我が根付いた時、その想いに返せるのだろうか。
裏切ってしまうかもしれないと、その想いに脅えて口に出せない言葉を、告げられるのか。
忘れずに、待っている。
その言葉に小さく、頷く。]
覚えておいて、……俺の代わりに、
[その懇願ごと、その腕の中へと。]
[ボリス、本当の名と告げた彼の声。
その短かな音の響きを、忘れないように。
異を唱える声は聞こえない。
間違っていないのだろう、覚えていられて、よかったと思う。
額の上へと落ちたもの、微かに立てられた音は、シーツの衣擦れに紛れていく。
疑問を口にする気力も、既にない。]
………、
[深く、息を吸い、息を吐いて。]
そう、俺と寝た?
じゃあ、俺はあんたに
情をくれと、愛を強請ったのかな…
そして、お前は俺を騙した
[ニコラスの言葉に目を伏せて笑い。
過去の記憶にはない関係。
自分は相手の情を請う。
気持ちのない交わりは、後で苦痛なだけだ。
遊びとも割り切れずにいる。
きっと元の生業のせいだ。]
……情を強請って。
情を沸かせて。
それでも時が過ぎればあっさり忘れて捨てるのよ。
貴方はそういう人だわ。
……騙したのは……僕じゃないだろ?
[続けられた言葉には、自然と顔が強張って。
最後の言葉は今の己が吐き出したものではない。
色も輝きもを喪った蜂蜜色の瞳は、何処か虚ろな様でジェレミーを見て。
動きの止まった指先から、さらさらと流れ落ちる金の髪が、彼と己を繋ぐ視界を遮る。
瞬きをする一瞬前、彼を射抜くその目に、深い闇に似た熱が篭って。
それは写真からこちらを睨むのと似ていたが、目の前の彼に届くか。]
吸血鬼って… 嫌だね
[ぽつり]*
[自分を嫌う人間の声なんて聞こえない振り、見ない振り。
それが若い頃の記憶の全てだ。]
たかだか数年でこうは成らないからな。
俺に流れた時間を知りたい。
[
死を望んだことはない。だが、先にある時間は有限なものであって欲しかった]
まだ死にたいのだったか?
[流れる金の髪を見つめる]
[じぇれみがもし囁きかけられる位置に居るのなら、こう囁いたろう。]
お前さんは「真実」って物に興味は有る類の人間かい?
さあ、あなたは知ってるの?
[知ったその真実が、不幸なら
どのみち忘れてしまうのだろうか?]
[そう、あっしの部屋で。
そこにあっしは真実を記している筈だ──]
【人】 学園特警 ケイイチ―談話室→図書館― (231) 2014/12/28(Sun) 22時頃 |
……僕?
[口調と一人称の、の違い。
騙したのはお前だと、なじる言葉。
伏せていた視線を彼に向けた時
一瞬、あの写真でだけ知れた
繕わぬ表情の彼が居た]
ニコラス…
[自分は会話している相手のことを名前で呼ぶ事はほとんど無い。だけど、ついて出た彼の名前。]
そうだとしたら、俺はお前に、
「俺」を殺せって命令したのかもな…
俺の生き死にんなんて
どうでも良いと言ってなかった?
[まだ、死にたいのだったかと問われて、テーブルに頬杖をし、伺う様に笑い。]
そういや、あんたは俺と寝た事ある?
あはは、一度くらいは、
俺はあんたを口説いたかもしれないね
[ニコラスとの会話を思い出しそう笑い。]
―或る日―
[雲が途切れ、また陽が入り。
昏く翳っていたその場所を照らす。
男は足許に転がるものを見る。
揺れる金の髪。
蒼ざめた膚は、最早生者のものではない]
……ぁ……。
[目の前掲げた、痺れて色を失くした指先が、
小刻みに震えるを不思議そうに眺める。
『それで良い』耳を打つ、囁きの気配に振り返れど、
黒衣の魔女はもうどこにもいない]
[やがて遠く喧噪の声がする。
森を抜けた先に或る城には吸血鬼が棲むと謂う。
其処に城があったか、其れがいたか、真実は不明。
だが、まともな人間は誰もその場所に寄り着こうとはせず。
だから、其処へ逃れようと走り出した。
生き場所を願ってか、或は逝き場所を願って**]
ー或る日ー
[握り返した手は吸血鬼である私のそれよりも冷たかった。
私の記憶はあの日からでいいのだと思う。
それまでは孤独な死という日々を生きていた。
古城を訪れる影一つ。
この吸血鬼の城をわざわざ訪れるとは誰だろう。
迷い込んだ妖精か悪魔か。
吸血鬼である自分以外に幻想を体現する存在は
目にしたことはなかったけれど。
ともかく私のことを恐れもしなければ迫害もしない
彼が人間であるとはその時は思わなかった。
だから彼に手を差し出した。*]
【人】 学園特警 ケイイチ―図書室― (304) 2014/12/29(Mon) 20時頃 |
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