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あ、ごめん。手濡れてたか。
[そう言って親指で宇原の額についた水滴を拭うようにこする。水滴は人肌に触れて妙に温い。]
そうなの。
だから触ってもちょっとあついかしら、くらいで…
[と、再び手のひらをぺたりと額にくっつけて、はたと言葉が止まる。]
……チョトマテクダサイ
[片言でそう言うと、もう片方の手を自分の額に当てる。]
…ウツギくん、体温計どこ?
[自分の手のホカホカさに今更気づき、再生され始めた動画を止める。]
転キンはまた今度にしよ。
ウツギくん熱あるよwww
[何故か笑いがこみ上げた。おおよその察しは来る前からついていたが、ようやく決定打を得た気分だ。
しょこらちゃんのイラストのプリントされた湯呑をテーブルに移し、とりあえず宇原の椅子をくるりとベッド方向へ回した。とりあえず寝かせなければ。]
とりあえず布団入って。
…ぉあっ
[そう言ってでかでかとハロウィンちゃんが印刷された布団をめくると、ヤンデレ女とミームちゃんが居た。知ってたはずなのにちょっとびっくりしてしまった。]**
うん。着替えも持ってきてるんだ
バイトだって元から連休にシフト入れてないしね。
だからしてほしいことがあったらさ、
いつでも何でも言ってよ。
何しろおれは、柊真が言ったら何でもするわけだから。
[言外の問いも理解しながら、投げかけられた内容に返す
悩む様子も見せず、当然のような振る舞いで。
数日の間星夏さんが戻らない以上、元よりそのつもりだった。
先程は「意地悪だ」と少し拗ねた彼の言葉を拾うのは
僅かに漏れた笑いに、確かに気づくことが出来て
本当に気を悪くしていたわけではなかったからこそ。
そして、幼馴染からの意地悪が、嫌だったことなど無いのだから。]
……駄目かな?
[そして、返答から一拍を置き短くそう続けた。
駄目だと言われても帰る気は無いのだけれど、逸れる視線。
やはり────嫌なのかとは、聞けなかった。
そんな問い掛けに頷かれてしまったら、おれは。]*
うんまぁ、そうっちゃそうな"んすげどね。
たとえるだば、裁縫苦手なひとに「雑巾はまっすぐ縫うだけ」って言うようなもんで。
[
なんで、はい。
治ったば、おでがいしばす。
[
え、そうなんでずか?
いやうん、ほんど、助ばってばす。
[本当に謙虚な人なんだな。
改めて感じながら、キッチンへ向かった彼が戻るのを、ゆっくり待たせてもらうとしよう。]
そういえば薬、いま飲んだらダメなのかな……。
[やっぱりぜんぶ食べ終わってからのがいいかな。]
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いいけど…ww
[額の水滴を拭われる。胸がもやつくせいで笑いに力が入らない。食道を通る米のツブツブが、どこかで詰まってしまっているような、なんともいえない気持ち悪さ。]
んん?よくわからんwww
[されるがまま、という感じで完全に頭の重みを腕に預けた。]
シャチョさんどの国からキタ…?
……フフッ…
外国人パブに外国人きてるじゃんこれ。
[片言で待てと言われて、そのままの姿勢で待っている。転キンのまだまだ内容薄目の導入を眺めていると、動画が止まる。マウスを触る岩動の手を見て、また顔のすぐそばの岩動の胴回りのシャツを見る。]
体温計もってない。
[体温計に関するお返事はとても簡素だった。
体調を崩すたびに一瞬買う候補にあがるが、「別に計っても治らんしな、今回はいいか…」と買うのを先送りにして放置してきた。]
熱ううう?
マ〜〜〜〜〜?
[うそだあのトーンで訊き返す。
岩動はなぜか笑っている。もぞ、とウツギはだらしなく浅〜く腰かけていた椅子に、深く腰掛け直す。
PC用椅子を回されて、ベッドのほうへ向かされながら、自分でも額を触ってみる。こんなの分かるものだろうか?]
[よっこいせ、と立ち上がって、布団を剥がしてシーツと枕カバーの美少女立に驚いている岩動の袖をひいた。]
[こちらを向いたタイミングで、岩動の前髪を片手でわけて、額に手を当てる。]
……。
[自分の額に手を当てる。]
…………
わかんないです。
[手を額から離して、シーツに手をついてベッドに乗り、足先を布団に突っ込んだ。]
[ギシギシする関節を少しでも和らげようと、軽く腕を回してみた。]
……ぁ〜……。
[眩暈がしたのですぐやめた。
やっぱり、おとなしく待っていたほうがよさそうだ。]
あ、はぁいー。
ありばとござばず。
[
半身起こしたまま、ぺこんとお辞儀した。]
凛堂さん、手際いんでずね。
……ズズッ
[ネバつく鼻水は、あいかわらず止まらない。
さっきまで殆ど空だったゴミ箱は、もう、半分くらい埋まってしまった。*]
ええ?
できたものよそってくるだけでそんなに待たせられませんよ。
[戻るなり手際を褒められて、疑問形。
むしろポカリ作ったりなんだり、時間かかった方ではなかろうか。
もしかして高熱のせいで時間感覚が狂って――そんなまさか。]
そういえば結局、熱って測ってみました?
[お椀を差し出しつつ、さりげなく問いかける。]
[泊まるのかと問いながら、体温計を渡す時。
大学で、たまに見かけるものの
こうして近くで目を合わせるのは、本当に久しぶりな気がして]
して欲しい事、何でも、ねえ。
[だから喋っているのはきっと、
添い寝して欲しい、って言ったらどうする
あ、それとこれ。
これは冷たいままなんで、喉かわいたら好きに飲んでください。
[マグとお椀を置いたあと、トートバッグの中にあったペットボトルを出して、直接手渡す。
温めるに越したことはないが、冷たさも気持ちいいかと。]
薬も、食べるのがつらくなる前に飲んでくださいね。
食後に飲むっていうのは、胃の負担を減らすためなんで、必ずしも満腹である必要ないですから。
[薬を飲んで熱を下げて、苦しそうな呼吸が楽になれば、回復も見えてくるはずだ。
すっかりティッシュだらけになったゴミ箱に苦笑する。]
やー、そうばもしんないすけど。
いいですよ、手際。
[
いい人なんだなぁって、しみじみ思ったら、少し頬が緩んだ。]
熱……いや。
じつば、体温計、どこいったかわばんなくで。
薬箱に入れ"でたと思っばんすが……。
[薬を出すついでに探したら、なかったのだ。
どこに置いたかと記憶を探ってみたけど、熱と鼻水でボケた頭では、まったく思い出せない。]
ズび……ずびばぜん……ズーーッ
あぁ、つべたいの、飲びま"す。
[
ぁー…………
[火照った身体に、しみ込んでくるようだ。
ごくごくと、一気に半分以上飲んでしまった。]
あ、そうなんですか?
もう飲んどいだほうがいいの"かどうが、考えべだんべず。
……ズッ
[なら忘れないうち、先に飲んでしまおう。
まだポカリ水も残ってるし。]
[乾いてしばしばする目を擦ったら、涙が出てきた。
ちょっとぼやけた視界のままで薬を取り出し、さっさと飲んでしまおう。]
錠剤で置いとげばよばっだなぁ。
[薬屋さんが置いてったのは、顆粒の風邪薬だった。
でもこのほうが即効性でいいらしいから、頑張って流し込むとしよう。*]
持ってないかあ〜〜〜〜!
そりゃそうかぁ…
[言われてみれば自分だって体温計なんて持っていない。ただ、微熱程度でこんなに露骨に手のひらでわかるほどになるだろうかということと、こんなにも具合が悪化するものだろうかということだ。度合いによっては自分の手には負えない可能性だってある。
まあ、今のところは吐いたり下したりなどはしていないようだしそこまで悪いわけでもなさそうだけれど…。]
随分具合悪そうに見えてるからね。
[布団をめくりあげて、ベッドに計4人のペラペラな美少女がいるという事実に気圧されていると、袖にゆるい重みがあった。
何か用かと振り向けば、宇原の指が前髪をかき分けて額に触れる。
触れた指の感触にほんの少しだけ、ぴくりと体が跳ねた。]
……。
……… 顔が良い。
[どうやら、自分でも熱を確認しているらしいが。
「わかんないです。」と自分の額に手を当てる宇原の顔が良い、そして近い。
いつも気の抜けた顔をしているが、今日の少し曇った表情は逆に彼の顔の良さを引き立てるようだということに気づく。気づきたくない事実だった。直視しづらい。
やがて額から手が離れ、布団に足を突っ込むまでをジト目で見守った。]
さて、
[足先だけを布団に突っ込んだウツギに布団を被せつつ]
もちろん風邪薬なんてないね?
[そう確認をとって。
さっき念のために買っておいた冷却シートが役立つことになりそうだ。箱を開けて、シートを一枚取り出して宇原の方へ放り投げると、それはぴろぴろと歪な弧を描いてハロウィンちゃんの上にぺとりと落ちた。]
[偶然でも目が合うなんてことも、
罪悪感無く傍にいられるのも、とても気が楽だ。
進学先に選んだ大学を教えてもらえなかったおれは
「柊真、大丈夫ですかね。」
そう自分が気にすることに違和感は無いと理解しながら、
受験の心配をしている風を装って、星夏さんに近づいた。
偏差値、校風、通学、やがては意識する就職のこと
曖昧でどこにでも当て嵌まるような言い方を選べば
自然にあちらから明確な情報が出て、
最後にはその名前も知ることが出来た。
学校まで離れてしまえば、もう戻れない気がしたからだとしても
彼女に嘘をつき、教えたくなかった彼の気持ちを裏切った。
上手く話し掛けられもしないまま、遠くから姿を見る時は
まるでストーカーのようだと思うこともあった。]
うん?
[何か思い至るものがあったのだろうか。
小首を傾け、待った続きはすぐに与えられる。
────どうする、なんて言われたけれど
すっかり成長し身長も引き離してくれた幼馴染が
そんな予想外のことを言うものだから。
思わず何も言わないまま、目を丸くして見つめてしまう。]
なんだ、可愛いことを言うなと思ったのに。
添い寝するには、今はベッドが小さいかな。
[昔を思い出すように、目を細めて]
……ふんwww
[岩動に「顔が良い」と唐突に言われて、布団に脚をいれながら、何を言っているんだとばかりに鼻で笑う。
どうやら調子の悪さでアホ属性が消え気味になったために顔を褒められているらしい宇原に、常にアホ面を晒している自覚はない。とにかく宇原には自己分析する習慣が殆どないのだ。]
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