56 いつか、どこかで――狼と弓のワルツ――
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うーん、騎士団の制度はそこまで詳しくないので、 私はだめとは思いませんけど…… 今は騎士団長、副長、両方とも空席なのでしたよね?
[二人の良い評判は聞き及んでいたから、 両者が協力しあって赤を支えていくという想像は、 難局を乗り越える良い方法に思えた。
つんと引かれた裾に、少しだけ屈んで視線を合わす。>>107 ――昔と比べると、彼も随分大きくなったものだ]
ええ、もちろんいいですよ。一緒にお祈りしましょう。
[寂しげな笑顔を、両手で肩を叩いて励ました**]
(113) 2011/06/30(Thu) 02時頃
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[咳払いをひとつ、 その後]
…聞こえるか、ベネット。
お前が団長をやらないってんなら、俺がやる。
けど、俺一人じゃ駄目なんだ。
お前の力が、必要なんだ。
[お互いの、足りない部分を補い合えば―――]
副団長に、なって欲しい。
[目の前に佇む同胞の声には、しばらくの沈黙を。
墓地で言葉を交わしたもう一人の同胞が、何と返事をするのだろうかと。
息を殺す様に、耳をたてた。]
やはり、そうなのですね。
こう言ってしまうと重荷を載せてしまうようで、
心苦しいのですが……
頼りにしています。
[戦う力がないことは、時々恨めしかった。
今更剣を取っても本当の足手纏いだろう、自分は。
代わりに、騎士達が志を果たし、守るべきものを守れるよう、
せめて祈りたいと思いを新たにする。
一転、急に動揺する心の声にきょとりとして]
神様にですか? それは確かに、そうかも……
厳粛といいますか、畏まってしまう感じなんですねぇ。
[公女殿下を前に、カチコチに緊張するヤニクの姿を
ついつい思い浮かべて、微笑ましかった**]
重荷だなんて考えたことはないからな。
守りたいと思うものがあるから騎士団に入ったんだ。
それにお前はお前で、俺たちの分まで祈ってくれるんだろう?
[精神的に彼を頼っている者もいるだろう。
祈りは力になる。
それは彼から聞いたか、それともトラウマを埋め込んでくれた老神父が言っていたかは覚えてはいない。
しかし、それだけ伝えると。]
……笑っても良いが、誰にも言うなよ。
[少し拗ねたようにそう告げた。]
何をやらないとダメなのか。
そんな事位解ってるよ……。
[僕は、騎士団の人間だ。赤の狼だ。
でも、僕はそれ以上に父さんの子で。
それは、僕の様な適任はそう居ないと言う事]
[イアンに…。僕よりもずっと団長として適任に思えてしまう彼の存在に。
甘えてしまっている]
……最低だ……僕……
[もし彼が今この騎士団に居なければ。
僕以外に適任も居ない騎士団で、僕は言えなかったと思う。
『泣き言』を]
[『「弱さ」とは「恐れ」のヴェールに包まれる』。
赤騎士団の僕ですら何度も聞いた、セドリック副団長の言葉をこんな時に思い出す]
……言わなかったのは…。
…父さんが何も言わなかったのは…。
僕の、僕達の事。
信頼してくれていたからだと思うのに。
[それは、『弱さ』が無ければ、『恐れ』も無いと言う事。
―『恐れ』があると言う事そのものが、『弱さ』の証明だと言う事]
――くそっ……!
[見張り台の欄干はギリリ、と軋む。
まるで弱い狼の鳴き声みたいに、軋む音が虚空に融ける]
最低だ…。
[もう解っている。だから僕はそれを認める。
何て事ない。
僕はただ、その重責を恐れて居るだけだ]
[ 守りたい――! ]
[彼方の平原に揺れる、大きく蠢く獣の姿を前に。
この砦を、この騎士団を、この場所を守りたいと心も体も叫んでるのに。
ただ最後に、『弱さ』だけが振り切れない]
[朝を重ねる程に重く響いてくる、父親の偉大さ。
比例する様に高まる、期待と言う団長の重責]
僕が弱いから…!
[そんな時に、父さんを超える程の剣の腕を持っていた『彼』が居て。
いっそ彼に全て任せてしまいたい。重責を受け止めきる自信がない。
だから今も僕は…]
[父さんから、団長から、重責から、恐れから、弱さから――]
逃げてる。
[一粒に零れた涙だけは、同胞に響いてしまったか]
[やがて狼の咆哮が。同胞の覚悟が響く]
僕が副団長に……?
僕の力が、必要なの……?
[その返答を待っているのは、彼一人だけでは無い。
狼としての同胞皆が、その意志を確かめる様に耳を立てている]
[同胞の言葉に、彼が団長に成ると言う言葉に。
受け入れる僕自信を、不甲斐無いと自嘲してしまう。]
…これが今の 僕に出来る精一杯なんだ。
[お互いの足りない部分を補えば。
ただ一人だけの物では無い重責なら。
―やっぱり、僕はイアンに甘えている…]
[それでも、翠の瞳に宿った青年の意志は。
漸く覚悟を決めた、狼としての咆哮となった**]
はい。それは、もちろん。
[騎士達が戦に赴く時は、彼らの武運を祈るのが役目だ。
命尽きる者を看取ることもだが、今は脇によけて。
守るために騎士になった、と言うヤニクの毅然さは、
憧れのような感覚で受け止められた]
……大丈夫ですよ。もちろん他言無用ですとも。
[ヤニクさんは公女殿下を敬愛する余り、
思わず逃げ出したくなるほど緊張してしまうそうです。
――仮に人に言っても、そう悪し様には思われない、
寧ろ神父個人の感覚では好ましく思われる気もしたが、
本人の意向のことなので頷いた**]
[びり、と肌を緊張させる様な不穏な空気を震わせる同胞の咆哮。
その咆哮を聞いた狼は、す、と緋色の眼を開いた。]
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―夕刻 墓地―
[フィリップに案内されて伝書鳥の墓を訪れる。 盛り土の小さな塚に二人して祈りを捧げた]
今、ひとつの魂があなたの御元に帰りました。 どうか慈悲の腕に私の小さな友を抱き、 再び飛び立つ日のために導いて下さい。
[彼の祈りが終わるのを待ってから、砦に戻ろうと促す。
やがて日暮れの後、緑騎士団の休息命令を知った。>>120 ――いよいよだ、と思った]
(143) 2011/06/30(Thu) 16時半頃
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[一瞬、涙が混じった同胞の叫びが聞こえた。
しかし、その後に響いた咆哮は確かに ]
お前の覚悟、受け取った。
[これで、
誰にも文句は言わせない。]
[ミーティングに参加する前。
彼がわざわざ言いふらす奴ではないと思ってはいたが、それでも口止めしたのは気恥ずかしさから。
他言無用と言っていたその返事に、安心したように息を吐いてその時はそのままその話題は続けなかったが。
そしてそのままミーティングに参加し、告げられた命令。]
……休眠命令が出た。
明日にも本格的に戦が始まるだろうな。
お前さんも休める内に休んでおけ。……始まったら、いつ休めるか分からないしな。
[自騎士団の参謀を探す前、ムパムピスにそう伝える。
彼が休めなくなる可能性、それは祈る以外のことで忙しくなってしまう可能性。
そんなことが無いようにと思いたいが、どうなるかはわからないのだ。]
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―礼拝堂―
[墓地で激励に叩かれた背を軽くさすりつつ、>>167 礼拝堂に戻って来た。
休息命令を受けてのことだろうか、幾人かの兵が ここにやって来て、祈り、心を静めて帰っていった。 神父は彼らと言葉を交わし、励まして見送った]
……神様、どうか皆を無事に帰して下さい。
[名もなき鳥の死を悼む心優しい少年が、 戦で命を落とすようなことになってしまったら、と思うと。 胸が痛んで、勝利よりも先に無事を願わずにいられない]
(180) 2011/06/30(Thu) 23時頃
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― 夜:赤騎士団執務室 ―
…俺、偵察に行ってくる。
[普段は任務以外の時には団長の傍を離れずいるが、今日ばかりはイアンとベネットが団長と副団長に任命されたばかりとあって。
ここに居ると煩わしそうだと、そっと部屋を抜け出した。]
[……ムパムピスに休息命令の知らせをもたらしたのは、
他でもないヤニクの心の声だった]
休眠命令……
[繰り返し述べた声は、茫然として響いたかも知れない]
わ、分かりました。知らせて下さってありがとうございます。
……いよいよなんですね。
[覚悟していたつもりだが、臆病な自分にはやはり怖いもの。
俄か緊張に喉を鳴らして、頷いた]
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